遊戯王~黒き羽根は夢に舞う~   作:haruko

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なんとか間に合っていますが、投稿日がギリギリです。
大人しく書きだめ時間をもらえという話なんですが、一回休んで「続けた」という実績が途絶えて筆が進まなくなることを不安視しています。
ということで、いけるところまでがんばります。


最後の相手は映画スター!? 忍者vsBF!

 

 

「あっちだよ! みんな!」

 

 

夕日が下がり、日が暮れた童実野埠頭の岸壁沿いを走った。

漆黒の海を尻目に、今だ炎が残酷に照らし続ける倉庫へ、遊戯たちは全力でかけた。

遊戯の声に合わせ、皆が続く。

 

未だ燃え盛る倉庫が近づいてくるたびに、皆の心に不安が陰る。

 

 

現実を見るのが恐ろしい。

という気持ちは、皆一様にある。

 

勝利は、舞は、彼らの大切な仲間だ。

 

彼らが争い、傷ついた様など見たくはない。

 

 

ましてや……彼らが、もう二度と……

 

 

頭を過った最悪のケースを振り払うように、走る速度を上げる遊戯たち。

 

 

 

やがて倉庫が、立ち上る炎が大きくなってくる。

燃やすべきないものを燃やす不快な匂いが、潮風に混ざり、海の香りを台無しに変えて鼻に届く。

 

焦げ臭さが強まるにつれ、皆の不安が募っていく。

 

 

 

祈るような思いで、二人の姿を求める。

 

 

 

 

 

「勝利! 舞!」

 

「二人とも! どこにいるの!?」

 

「お願い、二人とも! 返事をしてくれ!」

 

倉庫の近くまでやってきて、皆が叫ぶ。

ただひたすらに返事を祈り、二人の名前を叫び続けた。

 

帰ってはこない。

だが、あきらめはしない。

 

 

必死に、喉がひりつくまで叫ぶ遊戯たち。

 

しかし、二人の姿を見つける前に、事態は動いた。

 

 

 

想像してしまった最悪な未来を形作るように、動き出してしまった。

 

 

 

城之内と本田が、倉庫の中を恐る恐る除き、勝利たちの姿を探そうとしたその瞬間。

倉庫が、爆炎を伴って弾けた。

 

皆が思わず、目を、耳を塞ぐ。

 

 

 

そして体が落ち着いた数秒後、恐る恐る、目を開いた。

 

しかし……飛び込んできた景色は、絶望だった。

 

 

 

 

倉庫は……大きく崩れ落ちていた。

おそらく、炎が倉庫の燃料の格納場所に届き、二次爆破を起こしてしまったのだろう。

倉庫の大火事、で収まっていた被害は、倉庫の壁ごと消え失せてしまった。

 

 

 

もしも……中にまだ誰かいたのであれば……確実に助かることはないであろう。

 

 

 

杏子が、口を抑え絶句する。

静香もそれに倣って目を伏せた。

 

受け入れられない。

そんな様子で、固まる遊戯たち。

 

現実から逃げ出すように、城之内が声を上げた。

 

 

 

 

「……嘘だろ……そんなわけ……そんなわけねえじゃねえかよ!」

 

 

 

 

城之内の悲痛な叫びを、諫める者はいない。

声に出さないだけで、認めたくない思いは、皆同じだった。

 

 

 

 

 

「……勝利! 舞! 返事しやがれー!!!!」

 

 

 

 

 

「はいはい。どうしたの、城之内君?」

 

「うるっさいわね。あんたは」

 

 

 

 

 

「っ!!!!?」

 

突然背後から聞こえてきた声に、城之内はまるで幽霊でも見るかのような顔でひっくり変える。

それ以外の皆も城之内ほどではないが、衝撃の展開に驚いていいのか、戸惑うべきなのかがわからずに、固まってしまう。

 

しかし、いち早くその硬直から抜け出した静香が、舞と、舞に肩を借りながら歩く勝利に駆け寄る。

 

 

「舞さん!」

 

「ああ、静香ちゃん。ちゃんと来られたのね。良かったわ。ごめんなさいね、放り出すことになっちゃって」

 

「ううん……いいの。無事でよかった」

 

泣きつく静香に、いつもと変わらぬ調子で優しく話しかける舞。

その姿に、すでにマリクの洗脳から逃れていることを確認した皆が、顔を緩めて集まっていく。

 

 

「よかった……本当によかったわ。舞さんも、勝利君も」

 

「すぐに合流できなくてごめんなさいね。勝利を介抱しながら、二次被害に巻き込まれないようにちょっと離れてたのよ。そしたら、そいつのバカでかい声が聞こえてきたってわけ」

 

「ば、バカでかいとはなんだ!? そもそもおめーにだけは声の大きさを言われる筋合いはねー!」

 

くだらないことでもめる城之内。

内容は内容だが、いつもの調子が戻ってきたことで、場全体の空気が柔らかくなる。

 

 

「……舞さんを助けられたんだね、勝利君!」

 

「まあね……互いに、無事といえるかはわからないけど。何とかなったみたいだね」

 

遊戯と勝利が顔を見合わせ、苦笑いを合わせる。

 

 

ぼろぼろで、ずぶ濡れの遊戯。

同じくぼろぼろで、焼け焦げた跡が残る勝利。

 

 

簡単な戦いではなかったことは、見ればわかる。

それでも、二人は笑っていた。

 

 

 

 

 

 

「遊戯。勝利」

 

 

 

 

 

 

その言葉に、遊戯と勝利は笑っていた顔を真剣な表情に変えて振り向く。

 

そこには……海馬がいた。

 

遊戯、そして勝利の無事を確認した海馬は、そのまま振り返り歩き出した。

 

 

 

 

 

「もう一人の遊戯にも、伝えておけ。『貴様らは、「答え」を示した』とな」

 

 

 

 

いうと海馬はそのままヘリへと戻っていく。

そして、最後に一言。

 

 

 

 

 

「バトルシティ決勝の舞台で待っているぞ!」

 

 

 

 

 

そう言って、その場を去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうよ! 集まったならちょうどいいわ! 遊戯、城之内! それにあんたらも! このお馬鹿を説得して頂戴!」

 

和やかにムードが切り替わり、さてバトルシティ決勝の場所へ向かおうというその最中に、舞の怒号がその場を支配した。

何事かと全員の視線が舞と隣の勝利に集まる中で、勝利は一つため息を零した。

 

「いくら説得されたって嫌なものは嫌だよ。僕は舞さんから、パズルカードは受け取らない」

 

「この調子なのよ! いい? さっきの決闘は、まぎれもなくあたしの負けよ! あんたが最後にあたしを助けに入ってこなきゃあ、その時点であんたの勝ちで決着はついていた! だからあんたはこのパズルカードを受け取る権利があるって言ってんのよ!」

 

舞はそう言って、自分の手元にある6枚のパズルカードを勝利に差し出す。

勝利のパズルカードは現在5枚。勝利が決勝に行くために必要なカードは残り1枚。

だというのに舞はすべてのパズルカードを勝利に預けようとしている。

 

それは事実上の、舞の棄権宣言だった。

 

「あたしはもうあんたとバトルシティで戦う気はない。だからもう、このパズルカードは必要ないの。だから、あんたが受け取りなさいって!」

 

「……決勝に行くかどうかは、舞さんの意志だ。舞さんと戦えないことはつらいけど……それは尊重する。でも、決勝の舞台は、自分で勝ち取らなきゃあ意味がない。あの決闘も、僕は『僕と舞さんの決闘』と認めることはできない。だからこそ、そのパズルカードは受け取らない。受け取るわけにはいかないんだ」

 

「~~~~~!!! この強情っぱり!」

 

「なんと言われようが、受け取れないものは受け取れない!」

 

その二人のやり取りを聞いて、本田、御伽、静香はぽかんとした表情を向ける。

そして城之内は意味が分からないといった顔で二人を交互に見て、遊戯と杏子はアハハと頬を掻きながら笑っていた。

 

「……何やってんだこいつら? 舞は6枚集めたのに決勝はいかねえっつってるし。勝利は6枚に足りてねえのにカードはいらねえっていうし」

 

「なんか……あげる方ともらう方が逆みたいな会話ね」

 

「あはは……」

 

唯一、舞の想いと、勝利の誇り。そのどちらもを理解できた遊戯は、苦笑いを浮かべることしかできなかった。

 

 

 

「……でも、勝利君。現実問題として、ここで舞さんからパズルカードを受け取らないのであれば、状況はかなり厳しいよ? タイムリミットは19:00までって聞いてるから、対戦相手を探すのに時間をかけてたら間に合わなくなっちゃう」

 

「そもそもよお。6枚パズルカードを集めた舞が出ないって言ってんだろ? 決勝戦に行くためのパズルカードって、まだ残ってんのか?」

 

本田の純粋な疑問に、決闘者たちは顔を歪ませる。

その問いが、正論であることの証明だった。

 

「……一応、海馬君はグールズをおびき寄せるためにバトルシティの参加条件をわざと緩くとっていた。もう一人の僕が集めたパズルカードのほとんどもグールズから集めたものだし、海馬君の当初の予定よりは数はあるだろうけど……」

 

「まだ残ってるかどうかはわからねーってことか。よお勝利、やっぱり舞からパズルカードもらっちまったほうがいいんじゃねーのか?」

 

「それだけは、絶対にしないよ。とにかく、最後の時間まで足掻いて見せるさ。それで間に合わなかったのなら、僕の実力が足りなかったって言うだけの話だ」

 

 

勝利はそう言って、舞の肩から腕を外す。

一応、足で立つことができているものの、ふらつく足取りは決して勝利が万全でないことを物語っており、全員を不安にさせた。

 

 

 

 

舞がふらつく勝利を引き留めようとしたその時。

埠頭にエンジン音が鳴り響いた。

 

 

 

 

時間、そして立地的にあまりにも場違いなその快音に、皆そろって音の方向に顔を向ける。

そして、その光景にさらに驚いた。

 

 

 

音の発信源は、車。それ自体は予想通り。

しかし問題は、その種類。

 

 

こちらに向かってくるその車は、真っ黒な車体の側面を勝利たちへ向ける。

その側面が、長い長い。全長10mはあろうかというサイズに皆絶句する。

 

初めて見るが、それは紛れもなく、リムジンだった。

 

「な、なんだぁ?」

 

城之内の間の抜けた声に、皆は無言ながらに同意する。

突然の出来事に、何が何やらわからずに固まってしまう。

 

 

 

皆が動けずにいるその間に、リムジンのドアが開く。

 

 

 

中から出てきたのは、スーツ姿の男。

アメリカ系であろう風体に余裕ありげな表情。

その自信に満ち溢れた振る舞いから、彼が誰だかわからないものでも、ただものではないことを予感させた。

 

 

皆があっけにとられている中、その男は悠然とこちらに向かって歩き出す。

いち早く反応したのは……城之内だった。

 

 

「あ……あああ! あんたは……じょ、じょ……ジョン・クロード・マグナム!!?」

 

 

「…………誰?」

 

興奮する城之内と裏腹に、冷めた反応の勝利が首を傾げる。

駆け寄る城之内を通しながら、勝利は振り返って、解答を求めた。

 

「えーっと……多分、ハリウッドスターの名前だったような……」

 

「『忍者シリーズ』っていう映画の主演俳優よね。確か今、日本でも公開が確定してるってニュースになってたわよ」

 

「あいつ、結構ミーハーだからな……」

 

本田が、きらきらとした目をマグナムに向ける城之内に対してあきれ声を漏らす。

 

「……成程。映画なんか見たことないし、家にテレビもないからさっぱり知らなかった」

 

「まっ。あんたはそうでしょうね」

 

「でも……そのハリウッドスターさんが、なんでここに?」

 

最後に続いた静香の言葉が、その場にいる全員の心の代弁であった。

 

しかしそんなことなどどうでもよく舞い上がっている城之内が、マグナムににじり寄る。

 

 

 

「は、ハロー……み、ミーは、ユーのベリーベリーファンで……」

 

 

 

「……」

 

 

カタコト以下ではあるが、必死に自分に会えた喜びを英語で伝える城之内を一瞥もせずに勝利たちの元へ向かってくるマグナム。

 

そしてマグナムは、舞の目の前まで来るとそこで止まった。

 

 

 

 

 

「お久しぶりですね。舞さん」

 

 

「……はあ?」

 

 

 

 

 

舞に対し、バラの花束とニヒルな笑みを向けるマグナム。

それに対して舞は困惑、城之内は興奮、そのほかの皆は何が何やらわからず思考が停止し、そして勝利は……絶句していた。

 

 

「舞さん。約束通り、あなたをお迎えに上がりました」

 

「え、ええ……何のこと?」

 

「すっげぇぜ舞! お前、ハリウッドスターと知り合いだったのかよ!?」

 

「いや、だから人違いだと……」

 

はしゃぐ城之内を諫めながら舞はちらと勝利を見るが、勝利の表情が読めずに一筋の冷や汗を垂らす。

 

「と、とにかく。あたしはあんたと約束なんてした覚えはないのよ!」

 

「ノォー。舞さん。忘れてしまったのですか?」

 

 

そう言いながら、マグナムは語りだした。

 

舞と出会った、その日のことを。

 

 

 

 

 

豪華客船のカジノの一席。

舞は船のディーラーとして、数々の金持ち、ギャンブラーたちを相手にしてきた。

そして……その中に彼、ジョン・クロード・マグナムもいた。

 

舞と、カードで戦うこととなったマグナム。

結果は、当然というか。舞の圧勝。

 

 

そしてマグナムは、舞の強さの虜になったとのこと。

 

 

 

 

「その時に、私は決めました。あなたを、私の妻に迎えるということをね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……妻?」

 

 

 

 

 

 

 

 

その言葉に反応した勝利の、あまりにも低く、静かな、それでいて強い言葉に皆の体が身震いする。

 

しかし、何も気にせぬ様子のマグナムが続けた。

 

「そして舞さん。あなたは言った。『決闘であたしに勝ったら、考えてやる』とね。私はそれから、必死に決闘の腕を磨きました。あなたにふさわしい男になるために」

 

「……そんなこともあったような……」

 

やってしまった。と言わんばかりの表情で、顔に手を当て伏せる舞。

その手をマグナムが握り、舞の手に、一つ箱を置く。

 

そして、その箱をそっと開いた。

 

 

 

 

中にあるのは、指輪。

それも先端に、2カラットはあろうダイヤがあしらわれている。

 

 

 

 

見たこともないレベルの宝石ではあったが、数十万やそこらの高級ジュエリーとすら一線を画す、最高級品であること自体は全員察しがついていた。

 

 

 

「舞さん。今日こそあなたを、ハリウッドへ連れて帰ります」

 

 

 

その言葉は、誰がどう聞いても、本気のプロポーズ。

 

しかし、舞にとって重要なことはそんなことではなかった。

 

 

 

「あのねぇ! 悪いんだけどあたしには……」

 

 

さっさと話しを終わらせようとする舞。

しかし、舞の肩を掴み、まっすぐな瞳を向ける城之内が、舞の言葉を止める。

 

 

 

 

「何言ってんだ舞! ハリウッドスターにプロポーズされるだなんて、お前すごすぎるぜ!?」

 

 

 

 

きらきらとした純粋な視線が、舞に突き刺さる。

しかしその城之内の言葉に舞が、それ以上に、遊戯たちが焦りで顔を歪める。

 

「じょ、城之内君……」

 

「あの馬鹿……何一人で舞い上がってんのよ!?」

 

「お兄ちゃん!」

 

「早いとこあいつを止めろ! じゃねえと!」

 

本田が叫ぶ。

ただ、すでに遅かった。

 

 

 

 

「こんなチャンスもうねぇぞ! 断るなんて勿体ねぇ! 今すぐ結婚

 

 

 

 

 

 

「城之内君」

 

 

 

 

 

「へっ?」

 

 

 

 

 

横から延びてきた手のひらに、城之内は視界を塞がれる。

 

そして次の瞬間に……視界がひっくり変える。

 

 

 

 

 

 

「……ちょっと。黙ってて」

 

 

 

 

 

 

城之内の頭を鷲掴みにした勝利が、そのまま腕を振り下し、城之内を地面にたたきつける。

わけもわからず地面に顔を打って悶絶する城之内を尻目に、勝利が前に躍り出た。

 

あちゃー、という杏子たちの声が、静かに向かい合う二人に響く。

 

 

 

 

 

「……ボーイ。今は大人の時間です。下がってもらえますか?」

 

勝利はその言葉を無視し、舞に渡された箱を閉じて、マグナムに投げ返す。

マグナムはそれを受け取りながら、目を鋭く釣り上げた。

 

「……ボーイ。あなたは」

 

「勝利。ボーイじゃない。黒羽勝利だよ。ミスターマグナム」

 

「……ソーリー、勝利。それで君は、何のために出てきたのでしょう?」

 

「何のこともないよ。言いたいことは、一つだけだ」

 

そう言いながら勝利は、舞の肩を抱き、引き寄せる。

軋む身体の痛みなど、今はどうでもよかった。

 

 

 

 

 

「僕はさっき、舞さんに想いを告げた。そして舞さんは、それに答えてくれた」

 

 

 

 

 

はっきりと、口にする。

マグナムが少しだけ眉を動かした。

 

 

 

 

 

 

「僕は……舞さんの彼氏だ」

 

 

 

 

 

遊戯たちは、絶句する。

静香の「きゃあ!」というはしゃぐ声が静けさに際立ってしまう。

 

勝利が舞を想っていることくらいはわかっている。

だが、思っていたよりも進んでいた現状に、経験の薄い遊戯や杏子が顔を赤くし、本田や御伽が羨ましそうに涙を流す。

 

そして城之内はというと、意味が分からないと言いたげな表情で、地面で胡坐をかいて見上げ固まっている。

 

「……そういうことよ」

 

一言そう返す舞。

しかしマグナムには、怯む様子も落ち込む様子もなかった。

 

「君が……舞さんの彼氏? ふっふっふ。ハッハッハッハッハ!」

 

マグナムが、高らかに笑う。

その笑い声に、勝利より先に隣の舞が不快感を示した。

 

「ちょっと! 何がおかしいのよ!?」

 

「おかしいですよ。舞さん。こんな子供が、舞さんと釣り合うはずはない」

 

その心無い言葉に舞が、遊戯たちが眉を顰める。

そのままの心象を口々に吐いた

 

 

 

「あんたねぇ……」

 

「待ってよ! ほかの人が勝利君と舞さんのことを口出しするなんておかしいよ!」

 

「そうよ。それに、二人は釣り合わなくなんかないわ!」

 

「おうよ! てめぇ! 勝利がどんだけ決闘がつえーのか、知ってんのか!?」

 

 

 

非難の嵐をどこ吹く風という様子で、勝利に閉じられた箱をもう一度開きなおす。

 

「彼に、この宝石を用意する財力がありますか? 生まれは? 職は? そんなぼろぼろのみすぼらしい姿で、舞さんを幸せにすることはできますか? 舞さんに相応しいのは彼ではない。この私です。舞さん。どうか考え直してください」

 

 

 

 

その言葉に、とうとう舞の怒りが沸点を超える。

 

 

 

 

マグナムは、愛する勝利のことを馬鹿にした。

 

 

生まれなど、知ったことではない。

富は……あればあるだけ良いと思っていたことだってあったけど、今やもうどうでもいい。

勝利からもらいたいものなど、すでに貰い尽した。

 

それを知りようはずもないこの男が、勝利に好き放題を抜かすことが許せなかった。

 

 

 

何よりも許しがたいのは、今の勝利を馬鹿にしたこと。

今の勝利の姿を、みすぼらしいと罵ったことを。

 

 

 

(あたしのために……命を懸けてくれた勝利を……こいつは!)

 

 

 

手を構え、一歩前に出る。

この世の中が自分の思い通りに動くと思っている自惚れ屋の男に、一撃をお見舞いしてやらねば舞の心はおさまりが付かなかった。

 

 

 

 

しかし、一歩出た舞を諫めるように勝利が腕を横に伸ばしてさらに前にでる。

 

 

 

 

「……勝利」

 

「ミスターマグナム。あなたのいう通り、僕にはあなたのような財力はない。まだ学生の身分だし、一応苗字は名家のものを借りてるけど生まれも育ちも最悪だ。今の僕がぼろぼろなことだって、否定できやしない。でもね……」

 

 

さらにもう一歩前に出て、マグナムを見上げる。

喧嘩を始めるならもう初撃は回避不可能な距離間で、視線の火花を散らす勝利とマグナム。

 

 

 

 

 

 

 

「舞さんを幸せにできる。僕が、幸せにしてみせる」

 

 

 

 

 

 

舞の頭から怒りの熱が一気に消え、その熱は顔へと移動して真っ赤に染め上げる。

 

その熱が転嫁していくように、遊戯たちも勝利の発言に頬を染める。

 

だが、周りなど気にする様子もなく、マグナムと勝利がぶつかり合う。

 

 

 

「君が、舞さんを幸せに? それは……私よりも(・・・・)といいたいのですか?」

 

 

 

「当然さ。その心だけは、誰にも負けやしない。僕は舞さんと、先の未来を誓った。その先の幸せは、僕が必ず作り上げて見せる!」

 

「わぁ!! 勝利さん、とっても素敵な彼氏さんね! ねぇ舞さん!」

 

「え……えぇ」

 

いつの間にやら二人から離れ遊戯たちの方へ合流した舞が、勝利の追撃と静香の無垢な憧れにさらされ、顔はおろか耳や首裏まで真っ赤に染め上げる。

遊戯たちはといえば、そんな舞を見てか、ヒートアップする勝利たちを見てか、照れが一周して落ち着き始めていた。

 

 

 

 

「……いいでしょう。ならば、君と私。どちらが舞さんを真に幸せにできる決闘者なのか。決闘で決めることとしましょう」

 

 

 

 

いうとマグナムは、車から決闘盤を取り出した。

 

「っ! あなた……バトルシティの参加者なの!?」

 

「KCのランクメンバーじゃないと、手に入らないはずなのに……」

 

「もちろん。私もそのランクメンバーなのですよ。まあ、舞さんを探すために奔走しており、今の今まで決闘することはありませんでしたが」

 

そう言ってマグナムは決闘盤に備え付けられたパズルカード1枚を掲げる。

それを見て勝利は、ニヤリと笑った。

 

 

 

「渡りに船だね。僕のパズルカードは全賭けしてあげるよ。この決闘で勝った方が、決勝トーナメントに進出できる」

 

 

 

「ちょっと勝利!? あんた何考えてんのよ!? 全賭けなんて……」

 

「どのみちここで負けてたら決勝には間に合わないんだから、一緒さ。そもそも、パズルカードがなくたって、この決闘……負けはありえない」

 

 

 

もはや勝利の瞳に、退路は映っていなかった。

それに応えるべく、マグナムの決闘盤が開く。

 

 

「では。まいりましょうか。黒羽勝利」

 

 

「負けないよ。ミスターマグナム!」

 

 

 

 

 

勝利    LP4000

 

「「デュエル!!」」

 

マグナム  LP4000

 

 

 

 

 

 

「僕のターン! "BF-残夜のクリス”を召喚!」

 

 

BFー残夜のクリス

 

闇属性 鳥獣族 星4

 

攻撃力 1900

 

守備力 300

 

BFがいるとき特殊召喚できる

1ターンに1度、魔法・罠による破壊を回避する

 

 

「僕はこれで、ターンエンドだ。さあ、舞さんを倒すために鍛えたというあなたの力、見せてもらおうか!」

 

「もちろん。存分に見せてあげますよ。私のターン! 私は、"忍者マスター HANZO(Ninja Grandmaster Hanzo)”を召喚!」

 

「……成程、忍者デッキ」

 

 

忍者マスター HANZO

 

闇属性 戦士族 星4

 

攻撃力 1800

 

守備力 1000

 

このカードの召喚時、デッキから『忍法』カードを手札に加える

このカードの特殊召喚時、デッキから『忍者』カードを手札に加える

 

 

「HANZOの効果発動! デッキから『忍法(Ninjitsu Art)』カードを手札に加えることができます。私が加えるカードは……"忍法 超変化の術(Ninjitsu Art of Super-Transformation)”!」

 

 

忍法 超変化の術

 

永続罠

 

自分フィールドの『忍者』モンスターと相手モンスターを合体し、

ドラゴン・恐竜・海竜モンスターを変化召喚する

 

 

「このカードは、自軍モンスターと相手モンスターを融合させ、そのレベルの合計以上のモンスターをデッキから新たに召喚する『忍法』カードです」

 

「……成程。忍者デッキっていうのは、多彩な忍術カードで相手を妨害しながら戦う、いわゆる『パーミッション』系デッキなわけか」

 

勝利の発言に、マグナムが目を丸くした後、ふっと笑う。

 

「……さすが。舞さんの彼氏(boy friend)を名乗るだけの実力はあるというわけですね。ですが、あなたのその鳥モンスターの力では、私の忍者デッキを超えることはできないでしょう」

 

「いいや。超えるよ。絶対に、負けられない。彼らも僕も、想いは同じなんだ!」

 

 

 

 

『ファー!』

 

 

 

 

クリスのやる気の一鳴きに、勝利と舞だけが反応した。

 




というわけで、勝利の最終戦。vsジョン・クロード・マグナムです。
アニオリキャラということで、知らない人もいるかもしれません。

舞さんヒロインということで、感想欄でだいぶ前から彼の登場を予感している方もいらっしゃいました。

私としても、こんなおいしいキャラもいないのでぜひ登場をと思っていたのですが、彼のカードのほとんどがオリカということなので、彼には私が大好きなOCG忍者デッキを授けることとしました。

完全オリジナル決闘となりますが、ご了承ください。
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