勝利 LP 2300 手札0枚
ブラックフェザー・ドラゴン
攻 2800
BF-極北のブリザード
攻 1300
伏せカード 2枚
竜崎 LP 1900 手札0枚
タイラント・ドラゴン
攻 2900
遠心分離フィールド
伏せカード 3枚
「"ブラックフェザー・ドラゴン”……なんか、すげえ雰囲気のカードだぜ……」
「『シンクロ』……初めて見る召喚だった」
舞い降りた"ブラックフェザー・ドラゴン”の謎の威圧感に、ギャラリーの皆が圧倒される。
そんな中、遊戯と海馬が、冷静に状況を捉え、目の前に現れた謎のモンスターの情報を整理する。
「……勝利君はあの『シンクロ召喚』とやらを行う前に、ハルマッタンのレベルを操作していた……おそらくあれこそが、シンクロ召喚を行うための『チューニング』とやらの条件」
「……おそらく、黒羽勝利が持つモンスターの謎のテキスト、『チューナー』という特殊な能力を持つモンスターの効果で、レベルを調整して召喚する特殊なモンスター……それこそが、奴の持つ『シンクロモンスター』の召喚条件。"融合”のカードが不要な代わりに、特定モンスターを場に出してレベル合わせすることを要求される召喚方法というわけだ」
「……すごいね。遊戯君、海馬君。教えてもらったわけでもないのに、もうこの子の全容を理解したんだ」
思わず笑った勝利が、遊戯たちに、そして竜崎に解説する。
「その通り。『シンクロ召喚』は、チューナーモンスターとチューナー以外のモンスターをフィールドから墓地に送り、そのレベルの合計と同じになるように『シンクロモンスター』を特殊召喚することが出来る。さっきは自身の効果でレベル5になったハルマッタンに、レベル3チューナーモンスターのスチームをチューニングすることで、レベル8"ブラックフェザー・ドラゴン”が召喚できるようになったっていうわけさ」
言いおわると同時、"ブラックフェザー・ドラゴン"が唸り声をあげ、それを見た"タイラント・ドラゴン"が相対して口から炎を漏らす。
戦う運命に導かれ、昂る二体の竜の姿に、勝利と竜崎の緊張感が高まる。
しかし、そんな空気を壊すように、声が響き渡る。
「ストップだ! 黒羽勝利!」
皆が声の主の方角へ目線を向ける。
その声の主は、磯野。
KCの社員であり、このバトルシティ決勝トーナメントの審判を担うものだった。
「そのモンスターは海場コーポレーションのデータベースに存在していないカード! 違法制作カードの類である可能性を考慮し、そのカードを確認させてもらう! 少しでも不正が垣間見えた場合は、黒羽勝利はバトルシティ参加資格をはく奪とし、この1回戦はダイナソー竜崎の不戦勝と……」
「ひっこんどけや」
「っ!?」
そんな磯野の審判としての判断に、無情な一言を告げる竜崎。
その表情は、笑っていた
「違法カード? 不正? そんなわけないやろ……見りゃあわかるわ……こいつが本物の……勝利のエースや」
「……竜崎君」
知らないカードを使われた。
見たこともない召喚方法で突如現れた。
そんなことなどまるで意に返さず、真っすぐに"ブラックフェザー・ドラゴン"に向き合う竜崎。
それはまさに、強いものと戦い食らいつくさんとする、生存をかけた野生が宿った瞳。
決闘者としての本能のままに、竜崎は戦っていた。
「これで不戦勝になんぞしてみろや。ワイはトーナメントから降りるで。もはや、この先の戦いなんぞどうでもええ……ワイは、こいつに勝つためにここまで来たんや!」
竜崎が、好戦的な笑みで見上げ、"ブラックフェザー・ドラゴン”と目を合わせる。
それを見た"ブラックフェザー・ドラゴン"が、吠える。
その声が、その場に響き、天を突いた。
「……ははっ……そうだよね。僕も、竜崎君に全力をぶつけ、超えるために君を出したんだ」
そういって、ディスクに置かれたカードをそっと撫でる。
そして改めて、竜崎に向き直った。
「し、しかし……この先のトーナメントのためにも公平性を期すための確認は……」
「磯野!」
食い下がる磯野だったが、突如響いた声に体を震わせ、その方向に顔を向ける。
その先には、舞台の下で睨みを効かせる海馬がいた。
「構わん。続けさせろ」
「は、はいぃ!」
その様子に思わず笑った勝利は、海馬に頭を下げる。
「海馬君……ありがとう」
「ふん……貴様の持つそのモンスターの力を、見定めてやろうと思ったまでだ」
もう一つ、クックと笑った後、改めて竜崎に相対する。
竜崎のまっすぐに見つめる目があった。
「……さあ、行くよ! 竜崎君!」
「こいや勝利! だが、お前の"ブラックフェザー・ドラゴン”より、ワイの"タイラント・ドラゴン”の方が攻撃力は上や! まだ負けへんで!」
「まだまだ、これからさ! "ブラックフェザー・ドラゴン”のシンクロ素材として墓地に行った、スチームの効果が再び発動! 自分の分身、スチームトークンをフィールドに残す。そしてさらに、スチームのもう一つの効果発動!」
BF-隠れ蓑のスチーム
闇属性 鳥獣族 星3 (チューナー)
攻撃力 800
守備力 1200
このカードがフィールドを離れる場合、スチームトークンを召喚する
墓地のこのカードは、フィールドのモンスターを生贄に蘇生する
「なんや? まだなんかあるんか?」
「場のモンスター1体を生贄に、フィールドに蘇ることができる! スチームトークンを生贄に、蘇れ! スチーム!」
『ふぁっふぁっ』
生み出した蒸気を貪りながら、スチームがフィールドに舞い戻る。
しかし竜崎はまだ状況が読めず、真剣な表情で勝利の様子を伺う。
(どっかで勝利は、"タイラント・ドラゴン”を超えてくるはず……どこや? どうやって、ワイの力を超える気や?)
竜崎の、場を、流れを理解するための鋭い視線が勝利を差す。
しかし勝利はひるむことなく、連続でカードを発動していく。
「そして墓地に存在する、ゼピュロスの効果発動!」
BF-精鋭のゼピュロス
闇属性 鳥獣族 星4
攻撃力 1600
守備力 1200
フィールドのカードを1枚手札に戻し、墓地からフィールドに戻る
その時、400ダメージを受ける
「スチームを手札に戻して、ゼピュロスを墓地からフィールドに呼び戻す。そして僕はその代償として400ポイントのダメージを受けるが……ここで、"ブラックフェザー・ドラゴン”の効果発動!」
「なんや……何が起こるんや?」
ゼピュロスの体から弾ける羽が、勝利の元へと向かう。
しかし、その間に現れた黒羽の壁がその羽を防ぎ、"ブラックフェザー・ドラゴン”に吸収される。
「"ブラックフェザー・ドラゴン”の効果。自身の体に黒羽カウンターを溜めることで、僕が受けるはずだったダメージを肩代わりしてくれる」
『ぐおおおお!』
ブラックフェザー・ドラゴン
攻 2800 ー 700(黒羽カウンター1×700) = 2100
「おいおい……勝利のモンスターの攻撃力が下がっちまったぜ?」
「あれじゃあ、竜崎の"タイラント・ドラゴン”にはかなわないわ……」
「……いや、違う。あの竜の力は……あの程度じゃあない」
突然現れたモンスターとその効果に、周りの皆が困惑する最中、遊戯は冷静にそう言い切った。
「遊戯……?」
「遊戯……あんた、わかるの? "ブラックフェザー・ドラゴン"の事が?」
「いや……だが、感じる。勝利君のモンスターが発する、底知れぬ力のエネルギーを……」
「……フン」
そっけない態度で、遊戯の言葉をいなす海馬。
しかしその海馬もまた、"ブラックフェザー・ドラゴン"が通常のモンスターと一線を画すカードであるということを感じ取っていた。
(黒羽勝利。貴様にもし、俺たちの神々の戦いの舞台に上がる実力があるとするのであれば……見せてみるがいい。貴様が持つ、その力の片鱗でもな)
勝利 LP 2300 手札0枚
ブラックフェザー・ドラゴン
攻 2100 (黒羽カウンター×1)
BFー極北のブリザード
攻 1300
BF-精鋭のゼピュロス
攻 1600
伏せカード 2枚
竜崎 LP 1900 手札0枚
タイラント・ドラゴン
攻 2900
遠心分離フィールド
伏せカード 3枚
「そしてフィールドを離れたスチームの効果で、再びフィールドにスチームトークンが現れるけど……これはそんなに関係ないかな。さあ、これですべてが整った」
「……ええやろ。これが、ラストや」
竜崎の宣言に、場が張り詰める。
彼らは、このバトルにすべてを賭ける気だ。
たとえ決闘がわからずとも、その闘気が周りの皆にまで、痛いほどに伝わってきた。
「……"タイラント・ドラゴン”さえ倒せば、勝利君の残りのモンスターで、竜崎のLPは十分に削り切れる」
「でも、それは竜崎も同じ。このターンを耐えきり、次のターン"タイラント・ドラゴン”の連続攻撃を仕掛ければ、さすがの勝利でももう耐えきれない」
「ここで……決まるってわけだな」
勝利が笑い、構える。
それに呼応するように、竜崎の手に力が入る。
ほんの数秒見つめ合った後。
勝利の宣言が、響き渡った。
「……"ブラックフェザー・ドラゴン”! 効果発動!」
竜崎は、一瞬反応する。
しかし、それだけ。他はピクリとも動かなかった。
「黒羽カウンターをすべて取り除くことで、フィールドのモンスターの攻撃力を下げ、その下げた攻撃力分だけ、相手にダメージを与えることが出来る!」
「敵の能力を下げつつ、LPにダメージを!?」
「勝利君をダメージから守り、そのエネルギーを相手にぶつけることで攻撃力のダウンと直接攻撃を同時にこなす。なんて力だ……」
"ブラックフェザー・ドラゴン”が大きく翼を広げ、"タイラント・ドラゴン”とにらみ合う。
勝利が、掲げた手を振り下ろした。
「行けっ! "ブラックフェザー・ドラゴン”! 『ブラックバースト』!」
ブラックフェザー・ドラゴン
攻 2100 (黒羽カウンター×1) ⇒ 2800 (黒羽カウンター×0)
タイラント・ドラゴン
攻 2900 ー 700 = 2200
竜崎 LP 1900 ー 700 = 1200
「ぐぅ!」
「よしっ! "タイラント・ドラゴン”の攻撃力が下がったぜ!」
「これで、勝利くんのモンスターで倒せるわ!」
「いっけぇ! 勝利!」
「さあ! ラストバトルだ! 僕は"ブラックフェザー・ドラゴン”で……」
「ここや! 伏せカードオープン! "禁じられた聖杯"を発動!」
「っ!!?」
禁じられた聖杯
速攻魔法
フィールドのモンスター1体を指定する。ターン終了時までそのモンスターの攻撃力を400ポイント上げ、効果を無効化する
"タイラント・ドラゴン"が、突如現れた聖杯の水を一気に煽る。
その瞬間に、"タイラント・ドラゴン"の赤い目の色が、青く変わった。
「"タイラント・ドラゴン”の攻撃力を400ポイント上げる。そして……"タイラント・ドラゴン”の効果をターン終了時まで無効にするで!」
タイラント・ドラゴン
攻 2200 + 400 = 2600
効果無効
「……」
その効果を見て、攻撃宣言しようとしていた勝利が蹈鞴を踏む。
背中が汗で、じっとりと湿るのを感じた。
「……? 勝利のやつ、なんで固まってんだ? たった400ぽっち攻撃力が上がったって、勝利のドラゴンの攻撃力には届かねえのに……」
「本命の効果は、そっちじゃないわ」
言われて、舞の方をみんなで見る。
勝利と同じ真剣な表情で、頬に冷や汗を流していた。
「ただ攻撃力を上げたいだけなら、勝利が攻撃を宣言した時に発動すればいい。でも、竜崎は攻撃より先に発動した」
「おそらく……本命は、次の罠カード」
続きを、遊戯が引き取る。
遊戯もまた、真剣な目で、決闘の行く末を見逃すまいと睨んでいた。
「"タイラント・ドラゴン”には、罠カードを問答無用で無効化する強力な効果がある……が、その効果は強力ゆえに、自分の罠カードすらも無効化してしまう」
「竜崎が"タイラント・ドラゴン”の効果を無効化したのは……自分の罠で、"タイラント・ドラゴン”を強化し、一気に勝利を超えていくため」
ハッとして皆は、決闘に目を戻す。
二人は、動いていない。
しかし、二人の間に錯綜する様々な想い、知略、決意が、見えてくるような気さえしてきた。
("禁じられた聖杯"の効果は、このターン終了時まで。ひとまずこのターンは我慢して、次のターンに託すという選択肢も、あるにはあるが……)
そして、ほんの数秒経った後。
勝利が、口を開いた。
「……バトル、続行!」
「っ!!? 行った!!」
「……まっ、我慢できるわけないわよね」
「"ブラックフェザー・ドラゴン”で、"タイラント・ドラゴン"を攻撃!」
先に、竜崎が動く。
「伏せカードオープン! 魔法カード、"突進"や!」
突進
速攻魔法
モンスター1体の攻撃力を、700ポイントアップ
「これにより、"タイラント・ドラゴン"の攻撃力アップや!」
タイラント・ドラゴン
攻 2600 + 700 = 3300
「これで"タイラント・ドラゴン"の攻撃力が、"ブラックフェザー・ドラゴン"を上回ったわ!」
(しかも、"突進"は魔法カード。竜崎にはまだ、本命の罠カードが残っている……勝利は、カードの発動を誘われている……でも、行くしかない!)
「勝利!」
勝利は舞の声に静かに笑う。
そして大きな声で、宣言した。
「君がどれだけ強くとも、僕は君を超えてみせる! 伏せカードオープン! 魔法カード、"イージー・チューニング"!」
「っ!?」
イージー・チューニング
魔法
墓地のチューナーモンスターをゲームから取り除き、その攻撃力を場のモンスターに加算する
「この効果によって、僕は僕の墓地の、"BFー流離いのコガラシ"をゲームから除外! その攻撃力を、"ブラックフェザー・ドラゴン”に加算する!」
ブラックフェザー・ドラゴン
攻 2800 + 2300(コガラシの攻撃力) = 5100
「こ、攻撃力5100!?」
「す、すげぇ……一気に竜崎のモンスターの攻撃力を上回りやがった!?」
「……まさかあの時コガラシを"手札断殺”で墓地に捨てていたのは、墓地からの特殊召喚を狙っていたのではなく……」
「あの魔法カードで、攻撃力を上げるために墓地に送ってたってのか!?」
「すごい……さすがだわ」
その魔法の効果で体を大きくする"ブラックフェザー・ドラゴン”を見て、舞たちはただただ感嘆の声を漏らした。
「竜崎は、魔法や罠でモンスターを強化し、相手を超えていくのが基本戦術。でも、これだけ攻撃力を上げてしまえば、もはや竜崎に"ブラックフェザー・ドラゴン”を超えなおすことはできない!」
「これで、勝利の勝ちだ!」
「さあ、受け止めてみせろ! 竜崎君! 『ノーブル・パワー・ストリーム』!」
ブラックフェザー・ドラゴン
攻 5100
タイラント・ドラゴン
攻 3300
圧倒的な力で迫りくる、"ブラックフェザー・ドラゴン”の一撃。
しかし、竜崎はまだ、笑っていた。
「受け止める? ちゃうわ。ワイは、お前を超えに来たんや!」
「っ!!?」
「ワイは、お前に勝つ! 黒羽勝利に勝って、もっともっと上にいって見せる! これがワイの、力の全てや! 伏せカードオープン! "魂の一撃”!」
魂の一撃
罠カード
相手モンスターの攻撃宣言時、LPを半分支払い、モンスター1体を選択する
そのモンスターの攻撃力は、ターン終了時まで、自分のLPが4000を下回る数値分アップする
「っ!? "魂の一撃”!?」
「そうや! こいつの効果で、ワイはLPを半分支払う!」
竜崎 LP 1200 ÷ 2 = 600
「そして……自分のLPが4000から下回った数値分……つまり、3400ポイントが、"タイラント・ドラゴン"の攻撃力に加算されるんや!」
「嘘っ!?」
「マジかよ!?」
「……"禁じられた聖杯”は、この一撃のためか……」
「これで"タイラント・ドラゴン”の攻撃力は……」
タイラント・ドラゴン
攻 3300 + 3400 = 6700
「ろ、6700……」
「嘘だろ……」
「これが……竜崎の全力」
その瞬間に、"タイラント・ドラゴン”の体もまた、大きく、力強く膨張する。
その体が、宙を舞う"ブラックフェザー・ドラゴン”に刃が届くまでに至った。
「これが……ワイの全力……ワイの全てや! いけぇ! "タイラント・ドラゴン”!」
"タイラント・ドラゴン”が、宙を舞う。
鋭い動きで、"ブラックフェザー・ドラゴン”の上をとる。
"ブラックフェザー・ドラゴン”も技を構えるが、"タイラント・ドラゴン”の方が早い
そして口を構え、白いエネルギーを"ブラックフェザー・ドラゴン"に向けた。
「これで終わりや! 『渾身のタイラント・バースト』!」
「……僕は……君の力を、超えることはできなかった……」
勝利は、静かに、そう告げた。
「っ!」
「勝利!?」
「勝利君!?」
終わりなのか。
もう、手はないのか。
全員の脳裏に、そんな言葉が過ぎる。
しかし、それを否定するがごとく、自身の声が皆の耳を劈く。
「……まだよ……勝利はまだ、諦めてない!」
舞の叫びに答えるように。
勝利は笑い、ディスクのカードに手を掛ける。
「君を、超えることはできない……でも、それでも僕は、君に勝つ! 君の全力を、全力で迎えうつ! 伏せカードオープン!」
「っ!? 嘘やろ!? そのセットカードは、最初っからずっと伏せられとったはず……」
(本当は……このカードは、使わないでおくつもりだった。"ブラックフェザー・ドラゴン”を使わずに、決闘の決着をつけるつもりだった……でも、無理だったよ。竜崎君。君が強すぎて、そんなことできる余裕がなかった……)
「これが本当の、ラストカード! 罠カード……"BF・アンカー”!!!!」
BF・アンカー
罠カード
「BF」モンスター1体を生贄に捧げる
場のシンクロモンスター1体に、「BF」の攻撃力を加算する
「フィールドの、ゼピュロスを生贄に捧げて効果発動! その攻撃力を、"ブラックフェザー・ドラゴン”に加算する!」
「なんですって!?」
「まだ攻撃力アップを残してたってのか!?」
「……これで、"ブラックフェザー・ドラゴン”の攻撃力は……」
ブラックフェザー・ドラゴン
攻 5100 + 1600(ゼピュロスの攻撃力) = 6700
「ろ、6700……」
「……"タイラント・ドラゴン”と、並んだ……」
ゼピュロスの力をその身に受けた"ブラックフェザー・ドラゴン”が、さらに高く舞う。
そして……"タイラント・ドラゴン”と並びたち、同じように構えた。
「……『全力の、ノーブル・ブラック・ストリーム』!!!!!」
「『渾身の、タイラント・バースト』や!!!!!」
ブラックフェザー・ドラゴン
攻 6700
タイラント・ドラゴン
攻 6700
高く空を舞う2体の攻撃が、中央でぶつかり合った。
ほんの数秒、力の膠着を形にした後、そのエネルギーは保ち続けられることなく、爆散する。
そして……そのエネルギーの煽りをうけ、光が完全に収まったころには……
2体の姿は、フィールドから完全に消滅していた。
勝利 LP 2300 手札0枚
BFー極北のブリザード
攻 1300
スチームトークン
伏せカード なし
竜崎 LP 600 手札0枚
モンスターなし
遠心分離フィールド
伏せカード なし
「……あ、相打ち」
「……ああ。だが、勝利君のフィールドには、まだモンスターが残っている」
「ええ……残っているブリザードの攻撃力は1300。竜崎の残りLPは、600。これで決まりね」
「……結局、ワイはお前を超えることはできんかったっちゅうわけや」
力が抜けきったように腕をだらりと垂らし、そういう竜崎。
しかし、勝利は首を振った。
「そんなことないよ。君は、最高だった」
その表情に、同情や、世辞の類は一切ない。
勝利の心からの想いであるということを感じ取ったからこそ、竜崎は静かに勝利の言葉を聞いた。
「君の使った"禁じられた聖杯”は、相手の効果を無効化することもできるカードだ。つまり、僕のブリザードに発動して、効果を無効化するという選択肢もあったはずだった」
その言葉に、遊戯と舞がはっとする。
「……確かに、勝利君のブリザードの効果を無効化し、勝利君のBFの展開を阻止するという選択肢はあり得る選択だった」
「でも……勝利の伏せカードが"イージー・チューニング”であった以上、それでは勝利は止まらない……」
「そう。その場合、"タイラント・ドラゴン”の効果が無効になっていないから"魂の一撃”は発動できず、僕は"ブラックフェザー・ドラゴン”を出すことなく、"タイラント・ドラゴン”を倒し、決闘に勝利することが出来た。でも、君はそれをしなかった。"タイラント・ドラゴン”で僕を全力で超える選択をとってくれた……」
勝利は胸に手を当て、軽く頭を下げる。
対戦相手である竜崎に対する、最大限の敬意を表していた。
「君の選択が、僕のエース、"ブラックフェザー・ドラゴン”を呼び寄せた。君の全力が、僕と"ブラックフェザー・ドラゴン”の全力を引き出してくれた。君じゃなかったら、僕はこんなぶつかり合いはできなかった。君じゃなかったら、僕の"ブラックフェザー・ドラゴン”と正面からぶつかり合い、倒すことはできなかった」
そして、勝利は一点の曇りもない満面の笑みを、竜崎に向ける。
「ありがとう、竜崎君。最高に楽しい決闘だった!」
それは、勝利にとっての、最大の賛辞だった。
竜崎は、ふっと笑う。
「……全力を出し切った上で、届かんかったんや。結果に、なんの文句もない。ワイの負けや……が、一個だけ、気に入らんことがある」
そういうときょとんとする勝利を尻目に、竜崎は場を指さした。
その指の先にいたのは……"BF-極北のブリザード”。
「……ワイは、またそいつに負けなあかんっちゅうところや」
『ぴっ!? ぴー! ぴー!』
「……クックック」
面白さをこらえきれない、とばかりに笑いを零した勝利が、最後を宣言をした。
「……ブリザードで、竜崎君にダイレクトアタック。『アイシクル・ショット』!」
『ぴー!』
BFー極北のブリザード
攻 1300
竜崎 LP 600 ー 1300 = 0
「そこまで! 勝者、黒羽勝利!」
「ホレ。アンティカードや。ワイに勝ったんやから、どうせなら優勝しや。そうすれば、お前にリベンジするときについでにNo1になれて、好都合や」
「クックック。ありがとう。頑張ってくるよ」
そういって二人が、決闘場の中央で握手を交わした。
「……すごい決闘だったね。兄サマ。見たこともないモンスターを出しやがった勝利と、それに肉薄したダイナソー竜崎……兄サマ?」
「……」
モクバの素朴な感想に一言返すこともせずに、海馬は決闘場を後にする。
「ま、まってよ兄サマ!」
モクバが声をあげながら、海馬の後を追って室内へ消えていった。
「……本当に、すごい決闘だったわね」
「ああ。勝利も竜崎も、とんでもねえぜ!」
「僕は決闘についてはそこまで詳しいわけじゃないけど、それでも、思わず手に汗握っちまったよ」
「ねえ! 決闘って本当にすごいのね! ね、お兄ちゃん……お兄ちゃん?」
「……遊戯?」
海馬と同じく、決闘場の二人を無言で見つめている遊戯と城之内に、杏子や静香、感想を述べていた本田や御伽たちが不思議そうな表情で二人の顔を見る。
やがて二人は顔を伏せ、海馬と同じように声も上げずに飛行艇の室内へと戻っていった。
「……なんだってんだ? あいつら……?」
「……あんたら、部屋ないんでしょ? この後は勝利の部屋に集まってな。遊戯や城之内の部屋には、行かないでおきなさい」
「……舞さん? どうして?」
「簡単よ。あいつらはもう今の決闘を見て、決闘者になっちゃってる。そうなったら、外野があーだこーだ言っても、邪魔にしかならないわ」
(……"ブラックフェザー・ドラゴン”……未知なる新しい召喚、『シンクロ召喚』……面白い)
(……すさまじい決闘だった。決闘者としての闘争本能が、無理やり引きずりだされるほどに)
(……クッソ。俺も遊戯と、あんな決闘ができる決闘者になりてぇ……強くなりてぇ!)
舞は、無意識に握りこんでいた拳を開く。
汗が、じんわりと広がっていた。
(……気持ちはわかるわよ。遊戯、城之内……それに海馬。あたしも正直、少しだけ出場辞退を後悔しちゃったもの……今すぐ、決闘がしたい。そんな思いが、あたしの中で燃えだしたのを感じる)
でも、それでも。今はいい。
今の自分には勝利と向かい合う以外の、別の役割がある。
そう心に言い聞かせ、顔を上げる。
目の前には、決闘場から降りてきた勝利が、さわやかな顔でそこにいた。
「……お待たせ。勝ったよ」
その笑顔を見た舞は、そっと抱きしめる。
「……おバカ。"ブラックフェザー・ドラゴン”は、使うなって言ったでしょ」
「……うん。ごめんね」
そんな勝利を、舞が優しく、そして強く抱きしめる。
(……ありがとうね。竜崎。勝利と、好敵手でいてくれて)
絶対に口には出してやらないけど。
そんなことを考えながら、もう一度、勝利にいう。
「お疲れ。そして……おめでとう。勝利」
「うん」
バトルシティ、決勝トーナメント1回戦
黒羽勝利 VS ダイナソー竜崎
勝者 黒羽勝利
NO.1 ナム(マリク)
NO.2 マリク(リシド)
NO.3 海馬瀬人
NO.4 獏良了
NO.5 黒羽勝利 〇
NO.6 城之内克也
NO.7 武藤遊戯
NO.8 ダイナソー竜崎 ×
「……まさか……千年アイテムも持ってねえ男が、このミレニアムバトルの舞台に上がってくるとはな……」
『言っただろう。見ておけとな。よかったなバクラ。初見で戦ってたら、危なかったんじゃないのか?』
「ほざけ。あの程度の特殊モンスター程度、俺様のオカルトデッキで葬ってやるさ……当然、遊戯もな!」
決闘者の想い。
そして、それ以外の悪意が、夜の空に渦巻いている。
バトルシティ、決勝トーナメントは、始まったばかりだった。
たった1ターンの交錯に1話使うのもあれなので前回で納め切りたかったのですが、どう削っても20000字を超えるので、ならいっそ分けようとなった次第です。
この話は私がこの小説を思いついたときに、舞(洗脳)vs勝利の結末の次に思いついた決闘になります。
ここまで続けることが出来たのは応援してくださる皆さんのおかげにほかなりません。
これからも、遊戯王~黒き羽根は夢に舞う~をどうぞご愛顧のほどよろしくお願いします。
余談
先に前書きで宣言していた通り、これからはバンバンシンクロ/チューナー関連のカードも使っていきます。
展開的に勝利がシンクロサポートを持っているのはどう考えても不自然なのですが、そんなことを気にしていたらせっかくのブラックフェザー・ドラゴンにシンクロサポートが使えなくなってしまってもったいないので、無理なく使えるカードはどんどん使っていきます。
この小説の隠れ目標は、
全BFモンスター、BFサポートカード使用するまで続ける
です。
閃こう竜 スターダストを手に入れた遊星が突然スターダストサポートを使いまくるようなものだと思って納得いただければと思います
ノア編は必要だと思いますか?
-
ぜひ書いて欲しい
-
さっさとバトルシティ完結した方がうれしい