遊戯王~黒き羽根は夢に舞う~   作:haruko

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乃亜編についての様々なアイデアをありがとうございます。
皆さんのアイデアのおかげでどんどん創作意欲がわいて助かってます。


さて、新章突入。
後に乃亜編を描く際の、バトルシティトーナメント1回戦と、アルカトラズ編の境目がここになります。

……の、はずだったのですが、前半にちょっとだけ別の話が挟まりました。
理由は後述。


原作~バトルシティ決勝~
最悪の3人


 

時間は……夜。

 

皆が寝静まった牛の刻に、決闘艇の廊下に足音が響く。

僅かな灯りもない消灯済みの廊下を、何の苦にもせずに真っすぐと進む。

 

 

音の主は隠れもせずに堂々と闊歩して、邪気を振りまく。

 

 

 

闇に溶け込んでいる。

否、闇を発しながら、飲み込んでいるようだった。

 

 

 

マリクは、自分の武器のロッドを構え、楽しそうに笑っていた。

 

 

 

 

 

(……リシド……死の闇が、迎えに来たぞ。悪いが貴様に生きていられては、俺が困る。主人格様の心の支えたるお前がいては、邪魔なんでね)

 

 

 

 

 

マリクが足を止める。

マリクの目の前にあるのは、選手控室。

Noは、2。リシドの控室だった。

 

 

 

(城之内が原因不明でぶっ倒れた今、病室は奴が占拠。精神疲労でぶっ倒れたリシドが自室に戻されたことは知ってる……ここで、息の根を止めてやるよ)

 

 

 

部屋の扉を開く。

部屋の暗闇も当然のようにもろともせず、真っすぐにベッドに向かう。

 

『殺害』という邪悪な目的に、曇りも怯みもなく一直線に歩を進める。

 

 

そして、射程内で足を止めた。

 

 

 

 

 

 

「さあ……終わりだよ。リシド……なっ!?」

 

 

 

 

 

 

ロッドを振り上げようとしたその瞬間に、気づく。

 

 

 

 

 

 

ベッドで毛布を掛けられているのは……数個の枕のみ。

 

 

 

 

 

リシドの体は、どこにもなかった。

 

 

 

 

 

「馬鹿な……誰が、リシドはどこに……」

 

 

 

 

 

「ククク……あのハゲがそんなに恋しいか?」

 

 

 

 

 

「っ!? 誰だ!」

 

 

 

 

 

マリクが向いた部屋の隅に、声の主がいた。

その男は、鋭いリングの先をマリクに向け、マリクに負けず闇に溶け込みゆらりと笑う。

 

 

 

 

(……獏良……)

 

 

 

 

「連れもいるぜ……お前の、主人格様もよお」

 

 

 

 

『貴様に、リシドを殺させはしないぞ! 僕から生み出された、邪悪なる意志よ!』

 

 

 

「……貴様……まさか気づいて」

 

 

 

闇のマリクが、獏良の中の主人格の言葉に表情を歪める。

 

それを見た獏良はほくそ笑み、その中のマリクが鋭い声を上げる。

 

 

 

 

『ああ……すでに気づいている。貴様はリシドの心によって封印された、僕自身の闇……僕の邪悪なる意志! そしてイシュタール家の忌まわしき真実……父を殺した、真の悪!』

 

 

「……はっ。オレはお前自身の闇であり、二心同体。都合よく被害者ぶるんじゃねえよ」

 

 

 

 

続けて軽い口を叩く闇のマリクだったが、少し眉間に皺を寄せ、表情を曇らせる。

 

 

 

 

(それは奴一人では絶対にたどり着くことのなかった真実……魂が分離した今だとしても、そう簡単に気づけるものではない……いったい、どうやって……)

 

 

 

 

『だからこそ、貴様自信を葬ることこそが、僕の償い!』

 

 

 

「貴様らの因縁なんぞ俺様にはどうだっていい話なんだが……ロッドに背中の碑文の秘密と引き換えとあっちゃあなあ」

 

 

 

 

 

「……ククク。なら、闇のゲームで決着をつけるしかないようだな」

 

 

「望むところだ」

 

 

 

 

 

 

 

勝利たちの与り知らぬところで、交差する、深き闇と闇。

 

闇のゲームが、再び幕を開けた。

 

 

 

 

 

しかし……獏良と主人格のマリク。

二人を相手取ることになっていても、マリクの余裕は決して崩れることはなかった。

 

 

 

 

(獏良は第4回戦までベッドでおねんねしていた。つまり、城之内と俺の決闘をまともに見れちゃいない……主人格様も、ラーの力のすべてを知るわけではない……何よりも、俺のラーの最後の効果は、奴らに止められる程度のものではない)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのマリクの思惑通り。

 

一つの闇は、闇へと変えることとなる。

 

 

 

 

 

圧倒的な、業火の供物となって。

 

 

 

 

 

 

「消えろ! 獏良! そして、俺の残留思念!」

 

 

 

 

 

「ぐっ!!」

 

 

 

 

 

 

獏良 LP 0

 

 

 

 

 

 

 

「……フフフ。今日のところは負けにしておいてやるよ……だが、覚えておけ。俺は必ず蘇り、お前を殺す……俺はもともと、闇その者なんだからよ……ヒャハハハハ!」 

 

 

 

 

 

 

捨て台詞とともに、消える獏良。

 

 

そしてその場に残った、千年リングを拾うマリク。

 

 

 

 

 

 

 

しかし圧倒的勝利を飾ったはずの男の表情は晴れる様子はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……リシド。奴はいったい、どこに……」

 

 

 

 

 

 

 

しかし、飛行船がとどまることはない。

真っすぐに、朝日を目指していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さらに場所は変わり、船内の一室。

 

その部屋のNoは、記されていない。

 

決闘者たちに用意されている控室とは別の、特別室。

 

 

 

 

そこに、リシドは眠っていた。

 

 

そのベッドの脇にいたのは、主催者。海馬瀬人。

腕を組み、静かを睨みを聞かせる。

 

 

 

 

そして……

 

 

 

 

「……瀬人。感謝します。私を船に乗せてくれたこと……そして、リシドを守ってもらったこと」

 

 

 

 

眠るリシドをまっすぐに見つめる、イシズ。

その三人が、誰とも目を合わせることもなく、同じ部屋に存在している。

 

 

「私はもう、このバトルシティを降り、マリクのことを託した身。本来はここにいる権利も存在はしなかった……ですが、私は見届けたかった。私と、あなたによって始まった、このバトルシティという戦いの運命を」

 

 

「フン……貴様が来た時点で、すでに不要な客が何人も上がり込んでいた。一人増える程度、大した手間ではない。部屋をくれてやったのも、オベリスクを受け取った借りを返しただけの話。その影武者を助けたつもりもない」

 

「いえ……この部屋を貸してくれたことで、リシドは救われました」

 

 

イシズはリシドの顔にそっと手を当てる。

なんの反応もなく、リシドは静かに眠っていた。

 

「今のマリクは……闇の人格にとらわれている。そしてそれは、マリクの心の支えであったリシドの消失をきっかけとしたもの。闇の人格は、必ずリシドをとらえに来る。だからこそ、私はリシドを守らなければならない」

 

「……貴様らの争いになど、俺は毛ほども興味はない。あるのは遊戯との決着。そして、3枚の神のカードを手にしたことによる、『決闘王』の称号のみよ」

 

海馬は背を向け、部屋の外へ歩き出す。

もう話すべきことは、終わったといわんばかりだった。

 

「打倒ラーの手はすでに俺の手の中にある。まずは準決勝で遊戯を血祭りにあげ、2枚の神のカードを携えてマリクを討つ。それで勝利者の栄光は俺のものだ」

 

「瀬人……」

 

イシズは、海馬の歩みを止めはしない。

その代わりに、最後に、といって言葉を吐いた。

 

 

 

 

 

 

「お聞かせください。あなたは……黒羽勝利は、マリクに勝てないと考えていますか?」

 

 

 

 

 

 

「……ふん。あやつに敗れる程度なら、決勝が楽になるというだけの話だ」

 

 

 

 

 

 

いつも通りの傲慢な言葉。

 

 

しかし、その裏で、海馬は否定も肯定もしていないことに、イシズは気づいていた。

 

そして、その裏にある海馬の想いすらも。

 

 

 

 

 

 

(瀬人……あなたほどのものでも、図りかねているのですね。黒羽勝利という男の、力の幅を)

 

 

 

 

イシズは、首筋に触れる。

そこにもう、タウクはない。

 

 

しかし、イシズは話した。

獏良(マリク)にイシュタール家の惨劇の真実を。

 

未来が見えずとも、自分の判断で、ひた隠しにした事実の蓋を開いた。

 

 

 

(真実を話すべきであったか。もしかしたらそれを今はなすことは、あなたをより苦しめるだけの選択だったのかもしれない……でもそれは、タウクの未来に縛られた私の罪であり、復讐の念に支配されていてもマリクに生きていてほしかったという私の願い。だとするのであれば、それをひた隠しにし続けることは、未来を託した私の役目ではない。私の残された役目、それは……これからの戦いを見守り、受け入れること)

 

 

 

 

イシズは、信じることしかできなかった。

自分が託した、黒羽勝利という男を。

 

 

 

(あなたならば……未来を変えられる。見せてください。黒羽勝利)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、朝。

 

 

激動の暗黒の決闘があったこと。

その結果など露知らず。

 

 

 

 

 

決闘者たちの決戦の日は幕を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

目を覚ました決闘艇の自室の勝利は、服を脱ぎ去り着替えを取り出した。

荷物から出てきた服は、青のシャツと黒の革ジャケット。

 

袖を通し、部屋の鏡の前に立ち、顔を作る。

 

 

 

鏡越しに映った舞が、ふわりと笑う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「懐かしいわね。その服。王国の時の服じゃない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……まじまじと、着替えを見ないでよ」

 

 

 

「あら、失礼」

 

 

 

ジト目で抗議の声を向けるが、軽く流されたことにため息をつきつつも、準備を進める。

 

パンツにデッキホルダー付きのベルトを締め、テーブルの上のデッキを持つ。

 

 

 

「……みんな。準備はいい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『『『くわあ!』』』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

勝利の呼びかけに、デッキから出てきた仲間たちがぐるぐると勝利の周りを舞う。

 

ブリザードとゲイルはその輪を抜け舞の肩に泊まり、撫でをねだる。

 

 

 

「ふふっ。元気ね……勝利の事、お願いよ。ゲイル、ブリザード」

 

 

 

 

 

『ぴぃ!』

 

 

 

『かぁ!』

 

 

 

 

 

 

 

そうして皆がデッキに戻っていったのを見送り、勝利はデッキを腰にしまう。

 

そうして目を閉じ、少し深呼吸をする。

 

 

 

背中から、優しく抱き留める感触が伝わってくる。

 

 

 

 

 

 

 

「……約束。忘れないでよ」

 

 

 

 

 

 

 

「……クックック。当然だよ。誰よりも僕が、楽しみにしてるんだから」

 

 

 

 

 

 

 

舞がそっと離した瞬間に、今度は振り返った勝利が抱き留める。

 

心臓の音は穏やかで、抱き込む腕には、安心感があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……行ってくる。勝ってくるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ええ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

部屋の扉を開ける。

 

すると正面には、壁に寄りかかり待ち受けている竜崎の姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「竜崎君。待っててくれたの」

 

 

 

「……まあな」

 

 

 

そっぽを向きながら言う竜崎に、勝利は笑う。

 

 

 

「ありがとう。本田君たちは?」

 

 

 

「先行っとる。杏子と合流して、遊戯の激励に行くそうや」

 

 

 

「……静香ちゃんは?」

 

 

 

「病室や。城之内の顔を、見てたいんやと」

 

 

 

「……そっか。いろいろ、あったもんね」

 

 

 

「ああ……」

 

 

 

納得したように頷く二人。

 

そして竜崎が数歩前に出て、勝利の胸に拳を突き出す。

 

 

 

「……勝てや。ワイに勝ったお前が簡単に負けたら、ワイの上に何人も決闘者がいることになる。そうなったら面倒やからな。いっそ、1位になってまえ。そうすりゃ次にお前を倒した時に、ワイがナンバーワンや」

 

 

 

「……また言ってる。そもそも、勝利が優勝したところで、あんたがNo2なわけじゃないでしょうが。あんた、遊戯や海馬より上なわけ?」

 

 

 

「なんやと!? 少なくとも今のお前より上や! 孔雀舞!」

 

 

 

「なんですって!? 上等よ! バトルシティが終わったら、覚悟しておきなさい!」

 

 

 

「望むところや!」

 

 

 

「くっくっく……」

 

 

 

二人のやり取りに、笑う勝利。

 

その表情からは、緊張や不安は見られなかった。

 

勝利は、まっすぐに明日を見ている。

 

 

 

廊下の真ん中を、勝利が歩き出す。

 

その後ろから、まだ言い足りないといわんばかりの舞と竜崎がついていく。

 

 

 

 

やがて廊下に、遊戯たちがあらわれた。

 

 

 

 

「勝利君」

 

「やあ、遊戯君。眠れた?」

 

「ああ……おかげさまでな」

 

遊戯もまた、晴れやかな顔で勝利を迎える。

遊戯はそのまま手を差し出す。

 

勝利は少し笑い、その手を握り返す。

 

「いろいろあったが、これだけは間違いなく言える。俺は、君と力の限り戦えるその時を、心から楽しみにしている」

 

「っ! ああ! 僕だって同じさ! 王国での借りは、必ず返すよ!」

 

そういった遊戯は、握手する手をさらに強く握り、勝利を見た。

 

 

(借りを返す……か。それは、こっちのセリフだぜ、勝利君)

 

 

遊戯は、思い返す。王国の決闘を。

 

 

遊戯は、勝利に圧倒された。

遊戯は、舞に喝をもらった。

 

 

二人がいなければ、遊戯は決勝までたどり着けなかった。

二人がいなければ、遊戯はペガサスに勝てなかった。

 

 

二人が、みんながいなければ、自分はここに立ててはいない。

 

 

 

(だからこそ……俺は目指すぜ! 君と、そして……城之内君と、正々堂々決着をつけられる未来を!)

 

 

 

『決闘者諸君! まもなく、この決闘艇は決戦の舞台に到着する! 今から主催者、海馬瀬人様からの挨拶がある!』

 

 

 

船内に、アナウンスが響き渡る。

 

 

 

『諸君。最強決闘者を決める記念すべき日の幕開けだ!』

 

『さあお前ら! 外を見やがれ!』

 

 

 

海馬と、それに追従するモクバの声が先導するのに従い、皆は窓の外に目線を送る。

 

 

 

「あ、あれが……バトルシティトーナメントの最終地点!」

 

 

 

「……なんだか、海馬君が主催する大会の決戦の舞台としては、意外と簡素というか、普通の島だね」

 

「何をもって普通と呼ぶかは微妙だけど……想定外なのは間違いないわね」

 

「塔が一本で、残りは瓦礫……なんでここが、バトルシティ決戦の舞台なんや?」

 

疑問の声を上げる勝利たちに、遊戯も概ね同意の意志を見せる。

 

島全体の見た目の様子は、まるで廃墟。

おそらく過去に開発などで様々行われた作業、技術のなれの果てが島を構成し、形作っている。

瓦礫の山の中で一つ聳え立つ、決戦と舞台と思しきタワーが、不釣り合いにぼろぼろの島を彩っていた。

 

 

 

 

「さあ、降り立つがいい! 決闘者ども! 俺が創り上げたプライドの領域に足を踏み入れさせてやる!」

 

 

 

決闘艇の着陸と共におろされたタラップで、遊戯たちはその島に足を踏み入れる。

無事降りて周りを見回すと、感じていた不気味さをより強く感じるようになる。

 

「……廃墟みたい。じゃないね。正しく、廃墟だ。人の気配も、生命の感覚もない」

 

勝利が感じたままにものを言う。

それが正しいことは、勝利という人物への信頼から、そして自分たちの感覚からもわかっていた。

 

「さあ、塔へ向かえ! 決闘者ども!」

 

やがて遅れて船から降りてきた海馬が、堂々と中央を闊歩する。

 

 

「海馬君……この廃墟は一体……」

 

「この無残な残骸は、海馬コーポレーションの創始者である義父の亡骸の象徴。とでもいおうか……」

 

海馬の言葉に、思わず息を飲む。

 

(……海馬君たちは幼少期に『海馬』に引き取られて育てられた。そしてお父さんがなくなった後に海馬コーポレーションを引き継ぐことになったって……)

 

(亡骸の象徴……ってことは、この廃墟は、前海馬コーポレーション社長、海馬剛三郎が作った場所ってことか)

 

「今から十数年前、海馬剛三郎(やつ)が創設した海馬コーポレーションのハイテク技術は、あらゆる国の軍事産業の中枢を担っていた。この『アルカトラズ』は、そうした産業の拠点として作られたものだ……」

 

「ああ……海馬君言ってたね。忌々しき軍事産業の過去があるって。それは、お義父さんの残した負の遺産だったってこと」

 

「そういうことだ。奴は俺が生み出したバーチャルリアリティ具現化システムを軍事シミュレータに利用し、多大な利益を生んだ。奴は、軍事産業に俺の魂を売り渡したのだ」

 

海馬の言葉には、静かな怒りがこもっている。

勝利はそれを、何とも言えない表情で見守った。

 

(……過激で、自信家で、傲慢で……でも、強い意志と誇りを持った、海馬君。だからこそ自分の夢、『自分たちのような子供を楽しませるための、ドリーム・ランドを作る』という夢を、人殺しの道具として使われ、汚されたことが許せないんだ)

 

 

 

「オレはあえて、この瓦礫の中にこの決闘塔(デュエル・タワー)を建造した!」

 

 

(塔の頂上で決闘王の称号を手に入れた時、俺は海馬剛三郎(やつ)のすべてを超えた証が与えられるのだ!)

 

 

「さあ! 塔へと進め! 決闘者ども!」

 

 

 

 

 

(……ついに来たね。もう一人のボク!)

 

『ああ!』

 

(決戦の……舞台。バトルシティの……そして、奴との)

 

(おうおう、怖い怖い)

 

 

「ところで海馬よお、準決勝の組み合わせはどう決めるつもりだ? また抽選か?」

 

「……僕もそこは、気になるところかな」

 

 

マリクの問いに、勝利が同意する。

重なる目線の先で、火花が散る。

 

組み合わせを気にする二人の心中は、皮肉にも一致していた。

 

 

「あわてんない! あの塔に行けば、運命は告げられるぜ!」

 

「ふっ。貴様らの死と敗北の運命がな……」

 

「あれ? その運命を告げられた城之内君は、生き残って、君に勝利したんじゃあなかったかな?」

 

「……はっ。その果てに生涯寝たきりの人生で勝ったと喜べるのならな」

 

「……」

 

「……」

 

今にも殴りかかりそうなほどにお互いを睨みあう二人。

その二人の空気を、勝利の後ろの舞が、勝利の頭を軽くたたくことで崩す。

 

「今からそんな気張ってどうすんのよ。準決勝で誰と当たるかもわかってないのに……遊戯と当たったらどうするわけ?」

 

舞の言葉に、勝利がはっと我に返る。

 

(……ダメだな。これじゃあ、王国の時の、ペガサスしか見えてなかった遊戯君の二の舞だ……)

 

顔をぱちんとはたいて、舞に笑顔を作った。

 

「ありがとう舞さん。もう大丈夫。行こうか」

 

歩き出した勝利の後を、舞と竜崎が静かに追う。

そしてそのあとを遊戯たち、海馬、マリクが追っていく。

 

 

 

決戦の舞台の歯車は、すでに回りだした。

 

 

 

 

 

「決闘者の皆さん。ようこそ決闘塔(デュエル・タワー)へ」

 

 

 

 

塔の中に入るとそこで、磯野が皆を迎え入れる。

入ったその部屋は、塔の上まで吹き抜けになっていること以外は、大した設備は見られない。

しいて言うならば、次の部屋へとつながるであろう扉が四つ、向かい合わせに鎮座しているのが印象的だった。

 

「ここまで勝ち上がった四人の決闘者はそれぞれ四つの扉から塔の頂上に向かっていただきます! 四つの扉、どれか一つをお選びください!」

 

「どれか一つ……」

 

「ランダムってことか?」

 

「……」

 

「……何さ?」

 

言われた瞬間に、皆が一様に勝利をみる。

 

それを見て何かを察したように、磯野が続けて宣言する。

 

「……扉の選択に優劣性はありませんので、ご安心を」

 

「……それなら、安心だな」

 

「ま、どうしても不安なら勝利を最後に選ばせるって手もあるがな」

 

「くだらん。たとえどれだけ有利な選択を取られようとも、最後に勝つのはこの俺だ」

 

「……僕のことをなんだと思っているのか知らないけど、そこまで言うなら最後に選ぶよ。ちなみに、僕の勘では、本当に優劣ないと思うけどね」

 

嫌みのように言い放つ勝利に、遊戯が苦笑いしながら一つの扉を選ぶ。

それを契機に、海馬、マリクと扉を選び、最後に残った扉に勝利が入る。

 

「それでは、歩を進め扉の中へ」

 

勝利たちが中へと進むとそこは、薄暗く狭い部屋の中だった。

そしてひときわ目を引く、中央に鎮座した乗り物のような何か。

 

勝利や遊戯には、それに見覚えがあった。

 

(これは……形は違うけど、王国の時に扱っていた、バトルボックスのシステムに似ている)

 

(カードバトル用バーチャルシステム……)

 

 

 

 

「なお。ギャラリーの方々は中央広場に上がってください。こちらのエスカレータです」

 

「で? 準決勝の組み合わせってのは、いつ決まるんや?」

 

誘導に乗り先陣を切って歩き出した竜崎が、磯野に尋ねる。

それは、誰もが気にするところだった。

 

 

「今から、それをゲームで決めるのです」

 

 

磯野のその宣言と同時に、遊戯たちの乗る、バトルシステムを搭載した席が一気にせり上がっていった。

 

 

「こ、これは……」

 

「ほう……」

 

「なるほど……これって……」

 

「そう。これこそが、準決勝の前の前哨戦というわけだ」

 

 

 

「予選では、強さをふるいにかけるためにランダムでの対戦相手の抽選を行った。しかし、誇り高き真の決闘王を決めようという準決勝の舞台でくじ引きで対戦相手を決めては公平性を欠いてしまう。ならば対戦相手は、ゲームで決定する!」

 

 

 

 

「ゲームで……それって、どうやって決めるのかしら?」

 

「わからへん。でも、この配置……」

 

「ええ。いやな予感がしてきたわ」

 

杏子の呟きに竜崎と舞が少し眉間に皺を寄せる。

磯野が、説明を続けた。

 

「ルールは簡単! この場で四人の決闘者が同時に戦い―――先に頂上にたどり着いたもの2名―――後の2名がそれぞれ準決勝第1回戦、第2回戦に出場する! もちろん戦いはカード! LPは4000! ただしLPが減れば減るほど頂上に近づく! つまり、負けたものから先に頂上にたどり着くというルールなのです!」

 

 

一瞬、ルールを咀嚼する静寂が訪れる。

そしてその静寂を……勝利が破る。

 

「……成程。これなら負けた人は文句が言えない。それに先に戦わされる方が先に決闘を見られるわけだから、後で勝ち上がった人と戦う際に対策を取られやすい。ちゃんと勝ち残るメリットも存在するから、ここで勝とうが負けようがどちらでも、ということにはならない。いいルールだね」

 

 

 

 

 

いいルールなだけに……残念だよ。

 

 

 

 

 

そう勝利が締めくくる。

 

「……? 勝利君?」

 

「フン……」

 

「フフフ……」

 

 

 

 

「勝利の奴、どうしちまったんだ?」

 

「うん……なんだか、悲しそうっていうか、微妙な顔に見えるけど……」

 

 

 

 

「……見てればわかるわよ」

 

「あいつには、酷な展開やな」

 

 

 

 

理解してしまった舞と竜崎が、何とも言えぬ顔を作る。

 

その様子にはてなを浮かべながらも、磯野の宣言に意識を戻した。

 

 

 

 

「これより! ゲームを開始する!」

 

 

 

 

バトルロワイヤル形式 ルール

 

・ゲームは四人プレイヤーの交代制

・最初のターンは全員攻撃できない

・ターンプレイヤーは誰に攻撃してもよい

・ターンが隣り合うプレイヤーへの攻撃は、守備モンスターを動かし防御することができる

・他プレイヤーへの攻撃、及びカードの発動に対して、カウンター魔法、罠を発動してもよい

・先にLPが0になったプレイヤーが2人現れるまでゲームは続く

・LPが0になった2人の決闘を第1回戦。LPが残る2人の決闘を第2回戦とする

 

 

 

 

「決闘は4人のプレイヤーのターン交代制で行うが、今からその順番を決める!」

 

 

 

 

「……その方法は?」

 

「各プレイヤーはデッキから1枚だけモンスターカードを選び提示する! その攻撃力が高い順に先行をとる! ただし、そのモンスターは再びデッキに戻すことはできない!」

 

 

 

 

「……こりゃまた、嫌らしいルールやな」

 

「4人でやる以上、先に行動できる権利は、通常の決闘の3倍の価値がある。でも、そのためには攻撃力の高いモンスターを犠牲にする必要があるってわけね」

 

「半端に攻撃力の高いモンスターを出しては、丸損になる……これは、戦略の方針すら決まってしまうかもしれないね」

 

最後の御伽の言葉で、皆がここが一つ目のターニングポイントであると理解する。

 

 

4人が、カードを提示した。

 

 

 

遊戯 グレムリン 

攻撃力 1300

 

海馬 仮面魔獣デス・ガーディウス

攻撃力 3300

 

マリク レクンガ

攻撃力 1700

 

勝利 BF-朧風のゴウフウ

攻撃力 0

 

 

 

 

「順番は決定した! 先攻から順に、海馬瀬人。マリク・イシュタール。武藤遊戯。黒羽勝利とする!」

 

 

 

 

 

「……勝利君?」

 

「あいつ……なんだって、攻撃力0のモンスターを?」

 

「勝利君は先攻をあきらめて、高攻撃力モンスターを残しておいたってことか」

 

 

 

「それならそれで、低攻撃力の適当なモンスターを出しておけばええ話や。同じ考えの奴がいたら、低攻撃力の競り合いになることもあり得るからな」

 

 

 

「……? じゃあ、何だって勝利は、わざわざ攻撃力0のモンスターを出したんだ?」

 

 

 

 

 

「簡単な話よ……勝利は、後攻が欲しかった(・・・・・・・・)のよ。どうしてもね」

 

 

 

 

 

「えっ? 舞さん、それってどういう……」

 

「見てればわかるわ。2ターンもたてばね」

 

 

 

 

 

 

「では……決闘開始!」

 

 

 

 

 

 

「「「「決闘!」」」」

 

 

 

 

 

 

海馬  LP 4000 手札5枚

 

 

マリク LP 4000 手札5枚

 

 

遊戯  LP 4000 手札5枚

 

 

勝利  LP 4000 手札5枚

 

 

 

「俺のターン、ドロー! 俺は、"ブラッド・ヴォルス”を召喚!」

 

 

ブラッド・ヴォルス

 

闇属性 獣戦士族 星4

 

攻撃力 1900

 

守備力 1200

 

 

「さらにカードを1枚セット。ターンエンド!」

 

(1ターン目はどのプレイヤーも攻撃できない。だからこそ、先攻の有利が効いてくる……そんなことは、全員承知済み)

 

 

 

「……オレのターン、ドロー! 俺は、"ドリラゴ”を召喚!」

 

 

ドリラゴ

 

闇属性 機械族 星4

 

攻撃力 1600

 

守備力 1100

 

フィールド上に攻撃力1600以上のモンスターしか存在しない場合、

このモンスターは直接攻撃できる

 

 

「さらにカードを1枚セット。ターンエンド」

 

 

 

「俺のターン、ドロー! 俺は、"熟練の黒魔術師"を召喚!」

 

 

熟練の黒魔術師

 

闇属性 魔法使い族 星4

 

攻撃力 1900

 

守備力 1700

 

魔法が発動するたびに、魔力カウンターを乗せる

3つの魔力カウンターを集めた時、真の黒魔術師へと進化を遂げる

 

 

「さらに俺は、"強欲な壺”を発動!」

 

 

強欲な壺

 

魔法カード

 

デッキからカードを2枚ドローする

 

 

「カードを2枚ドローする。そして、"熟練の黒魔術師"に、魔力カウンターを一つ乗せる!」

 

その宣言によって、"熟練の黒魔術師"の服の水晶が一つ光を灯す。

 

 

熟練の黒魔術師

 

魔力カウンター 0→1

 

 

「俺はカードを1枚セットし、ターンエンドだ!」

 

 

「(魔力カウンターモンスター……)僕のターン、ドロー……うん、仕方ないな。僕は、"黒羽の宝札”を発動!」

 

 

黒羽の宝札

 

魔法カード

 

手札から「BF」を除外し、デッキからカードを2枚ドローする

 

 

「"BF-激震のアブロオロス”を除外し、カードを2枚ドロー」

 

「……勝利君の"黒羽の宝札”によって、"熟練の黒魔術師"に、さらに魔力カウンターを一つ乗せる」

 

 

熟練の黒魔術師

 

魔力カウンター 1→2

 

 

「そして"BF-陽炎のカーム”を守備表示で召喚」

 

 

BF-陽炎のカーム

 

闇属性 鳥獣族 星4

 

攻撃力 600

 

守備力 1800

 

 

「さらにカードを1枚セット。ターンエンドだ」

 

 

 

海馬  LP 4000 手札4枚

 

ブラッド・ヴォルス

 

攻 1900

 

伏せカード1枚

 

 

マリク LP 4000 手札4枚

 

ドリラゴ

 

攻 1600

 

伏せカード1枚

 

 

遊戯  LP 4000 手札5枚

 

熟練の黒魔術師

 

攻撃力 1900

 

魔力カウンター 2

 

伏せカード1枚

 

 

勝利  LP 4000 手札4枚

 

BF-陽炎のカーム

 

守備力 1800

 

伏せカード1枚

 

 

 

「みんな……ほぼ同じフィールドになったわ」

 

「ここで出遅れたら、一気に狙われる対象になるからね。みんな慎重に動くさ」

 

「一応、状況的には遊戯が一歩リードやけどな」

 

「えっ? 竜崎君、どういうこと?」

 

杏子の問いに、竜崎は無表情で答える。

 

「遊戯のモンスターの、『魔力カウンター』や。あの効果は魔法が発動するたびにたまっていって、3つたまればモンスターが進化しおる」

 

「遊戯の"強欲な壺"と勝利の"黒羽の宝札”で、カウンターは今2つ。あのモンスターを維持できれば、遊戯は一気に最上級モンスターを召喚できるわ。そうなれば、一気に遊戯が躍り出る」

 

「ってことは、勝利は、遊戯のモンスターのサポートをしてるってことか!」

 

「そうよ! この2人のコンビなら、海馬君やマリクにだって負けないわ!」

 

 

 

「……だといいんだけどね」

 

「……やといいんやけどな」

 

 

 

2人の不穏な呟きをよそに、決闘は進んでいく。

 

 

 

 

「……オレのターン! さて、攻めさせてもらおうか。まずは……遊戯! 貴様だ!」

 

(来るか! 海馬!)

 

「バトル! "ブラッド・ヴォルス”で、"熟練の黒魔術師”に攻撃! 『魔獣の斧』!」

 

 

ブラッド・ヴォルス

 

攻 1900

 

熟練の黒魔術師

 

攻撃力 1900

 

 

「(魔力カウンター対策の相打ち狙いか、それともコンバット・トリックか。どちらにしても、通すわけにはいかない!) 伏せカードオープン! "聖なるバリアーミラーフォース”!」

 

 

聖なるバリア ーミラーフォース

 

罠カード

 

相手が攻撃を宣言したとき、聖なるバリアが敵を全滅させる

 

 

 

「"ブラッド・ヴォルス”の攻撃を無効! その攻撃のエネルギーを、攻撃モンスターにはじき返す!」

 

「……僕のカームは守備表示。反射効果は受けないよ」

 

「ああ! だから海馬の"ブラッド・ヴォルス”と、マリクの"ドリラゴ”が破壊される!」

 

 

突如現れたバリアに、斧の一撃を阻まれた"ブラッド・ヴォルス”。

そして一撃を加えたバリアの割れ目から、強力なエネルギーが場に拡散する。

 

 

『うぉおおおー!』

 

『ぎぃやあああ!』

 

 

海馬  LP 4000 手札5枚

 

モンスター無し

 

伏せカード1枚

 

 

マリク LP 4000 手札4枚

 

モンスター無し

 

伏せカード1枚

 

 

遊戯  LP 4000 手札5枚

 

熟練の黒魔術師

 

攻撃力 1900

 

魔力カウンター 2

 

伏せカードなし

 

 

勝利  LP 4000 手札4枚

 

BF-陽炎のカーム

 

守備力 1800

 

伏せカード1枚

 

 

 

「よっしゃあ! 海馬とマリクのモンスターが全滅だ!」

 

「これで遊戯と勝利君が一気に有利になったわ!」

 

「……"Y-ドラゴン・ヘッド"を守備表示で召喚」

 

 

Y-ドラゴン・ヘッド

 

光属性 機械族 星4

 

攻撃力 1500

 

守備力 1600

 

X、Y、Zで変形合体する

 

 

「俺はこれで、ターンエンド」

 

 

海馬  LP 4000 手札4枚

 

Y-ドラゴン・ヘッド

 

守 1600

 

伏せカード1枚

 

 

「俺のターン! 全く……海馬の巻き添えで俺のモンスターまで破壊されちまった。怖い怖い。"リバイバルスライム”を守備表示で召喚」

 

 

リバイバルスライム

 

水属性 水族 星4

 

攻撃力 1500

 

守備力 800

 

再生能力を持つ

 

 

「俺はこれでターンエンド」

 

 

 

マリク LP 4000 手札4枚

 

リバイバルスライム

 

守備力 800

 

伏せカード1枚

 

 

 

「俺のターン、ドロー……よし! 俺は、"サイクロン”を発動!」

 

 

サイクロン

 

魔法カード

 

フィールドの魔法・罠カードを1枚破壊する

 

 

「このカードによって、フィールドの魔法、罠カードを破壊する!」

 

宣言後、遊戯はほんの少しの時間思案する。

 

(勝利君を狙う必要はない。マリクの"リバイバルスライム”に再生能力があることは把握済み。ならば!)

 

「このカードによって、海馬! お前の伏せカードを破壊するぜ!」

 

「ちぃ! "収縮”は破壊される」

 

 

収縮

 

魔法カード

 

モンスター1体の攻撃力を半分にする

 

 

 

「よっしゃあ! これで海馬の場から伏せカードがなくなったぜ!」

 

「それだけじゃないよ! これで遊戯君は、魔法カードを使うことができた!」

 

 

 

 

「この瞬間! "熟練の黒魔術師"の効果発動! 魔力カウンターが、3つになる!」

 

熟練の黒魔術師

 

魔力カウンター 2→3

 

「そしてこの瞬間に、魔力カウンターの力によって、魔術師はさらなる進化を遂げる! 

 

 

"熟練の黒魔術師"が杖を翳したその瞬間に、力の風が場を支配し、モンスターが姿を変える。

 

 

「デッキより、現れよ! "ブラック・マジシャン”!」

 

『ハァ!』

 

 

 

ブラック・マジシャン

 

闇属性 魔法使い族 星7

 

攻撃力 2500

 

守備力 2100

 

 

 

 

「うおっしゃあ! 来たぜ! 遊戯のエースモンスター!」

 

「遊戯はこれで、誰よりも早く強力モンスターを召喚できたわ!」

 

「これは、大チャンスだよ!」

 

 

 

 

海馬  LP 4000 手札4枚

 

Y-ドラゴン・ヘッド

 

守 1600

 

伏せカードなし

 

 

マリク LP 4000 手札4枚

 

リバイバルスライム

 

守備力 800

 

伏せカード1枚

 

 

遊戯  LP 4000 手札5枚

 

ブラック・マジシャン

 

攻 2500

 

伏せカードなし

 

 

勝利  LP 4000 手札4枚

 

BF-陽炎のカーム

 

守備力 1800

 

伏せカード1枚

 

 

 

 

場に、空気が張り詰める。

この決闘における、ファーストアタック。ファーストダメージの重要さについて、全員が理解していた。

 

誰を攻撃してもいい三つ巴。

となれば、最初に攻撃すべきは誰か。答えは、『倒しやすい者』。

実力に優劣の無い4人であれば、それは先にLPを削れたものということになる。

 

つまり、ここの遊戯の選択で、今後の決闘の展開が決まるといっても過言ではない。

 

 

 

 

「さあ、行くぜ! バトル!」

 

 

 

 

遊戯の宣言に、"ブラック・マジシャン”が構える。

杖の先の標的は……"Y-ドラゴン・ヘッド”。海馬のモンスターだった。

 

 

 

「行けっ! "ブラック・マジシャン”! "Y-ドラゴン・ヘッド”に攻撃! 『ブラック・マジック』!」

 

 

ブラック・マジシャン

 

攻 2500

 

Y-ドラゴン・ヘッド

 

守 1600

 

 

 

モンスターに迫る、"ブラック・マジシャン”の攻撃。

 

しかし……海馬は笑っていた。

 

 

 

 

 

「……フハハハハハ! 俺という敵の前に、大勢を掴むべきだったな! 遊戯!」

 

 

 

 

「何っ!?」

 

 

 

 

 

「……ごめんね。遊戯君。伏せカードオープン! "フェイク・フェザー”!」

 

 

 

「えっ!? うそっ!?」

 

「なんだと!?」

 

「なんで海馬君への攻撃に、勝利君が罠を発動するんだ!? しかも、遊戯君に!?」

 

 

 

「……あーあ」

 

「やっぱ、こうなりよった」

 

 

 

フェイク・フェザー

 

罠カード

 

BFモンスターを一枚手札から捨て、相手の墓地の罠カードを一枚奪い取る

 

 

 

 

「"BF-弔い風のデス”を捨てて効果発動。相手の墓地から、罠カードを1枚奪い取る。今盗るカードは、これしかないね」

 

 

 

 

『ひひっ!』

 

デスが遊戯の墓地に潜り込み、カードを1枚奪い取る。

 

「……この展開も、なんかちょっと懐かしいや。発動! "聖なるバリア ーミラーフォース”!」

 

「くっ! しまった!」

 

 

遊戯は気づくが、もう遅い。

"ブラック・マジシャン”の強烈な一撃が、遊戯のフィールドに跳ね返り、爆発する。

 

 

海馬  LP 4000 手札4枚

 

Y-ドラゴン・ヘッド

 

守 1600

 

伏せカードなし

 

 

マリク LP 4000 手札4枚

 

リバイバルスライム

 

守備力 800

 

伏せカード1枚

 

 

遊戯  LP 4000 手札5枚

 

モンスター無し

 

伏せカードなし

 

 

勝利  LP 4000 手札3枚

 

BF-陽炎のカーム

 

守備力 1800

 

伏せカードなし

 

 

 

 

「なんで……なんで勝利君が、遊戯を攻撃するの!?」

 

「何でも何もないわ。当然の結果よ」

 

狼狽する杏子に、舞がぴしゃりと言い放つ。

 

「おい、舞! 竜崎! どうなってんだよこれ!?」

 

「ちょっと考えりゃあわかることや。このバトルロワイヤルは、ただの決闘とはちゃう。次の戦う相手を選択するための決闘なんや。となりゃあ、勝利が遊戯の味方をするとは限らへん。今、誰が誰と戦いたがってんのか、考えてみぃ」

 

皆、まだ困惑が晴れずに固まっている。

しかし、いち早く状況を理解した御伽は、少し顔を青くした。

 

「……っ!? まさか……勝利君は、最初に遊戯君を脱落させるつもりなのか!?」

 

「そういうこっちゃ」

 

「おいおい!? ちょっと待てよ! 何が、どうなってそうなんだよ!?」

 

「利害の一致よ」

 

本田の困惑を、やはり舞がぴしゃりと切り捨てる。

 

「勝利が戦いたいのは、マリク。当然よね。仲間の、城之内の決闘を汚されたことによるあいつの怒りは、あたしにさえもすべては計り知れないわ」

 

「同じく、マリクが戦いたいのも勝利や。あんだけ自分の決闘を馬鹿にされてたんや。真っ先に勝利をしばきまわしたいと思っとって当然。あとは、海馬や」

 

言われて皆が、海馬を見る。

想定通り、と言わんばかりにほくそ笑んでいた。

 

 

 

 

海馬がこのバトルシティで、誰と戦いたがっているのか。

 

 

言うまでもない。遊戯だ。

 

 

 

 

「勝利とマリク。ぶつかりあっとる二人のこのバトルロワイヤルの目標は、皮肉なことに一致しとる。さっさと二人で負けるか。さっさとほかの二人を落とすか。これに集中すれば、準決勝の組み合わせは選べる」

 

「そして遊戯と戦いたがっている海馬も、ここの目的と一致する。残る問題は、海馬にとっての優先順位よ」

 

「……優先順位?」

 

「せや。海馬が決勝という舞台で遊戯と決着をつけたいんやったら、目標は一致せえへん。そうなった場合、準決勝で遊戯とぶつかり合いになる組み合わせ、つまり、勝利vsマリク、遊戯vs海馬の組み合わせは拒否するはずやからな」

 

「つまり……勝利たちが気にしていたのはただ一つ。海馬の出方。海馬の、標的よ」

 

 

そこで気づく。

彼らが疑問に思っていた勝利の行動。

 

 

 

 

 

「だから勝利君は、確実に後手を取りに行ったのか! 海馬君が誰を狙おうとするのかを見定めてから、行動を選択するために!」

 

 

 

 

 

 

「……海馬君が遊戯君を狙った時点で、話は決定した。ただ遊戯君と戦いたいだけならば、僕やマリクを攻撃する手段もあったのに、先行して遊戯君を攻めた。もしも君が決勝で遊戯君と戦いたいのなら、遊戯君を攻撃せずに、僕とマリクを攻めるはず。そうじゃないと遊戯君を倒した後で僕とマリクvs海馬君で2対1になるだけだからね。海馬君が仕掛けたことで、僕ら3人の方向性は決まった」

 

「フフフ」

 

「フン」

 

 

 

勝利のセリフに、マリクが不敵に笑い、海馬が鼻を鳴らす。

 

 

 

「意外だったぜ、海馬。お前はてっきり、LPを0にするくらいなら俺や勝利を潰しに来ると思っていたがなあ」

 

「俺が欲しいのは飽くまでこのトーナメントの頂点、決闘王の称号。こんな途中経過になど興味はない。俺の輝かしきロードを行くために、これくらいの苦渋は飲み込んでくれる」

 

「……形式上とはいえ遊戯君と組んで、僕やマリクに敵対するっていうタッグマッチみたいな構図になることを嫌った。とかだったりして」

 

「フン。どうだかな」

 

 

「ま、互いの目的のための一時休戦ってわけだな」

 

「勘違いするなよ。貴様への怒りは、まるで揺らいじゃいない。貴様との醜悪な舞台には、僕以外誰にも上がらせはしない……お前だけは必ず、僕が倒す」

 

「フフフ。お前が言っていた通り、俺とお前は気が合うかもしれないな。全く、同感だよ」

 

 

傲慢。憤怒。愉悦。

様々な感情が交差しぶつかり合う。

しかしその3つの目は最後、真っすぐに遊戯を捉えている。

 

敵であり、実力者。

互いの想定、作戦。全てを理解し、言いあう3人の姿に、遊戯は1つ冷や汗を流す。

 

 

 

 

海馬。

 

マリク。

 

勝利。

 

 

 

 

遊戯は、理解してしまった。

 

 

 

恐ろしく厄介な三人が、今だけ同じ方向を向いている。

 

その先には、自分がいる。

 

 

 

最悪のチームが、誕生した。




はい。
というわけで、マリクvs獏良(大幅カット)と、バトルロワイヤル開始まで。

ホントは前半部分を前回に入れ込むはずだったんですけど、空気的に嫌だったのでこっちに持ってきました。
マリクvs獏良、というよりは、イシズも乗り込んでました。の説明です。
決闘そのものは、どうやっても原作と展開変わらなかったのでカット。
全カットで、実はイシズも乗り込んでいたのでリシドも助かりました。っていうのをのちに補足的に入れようかとも思っていたのですが、意外とというか、イシズ、そしてリシドの安否を気にされてる方が多かったので、ちゃんと書こうと思った次第です。


そして、アンケート。超魔導竜騎士について。
まだ乗せておく予定なのですが、現在の途中経過にびっくりしています。
なんと、賛成派が大多数。

好きキャラではあるものの、正直、あいつはもっと嫌われているのかと思っていたのですが……私がYP思考過ぎたのかもしれませんね。現在は登場させる予定で検討中です。




活動報告の方で、乃亜編のアイデアを募集しています。
・乃亜編のアイデアについて
勝利たちの『デッキマスター能力』について、募集中です。

ぜひお知恵をお借りできると幸いです。よろしくお願いします。

超魔導竜騎士の参加はありorなし

  • 友情カードの融合!熱い!やって欲しい!
  • 遊戯があれ使ってるの見たくない!却下!
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