しかしバトルシティ完結後に書くか先に書くかは未だ検討中。
1番のネックはやっぱ長くなりそうなことですね。
「マリク。俺は貴様らのオカルトグッズを巡る因縁などという非ィ現実的な世界になど興味はない……俺が求めるのはこのバトルシティの頂点の称号、『決闘王』の称号のみ!」
「……」
「貴様にはその踏み台になってもらうぞ……俺が3枚の神を従え、この戦いの頂点に立つための踏み台にな! フハハハハハハ!」
天空決闘場に吹きすさぶ、裂くような風をもろともせずに、海馬は対面するマリクを名乗る男にそう宣言する。
それを聞き、マリクは笑った。
『そうはいかないよ……神のカードを手に入れ、お前ら全員を葬り去る。永遠というなの闇の彼方へとな……わかっているな。リシド』
(……はい。マリク様)
「いっけー! 兄サマ!」
全力で応援するモクバの横で思案顔で黙りこくっている遊戯。
それを見て、城之内たちは不安げに遊戯の顔を覗き込む。
「おいおい……どうしたよ遊戯?」
「どっち応援すりゃいいかわかんねーのか? そりゃ、海馬はいけすかねえところはあるけどよ……さすがにマリクを応援するってことはねえだろ?」
「黙れ凡骨。貴様の応援など道端の石ころほどの価値もない。当然、遊戯のもな」
「な、なにぃ! てめえなんぞ負けちまえ!」
「城之内……」
怒る城之内や呆れる杏子を無視して、海馬は言葉を続ける。
その先にいるのは……遊戯と勝利だった。
「遊戯。勝利。よく見ておくがいい。神のカードと、『決闘王』の称号を賭けたこのバトルシティトーナメント! 貴様らと戦う前に、この目の前の戦いで絶対的な決闘を見せつけてやる!」
そう宣言し、相手に向き直る海馬。
以前思案顔の遊戯であったが、その横で宣言を聞いていた勝利は、静かに心を震わせていた。
(……君の言う、神々の戦い。そして……『決闘王』を決めるための戦いの舞台に、僕は上がれた……上がったことを、認めてくれたんだね)
海馬瀬人。
遊戯と肩を並べている、唯一にして絶対の決闘者。
その彼が、自分を認め、自分と戦う舞台に上がろうとしてくれている。
そのことが、勝利は嬉しかった。
勝利は胸をどんとたたき、海馬に拳を突き上げる。
「……勝てよ! 海馬君!」
「……フン」
「……んで。遊戯。お前はいったい、何を考えて黙っとるんや?」
竜崎が、海馬の言葉によって消えかかっていた当初の会話に引き戻す。
「城之内やないんや。海馬を応援したくないなんて器のちっさい話やないやろ?」
「だ、誰の器がちいせえってんだこの野郎!?」
「落ち着け城之内。本当の事だろうが」
「やかましい!」
「んで? どうなのよ」
舞も追加するように詰める。
しかし、それでも遊戯は眉間に皺を寄せたまま、黙りこくる。
「遊戯……?」
「……遊戯君は、どう思ってる? あの、『マリク』のこと」
「っ!? 勝利君」
「……やっぱり、遊戯君も感じてるんだね」
「……あんたらの感覚は本当に……」
呆れたように言う舞に対し、勝利は笑う。
遊戯もそれにつられて、ほんの少しだけ表情を崩した。
「……正直、わからない。実力者であることは、奴の激しい闘気だけで十分に感じ取れる。だが、奴が本当にマリクなのか、俺はまだ図りかねている」
「僕も同じさ。だからこそ、僕たちはこの戦いを、見なければいけない。海馬君を信じて、この戦いを見定めなければいけないと思う」
「……ああ」
そんな二人の心配をよそに、海馬は高らかに腕を上げた。
「決闘開始の宣言をしろ! 磯野!」
「はっ……はい! 決闘開始ー!」
海馬 LP 4000
「デュエル!」
マリク(リシド) LP 4000
「俺のターン! 俺は、"X-ヘッド・キャノン"を召喚!」
X-ヘッド・キャノン
光属性 機械族 星4
攻撃力 1800
守備力 1500
X、Y、Zで変形合体する
「俺はこれで、ターンエンド! さあ、マリク! 貴様の力を見せてみるがいい!」
「私のターン……私は、"王家の神殿"を発動!」
王家の神殿
永続魔法
罠カードを伏せたターンに発動できる
"聖獣セルケト"の住みかとなり、その力を与える
男の背後に、巨大な神殿が現れる。
様々な文字、歴史を模した抽象画が刻まれた壁。
そして祭壇にまつられた、黄金の聖櫃。
異様なフィールドが、海馬の目の前に展開された。
「ふぅん。大仰な演出だな」
「……このカードの効果により、私は1ターンに一度、罠カードをセットしてすぐに発動できる」
「罠の速攻化やと!?」
「強力な効果ね……」
舞たちがカードの効果に感嘆の声を漏らす中、遊戯と勝利は冷や汗を流しながら、同じ場所を向いていた。
「……勝利君。気づいているか」
「うん……あのカード。いやな感じがする。多分、罠のサポートだけのカードじゃあないね」
「私は、カードを1枚セットし、"王家の神殿"によって即座に発動。"トラップトリック"」
トラップトリック
罠カード
デッキから罠カードを除外し、その罠カードと同じカードをデッキからセットできる
「このカードの効果によって私は、"次元幽閉"のカードをセット」
次元幽閉
罠カード
攻撃宣言したモンスターを、時空の裂け目に引きずり込む
「……"トラップトリック"に、"次元幽閉"。これって……」
「ああ。おそらくあの『マリク』のデッキは、罠カードデッキ」
「私はさらにカードを2枚伏せ、ターンを終了する」
海馬 LP 4000 手札5枚
X-ヘッド・キャノン
攻 1800
リシド LP 4000 2枚
モンスターなし
王家の神殿
伏せカード3枚(次元幽閉)
「……モンスターも出さずに、明らかに誘っているわ」
「うん……"次元幽閉"は攻撃モンスター1体をフィールドから除外するカード。複数体のモンスターで攻撃すればダメージは通せるけど……」
「3枚の伏せで、攻撃が通る保証はどこにもないっちゅうわけや。どいつもこいつも、回りくどい決闘しとんな」
「……真っすぐ突っ込むしか脳がない、あんたや城之内みたいなのが生き残ってる方がおかしいのよ」
「「なっ! なんだ(や)と~!?」」
「ま、まあ、二人の事はさておいて……海馬君なら、そう簡単に引っかかりはしないとは思うけど……」
「だが、これだけあからさまじゃあ海馬も攻めるに攻められない。慎重な決闘になりそうだぜ……」
「俺のターン! 俺はさらに、"Y-ドラゴン・ヘッド"を攻撃表示で召喚!」
Y-ドラゴン・ヘッド
光属性 機械族 星4
攻撃力 1500
守備力 1600
X、Y、Zで変形合体する
「……合体属性を持ったモンスター……遊戯君、君の『磁石の戦士』に近い能力だ」
「ああ。あれはおそらく、海馬の神のモンスターのために構成された、速攻召喚用モンスター」
「なるほど……神のカードの召喚に必要な生贄は3体。海馬はあのカードを神の生贄にしようとしているのね」
「せやけど、3体の生贄そろえるんを、罠カードデッキが許してくれるとも思えへん。いくら神いうても、生贄自体はただのモンスターや。いくらでもやりようはあんで」
「……『マリク』のあからさまな罠は、そういう行動抑制のための効果もあるのかもね」
「……すごい。遊戯さんたち、もう海馬さんたちの決闘の事を理解しているのね。決闘者ってすごいわね! お兄ちゃん!」
「おっ、おうよ! これくらい、決闘者なら当然ってもんよ! (は、話が高度でついていけねえ!)」
「……城之内、お前……」
静香の言葉に返した城之内の言葉に、呆れや失笑が零れる。
しかし、マリクのターンが動き出したことで、空気が即座に引き締まった。
「私のターン。私は伏せカード、"無謀な欲張り"を2枚発動」
無謀な欲張り
通常罠
自分はデッキから2枚ドローする
その後の自分ドローフェイズは2回スキップされる
「1枚につき、カードを2枚ドロー。よって合計、4枚ドロー。その後、私のドローは2回スキップされる。そしてカードを1枚セットし、"王家の神殿"の効果によって即時発動。3枚目の"無謀な欲張り"。これでさらに2枚ドロー」
「……なるほど。うまい」
一気に増えた『マリク』の手札を見て、勝利が口を零した。
「ん? どういうことだ勝利。確かにあの野郎、手札を一気に増やしたけどよ。要はこの後のドローの前借をしただけってことだろ?」
「考え方は近いんだけどね。あのカードには、抜け道があるのさ。僕も使うカードだから、その性質はよく知ってる」
勝利は自分のデッキから、"無謀な欲張り"を抜き出し、皆に見せる。
「このカードは、確かにドローした後、2回ドローをスキップする効果。でも、この効果はカウントアップでスキップ回数が増えていくわけじゃあない。飽くまで、『次のドローフェイズを2回スキップする』効果なんだ」
「……? つまり?」
城之内たちがいまだ頭にはてなを浮かべる中、気づいた舞がはっと声を出す。
「そうか! あのカードは、スキップのターンが重複するのね!」
「そういうこと。1ターンに何枚"無謀な欲張り"を発動しても、飛ばされるドローは2回だけ。つまり『マリク』は、2回のドローフェイズのスキップを犠牲に、6枚のドローを手に入れることが出来たってわけさ」
「なるほど……本来なら伏せてから1ターン立たないと発動できない罠カード故に、同時に何枚も発動するのは至難の業だが、"王家の神殿"の効果を使えばそれも可能というわけか」
「うん……罠デッキである以上、1ターンに伏せられる罠の数は最重要。それをわかっているからこそ、奴はそうやって手札を稼いだ……奴は、強いよ」
勝利が解説を締めくくる。
決闘の理解が及んでいなかった者たちも、『マリク』が掛け値なしの実力者であるという事実を理解した。
「さらに伏せカードを2枚セットし、ターン終了」
海馬 LP 4000 手札5枚
X-ヘッド・キャノン
攻 1800
Y-ドラゴン・ヘッド
攻 1500
リシド LP 4000 手札5枚
モンスターなし
王家の神殿
伏せカード3枚(次元幽閉)
「それでも、モンスターを出さない……」
「あくまで、海馬君の攻撃を狙い打つ罠戦術のデッキってことか」
「……これじゃあ、海馬は動けない……」
決闘の先行きを不安視するギャラリーをよそに、海馬はカードを1枚引き、笑う。
「ふっ。マリク、貴様の戦術など、俺の華麗なる決闘の前ではガラス細工同然!」
「……」
自信に満ちた海馬の宣言に、勝利たちは動揺する。
「……まさか海馬君。攻め込む気なのか?」
「相手の伏せは3枚。その3枚は、高確率で全て妨害罠カード……」
「攻撃が通るはずないわ」
「1枚ずつ使わせていこうっちゅう腹か?」
竜崎の言葉に、勝利は納得しかける。
だが、自分の心は、素直にそれに頷こうとはしていなかった。
(……海馬君の言葉。海馬君の瞳。あれは、コツコツと対処していこうなんて言う、甘い思考から来るものじゃあない!)
「行くぞマリク! 俺は、場の2体のモンスターを生贄に捧げる!」
「なにっ!?」
「2体生贄って!」
「……まさか」
「現れるがいい! 俺のプライド、そして俺の魂! "青眼の白龍"!」
青眼の白龍
光属性 ドラゴン族 星8
攻撃力 3000
守備力 2500
『ぐおおおおお!』
その龍の唸り声が、場の空気を制圧したように見える。
それは雄々しく、猛々しく、神々しく、その場に降り立った。
「……海馬君の"青眼”。やっぱり、すごい……」
勝利の言葉に、舞は静かに頷く。
(……カードの精霊という存在を理解したからこそ、わかるわ……勝利が、海馬の"青眼の白龍"に特別に興奮していた意味が……ただのモンスターとは、圧倒的に違う。海馬の力をそのまま身に現したみたいな強い意志を、カードからひしひしと感じる)
「でも……」
「……兄サマ」
海馬のエース、"青眼の白龍"がフィールドに現れたというのにみんな、モクバでさえも、表情は晴れはしなかった。
(たとえ"青眼の白龍"であっても、相手の罠を回避することはできない……海馬君、どうするつもりなんだ……)
空気が張り詰めていく。
しかし、そんな中でも海馬は変わらぬ調子で不遜に笑う。
「……フハハ! 俺は手札より、"巨竜の羽ばたき”を発動!」
「……そのカードは」
「っ! なるほど!」
巨竜の羽ばたき
魔法カード
レベル5以上のドラゴンモンスター1体を手札に戻し、その羽ばたきでフィールドの魔法・罠カードを全て破壊する
「このカードの効果によって、ブルーアイズを手札に戻し、貴様のフィールドの魔法・罠カードをすべて破壊する! ゆけっ! ブルーアイズ! 『撃滅のバースト・ウィング』!」
その宣言とともにブルーアイズがもう一声高らかに叫び、海馬の元へ舞い戻る。
そうして生まれた羽ばたきによる突風が、『マリク』のフィールドへと襲い掛かる。
『マリク』は表情を変えず、1枚のカードを開く。
「……魔法カウンター罠カード発動! "アヌビスの裁き”!」
アヌビスの裁き
カウンター罠
手札を1枚捨て、フィールド上の魔法・罠カードを破壊する効果を持つ魔法を無効にし破壊する
その後、相手モンスター1体を破壊し、モンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える
「手札を1枚捨て、相手の、『魔法・罠カードを破壊する』魔法カードを無効にし、破壊する!」
そのカードから現れたエジプトの神を司りし犬の頭部が一吠えすると、ブルーアイズが巻き起こした風がそっと静まり、場の状況が戻る。
海馬 LP 4000 手札5枚(青眼の白龍)
モンスター無し
リシド LP 4000 手札4枚
モンスターなし
王家の神殿
伏せカード2枚(次元幽閉)
「ふぅん。カウンター罠か。まあ、そんなところだろうな」
「……」
余裕そうな表情の海馬に対し、『マリク』の表情は未だ変わりはしない。
「なんでぇ、海馬の野郎。せっかく発動した罠除去のカードが無効化されたっつーのに、笑ってやがる……」
「いや。今のターンの海馬君は、見事だったよ」
城之内が勝利の方を向くと、勝利は笑っていた。
愉快なものを見つけた。と言わんばかりの、少年のような笑みだった。
「……どういうことだ? 勝利君」
「"次元幽閉”が伏せられていた以上、海馬君は攻撃はできない。だからまず海馬君は、『マリク』を攻撃するために、罠カードを破壊しなければならない」
「……だから海馬は先に魔法カードを発動して、罠カードを破壊しようとした」
「でも、失敗やったんやろ? なら、うまくいってへんやないか?」
「いや。海馬君はそれが失敗することも想定していた。だから、『巨竜の羽ばたき』なんだよ」
勝利は、にやついた顔で海馬を見た。
海馬は勝利に一瞥もせずに、自身の手札と向き合う。
「『マリク』が発動した"アヌビスの裁き”は、魔法を無効にした後にモンスターを破壊し、相手にダメージを与える効果がある。もしも海馬君が何も考えずに除去魔法を発動したら、海馬君は大ダメージを受けることになった」
「っ!!? "巨竜の羽ばたき"で、モンスターを手札に戻しながらカードを破壊することで、『マリク』にカウンター罠カードを使わせながら、自身のダメージを防いだ……」
「うん。海馬君は、そこまで想定してた。じゃなきゃ、モンスターの展開方法が不自然だ。普通、罠カードを破壊した後は攻撃を仕掛けたいわけだから、このターンはモンスターを召喚して、生贄を準備してから次のターンに攻めるべきだ。どうせ『マリク』にドローはないから、このターンに状況が変わりはしないしね。でも、海馬君はこのターンに"巨竜の羽ばたき"を発動した」
「……フィールドのモンスターを減らしたタイミングで除去カードを発動したかったっちゅうわけか」
大したもんや。と締めくくる竜崎の言葉に、皆が同意した。
(……くそっ。悔しいが、やっぱり海馬の野郎も、遊戯や勝利と同じレベルの決闘をしてるってことかよ……負けねえぞ絶対に!)
「カードを1枚セットし、ターンエンド」
海馬 LP 4000 手札4枚(青眼の白龍)
モンスター無し
伏せカード1枚
リシド LP 4000 手札4枚
モンスターなし
王家の神殿
伏せカード2枚(次元幽閉)
終了を宣言した海馬が腕を組む。
LPはまだ同じ。
カードやフィールドも大幅な差はない。横並び。
だが、海馬と『マリク』の間には、明確な壁が存在した。
「……貴様が本当に神のカードの所有者だというのであれば……見せてみろ。貴様の実力とやらをな」
「っ!? 海馬……」
「海馬君……まさか……」
(勘づいているのか……奴が、本物のマリクではないという可能性に……)
オカルトなど信用してはいない。
城之内や舞の姿を見ても、千年アイテムの力を心の底から認めようとはしない。
自分の信じる未来のみを信じ戦う男。
それこそが勝利が知る、稀代の決闘者、海馬瀬人だった。
(遊戯君が、千年パズルによる感覚で。僕が、精霊の力による直観力でうっすらと掴み始めた事実に……彼は、己自身の、決闘者としての絶対感覚のみでたどり着こうとしているというのか?)
何を根拠にするでもない。
自分と対等な、神のカードを扱う決闘者の一人が。
この程度の実力であるはずがない。
その一つの事実だけで。
目の前にいる決闘者を、自分の中に存在する鋼鉄の物差しで、器ではないと判断する。
「……クックックックック」
「……? 勝利」
「面白すぎるぜ。海馬君。遊戯君や城之内君とも違う。彼もまた、特別な決闘者だ。良くも、悪くもだけどね」
「……?」
「……いいだろう。海馬瀬人。望むのならば見せてやろう。このマリクの決闘を!」
「……ふぅん。少しは気概を持っているか」
不遜な態度を崩さぬ海馬に、『マリク』もまた、自分の姿勢を崩さぬに向かい合う。
(リシド……あんまり失望させるなよ?)
(……マリク様。心配は無用。海馬瀬人は必ず、私が始末します)
「私のターン。"無謀な欲張り”の効果で、ターンはスキップされる……が、私には十分な手札がある」
『マリク』はカードをセットし、"王家の神殿”の効果で、即座にカードに手を掛ける。
「罠カードを攻略し、モンスターを不用意に出さなければ、ダメージを受けないとでも思ったか?」
「……」
海馬は眉一つすら反応しない。
だが、『マリク』のターンは進む。
「お前の想像通り、私のデッキはその大半が魔法・罠カードで占められている……だが、モンスターカードを補う効果を持つ罠カードが存在していたとすれば?」
「っ!? モンスターカードを補う、罠カード!?」
「なんだ、そのカード!?」
「……おそらく、永続系カードの亜種……でも、そんなカード初めて見る……」
「まさか、罠カードの発動とともに、モンスターとして召喚されるってこと!?」
「今見せてやろう! 伏せカードオープン! 罠モンスターカード! "アポピスの化身”!」
アポピスの化身
罠カード
このカードは発動したとき、フィールドにモンスターとして召喚される
攻撃力 1600
守備力 1800
「さらにもともと伏せてあったカードも同じく、"アポピスの化身”! よってフィールドに、2体の"アポピスの化身”が召喚される!」
アポピスの化身×2
罠モンスター
地属性 爬虫類族 星4
攻撃力 1600
守備力 1800
突如現れた『マリク』のモンスターに、皆驚愕の声を上げる。
「い、一気に2体のモンスターだと!?」
「しかも、本来出だしの遅い罠カードの欠点も"王家の神殿”でカバーしとるから、モンスターの速攻召喚が可能になっとる……なんちゅう戦術や!」
「……覚悟を決めよ。海馬瀬人」
海馬 LP 4000 手札4枚(青眼の白龍)
モンスター無し
伏せカード1枚
リシド LP 4000 手札3枚
アポピスの化身×2
攻 1600
王家の神殿
伏せカード1枚(次元幽閉)
「海馬のフィールドにモンスターはいねえ……」
「アポピスの攻撃力は1600。2体で3200……」
「海馬君のライフの、ほとんどが削られちゃうわ!」
「バトル! "アポピスの化身”で、海馬瀬人にダイレクトアタック!」
アポピスの化身×2
攻 1600
海馬 LP 4000
2体のアポピスの剣が、海馬の眼前に迫る。
「兄サマ!」
モクバが、不安げな声を上げる。
皆も突然の海馬のピンチに、思わず顔を背けようとする。
しかし、勝利は笑みを崩さずに、その姿を見届けた。
(……このターンは、『マリク』を見定めるために君が用意したターン……そう簡単に、受けるはずはないよね)
「伏せカードオープン! "攻撃の無力化”!」
「っ!」
攻撃の無力化
カウンター罠
すべての攻撃は時空の渦に飲み込まれ無効となる
アポピスの斬撃が、海馬に届くすんでのところで、異空間へとつながり消えていく。
攻撃の権利を失ったアポピスたちは、下がることしかできずに『マリク』の元へと戻っていった。
「……カードを1枚セットし、ターンエンド」
海馬 LP 4000 手札4枚(青眼の白龍)
モンスター無し
伏せカード無し
リシド LP 4000 手札2枚
アポピスの化身×2
攻 1600
王家の神殿
伏せカード2枚(次元幽閉)
(……罠モンスターはモンスター化した後も罠としてフィールドに残り続ける。魔法・罠フィールドが埋まってしまったことで、"天罰"のカードを伏せることは叶わなかったが、フィールドはすでに盤石。そして最後のこのカードは、使うまでもあるまい)
「ふー……あぶねえ、何とか耐えきりやがったぜ」
「……なんや。結局海馬を応援しとんのかいな」
「だ、誰が!」
「もういいっつーの! しかし……海馬が追い詰められてることには変わりないわね」
「ああ……依然、"次元幽閉"によって攻撃は封じられている。『マリク』のフィールドには、罠モンスターが2体。"攻撃の無力化”は一度使えば消えてしまうから、次のターンの攻撃は耐えられない……」
「だ、大丈夫さ。兄サマならあんな蛇野郎、すぐに蹴散らしてくれる!」
「うん。僕もそう思うよ」
モクバの妄信的言葉に一も二もなく同意する勝利に、皆が顔を少しだけ歪ませて顔を向けた。
「勝利……」
「……おいおい勝利。またそれかよ。お得意の勘ってやつか?」
「……勝利君の勘って当たっちゃうから、ちょっと聞くの怖いのよね……」
杏子が苦笑いしながら、勝利の言葉に難色を示す。
「まあ。ほとんど勘だけどね。でも、遊戯君を信じた時よりも、根拠と確信があるよ」
「ほー。言ってみろや。どうせいうだけならただや」
未だこの手の話題については海馬に並んで信用しきれていない竜崎が、半信半疑といった様子で勝利に先を促す。
そんな竜崎を笑いながら、勝利が言う。
「単純な話さ。海馬君は、力を見せてみろと『マリク』に促した。海馬君は僕や竜崎君と違って、全力で戦うことそのものを楽しんでいるわけじゃない。絶対的な勝利至上主義者だ」
勝利は言いながら海馬を見る。
目の前のフィールドを危機や試練などとは微塵も考えていない。
その姿はまさに、『海馬瀬人』だった。
「……ってことは、つまり。海馬君にはすでに、『マリク』の全力を超えるだけの道筋が、思い描けているということさ」
「俺のターン! ドロー! 俺は、"天使の施し”を発動!」
天使の施し
魔法カード
デッキからカードを3枚引き、手札からカードを2枚捨てる
「カードを3枚引き、その後2枚を墓地へ捨てる」
「手札入れ替えか……」
「"青眼の白竜”を手札に戻したから、それのリフレッシュのためだろうね」
そして入れ替わった手札を見た海馬が、一つ鼻を鳴らした。
それだけで、彼の自信はありありと伝わってくる。
(……仕掛ける気だね)
「俺は手札から、"サンダー・ドラゴン”の効果を発動!」
サンダー・ドラゴン
光属性 雷族 星5
攻撃力 1600
守備力 1500
手札から捨てることで、サンダー・ドラゴンは分裂する
「手札からこのカードを捨てることで、デッキから"サンダー・ドラゴン”2枚を手札に加える! そしてそのまま、"融合"を発動!」
「……成程。海馬君は、"融合"の手札消費をそうやって抑えて来たか」
融合
魔法カード
決められたモンスター2体以上を融合する
「このカードによって、手札の"サンダー・ドラゴン”2枚を融合する! 雷鳴と共に現れよ! "双頭の雷龍”!」
フィールドに現れた2体の"サンダー・ドラゴン”がぶつかり合い、その雷を共鳴させるように高めあい、やがて一つに混ざりあう。
現れたのは、圧倒的電気の力を携えた、新たなドラゴンだった。
双頭の雷龍
融合モンスター
サンダー・ドラゴン + サンダー・ドラゴン
光属性 雷族 星8
攻撃力 2800
守備力 2100
「い、いきなり攻撃力2800のモンスターが出てきやがった!?」
「しかも手札消費は最低限だね」
「すげぇ! さすが兄サマ!」
「……だが」
場を見守る遊戯の表情は優れない。
それもそのはず。
罠戦術を得意とする『マリク』が、こんな召喚を簡単に良しとするはずはなかった。
「甘い! 伏せカード発動! "底なし落とし穴”!」
底なし落とし穴
罠カード
モンスターが召喚された時、そのモンスターを裏側守備にする
そのモンスターは落とし穴にはまり、守備を固定される
フィールドに足を下そうとしたその瞬間に、フィールドの一部が沼地となり、"双頭の雷龍”が足を取られる。
「"底なし落とし穴”は現れたモンスターの動きを封じて守備表示にし、表示形式の変更を不可能とする」
「なに! せっかく召喚した融合モンスターが!」
「守備で固定してしまえば、高い攻撃力を生かせなくなる……やはり、海馬の高レベルモンスターの召喚を呼んでいたか」
「……大丈夫。見なよ、海馬君の顔を」
「……フハハハハ! 甘いわ! 魔法カード発動! "融合解除"!」
「っ!!?」
融合解除
速攻魔法
融合モンスター1体を、融合素材モンスターに分離させる
「"双頭の雷龍”を囮に、融合解除! "サンダー・ドラゴン”2体を、フィールドに特殊召喚する!」
サンダー・ドラゴン×2
攻 1600
「うおっ! 躱した!」
「うまい……これで『マリク』に負けない速度で、モンスターを展開できたわ!」
「"サンダー・ドラゴン”の攻撃力は1600。"アポピスの化身"の攻撃力も1600……相打ちにできる。いや、"次元幽閉”がまだ残っているから、1体は残ってまうか」
「いや……ちがう……」
「……? 勝利、何が違うのよ?」
舞が勝利の顔を伺う。
その表情は、口元を上げた楽しそうな顔に、ひりつくような真剣な側面が混じっている。
「まだだ……まだ、海馬君には先がある!」
「ふぅん……俺はさらに、手札から"黙する死者”を発動!」
黙する死者
魔法カード
墓地の通常モンスターを守備で蘇生する。そのモンスターは攻撃できない
「俺の墓地より甦れ! "X-ヘッド・キャノン"!」
「……? なんや、ブルーアイズとちゃうんか?」
「……確かに、"天使の施し”で墓地に送っておけば、ブルーアイズを蘇生することもできた……でも、重要なのはそこじゃない」
そこまで言って、遊戯が何かに気づいたのか表情を変えた。
「……これで海馬のフィールドには、モンスターが3体!」
「っ!? 海馬はまだ、このターンにモンスターを召喚してない!」
「まさか……もうすでに手の中に!?」
「"双頭の雷龍”は端から、神の召喚の囮やったっちゅうんか!?」
「行くぞ! 俺は場の3体のモンスターを生贄に捧げる!」
その海馬の宣言と共に、大地がうなりを上げる。
飛行艇であるその場にさえ届きそうな地球の息吹が、決闘者たちの体に振動し、伝わっていく。
(こ……これが、最後の神のカードの力……)
『ちっ……姉さんが海馬に託した、最後の神……』
「見ているがいい……遊戯! 勝利! そして矮小な決闘者ども! これこそが、俺が従えし究極のカード! 破壊の神! "オベリスクの巨神兵”だ!」
《THE GOD OF OBELISK》
ATTACK 4000
DEFFENCE 4000
The Player shall sacrifice two bodies to God of Obelisk.
The opponent shall be damaged.
And the monsters on the field shall be destroyed.
「ふっふっふっふっふ……あーっはっはっはっはっはっは!!! オベリスク、降臨!」
「こ……これが海馬の神……」
「……クックック。海馬君らしい、力の塊みたいな神だ」
「……"オベリスクの巨神兵”……」
「さあ、オベリスクよ! 敵を粉砕し俺に勝利をもたらせ!」
はしゃいでる海馬が一番面白い。
ノア編は必要だと思いますか?
-
ぜひ書いて欲しい
-
さっさとバトルシティ完結した方がうれしい