遊戯王~黒き羽根は夢に舞う~   作:haruko

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王国編特殊ルール⑦

カードによっては相手全体を攻撃できるモンスターがいる。
例)グレートモス、千年竜、ブラックデーモンズドラゴン等
  各モンスターに対して攻撃力分のダメージを与えるっぽい。


海の決闘者vs空の決闘者 梶木漁太、二度目の決闘

 

「はてさて……誰と戦ったものか……あ、君、デュエルしない?」

 

「ん? ああ、もちろんオーケ……げっ、ク、『クリエイター』! い、いやあ……なんというか……」

 

「……ああ、わかった。もういいよ、ありがとう」

 

 

その少年の苦い顔ですべてを察した勝利は、適当に話を切り上げて彼とさよならした。

初戦を勝利で飾ってからはや一、二時間が経過しているというのにいまだ変わらず対戦相手を探すのにも難航していた。

 

 

絆を証明する。

 

 

舞に言い切ったはいいものの、これでは話が進まない。

 

 

「どうしようもないわね。対戦相手が見つかるまで、とりあえず休憩しようかしら」

 

「……そうだね、お腹も減ってきた。ひとまず、何処かで御飯にでも……ん?」

 

 

そこまで言いかけたところで、何やらいいにおいが鼻をくすぐった。

 

 

「……焼き魚の臭い?」

 

 

「……あら、本当ね。あっちの方からかしら」

 

舞が指差した方向へ顔を向けると、海を臨める大きな崖があった。そして……

 

 

「……デュエルボックスが、あそこにもある……」

 

 

気が付かなかった。あんな所にもデュエルの舞台があったのか。

 

「海のデュエルフィールド……という事は……」

 

 

彼のフィールド、っていう事かな……

 

 

 

 

 

 

 

「がーっはっはっは! 大漁大漁じゃあ!!!」

 

「……やっぱりいたよ」

 

「こいつは……全国大会ベスト4の……」

 

「ん? おお、勝利! なんじゃ、お前もわしの餌にでもつられてきたんか?」

 

「……餌っていうのはもしかして、そこでいいにおいを漂わせてる焼き魚のことかい、梶木君」

 

勝利の言葉にさらに大きな声で、がははと笑い声を返したこの男は、梶木漁太。

海を愛し、デュエルを愛す、男気あふれる熱血漢だ。

 

そして実は、勝利と梶木にはとあるつながりがある。

 

「へへへ、遊戯に続き、とんだ大物がかかったもんじゃ! 今こそ、準決勝での雪辱を果たしてやるぜよ! デュエルじゃ! 勝利!」

 

そう、何を隠そうこの梶木と勝利は、準決勝を戦った相手なのだ。

その時はまだ、勝利がデーモンデッキを使っていたので、本気のデュエルとまではいかなかったが、それにしても梶木にはかなりの苦戦を強いられた。

最後には勝利が上級デーモンを装備カードで強化したことによりぎりぎりの勝利を収める事が出来たが、あの試合は勝利が決勝へ向けてデッキを調整することを決定した試合でもあった。

つまり、“ヘイトバスター”などのカードを採用し、勝利する事が出来たあの決勝戦は、梶木と戦ったからこそ勝てたと言っても過言ではない。

 

 

(そんな梶木君との、『BF』を使った全力のデュエル、か。楽しくならないわけがない)

 

 

「くっくっく……ようやく相手が見つかったと思えば、君が相手か。困ったものだよ。でも、面白いね。受けてたつよ、梶木君」

 

「ふん。以前のわしのままだと思わんことじゃ! さて、なら早速」

 

「おっと、その前に」

 

「ん? なんじゃ?」

 

 

 

「そこにある餌とやらは、僕たちがもらってもいいものなのかな?」

 

 

 

こんがり焼けた魚を指さし、お腹を鳴らす姿に、梶木は大笑いし、舞は呆れ顔だった。

 

 

 

 

「さて、行こうか。梶木君。お昼をおごってもらったことには感謝してるけど、それとデュエルは話が別だからね」

 

「当り前じゃろ。何度もいわすな。あれは餌じゃ。餌を食わせた後は、一対一の真剣勝負。それは海でも、デュエルでも変わらんのじゃ」

 

 

予想した通りのまっすぐな答えに、また笑う。

先にデュエルボックスに入り席に着いた勝利に対して、一瞬表情を変えた後、梶木も対面に座り、手首のスターチップを外す。

 

「お互いスターチップは三個がけじゃ。かまわんな?」

 

「……構わんけど。君はいいのかい、それ、君のチップ全部だろう?」

 

「へっ。お互い様じゃろう。それに、負けることを考えてデュエルするやつがどこにいるんじゃ! ただでさえわしは一度遊戯に負け、皆から遅れをとっとるんじゃ。一個かけようが二個かけようが、負けるわけにはいかんのは変わりない。わしは、必ず優勝するんじゃあ!」

 

梶木の口調から、熱い闘志と、確固たる意志を感じる。

遊戯に一度敗北したからと言って、まったく心は折れていないようだ。

 

「ごめん。愚問なうえに、無粋だったね。さあ、楽しいデュエルを始めよう!」

 

デッキをセットし、開始の宣言をする。

デッキから、みんなの喜ぶ声が伝わってきた。

 

 

さあ、行こう。

 

 

 

梶木 LP2000

「「デュエル!!」」

勝利 LP2000

 

 

「僕のターン! まずは君だ、“BF-そよ風のブリーズ”! 山のフィールドパワーソースを得て、攻撃力アップ!」

 

 

BF-そよ風のブリーズ

闇属性 鳥獣族 星3

 

攻撃力 1100 + 30% = 1430

守備力  300 + 30% =  390

 

 

「カードを一枚セットし、ターンエンド。さあ梶木君、僕には僕のフィールドが、君には君のフィールドが来ている。僕たちの全力を、ぶつけ合おうよ!」

 

「へっ。やっぱ分かったうえでこっちのフィールドをよこしたんか。お前はやっぱ大物じゃあ! わしのターンじゃい!」

 

そして梶木が、カードを場に出す。その場所は、当然『海』の上。そして……

 

 

「モンスターが、出てこない?」

 

 

???

?属性 ?族 星?

 

攻撃力 ???? + 30% = ????

守備力 ???? + 30% = ????

 

ボックスの外からデュエルを見ていた舞がそうつぶやいた。

 

この戦術は……

 

「さらにカードを一枚セット。さあ、勝利。お前のターンじゃい!」

 

「なるほど。これが君の戦術か。なかなかに厄介だ」

 

海に潜られちゃあ、攻撃のしようがない。しかし海で戦おうとすれば、そんなものは梶木のモンスターの独壇場。

とても王国に来てから、ルールを理解し、編み出した戦術とは思えない。

完璧な戦術。そして、それを作り出し、敵を翻弄する梶木の実力。

 

 

「これがわしの戦術。潜海奇襲(シー・ステルス・アタック)じゃあ! お前のその鳥どもで、破れるもんなら破ってみい! 勝利!」

 

 

「ああ、もちろん。デュエルが終わるまでには、破って見せるさ。完璧にね!」

 

言いながらドローする勝利。しかし、思わず眉間にしわを寄せる。

そしてそれを見ながら、舞も腕を組み、顔をしかませている。

 

(……相手に姿を見せない、そもそも戦いを成立させないための戦法。シンプルだけどそれ故に破ることができる方法も限られている。でも……)

 

誰にも聞こえないように舌打ちを鳴らし、自分の腰のデッキホルダーに軽く触る。

 

(方向性自体はまるで違うけど、梶木良太のデッキコンセプトは、あたしの“ハーピィデッキ”と近いものがある。梶木は魚族モンスターを、あたしはハーピィたちを、フィールドパワーソースやほかのサポートカードで強化し、相手を抑え込もうとする戦術。だからこそ、あたしの戦術と梶木の戦術は、弱点も一致する)

 

忌々しい、と言わんばかりの思案顔で思い出すのは、敗北を喫してしまった城之内戦。

ハーピィちゃんたちが無残な姿に変えられてしまい、城之内の“千年竜”の一撃により葬り去られてしまったあの一戦。

 

(戦術一つで相手を押し切ろうとする戦い方は、その戦術を覆す一手さえ見つかってしまえば、どんな状態からでも逆転のチャンスは掴み得る。たとえそれが、あの素人ボーヤだとしても……)

 

ならば、あたしが見るべきはその攻略法。

梶木の戦術に対して、勝利は、どうやって戦うつもりなのか。

 

(この梶木戦は、あたしにとっても、意味のあるデュエルになる……いや)

 

 

「勝利! あんたが本気で、あたしに証明できるっていうのなら! このデュエル、絶対負けんじゃないわよ!!」

 

意味のあるものに、してみなさい!

 

 

 

 

 

 

そんな予感が胸をよぎったとき、勝利が口を開いた。

 

 

「さて、どうやらうかつに攻め込んでしまうのは悪手のようだね。かといって、このまま何もしないわけにはいかない……」

 

「なんじゃ勝利。わしの戦術を破って見せるなどというとった割に、ずいぶん情けないことをいうのう?」

 

「まあ、焦らないでよ。言っただろ? デュエルが終わるまでに破るってね。最後に勝って笑うのが僕であればいいさ。それに、別に対抗策がないわけじゃないよ。ブリーズ! 飛翔!」

 

「ファー!!!」

 

そう声をかけると、“BF”が空へと飛翔し、梶木君が出したモンスターの、魚影がとらえられる高さまで飛び立って滞空した。

 

「なーるほど。それがお前さんのモンスターの戦い方っちゅうわけじゃ」

 

「相手が届かない位置から攻撃、ってのは、何も君だけの特権じゃないさ。さあ、これで条件は同じ。ここからが勝負だぜ。梶木君!」

 

「ふっ、面白れぇ! わしのターンじゃい!」

 

梶木が笑顔を浮かべ、ドローした後、真剣な表情で手札を見る。

そう、ここからが勝負。

 

勝利の“BF”が空を飛べるからって、不利にならなくなっただけの話。

お互いに攻撃を届けることが難しくなった、という問題は変わっていない。

 

文字通り、お互いにまず手札をさらした状態。

ならばここから先は、見せた手札で、どれだけうまく立ち回れるかの決闘者の腕。

 

そして、カードとの絆。

 

 

(負けられない……)

 

 

城へ行くために……っていうのは当然だけど。

舞さんに啖呵を切った以上、絶対に負けるわけにはいかない。

 

 

 

「わしはこのターンに、“海月―ジェリーフィッシュ―”を守備表示で召喚じゃあ!」

 

海月―ジェリーフィッシュ―

水属性 水族 星4

 

攻撃力 1200 + 30% = 1560

守備力 1500 + 30% =  1950

 

「……? 海月?」

 

「ふふふ。そう、海月じゃ。残念ながら、“ジェリーフィッシュ”は魚族モンスターと違い、海の中に隠れることはできんが、『海』のフィールドパワーソースを受け、守備力は十分じゃからな! わしはさらに場にカードを一枚セットし、ターン終了じゃ!」

 

自信満々にクラゲを召喚したのち、カードを一枚伏せ、ターンを終了する。

 

 

 

 

梶木

 

???(モンスター 詳細不明)

 

海月―ジェリーフィッシュ―

守備力 1950

 

伏せカード2枚

 

 

勝利

 

BF-そよ風のブリーズ-

攻撃力 1430

 

伏せカード1枚

 

 

 

 

 

(……確かに守備力は高いし、僕のモンスターでは勝てる能力ではない。でもここにきて、海に隠れることができないモンスターをわざわざ召喚する意味があるのか? 考えられるのは……)

 

あのセットカードが罠なのか、それとも……

 

 

「なんにしても、仕掛けなければ、何もわからない、か」

 

「ほう、くるか!」

 

 

「ああ。もう、様子見は終わっていい頃合いだろう? 僕のターン! 僕はカードを一枚セットする。そして……“BF-隠れ蓑のスチーム”を墓地に送り、“BF-そよ風のブリーズ”に対してこのカードを発動し、コンボ攻撃を仕掛ける!」

 

 

ブラックフェザー・シュート

魔法カード

BFモンスターを手札から一枚捨て、BFモンスターでかまいたち攻撃を行う

 

 

BF-そよ風のブリーズ + ブラックフェザー・シュート コンボ!

 

 

「いけえ! “そよ風のブリーズ”! 『ゼッファー・エアー・カッター』!」

 

 

勝利の声を合図にブリーズは梶木のモンスターに対し、思いきり加速をしながら突っ込んでいく。

 

「なんじゃあ? コンボっつーから何をするのかと思えば、結局ただ突っ込んでくるだけか! そんなもん、当たるか!」

 

「いけ! ブリーズ!」

 

ブリーズは思い切り翼を水面にたたきつけた。

その衝撃により、フィールドに思い切り水柱が立ち上がった。

 

が、梶木のフィールドを確認するも、攻撃前と特に変化は見られなかった。

 

(……失敗?)

 

舞は眉間にしわを寄せるが、状況を整理するよりも先に、梶木が動き出した。

 

「ハハハハハ! その程度の攻撃! わしのモンスターたちはびくともしとらんぞ! 鳥風情が海に飛び込んできたことを後悔するがええわ! "デビルクラーケン"! 『粉骨砕身(ゲソ・サブミッション)』じゃあ!」

 

その瞬間、海に近づいたブリーズに幾つもの職種が絡みつく。

 

デビル・クラーケン

水属性 水族 星4

 

攻撃力 1200 + 30% = 1560

守備力 1400 + 30% = 1820

 

「海面からイカが姿を現した!?」

 

衝撃を受ける舞をよそに、勝利は眉一つ動かさずデュエルの動きを見つめていた。

 

「ふははは! そよ風のブリーズ撃破じゃあ!」

 

「……見くびったものだね。梶木君」

 

「……なんじゃと?」

 

「僕が僕の友達の無駄死をよしとするように見えてるなら、検討違いだと言っているんだよ。リバースカードオープン! "スワローズ・ネスト"!」

 

スワローズ・ネスト

魔法カード

鳥獣を墓地に送り、デッキがレベルが同じ鳥獣を1体召喚することができる。

 

 

「っ! あのカード……」

 

舞は、船でのデュエル後のやり取りを思い出していた。

 

 

 

 

 

 

『……? 舞さん、このカードは?」

 

『デュエルで負けておいて、さらにカードをもらうだけだなんて、あたしの決闘者としてのプライドが許さないわ。あんたもあたしのカードを一枚持っていきなさい。鳥獣サポートカードだから、あんたも使えるはずよ』

 

『"スワローズ・ネスト”……』

 

 

 

 

『いい? 勝利。今日のところはあたしの負け。それは認めてあげる

 

でも、これも覚えておきなさい。

 

あたしは負けたままなんて絶対に許さない。いずれ対等な立場で、もう一度あんたと全力でぶつかりあい、あんたを倒すわ!』

 

 

 

 

『舞さん……ああ、わかったよ。このカードは受け取る。舞さんとの再戦の約束の証として』

 

 

 

 

 

 

「"スワローズ・ネスト”の効果により、“BF-そよ風のブリーズ”は、新たなBFモンスターへと生まれ変わる!」

 

瞬間、"デビル・クラーケン"に捕まったブリーズの姿が消え、正面に新たなモンスターが召喚される。

 

「現れろ! “BF-月影のカルート”!」

 

 

BF-月影のカルート

闇属性 鳥獣族 星3

 

攻撃力 1400 + 30% = 1820

守備力 1000 + 30% = 1300

 

 

「か、カードが生まれ変わったじゃとお!?」

 

「まだバトルは続いているぜ! カルート、"デビル・クラーケン"に攻撃! 『カラートカット』!」

 

「っ! しまった!(海中への回避が間に合わん!)」

 

 

 

BF-月影のカルート

 

攻撃力 1400 + 30% = 1820

 

 

デビル・クラーケン

 

攻撃力 1200 + 30% = 1560

 

 

 

「"デビル・クラーケン"のもともとの攻撃力は1200。よって、カルートの攻撃力1820との差分のダメージ

が梶木君のライフから削られるよ」

 

 

梶木 LP 2000ー620 = 1380

 

 

(ありがとう。舞さん)

 

目線で感謝を述べると、舞は「っふん!」といいながら顔をそらす。

 

「っかーっ! やられたわ! まさか最初に突っ込んできたのが、デビル・クラーケンを海中から引きずり出すためのおとりだったとはのう。やっぱお前は大物じゃ。勝利! じゃが……伏せカードオープン! "激流蘇生"じゃい!」

 

「何っ!」

 

激流蘇生

罠カード

 

海のモンスターが破壊された時、そのモンスターを特殊召喚し、相手に500ダメージを与える

 

 

「この効果によって、"デビル・クラーケン"を蘇生! そして、勝利に500ポイントのダメージじゃあ!」

 

"デビル・クラーケン"が海面から飛び出し、その海水が勝利に襲い掛かる。

 

「うわっ! くっ!」

 

 

勝利 LP 2000ー500 = 1500

 

 

「どうじゃ! 勝利! やられっぱなしではおられんのじゃ!」

 

「……やるね、梶木君。やっぱり君は素晴らしい決闘者だ」

 

 

 

梶木 LP 1380

 

海月―ジェリーフィッシュ―

守備力 1950

 

デビル・クラーケン

攻撃力 1560

 

伏せカード1枚

 

 

勝利 LP 1500

 

BF-月影のカルート

攻撃力 1820

 

伏せカード1枚

 

 

 

 

 

「さあ、今度はこっちの番じゃ。行くぞ勝利! わしのターン!」

 

ドローしたカードを確認し、笑みを浮かべる梶木。

 

 

(来る……このターンの攻防が、勝負を分ける!)

 

 

「まずはカードを一枚セット。へっ、勝利! このターンに、海の神を見せてやるぜよ! 現れろ、"海竜神(リバイアサン)"!」

 

「っ! それが君のエースか!」

 

 

海竜神(リバイアサン)

水属性 海竜族 星5

攻撃力 1800 + 30% = 2340

守備力 1500 + 30% = 1950

 

 

「さらに伏せカードオープン! "ポセイドンの力"! これでさらにパワーアップじゃー!」

 

 

ポセイドンの力

魔法カード

海のモンスターの力をさらに引き出し、攻撃力300アップ

 

 

海竜神(リバイアサン)

攻撃力 1800 + 300 + 30% = 2730

 

 

 

「これでより大きな波でお前の鳥モンスター共も津波で飲み込んでやるぜよ!」

 

「っまずい! カルート、飛翔!」

 

 

BFに指示を出し、攻撃から逃れる準備をする。

 

 

「にがさん! "海竜神(リバイアサン)"! 『ポセイドンウェーブ』じゃあ!」

 

 

梶木のモンスターの攻撃が始まる。"海竜神(リバイアサン)"が海を操り、海でBFを飲み込まんとしてくる!

 

「くそっ! なんて大波だ!」

 

"ポセイドンの力"によって、本来の力以上の大波が作られている。本来、飛行能力を持たない海モンスターはBFには攻撃できないはずなのに!

 

 

「さっき攻撃を仕掛けたカルートは、退避が間に合わない!?」

 

 

「いけえ! "海竜神(リバイアサン)"!」

 

 

 

 

BF-月影のカルート

 

攻撃力 1400 + 30% = 1820

 

 

"海竜神(リバイアサン)"

 

攻撃力 1800 + 300 + 30% = 2730

 

 

 

 

勝利 LP 1500 ー (2730 ー 1400) = 170

 

 

 

 

 

 

「勝利!?」

 

「わははははは! みたか勝利! これがわしの"海竜神(リバイアサン)"の力じゃあ!」

 

(勝利のライフはもう風前の灯……しかも勝利のBFは、基本単体性能が低いカードたちのコンボで戦うデッキ……一度全滅してしまった状態では、立て直しは難しい)

 

「そして当然、潜海奇襲(シー・ステルス・アタック)は継続中。LPでリードした以上、さっきみたいな囮にも引っかかってはやらん!」

 

(そしてわしが伏せたカードは、二枚目の"激流蘇生"。万が一"海竜神(リバイアサン)"がやられたとしても、これを発動して勝利にダメージを与えれば勝ちは揺るがん!)

 

「さあ、これでどうじゃあ!」

 

 

 

 

「……くっくっく」

 

 

 

 

「……な、なんじゃ。何がおかしいんじゃ、勝利!」

 

「おかしいんじゃない、うれしいんだよ。これは、勝ちを確信した笑みさ!」

 

「な、なんじゃと!?」

 

「嘘……」

 

同時に驚愕する、舞と梶木。

だが、その表情の裏は、わずかに違う。

 

「ば、馬鹿なことを。はったりじゃろうが!」

 

(勝利のあの目……はったりとは思えない。まさか本当に、この状況は狙い通りだというの?)

 

 

「嘘でもはったりでもないさ。僕は、カルートに罠を仕掛けていたんだ。カルートの様子を見てみなよ」

 

 

はっとした表情で場を見る梶木。すると勝利のフィールドの、波にのまれた後のカルートに目が留まる。

全身がずぶぬれであおむけになり羽を動かすこともままならない状態であったが、その目の闘志を絶やしてはいなかった。

 

そして、その身には、黒い稲妻を走らせている。

 

 

「さあ、行くよ。これが僕の勝利へのキーカード! 罠カード発動! "ブラック・サンダー”!」

 

「ぶ、ブラック、サンダーじゃとお!?」

 

「まさか、BFモンスターによる雷属性の攻撃!? そんなカードが!」

 

 

 

ブラック・サンダー

罠カード

自陣のBFモンスターが攻撃を受けた際、相手フィールドに電撃攻撃を行って敵ライフにダメージを与える

 

 

 

「このカードは、攻撃を仕掛けてきたモンスターに対し、BFモンスターが生み出す黒い電流を流し、カウンター攻撃を行う。そして、その電流は海を伝い、相手フィールド全体に襲い掛かっていく!」

 

「そういうことね! 海そのものに電流を流してしまえば、梶木のモンスターがどこに隠れていようが関係ない! まとめて一掃することができるわ!」

 

「最後の力を振り絞れ、カルート! 必殺、"ブラック・サンダー”!」

 

『くわぁー!』

 

 

カルートの雄叫びが上がると同時、黒電が海をかけていく。

 

 

これが決まれば、梶木のモンスターは全滅、逆転勝利だ。

……だというのにも関わらず、梶木は余裕そうな表情をしている。

 

 

「……へへへ、正直マジでビビったぜよ、勝利。ここで罠を仕掛けていたとはな……」

 

「……」

 

「だが、お前こそ、わしのことを見くびっていたようじゃな。よく見ろ、わしのフィールドを!」

 

 

「っ! 何よこれ!?」

 

 

勝利よりも先に、舞がフィールドの状況に声を上げた。

カルートの放った電流が梶木の場の、"海月―ジェリーフィッシュ―"へと集まっていく!

 

「わはははは! 海月(ジェリーフィッシュ)を場に出すことで水属性モンスターの弱点である電撃攻撃をすべて無効にすることができるんじゃあ! 当然、海月(ジェリーフィッシュ)以外のモンスターは無傷! 海で戦う以上電撃対策は万全に決まっとるじゃろう、残念だったなあ勝利ぃ!」

 

(梶木は、自分の弱点を理解して対策をとっていた……戦術において、梶木が勝利を……あたしのハーピィを上回っていた……!)

 

 

舞はデュエルが始まる前、「このデュエルは、自分にとっても意味のあるデュエルになる」と考えた。

その予想通り、梶木のデュエル、梶木の戦術をその目で見たという事実は、舞にとって大きく価値のあることだった。

 

 

(でも、なんで……なんであたしは、こんなにもやもやしてるのよ……)

 

 

あたしが想像していたのは、こういうデュエルだった。

でも……

 

 

 

 

(あたしが見たかったのは、こんなデュエルじゃない!)

 

 

 

「ちょっと勝利! あんた、こんなところで負けたら、許さないわよ!!!」

 

 

 

 

「……負けないさ」

 

 

 

 

「……なんじゃと?」

 

「負けないって言ったのさ、梶木君。このデュエル、勝つのは僕だ!」

 

「っ! 往生際が悪いぜよ、黒羽勝利! 海月(ジェリーフィッシュ)が電撃を無効化した以上、わしの勝ちはもう決まって……っ!」

 

言いながら改めて自分の場を見た梶木は、驚愕に息を詰まらせる。梶木が見たのは、"ブラック・サンダー"を吸収したものの、明らかに様子のおかしい海月(ジェリーフィッシュ)

それを見て、勝利は対照的ににやりと笑った。

 

「ど、どうしたんじゃ。海月(ジェリーフィッシュ)!?」

 

「梶木君。君はどうやら、僕が仕掛けたブラックフェザー・シュート(このカード)の効果を理解できていなかったみたいだね」

 

「な、なんじゃと?」

 

いわれた梶木は、はっと声を上げ、1ターン前の攻防を思い返す。

 

 

 

 

『“BF-そよ風のブリーズ”に対してブラックフェザー・シュート(このカード)を発動し、コンボ攻撃を仕掛ける!』

 

『なんじゃあ? コンボっつーから何をするのかと思えば、結局ただ突っ込んでくるだけか! そんなもん、当たるか!』

 

『ハハハハハ! その程度の攻撃! わしのモンスターたちはびくともしとらんぞ!』

 

 

 

 

「ま、まさか……」

 

「そうさ。ブリーズがかまいたちで切り裂いたのは、海中に潜むモンスターじゃない! 海面に姿を見せていた、海月(ジェリーフィッシュ)だ!」

 

「なんじゃとお!」

 

「ま、まさか……梶木が仕掛けた電撃対策を、勝利はさらに読んでいたというの!?」

 

「かまいたちに切り裂かれて傷がついた海月は、電撃を受け止めきることができなかったようだね」

 

「ってことは!?」

 

全員が息をのんだ。

瞬間、海月の身体がはじけ飛ぶ!

 

「よって、カルートの一撃は、有効となる! くらえ、"ブラック・サンダー”」

 

 

『ぴしゃー!!!!!!!!!』

 

 

電撃を受けた海竜神(リバイアサン)とデビル・クラーケンが、海面へと浮かびあがってくる。

明らかに戦闘不能状態だった。

そして、電撃は海を伝い、魔法、罠カード、そして梶木へと到達してライフを削った。

 

 

梶木 LP 1380 → 0

 

 

 

「くっそー!!!!!!!! 負けじゃ負けじゃあ!」

 

 

「ふぅ……勝ったぁ」

 

 

梶木が自分の手札を投げ捨てるのを見て、勝利は肩の力を抜き、勝負は決した。

 

 

 

 

 

 

「おめーといい、遊戯といい、スゲー強えなー!! やっぱ大物じゃー!!!!」

 

「いいや、一手ミスがあろうものなら僕は負けていた。君のほうこそ、素晴らしい決闘者だった。楽しいデュエルだったよ」

 

「そういってもらえるとありがたいぜよ。これで賞金で船を買う夢はパーになっちまったが……お前に負けるんなら、悔いはないぜよ」

 

「梶木君……」

 

「がんばれよ、勝利! そんでまた別の機会があったら、もう一度デュエルしてくれ!」

 

「ああ、もちろんだよ。もう一度、全力でぶつかり合う、最高のデュエルをしよう!」

 

最後に熱い握手を交わし、勝利たちは梶木に別れを告げた。

 

 

 

 

 

 

「舞さん、ありがとう。応援、うれしかった」

 

「応援? 勘違いしないで。まだあんたが負けたら都合が悪いから残っていてほしかっただけ。あのなぞなぞの答えを見せてもらうまではね。答えさえわかってしまえば、あんたも倒すわよ」

 

「もちろん、それでいいよ。でも、僕にとって舞さんの言葉が力になったのは事実だから。それに、このカードも」

 

言って勝利は一枚のカードを取り出す。そのカードは"スワローズ・ネスト"だった。

 

「僕のカードが一枚でもかけていたら、さっきのデュエルは勝てなかった。もちろん、このカードも。僕が勝てたのは、舞さんのおかげだよ」

 

「っ馬鹿馬鹿しい。デュエルはたった一人で戦うものよ。他人の力で勝ちとった勝負なんて意味はないし、応援なんてものにも効果はない。あんたの勘違いよ」

 

「そうかな……そうかもね」

 

勝利は笑った。その表情に、舞は忌々しさと困惑が混ざった言葉にできない感情を噛み殺し、前へと歩く。

 

 

 

(そう……デュエルは独りで戦うもの。仲間にも、ましてや応援なんてものにも、意味はない。なのに……あたしはあの時、声を上げずにはいられなかった)

 

 

『ちょっと勝利! あんた、こんなところで負けたら、許さないわよ!!!』

 

 

(なによ……一回デュエルで負けただけの男の、何を許さないっていうのよ……あたしは、こいつに、いったい何を……)

 

 

 

「……? 舞さん?」

 

「……何よ」

 

「いや……どうかした?」

 

「どうもしないわよ。次はあたしがデュエルするわ。いいわね」

 

「ああ、もちろん」

 

「さあ、いくわよ」

 

 

勝利の手首をつかみ、引きずるように進みだす。

 




途中で切ると短い話が2本できちゃうので、ちょっと長いですが梶木戦終了まで描き切りました。

この作品のためにAbemaで遊戯王見直しているんですが、ドーマ編の舞さんが色っぽすぎてすごい。
この作品はバトルシティまでの構想で止まっていますが、ドーマもちょっとだけ考えようかなと思い始めました。
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