本日より、再始動します。
「おいおい……一体、どうなってんだよ」
「俺たちには、勝利とマリクが二人で戦っているようにしか見えねえが……」
「何が起こっているの……どうして、舞さんが倒れちゃうのよ!?」
「……舞さん」
舞を抱えて、悲痛な声を上げる杏子と静香を尻目に、遊戯は目を細めて状況を見る。
『……もう一人のボク……あれって……』
(ああ……勝利君は、闇のゲームに巻き込まれている。おそらく、舞の魂も)
そして遊戯が、海馬の隣でフィールドを見つめるイシズに目線を移す。
イシズもまた、神妙な面持ちでフィールドを見つめていた。
(……マリクを巣食う邪悪な力は、勝利への怨念によってさらに力を増している。それがこのバトルシティを支配しきったとき、空は永遠に闇に包まれ、それはいずれ世界にさえ及ぶ……)
イシズは目を瞑り、自分の無力と、全てを託した相手を信じることしかできないもどかしさを痛感しながら、祈るように手を合わせる。
(勝利……マリクを、お願いします。あなたなら、できる。私は、信じます)
「さあて、始めるとするかね。俺は手札から、永続魔法、"怨霊の湿地帯"を発動!」
怨霊の湿地帯
永続魔法
モンスターは召喚・特殊召喚されたターンには攻撃できない
「このカードが存在する限り、モンスターは召喚されたターンには攻撃できなくなる。フフフ……準備が整うまでは、ゆっくりやらせてもらうよ」
「……」
勝利が苦しそうにしていることに、舞はすぐに気づく。
敵が勝利の戦術に効果的なカードを選択している証拠だった。
(勝利のデッキは、1体1体の攻撃力はそう高くない代わりに、一気にモンスターを展開しての爆発力で勝負するデッキ。召喚したターンに攻撃できないんじゃ、マリクより早く展開して、ラーが出てくる前に決まるという戦術はとれない……さすがに一筋縄でいく相手じゃないわね)
「さらに俺は、"ボーガニアン”を守備表示で召喚!」
ボーガニアン
闇属性 機械族 星3
攻撃力 1300
守備力 1000
自分ターン開始時に相手に矢を放ち、600ダメージを与える
「"ボーガニアン”はターン開始時に貴様のLPにダメージを与えるカード。さあ、早く突破しないと、お前のLPはどんどん削られていくぜ? カードを1枚セットし、ターン終了」
「ちっ……あの野郎。早く突破しろっつったって、あの魔法の効果で攻撃できねえんじゃねえか」
「そういう戦術だろうね。厭らしい手だよ」
「勝利君……どうするのかしら」
(これは、闇のゲーム……ダメージを与えられるたびに、プレイヤーを苦痛が襲う。そしてそれは、僕のLPとお運命を共有している舞さんも……)
勝利が、一瞬だけ舞を見る。
それに気づいた舞が、固定されている腕をもどかしそうにしながら勝利を睨んだ。
「勝利。あたしへのダメージを気にして戦術を曲げるような事したら、この決闘終わった瞬間あんたと別れてやるからね」
その言葉に、思わず勝利はきょとんとした後、クックと声を鳴らして笑う。
(拘束されてなかったら、頭をはたかれてたんだろうな。僕は)
「……うん、ありがとう。僕は大丈夫だ。勝とう、舞さん」
「……当たり前よ!」
「おうおう。美しき愛情だねえ。それが決闘に、良いように運べばいいけどな」
「言ってろ! 僕のターン、ドロー! フィールド上にカードが何もない場合、このモンスターは特殊召喚できる! 来い! "BF-逆風のガスト”!」
BF-逆風のガスト
闇属性 鳥獣族 星2
攻撃力 900
守備力 1400
フィールドにカードがない場合、特殊召喚できる
フィールドに風を巻き起こし、逆風空間を作る
「さらに手札から、"黒い旋風”を発動!」
黒い旋風
永続魔法カード
このカードがフィールドに存在する限り、『BF』の召喚時に、より攻撃力の低い『BF』を手札に加える
「よっしゃ来たぜ! 勝利の十八番!」
「あのカードがあれば、勝利君はモンスターを召喚する度に追加でモンスターを手札に加えることができる! 後続を途切れさせずに攻め立てることができるよ!」
「……理想的な初手。だからこそ、奴の"怨霊の湿地帯"が効きよる。本来なら勝利は、一気に攻め立ててLPを削ることができるターンやった」
「ああ……だからこそ、このターンの勝利君がどういう選択をするかは、大きな分かれ目になるぜ」
「そして僕は、ガストを生贄に、"BF-流離いのコガラシ”を召喚!」
BFー流離いのコガラシ
闇属性 鳥獣族 星6 (チューナー)
攻撃力 2300
守備力 1600
フィールドのBFが破壊された時、手札から特殊召喚できる
『ギャース!』
コガラシがフィールドに現れ大きく翼を広げると、それに呼応するように漆黒の風が舞い上がる。
「そして、コガラシが召喚されたことで、"黒い旋風"の効果が発動! デッキから、"BF-黒槍のブラスト"を手札に加える! そしてそのまま、ブラストを特殊召喚!」
『クワッ!』
BF-黒槍のブラスト
闇属性 鳥獣族 星4
攻撃力 1700
守備力 800
BFがいるとき特殊召喚できる
モンスターの守備力にもダメージを与えることができる
「おおっ! さっすが勝利! 一気にモンスターを召喚したぜ!」
「頑張れ! 勝利さん!」
「……僕はこれで、ターンエンド」
マリク LP 4000 手札4枚
ボーガニアン
守 1000
怨霊の湿地帯
勝利 LP 4000 手札3枚
BF-流離いのコガラシ
攻 2300
BF-黒槍のブラスト
攻 1700
黒い旋風
「……そのままターンを終了したか」
「次のターンの攻めに賭けたんか……それとも、他に理由があるんか」
(……城之内君との決闘で奴のラーの特殊能力のトリガーは、"死者蘇生"による蘇生効果だった。もしも、残されたほかの効果も"死者蘇生"をトリガーとしたものだったとしたら……マリクの戦術は……)
勝利が黙って考え込む中、不愉快な笑い声が場に響き渡る。
「フハハハハ! 俺のターン、そしてこの瞬間に、"ボーガニアン"の効果発動! 勝利に苦痛の矢を放て!」
"ボーガニアン"の腕から放たれた矢が、勝利の胸を射抜く
勝利 LP 4000 ー 600 = 3400
「があ!」
「きゃあ!」
「勝利!?」
胸を抑える勝利に、ギャラリーが反応する。
『やっぱり! 闇のゲーム!』
「くそっ……大丈夫、舞さん?」
「お馬鹿。言ったでしょ、気にすんなって。大丈夫よ、これくらい」
舞が笑う。
しかし、そんな舞の左腕に闇が容赦なく侵食する。
覚悟していたものの、悍ましい現実に思わず勝利は目を逸らした。
「フフフ。闇の恐怖が、始まったなあ。果たして、その態度はいつまで持つかな? 俺は手札から、"強欲な壺"を発動」
強欲な壺
魔法カード
デッキからカードを2枚ドローする
「ちっ……ドローカード」
思わず舌打ちする勝利がうれしかったのか、さらに口角を吊り上げたマリクが意気揚々とカードをディスクに置く。
「カードを2枚セット。そして、モンスターを1体セットし、ターンエンド」
マリク LP 4000 手札3枚
ボーガニアン
守 1000
伏せモンスター1体
怨霊の湿地帯
伏せカード2枚
勝利 LP 3400 手札3枚
BF-流離いのコガラシ
攻 2300
BF-黒槍のブラスト
攻 1700
黒い旋風
「くそっ……攻めてきやがらねえ……」
「城之内君の時と同じく、じっくり勝利君を苦しめるつもりなのか……」
「勝利さん……」
矢を打たれた胸を抑える勝利の姿に、心配そうに見つめる城之内たち。
しかし遊戯と竜崎は、別の懸念に顔を歪めていた。
「遊戯、あの伏せカード……」
「ああ。おそらく、あれは最終準備だ。ラーで、勝利君を仕留めるための」
二人のその予想を聞いた海馬が、心の中で頷く。
表情や声には出さないが、ラーの効果を知りえずにマリクの戦略にたどり着いている二人の鋭さに感嘆していた。
(あのセットカード……おそらく、勝利の攻撃を止めつつ、ラーを墓地に送るカード。それによって奴は、ラーを蘇生することによる、『ONE TURN KILL』コンボが発動する。さあ、勝利。貴様は一体、神をどう突破する?)
「僕のターン、ドロー!」
勝利は手札を一通り確認した後、マリクを見る。
マリクの愉快そうな嫌な笑みが、勝利の判断を鈍らせる。
(前のターンに召喚したコガラシとブラストは、怨霊の呪いを振り切り攻撃できる。でも、僕の手札に、魔法・罠破壊カードはない。つまり、奴の3枚の伏せカードに無警戒に突っ込んでいくことになる)
動きたい。しかし、動けない。
闇のゲーム。
魂を賭けた戦いを前に、自分の判断が歪みかける。
攻めるべき。
そう判断する直感を、勝利の理性が咎めようとしていた。
「勝利」
「舞さん……」
「あんたとあたしは、一緒に戦ってる」
「……うん」
「だから……あたしは、あたしにできることをする」
勝利が、声の方向を見る。
優しい顔で、勝利を見つめる舞の姿が、そこにある。
「あたしは、あんたの直感と、あんたの心を信じてる。想いがままに戦いなさい。そうすれば、あんたは勝つ!」
「っ!」
「あんたにとってこの決闘は、単なる通過点よ! あんたには、目指すべき場所がある」
舞の言葉に、後ろを見る。
背後には、遊戯が。勝利の仲間たちが、そこにいた。
「いけぇ! 勝利!」
「勝利君! 負けちゃだめよ!」
「マリクをぶったおせ! 勝利!」
「勝利君! 君と俺との未来は、こんなところで潰えやしないぜ!」
「……みんな」
「あんたは、あんたの思う道を行けばいい。まっすぐ、進め! 勝利!」
勝利は、背中を思い切り叩く舞の姿を幻視して、苦笑いしながら舞を見る。
「……もう。敵わないなあ、舞さんには」
「何言ってんの。あんたが勝たなきゃいけないのは、あたしじゃないでしょ?」
「……うん。そうだね」
そして勝利は、軽く自分の頬を張って、真剣な表情をマリクに向ける。
僅かに残った心の陰りを振り払い、自分を睨む勝利の顔を疎ましそうに見るマリク。
「今一度言うぜ。マリク! 僕はもう、闇も、お前も怖くない! 僕は、勝つ!」
「……フン! やってみな。ラーがお前を、一瞬で闇を見せるさ」
「バトル! コガラシで、"ボーガニアン"に攻撃! 『木枯らし荒らし』!」
弓を番えるコガラシ。
攻めを選択した勝利。
その選択をマリクは、鼻で笑う。
「ハッ。伏せカードオープン! 罠カード、"因果切断"!」
因果切断
罠カード
手札を1枚捨てることで、相手の場のモンスター1体を除外する
さらに墓地の同名モンスターも除外する
「このカードによって、貴様のモンスターを次元の穴へと引きずり込み、ゲームから取り除く!」
瞬間、真後ろに現れた穴にコガラシが飲み込まれる。
構えた弓がカランと音を鳴らし、放たれることは敵わなかった。
「くっ……」
「まあ、このカードの発動コストとして、手札1枚を墓地に捨てる必要があるがね」
マリクは、そっとカードを墓地に送る。
その時の笑みを、見逃す勝利ではない。
(……今のカード)
「……バトル続行! ブラストで、ボーガニアンを攻撃! "デス・スパイラル"!」
「ハハハ! 伏せカードをもう1枚発動! 罠カード、"邪神の大災害"!」
「っ!?」
邪神の大災害
罠カード
攻撃宣言時に発動
フィールドの魔法・罠カードをすべて破壊する
ブラストが攻撃し、"ボーガニアン"を破壊したのを起点に、二人の間に漆黒の台風が巻き起こり、両者のフィールドに襲い掛かる。
BF-黒槍のブラスト
攻 1700
ボーガニアン
守 1000
マリク LP 4000 ー 700 = 3300
ブラストの槍が守備力を貫通し、マリクのLPを削る。
それによって、マリクの分身、宿主のマリクの身が闇に消える。
しかし、マリクは何事もないかのように、決闘を進行する。
「このカードによって、お互いのフィールドの魔法・罠カードはすべて破壊される! 貴様のその煩わしい永続魔法はこれでおさらばだ!」
「くっ……"黒い旋風"が……」
「安心しな。この効果で俺の"怨霊の湿地帯"も墓地に送られる。お前を縛り付けていた魔法はもうなくなったよ。フフフフフ……」
マリク LP 3300 手札2枚
伏せモンスター1体
伏せカードなし
勝利 LP 3400 手札4枚
BF-黒槍のブラスト
攻 1700
伏せカードなし
(……"黒い旋風"を脅威に感じ、早い対策をとった……なんていう、消極的な理由なわけはない。おそらく、次のターンに、奴が神を召喚する布石)
勝利は、一つ息を吐く。
張り詰めた空気が、遊戯たちにも伝わってくる。
「……次やな」
「ああ……おそらく、マリクの手札にはすでに……」
("死者蘇生"が存在する。問題なのは……その効果)
遊戯たちが見たラーの効果は二つ。
古代神官文字を唱えたものにのみ従う、神を動かすための効果。
LPを犠牲に敵陣のカードを問答無用で焼き尽くす、抹殺効果。
(だがその効果はいずれも、相手のLPを攻め立てるための効果じゃない。おそらくあるはずだ。奴がラーによって勝利君を抹殺するための、最後の効果が)
「さあ。お前のバトルは終わった。それで終わりなら、ターンの終了を宣言しな」
(……次のターンに、奴は仕掛けてくる。温存……なんて、考えている暇はない。直感に、従え!)
勝利の瞳に、力が入る。
それは、覚悟の表れだった。
「僕は……チューナーモンスター、"BF-東雲のコチ"を召喚!」
BF-東雲のコチ
闇属性 鳥獣族 星4 チューナー
攻撃力 700
守備力 1500
「っ! チューナーモンスター!?」
「ってことは、ここで!?」
(出すか……奴の切り札。シンクロモンスター)
「ハハハ! いいだろう! 貴様の切り札と俺の神。どちらが上かを思い知らせてやるよ!」
「行くぞ! 僕はレベル4、"BF-黒槍のブラスト"に、レベル4、"BF-東雲のコチ"を、チューニング!」
暗い天を貫くがごとく、漆黒の風がフィールドを渦巻く。
ブラストに重なる4つの星が、風を纏って力と化し、ブラストの姿を変えていく。
「黒き疾風よ! 秘めたる想いを、その翼に現出せよ!」
(頼む……僕と一緒に、闇と戦ってくれ!)
「シンクロ召喚! 想いを乗せて、舞い上がれ! "ブラックフェザー・ドラゴン"!」
『ファーーーー!!』
ブラックフェザー・ドラゴン
闇属性 ドラゴン族 星8
攻撃力 2800
守備力 1600
シンクロモンスター
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
効果ダメージを受ける場合、代わりにこのカードに黒羽カウンターを1つ置く
このカードの攻撃力は、黒羽カウンターの数×700ダウンする
このカードの黒羽カウンターを全て取り除き、相手フィールドの表側表示モンスター1体の攻撃力を取り除いた黒羽カウンターの数×700ダウンする
攻撃力ダウンした数値分のダメージを与える
「忌々しき竜め……ようやく表れたな。だが、神の前には貴様とて無力であるということを、知らしめてやる」
「僕は、カードを3枚セット。ターン終了」
マリク LP 3300 手札2枚
伏せモンスター1体
伏せカードなし
勝利 LP 3400 手札0枚
ブラックフェザー・ドラゴン
攻 2800
伏せカード3枚
「……勝利の奴、手札全部使いきりよった」
「勝利君も、感じているんだ。次のターンに起こることを」
遊戯と竜崎の頬にも、そろって冷や汗が垂れる。
勝利に吹き荒ぶ向かい風を、彼らもまた決闘者の勘で感じ取る。
「"ブラックフェザー・ドラゴン"は、効果ダメージを無効化することができる。前のターンの"ボーガニアン"のような手段で勝利君にダメージを与えることはできない」
「……ってことは、マリクは攻めてくるしかねえってことだよな?」
「勝利もそのつもりで、"ブラックフェザー・ドラゴン"を召喚してるんやろな。小細工を封じて、神を、迎え撃つつもりなんや」
竜崎の言葉に、決闘者たちだけでなく杏子たちも、ごくりと喉を鳴らした。
舞の体を抱きしめる杏子の腕に、力が入る。
(勝利君……舞さん……)
「俺のターン! 俺は手札を1枚伏せ、"ギル・ガース"を召喚!」
ギル・ガース
闇属性 悪魔族 星4
攻撃力 1800
守備力 1200
「さらに、モンスターをリバース! "墓守の偵察者”だ!」
「っ! あのモンスターは……」
墓守の偵察者
闇属性 魔法使い族 星4
攻撃力 1200
守備力 2000
リバース:デッキから墓守モンスター1体を場に呼び出す
「効果は知ってるよなあ? リバースしたとき、墓守のモンスター1体をフィールドに追加で呼び出すことが出来る。俺は"墓守の長槍兵"を場に召喚!」
墓守の長槍兵
闇属性 魔法使い族 星4
攻撃力 1500
守備力 1000
相手の守備モンスターにダメージを与える
マリク LP 3300 手札1枚
ギル・ガース
攻 1800
墓守の偵察者
攻 1200
墓守の長槍兵
攻 1500
伏せカード1枚
勝利 LP 3400 手札0枚
ブラックフェザー・ドラゴン
攻 2800
伏せカード3枚
「……俺の時と同じ方法で、モンスターを揃えやがった……」
「ああ……」
「せやけど……」
(……城之内の時と違い、マリクはすでにモンスターの召喚を終えている。マリクは、生贄召還を狙ってはいない。つまり、あの伏せカードは……)
ラーの3つ目の能力。
神は地より蘇生する。
再生の術と従者の命を与えよ。
時はひとつであろうとも戦場の敵は炎によって屍と化す。
「さて、先にこいつを発動しておこう。手札から魔法カード、"天よりの宝札"を発動」
天よりの宝札
魔法カード
互いのプレイヤーは手札が6枚になるようにドローする
「このカードによって、カードを6枚ドロー」
「……僕も、6枚ドロー」
「よかったじゃないか。手札が増えて。貴様が、その手札を使う機会は、永遠に来ないがな」
マリクの言葉に、全員の視線が集まる。
その先にあるのは、マリクの伏せカード。
(あのカード……)
(やはり……)
「さあ、行くぜ! 伏せカードオープン! 魔法カード、"死者蘇生"!」
死者蘇生
魔法カード
敵味方問わずモンスターの魂を蘇生させ、味方にする事が出来る
「このカードによって、俺は墓地からモンスターを蘇生する! その対象は当然……」
天が、光り輝く。
その光はまさに、太陽のそれだった。
(……来る!)
「蘇れ! 太陽神、"ラーの翼神竜"!」
The Winged Dragon of Ra
ATTACK 0
DEFFENCE 0
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「……"ラーの翼神竜"……勝利、気を付けて。この感じ……城之内の時とも、また違う」
「……うん」
「ハハハハハ! 気を付けてどうにかなるものか! 見るがいい! 古の呪文により我に与えられし力を!」
マリクが、呪文を唱え始め。
呼応するように、ラーが姿を変える。
(……まただ。この声……『己がすべてを、我が陽に捧げ』……これは、まさか……)
勝利が、自身の体の異変に顔を歪める。
しかし、それよりも大きな異変が、場に現れ始めた。
「ワハハハハ!」
「っ!!? (マリクの姿が……消えていく!)」
「一体、何が起こってんだ!?」
「勝利君……」
「っ! 海馬! ラーの、第3の効果は!」
「……ラーの第3の効果。それは……神との融合」
「そう! 神の最後の能力! それは……自身と神の一体化!」
マリク LP 3300 → 1
ラーの翼神竜
攻撃力 0 → 3299
「マリクの姿が……ラーに取り込まれて……」
その醜悪な姿に、皆が絶句する。
(……自身のLPを1だけ残し、そのすべてを神の攻撃力に変換できる。そして……それだけではない)
「さらに力を与えるのは、俺だけではない! 俺の場のモンスターを生贄に捧げることで、そのモンスターの攻撃力のすべてを吸収!」
その時、大地にラーの炎が走り、フィールドのモンスターを飲み込んでいく。
『『『ギャアアア!!!!』』』
ラーの翼神竜
攻 3299 + 1800(ギル・ガースの攻撃力) + 1200(墓守の偵察者の攻撃力) + 1500(墓守の長槍兵の攻撃力) = 7799
「う、うそ……」
「攻撃力……7799……」
「ラーの攻撃は"ブラックフェザー・ドラゴン"でも受けられねえ!」
「それどころか、このままだと勝利のLPも0になっちまう!」
(勝利君……)
(……どうする。勝利)
「さあ、覚悟しろ。勝利。神の一撃で、血の一滴まで焼き尽くしてやるよお!」
「ぐっ……(出力が、予想を超えすぎてる! まずい!)」
この力は、受けきれない。そう勝利は悟る。
しかしその瞳から、闘志の灯火は陰りはしなかった。
「伏せカードオープン! "闇次元の解放"!」
「……何?」
闇次元の解放
永続罠
ゲームから取り除かれた闇属性モンスターを闇の間から引き戻す
「このカードの効果によって、ゲームから除外された流離いのコガラシを、特殊召喚する! もう一度、力を貸してくれ! コガラシ!」
『ギャース!』
勝利の呼びかけに答えるように、フィールドにコガラシが舞い戻る。
しかし、ラーの上からそれを見るマリクは、その行動を羽虫の足掻きほども気にしてはいなかった。
「フハハハハハ! その程度で、神の攻撃が止まると思うか! バトルだ! "ラーの翼神竜"よ! 忌まわしき黒羽の竜を、葬り去れ! 『ゴッド・ブレイズ・キャノン』!」
ラーが、構える。
その身に集まりし力には、マリクの怨念、執念、全てが宿っていた。
「死ねえ! 黒羽勝利ぃ!」
「死んでたまるか! 僕には、目指すべき明日がある! 伏せカードオープン! "BF・アンカー"!」
「っ! あれは!? 竜崎の時に使ってた!」
「勝利!!」
BF・アンカー
罠カード
「BF」モンスター1体を生贄に捧げる
場のシンクロモンスター1体に、「BF」の攻撃力を加算する
「このカードによって、コガラシを生贄に捧げ、"ブラックフェザー・ドラゴン"の攻撃力をアップする!」
ブラックフェザー・ドラゴン
攻 2800 + 2300(コガラシの攻撃力) = 5100
"ブラックフェザー・ドラゴン"の体が、大きく膨れ上がる。
しかし、ラーの巨大な姿には、力には、遠く及ばない。
「っ! あかん! まだ全然足りひん!」
「これじゃあ、勝利君が負けちゃう!」
「勝利君!」
「負けて、たまるかあ! 最後の伏せカード! 速攻魔法、"イージー・チューニング"!!!」
イージー・チューニング
速攻魔法
墓地のチューナーモンスターをゲームから取り除き、その攻撃力を場のモンスターに加算する
「墓地に送られたチューナーモンスター、コガラシをゲームから除外! そして……コガラシの攻撃力を、"ブラックフェザー・ドラゴン"に加算する!」
「っ……無駄な足掻きを」
ブラックフェザー・ドラゴン
攻 5100 + 2300(コガラシの攻撃力) = 7400
「攻撃力……7400!」
「す、すげえ……けど」
「……竜崎君の時に使った、コンバットトリックコンボ。それを用いても……」
「……ラーは、超えられへんのか!?」
「さあ! すべてを焼き尽くせ! "ラーの翼神竜"!!」
「くっ……"ブラックフェザー・ドラゴン"!!!」
ラーの翼神竜
攻 7799
ブラックフェザー・ドラゴン
攻 7400
LP 3400 ー 399 = 3001
『ファー!!!』
「があああああああああああああああああ!!!!!!」
「きゃああああああああああああああああ!!!!!!」
「っ!!!? 勝利君!?」
"ブラックフェザー・ドラゴン"の悲鳴と共に、勝利の、そして舞の叫びがこだまする。
舞の声は、皆には響かない。
しかし遊戯にはすべてがわかっていた。
(闇のゲームで、身を焼かれる勝利君。そして……その痛みを魂に受ける舞。このままでは、危険だ!)
「勝利ぃ!!?」
「勝利! しっかりしろ!!!」
「がはっ……はあ……はあ……大丈夫……僕は、負けない!」
体を抑えながらも、その体を起こし、前を向く勝利。
しかし、意志が折れていなくとも、ラーの紅蓮の炎が勝利の体を苦しめていることは、誰が見ても明らかだった。
(……"ブラックフェザー・ドラゴン"がダメージを受け止めてくれているから、かろうじて何とかなっているけれど……ここまでのダメージだなんて)
「……舞さん。大丈夫……?」
声を震わせる勝利に、舞は笑いかける。
しかし、舞の顔色も先ほどより濁っている。
ダメージは、確かに刻まれていた。
「……大丈夫よ。これくらい。しっかし……これに生身で耐えたって……やっぱり馬鹿ね、あいつ……」
「……っくっ。ハハハ。そうだね」
舞の言葉に、勝利は思わず吹き出しながら、城之内をちらと見た。
「……なんだよ。あいつら。こんな状況で、笑ってやがる」
(勝利君……よかった。まだ、心は折れていない。それに……あの猛攻に耐えきった、見返りは大きい)
(……『ONE TURN KILL』コンボを、耐えきったか)
ほっと息を吐く遊戯と、少し感心した様子の海馬。
二人は、フィールドへと目を向けた。
「さあ……これで、お前の攻撃は耐えきった。神の力の代償を、受ける時だぜ」
「……代償? なんのことだ?」
「そいつはお前が一番よお知っとるはずやで、城之内」
「フィールドを見るんだ。城之内君」
マリク LP 1 手札6枚
ラーの翼神竜
攻 7799
伏せカードなし
勝利 LP 3001 手札6枚
モンスターなし
闇次元の解放(対象なし)
「ラーの効果は、確かに強力。だがその能力は、1ターン限定の速攻コンボ」
「それは"死者蘇生"で蘇っとる以上、どの効果を使ったとしても変わらへん。そしてマリクは、1撃で勝利を倒すために、LPをほぼすべて使いきりおった」
(そう。それこそが、"ラーの翼神竜"の最大の弱点。だからこそ、俺は"デビルス・サンクチュアリ”で、失ったLPを狙い撃つことでラーを攻略する想定だった)
遊戯たちの言葉に、城之内もはっと声を漏らす。
「ラーはこのターンのエンドフェイズに墓地に戻る……ってことは!」
「勝利が次のターンに攻撃すれば、マリクを倒せるってわけか!」
「すごい!」
「さあ……不死鳥を、墓地に戻しな。融合してお前が賭けた、お前の魂とともに!」
「……フフフフフ。ハハハハハハハハ!!」
勝利の啖呵に、高笑いで返すマリク。
未だラーと一体化するその姿は、悍ましさに磨きがかかる。
その場の温度が少し下がり、何かがひやりと背筋を冷やす。
「な、なんだぁ? あいつ、ピンチすぎておかしくなっちまったんじゃ……」
城之内が、呆れたような目をマリクに向ける。
しかしそこまでは言わずとも、遊戯たちもまた、城之内に近しい想いだった。
(いくら神のカードでも、ここからフィールドに残り続けることはできないはず。ならば、一体何を……)
「全く……保険をかけておいて正解だったよ……おっと、お前にも感謝しないとなあ。城之内ぃ」
「ああ? てめえ、何を……」
「速攻魔法発動! "神秘の中華鍋”!」
「なっ!!?」
「そのカードは!!」
「勝利が、俺にくれたカード……てめえ!!」
「くっ! そういうことか!」
神秘の中華鍋
速攻魔法カード
フィールドのモンスターを生贄に捧げ、攻撃力か守備力の数値分LPを回復する
「このカードによって……俺の力を吸収した、"ラーの翼神竜”を生贄に捧ぐ!」
「なっ!? ラーを!?」
「生贄に!?」
「そんなの、できるの!? ねえ、遊戯!」
「……ああ、できる」
縋るような杏子の声に、遊戯はぴしゃりと言い放つ。
「確かに、神の耐性はほとんどの魔法・罠の力を受け付けない。だが、"神秘の中華鍋”は発動のコストとして、モンスターを生贄に捧げるカード」
「あれが成立せえへんのなら、神のカードを生贄にすることはできへんってことになる。たとえ神でも、ルールは超えられへんっちゅうことや」
「……フン」
「アンティでもらっておいて正解だったよ。このカードによって、ラーに捧げたエネルギーを、再び俺のLPへと変換する!」
(くっ……"神秘の中華鍋”は、モンスターの攻撃力エネルギーをプレイヤーのLPに変換する魔法カード……つまり、ラーとの融合のために使われた不可逆なはずのエネルギーが、マリクの体に戻っていく)
魔法カードによってその身を翻し、神の力をすべてLPへと変換する。
光が強く瞬いたと思うと、マリクの姿が元に戻り、LPも大幅に回復していた。
マリク LP 1 + 7799 = 7800
「ふう。さあて。LPも戻ったことだし、俺はカードを2枚セットし、ターンエンドだ。さあ、お前のターンだぜ? 勝利」
マリク LP 7800 手札3枚
モンスターなし
伏せカード2枚
勝利 LP 3001 手札6枚
モンスターなし
闇次元の解放(対象なし)
「ああ……LPも回復されちゃった」
「しかも、勝利の"ブラックフェザー・ドラゴン”まで破壊されちまった……」
「大ピンチじゃねえのか!?」
「……いや。そうとは限らないぜ」
その呟きに、皆が一斉に遊戯の方向に顔を向ける。
遊戯は、形容しがたい表情を浮かべながら、フィールドを見つめていた。
「……遊戯? どういうこと?」
「確かに勝利君は、切り札を失い、LPも大きく水をあけられた。だが、彼はプレイによる挑発でマリクの"死者蘇生”を引き出したんだ」
「スーパーエキスパートルールでは、"死者蘇生”は1枚しかデッキに入れられへんカードや。つまり、もうマリクのデッキに、ラーを蘇らせるカードはない」
「ってことは!? もう神に怯える必要はねえってことか!?」
盛り上がる本田たち。
しかし、マリクの闇を直感する城之内は、未だ笑顔を見せない遊戯たちに、不安の声を向けた。
「……遊戯、竜崎。本当に、もうラーの脅威は去ったのか?」
その問いに、二人は答えない。
勝利が、断然有利になった。
そう言い切りたいが、城之内も感じているその言い知れぬ空気が、その安易な言葉を許さなかった。
「イシズ……マリクのデッキには、"死者蘇生”を墓地から再生するカードがあるな」
「……はい。それこそが、マリクの仕掛ける罠」
「やはり……」
(勝利。貴様に、超えられるか……)
「……勝利」
「……わかってる」
誰よりも、その空気に、その気配に、その闇に。多大なる強さを感じている勝利と舞が、強い目でマリクを睨む。
「フフフフフ。どうした勝利。お前のターンだぜ?」
(これで終わりなわけはない……奴は必ず……もう一度ラーを召喚しようとする)
自分たちだけが感じる、血が焦げる匂い。
口に広がる、鉄分の不快感。
だが運命の幕は、まだ上がり切ってすらいない。
闇の決闘は、始まったばかりだった。
さて、マリクvs勝利戦。
まずは1度目の、ラーの召喚になります。
果たして、何回召喚されてしまうのか。
そして、勝利はどうするつもりなのか。
今のところの想定だと、マリクvs勝利は、4話くらいで完了する予定です。
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