ということは私が書くバトルシティは、これと決勝の残り2戦ということ。終わりが見えてきました。
頑張ります。
とてもどうでもいい話なんですが、
表遊戯が杏子との関係について、勝利、竜崎、舞とそれぞれに会って恋愛相談する。という馬鹿な番外編を思いつきました。
バトルシティが終わったら1話完結で真っ先に書こうかなと思っています。
「……勝者! 武藤遊戯!」
審判磯野の、戸惑いを覆い隠すように放たれた宣言を耳にして、海馬はそれを自覚する。
否、本当はわかっている。
3体のブルーアイズを葬られた時。
……それも違う。
本当は、ブルーアイズの攻撃を受けきられた、ドラグーン・オブ・レッドアイズが召喚されたその瞬間には。
自らの勝利が。
決闘王の称号が。
遊戯を倒すという絶対の目標が。
その手から、零れ落ち消えていくのを感じていた。
感じたうえで、受け入れられないだけだった。
「……俺が、負けた?」
自らの手を見つめ、決闘盤を見つめ、呟く。
認めたくない事実を、自分に言い聞かせるように。
そうしなければ、目を背けてしまいそうになる現実と、向き合うために。
「……嘘だ。兄サマが、負けるなんて」
そんな海馬の気持ちを察してか、はたまたただの素直な心か。
モクバも声を震わせそう呟く。
(俺の戦術に非はなかった……完璧な手札。完璧な僕たち……すべてにおいて勝利へのピースが揃っていたはず……だが、負けた……)
「海馬……これだけは言っておくぜ」
「……遊戯」
打ちひしがれる海馬に、遊戯が声をかける。
「今、俺とお前の間に勝敗の境界は存在するが、力の差はない!」
「くっ! 憐みのつもりか!? 遊戯!」
「……そんなわけはないことは、君が一番よくわかっているはずだぜ。海馬君」
「……勝利」
舞台に上がり、遊戯に並び立つ勝利。
その二人を、海馬は同時に睨む。
「お前の力は、確かにすさまじかった。戦術、手札、心。すべてにおいて、お前は紛れもなく、俺が戦ってきた中で最強の決闘者の一角」
(……はっきり言って決闘の途中までは、勝利を確信していた。海馬がオベリスクに固執している間。己の憎しみに囚われ、それを破壊する力に溺れていた海馬には、負ける気はしなかった)
だが、海馬はその己の感情すらも乗り越えた。
縋り続けた力を、オベリスクを生贄に捧げ、ブルーアイズを召喚した。
(……その後に、俺は確かに負けを覚悟した……城之内君が、来てくれるまでは)
遊戯は、決闘盤に目を落とす。
そしてフィールドと、墓地から取り出した1枚のカード、"真紅眼の黒竜"を見つめる。
「……海馬。俺はあの局面で、真紅眼を持っていなければ、そのまま負けていた」
それは、海馬への心遣いでも、城之内への忖度でもない。
遊戯の中の、純然たる事実だった。
「俺はこれを、貴様との決闘の決着の舞台とはしない! もう一度、這い上がって来い! 海馬!」
「……」
悔しさ。苛立ち。
そしてその狭間に沸く、僅かながらの誇らしさを綯交ぜにした表情で、海馬は1枚のカードを引く。
「フン! 当たり前だ……貴様はいずれ、俺が圧倒的力で倒す! だが……今は黙して引いてやる。アンティルールだ! 受け取れ!」
その瞬間に、1枚のカードが宙を舞う。
遊戯はそれを右手でつかみ、顔の前に運ぶ。
それは、神のカード。
"オベリスクの巨神兵"だった。
「……確かに受け取ったぜ! 海馬!」
「フン……2枚のカードがあったとしても、奴の神のカードを打倒すのは、容易なことではないだろうがな」
背を向けた海馬が、ちらとフィールドの隅に目を向ける。
そこには、壁に寄りかかり、ニタニタとこちらを見つめるマリクがいた。
「フフフフフ……」
しかし、遊戯はその様子を意にも返さずに、海馬に投げかける。
「残念だが海馬……そんなくだらない懸念はしていないぜ。なぜなら……俺の決勝の相手は、もう決まっているからな」
そして、ちらと勝利も見る。
勝利は気恥ずかしそうに、頬を掻いた。
「フン。せいぜいもがくんだな。敗北の未来を、覆すためにな」
そういって、マントを翻しながらフィールドを去っていく。
その去り際は最後まで、『海馬瀬人』だった。
(……海馬君と遊戯君の決闘の腕は、僕から見ても、全くの互角。神のカードの力も、どちらが上回っているだなんてこともなかった。僕も、途中に遊戯君の勝利を確信したけれども……それを海馬君は、完全に覆して見せた。唯一二人の心に差があったとするのであれば、それは、たった一つ)
そして勝利は、遊戯の持つオベリスクに目を落とす。
(……海馬君が決闘中に気づいたこと。神ではなく、自分のデッキ。自分の相棒。そのすべてを信じて戦いきる。彼がたどり着いたそれこそが、遊戯君の全て。遊戯君が何よりも大切にしていることだった。ということくらいかな)
勝利は、ふと自分の拳を見る。
それはいつの間にか、強く強く握られている。
そして、小さく、小刻みに震えていた。
一瞬だけ疑問に思った後、それが武者震いだと気づいた。
(……僕も、立ちたい。彼らと、同じ高みに。そのためには……)
その拳に、優しく手が重ねられる。
顔を上げると、勝利の隣には優しい表情の舞が並んでいた。
そしてその後ろには竜崎がいて、自分の後ろを指さしている。
「あんたが何を考えてるかは、わかってる。でも、それはもうちょっとだけ後でもいいでしょ?」
「ホレ。みてみぃ。お待ちかねの、アホが目覚めよったで」
二人の言葉にはっとした勝利は、期待の表情で振り返る。
そこには、遊戯と腕を合わせる、万全な姿の城之内が立っていた。
「城之内君!」
「おう! 待たせたな! 勝利!」
駆け寄る勝利と、渾身のハイタッチを合わせる城之内。
その手の痺れが、城之内がそこにいる証明であり、勝利はそれが何よりも嬉しかった。
おっと。と声をこぼした城之内が、首のペンダントを外し、勝利へと渡す。
「これ、ありがとうな。勝利。正直あんま覚えてねえけどよ、そいつが、ずっと俺を救ってくれてた気がするぜ。なんとなくだけどな」
「……うん。よかった」
(ありがとう……君のおかげで、城之内君が帰ってきてくれた。やっぱり、マリクを倒すには君の力が必要だ。また僕と一緒に戦っておくれ)
人知れず響き渡った声に、勝利はクスリと笑みを浮かべた。
「……竜崎さん」
「おう。ようやっと馬鹿兄貴が起きよったな」
「っ……はい!」
城之内に寄り添い、目には涙を滲ませながらも頷く静香。
乱暴な言葉でありながらも、竜崎は笑いながら兄妹を祝福していた。
「てめえ竜崎! 誰が馬鹿兄貴だ!」
「あんたなんか馬鹿兄貴で十分よ、全く。あんたが寝てる間、静香ちゃんがどれだけ苦労したと思ってんの。竜崎に頭下げときなさい」
「~~~! てめえら! わけわかんねーこと言って人の事馬鹿にしやがって!」
「まあまあ。そのうち城之内君にも、何が起こったかしっかり話してあげるからさ」
悔しそうに、誰に恨みを向けていいかもわからず睨む城之内。
その様子に、思わず皆が声を上げて笑う。
優しい時間が、帰ってきた。
全員の心に、光が戻ってきていた。
「そうだ! おい、竜崎! 見たか! 最後まで遊戯と一緒に戦った、真紅眼の雄姿をよー! ガハハハハ!」
「ったく、どいつもこいつも……」
城之内に肩を組まれた竜崎は、そっぽを向く。
誇らしげな城之内の表情につられ、緩むのを見られたくなかったのだろうと、勝利は気づいていた。
「ふふっ。でもやっぱ、真紅眼はあんたには過ぎたカードってことね。あんだけ使いこなせるんだし、もう正式に遊戯に渡しちゃえば?」
「もしくは、もう竜崎に返しちまった方がいいんじゃねえの? どうせお前の元にいても、あんな活躍できねえだろ」
「やかましい! いずれ取り返すんだよ! な、遊戯!」
「ああ!」
真っすぐにそういう城之内を信じ、即答で返す遊戯。
彼らの周りに、和やかで幸せな時間が、ゆっくり、優しく流れていく。
しかしその時間は、無限ではない。
再び、磯野の宣言が場に響き渡った。
「それでは、1時間後に、準決勝第2回戦! 黒羽勝利vsマリク・イシュタールの決闘を行う!」
その声を聴いた勝利は、隅に目を移す。
そこには、興奮と愉悦をそのまま表情に並べて嗤う悪魔、マリクがいた。
「ククククク……さぁて、待ちわびたぜぇ……闇の謝肉祭の始まりだなぁ! 勝利ぃ!」
「……安心しな。すぐに終わる。貴様の闇は、僕が打ち破って見せる!」
「ククク……ハハハハハハハハ!!!!!」
「瀬人……」
「……何の用だ。イシズ」
海馬が決闘場から去り、自室に戻るための道すがらに、イシズが立っていた。
なぜそこに。
そんな疑問を、ぺらぺらと語る女ではないことを認識しているため、海馬も無駄に口を挟まない。
「……すでにマリクの闇の力は、極限にまで増幅しています。そのほとんどは、勝利への怨嗟、呪怨の結晶でしょうが」
「フン……その力が自分に返ってくるだけなのだから、自業自得だ」
「瀬人。飛行船で聞いた問いを、今一度お聞かせください。あなたは勝利が。いや、たとえ神のカードを2枚所持した遊戯でさえ、マリクのラーデッキには勝てないと考えていますか」
「……可能性は、限りなく低い。ラーの持つ能力は、それほどまでに恐るべき力だ。だが、俺にとってはそんなものはどうでもいい。すでに俺のバトルシティは終わった。あとはこの憎しみの象徴、アルカトラズを爆破して静めるだけだ」
「兄サマ……」
「安心しろ、モクバ。奴らに飛行船は残しておいてやる」
海馬はそう言いながら、塔を下る方向へ歩を進める。
残りの2戦に、見る価値はない。
彼の背中はそう言い切っていた。
イシズは、首元に触れる。
それは癖になっていた。タウクに未来を託す行為。
しかし、未来に縋ろうとしたわけではない。
イシズはもう、自分が見た未来の道筋から大きくずれた今の未来を受け入れていた。
「瀬人。一つお聞かせください。あなたは、黒羽勝利をどう見ていますか?」
「……なに?」
イシズから飛んできた予想外の問いに、もはやこの場にいる理由を失くした海馬の足が止まる。
振り返るとイシズは、いつも通り何を想うか見えぬ表情で海馬を見つめていた。
「神のカードを持たぬ。石板の戦いに残る戦いの者でもない。しかし、勝利は確かに、あなたと私の導きによって開催したバトルシティの最終章にたどり着きました。これはただの、偶然ですか?」
「フン。下らん。実に非論理的だ。言ったはずだ。俺は3000年前の遺物に記された言葉になど興味はない。黒羽勝利が残った理由? そんなものは、一つしかない。決闘を、勝ち残ったからだ。運命などという戯言で生き残れるほど、この場所は軽くはない。だからこそ、奴はここで負けるのだ。神の力に、ひれ伏してな」
海馬とて、勝利の実力を認めている。
カード捌きとプレイング、その力へのリスペクトを言葉から感じる。
そしてそのうえで、勝てないと断じる。
盲信や、意地といった感情のひいき目ではない。
全てを正しくとらえたうえで、海馬が下した判断だった。
「それとも、奴がここにたどり着いたことも運命、とでもいうつもりか? ならば聞いてやろう。貴様らが宝のように抱えているあの石板。あの場所に、奴は出てきていない」
(そう……オベリスクとオシリスがぶつかり合った際の、あの幻影……石板の戦いを幻視したあの瞬間にさえも、勝利の姿はなかった……)
海馬は、思い出す。
遊戯と全力でぶつかり合った果てに生まれた、あの光の中で見た1シーン。
確かに、その石板の光景を、海馬たちは見た。
下らぬ幻影。過去を求める遊戯たちが生み出した、ただのサブリミナルの一種。
そう一笑して終わりの代物だが、それらを武器として取り出すのであれば、それ相応に対応する。
「貴様らのいう過去が、このバトルシティで繰り返されているというのであれば、奴は、まさしく遺物。そもそもこの場に上がってくること自体が、ふさわしくない決闘者ということになる。ならばなおのこと、ラーを持つマリクに勝てるどおりはない。違うか?」
「いいえ。違いません。私も、そう思っていました」
思っていました。
はっきりと、過去形で口にしたイシズ。
その様子に、思わず海馬も言葉を止めた。
「……未来は、変わった。故に、勝利が勝つ可能性はある。そう言いたいのか?」
「いいえ。それもありますが、違います」
海馬の静かな問いに、イシズは力強く否定を返す。
それに怒ることもなく、海馬は次を待つ。
「未来は、誰にでも変えることができる。私は、それを学びました」
「……フン。当たり前だ。未来に従うやつに――光はない」
そういいながら、海馬は腕を組む。
思い出されるは、先の決闘。
オベリスクで押し切ると決めた海馬の手を止めた、あの一瞬のイメージ。
そして……自分の心を襲い始めた、あの寂寥感。
海馬は、思い返した。
そして、感じていた。
自分はあの瞬間に、未来を変えた。
「だからこそ……私は、信じると決めました……勝利の、未来を導く力……未来を、切り開く力を」
「フン。結局のところ貴様は、この舞台に自分が立てなかったことを正当化したいだけにすぎん。自分を打ち破った黒羽勝利という男が、軽々と敗北する雑魚であることが認められずにあがいている。それだけにしか見えんな」
「……そうなのかもしれません。しかし、勝利が、遊戯がマリクに敗れた時には……覚悟はできています」
(っ! こいつ……弟を救えなかったとしたら……このアルカトラズとともに海に消える覚悟を……)
弟。
モクバをちらりと見て、海馬は震える。
弟を想い、弟の心を取り戻すために、命を懸ける。
海馬にも、心当たりがある想いだった。
(……それを賭けるだけの意味が。奇跡を起こすだけの力が、奴にはあるというのか……)
最後に、イシズを見る。
やはり、瞳に曇りはなかった。
そして、身を翻す。
目指す先は、天空決闘場。
「……面白い。ならば、見定めてやる。勝利に、本当にそれだけの力があるかどうかをな」
「勝利……いよいよよ」
「……うん」
背中を軽くたたいた舞から熱を受け、一歩前に出る勝利。
決闘盤を構えると、いつにもましてすごい量の友達が、デッキの中から飛び出してきた。
『ぴぃ!』
『かぁ!』
『くわぁ!』
『がーがー!』
「ちょっ……みんな、わかった。わかったから、落ち着いて」
心躍る決闘に期待して、はしゃいでいる。という様子ではない。
むしろ、これから起こることを予感し、いてもたってもいられずに出てきた、といった雰囲気だった。
だからこそ、勝利も無暗に押さえつけることはせず、一人一人を静かに宥め、デッキにしまっていく。
舞もまた、自分の肩に止まるブリザードたちを優しく指に乗せ、ざわつきを包み込んであげるように羽を撫でる。
「……ゲイル。ブリザード。みんな……勝利のこと、お願いね」
『ぴぃ!』
『かぁ!』
舞の言葉に後押しされたか、皆が勢いよくデッキに戻っていく。
それを見た勝利はデッキを撫で、大きく息を吐いた。
デッキの準備、友達の意気込み。
決勝という未来で待つ、遊戯という好敵手。
舞台はすべて整っている。
だというのに、彼のざわつきは収まるどころか、警報を鳴らす速度を上げていった。
「……勝利」
「……大丈夫。もう、覚悟はできてる。勝つよ。勝って、遊戯君の待つ決勝に行くんだ」
「その意気だぜ。勝利君」
「頼んだぜ、勝利」
遊戯が、城之内が、それを合図に皆が駆け寄ってくる。
皆これから起こることを理解しているからこそ、勝利を元気づけようとして、しかし前向きになり切れずに言葉を濁していた。
「あのマリクの裏人格は、危険極まりねえ。相手を決闘で倒す以前に、苦しみを与えて喜んでやがる、残忍な野郎だ」
「うん……」
拷問で苦しめ、溶岩で炙り、不死鳥の炎で魂ごと焼き切る。
もはや遠い昔の事のようだが、皆の脳裏にはその様子が鮮明に焼き付いている。
あってはならない、史上最悪の決闘。
その諸悪の根源が今、勝利の正面に立って笑う。
「フフフフフフ」
「くそっ……俺の力じゃあ、あいつには勝てなかった……俺が、不甲斐ねえばかりに……」
「それは違うよ。城之内君」
拳を握り、項垂れる城之内に、勝利がそう言って笑う。
その笑顔は、力みの取れた、優しい笑顔だった。
「あの決闘は、城之内君の勝ちだ。城之内君は、その身一つで、神に抗った。そして君の力は、確かに神に届いていた。君は、神に勝ったんだ」
「……勝利」
「君は……素晴らしい決闘者だ。僕が、それを証明して見せる……奴を、マリクを倒して!」
「フフフ。できるといいねえ」
「よっしゃあ! やっちまえ、勝利!」
「がんばって! 勝利君!」
「負けんじゃねえぞ! 勝利!」
「君の力、見せてやれ! 勝利君!」
「お願い! 勝って! 勝利さん!」
城之内が。
杏子が。
本田が。
御伽が。
静香が。
勝利の背中を押して、舞台を降りる。
「……ワイが言ったこと、忘れてへんやろな。勝って、1位になって来いや。それでこそ、お前を倒す意味があんねん」
「……ああ。任せて」
竜崎がすれ違いざまに、背中を叩く。
「……無事に、帰ってきなさいよ。約束、破ったら一生許さないから」
「くっく。破らないよ。楽しみにしてるんだよ? デート」
そっと抱きしめる舞を、優しく抱きしめ返す。
「勝利君」
「……遊戯君」
「……ここは、通過点だ。俺と君と、みんなとの、輝かしき未来のための!」
「……ああ。僕は、勝つ!」
拳と拳を合わせ、軽く打ち鳴らす。
そして勝利は、マリクと向かい合った。
「ただいまより! バトルシティトーナメント、準決勝第2回戦! マリク・イシュタールvs黒羽勝利の決闘を開始します! 互いのデッキを、カット&シャッフル!」
デッキを混ぜ合う二人の様子を、真剣な表情で皆が見つめる。
この瞬間の重要性を、全員が理解していた。
「勝利のデッキには、神のカードはあらへん。その代わりに、どこを引いても戦えるっちゅうのが、勝利の『BF』の魅力や。どんなカットをされようが、大した影響はあらへん」
「マリクのデッキは、神のカード、"ラーの翼神竜"の速攻召喚コンボで戦うデッキ。俺のモンスターも、ラーの能力で一瞬にして粉砕されちまった」
「しかも……ラーに隠された能力は3つ。まだとんでもない能力が1つ隠されている」
「ああ……勝利君は、逃げてちゃ勝てない……だが、ラーが召喚されるタイミングは、遅ければ遅いほど戦いやすくなる。このカットは、重要だぜ」
勝利から、カットされたデッキを嬉しそうに受け取るマリク。
それを見て、勝利はデッキをふんだくるように受け取り、先にディスクにセットする。
「よーくシャッフルできたか? ラーのカードがデッキのそこに沈むようにってよ」
「……さあね。でも、ラーにばかり固執していたら負けちゃうぜ。城之内君に負けた時みたいにね」
「「……」」
最後に互いに一睨みした後、距離をとる。
すでに二人の間には、闘志がぶつかり合っていた。
「よっしゃ! いけえ勝利!」
「絶対勝てよ!」
「では、これより! マリク・イシュタールvs黒羽勝利!」
マリク LP 4000
「デュエル!」
勝利 LP 4000
「さあて、俺の先攻だが……まずはこいつを見な」
いうや否や、マリクのロッドが怪しく光り、闇があたりを覆い始める。
勝利はその異様な光景にも、怯む様子はなかった。
「闇のゲーム……一辺倒だね。残念ながら、覚悟は決めてきた。その程度じゃ、脅しにはならないよ」
「フフフ……焦るなよ。まだ準備が完成していないんだからな。貴様を漆黒の闇に沈めるために、どうするべきかをずっと考えてたんだよ……だけど、やはりこれだろうってなあ」
そういった直後、再びロッドが怪しく光り……
背後から、どさりと音が鳴った。
「舞さん!? どうしたの!?」
「おい! 舞! しっかりしろ!」
「っ!?」
マリクの行いに精神を揺さぶられることなく、淡々と言葉を受けていた勝利が、思い切り動揺して後ろを振り向く。
そこには、力なく横たわる舞の姿があった。
「貴様ぁ! 舞さんにいったい何をした!?」
「フフフ……この闇のゲームはなあ、生贄どもの饗宴なんだよ。貴様にも見えるだろう。こいつが」
マリクが自分の背後を指さす。
すると、それは闇の隙間からゆっくりと姿を現した。
「そ、そいつは……マリク!?」
「そう。俺の主人格サマよ」
マリクは空中に四肢を固定され、項垂れている。
原因は不明だが、少なくとも健常な状態には見えない。
「勝利ぃ。これは俺たちの因縁の決闘であると同時に、千年アイテムを持つ者のミレニアムバトルでもある。わかるよなあ。貴様も持っているんだろう?」
こいつは、どこまで把握しているのか。
しかし、ここで惚けても意味はないと、勝利は胸ポケットから千年タウクを取り出す。
「ふっ……やはりな。何故勝ち残ったわけでもない姉上様がこんな場所にいるのかと思っていたが……」
マリクが視線を観覧の方へ向ける。
するとそこには海馬の横に立ち、決闘を、マリクを見つめるイシズの姿があった。
「イシズ! お前……」
「……」
「姉上様もまさかこんな奴に、タウクを託すことにするとはね。まっ、俺としちゃあ姉上様より戦いやすくなってくれて助かるがね」
「そんなことはどうでもいい……質問に答えろ! いったい、舞さんに何をしたんだ!?」
「ククク……もう気づいているんだろ? 俺とお前の、賭け金をそろえてやったのさ。後ろをみな」
勝利は、血が零れそうな勢いで怨恨を押しつぶすように唇を噛みしめ、恐る恐るという様子で振り返る。
勝利の目線の先には、最悪の、予想した光景が広がっていた。
「……しょう……り」
「舞さん!」
マリク、奴曰く主人格、と鏡合わせの状態で、空につるされている舞。
ちらと目線をずらすと、未だ横にした舞の体を必死に開放する城之内たちの姿。
勝利は、さらに理解して舌打ちを追加した。
「……舞さんの魂を、抜き出したとでもいう気か」
「ご明察。察しの良さはさすがじゃないか。このゲームは、互いの生贄が闇へと消えるまでLPを削られた方の負けとなる。敗者はもちろん、魂を食われた生贄も同時に闇へと消えていく。まさに、デスゲームってわけだ!」
「……どこまでも、ふざけた真似を!」
「待って、勝利」
思わず拳を握り、苛立ちをそのままに決闘を進めようとした勝利に、待ったがかかる。
その声の主は……理不尽にも生贄に呼び出された、舞だった。
「いいわ……あたしのことは気にせず、戦って。いくらあたしの体が闇に消えるって言われたったって、怖くないわ」
「舞さん!?」
舞さんが、消えるのを気にせずに戦えって……
「そんなの、できるわけ……」
「勝利。ちょっと、不謹慎だけどね。あたし、嬉しいわ。あんたと一緒に、戦えて」
舞のその言葉に、勝利が固まる。
くすりと笑い、舞が続けた。
「あたしは、何度もあんたに助けられてる。あんたは、お互いさまっていうんでしょうけどね。あたしは、いつも思ってる。あんたが苦しんでるとき、変わってあげられたら。辛く苦しんでいるあんたと、辛さを共有してあげられたら。なんてね」
「……舞さん」
舞は、真っすぐにマリクを見た。
後に続けと、勝利に告げる。
そんな強い、誇り高き決闘者の眼差しだった。
「勝利……一緒に、勝つわよ」
それを聞いて、勝利は笑う。
心に、興奮が戻ってくる。
「……恨むんなら、姑息な自分の手を恨むんだね。マリク。僕はいま……最強になったぞ!」
「ほざけ! 2人仲良く、闇の餌食にしてやるよ!」
というわけでマリクvs勝利(舞)戦
遊戯が相棒。なら、勝利と戦うなら絶対舞さん。
ということで、こうなりました。
果たして、勝利は勝つことができるのでしょうか。
お楽しみに。
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活動報告の方で、乃亜編のアイデアを募集しています。
・乃亜編のアイデアについて
勝利たちの『デッキマスター能力』について、募集中です。
ぜひお知恵をお借りできると幸いです。よろしくお願いします。