いろんな思いはありますが、それらはこの戦いが終わった後に語ろうかと思います。
今言えることとしては、
みなさん勝利のことを応援してくださりありがとうございます。
……やあ。
ハハハ……声は聴いたことあるけど、初めましてだね。
僕は、君をマリクから受け継いだもの。
僕は……黒羽勝利。
決闘者だ。
……うん。
話に来ただけ。話してみたかっただけ。
……君の望む、呪文を唱えることはできない。
君が求める、資格を示すことはできない。
もしかしたら、僕は、君を従えるに値しないのかもしれない。
でも。
君を一目見て、声を聴いたときに、思ったんだ。
君の、君たちの力は、確かに強大で。
力持たぬものからすれば、恐るるものに見えて。
その暴力的な力は、人によっては、凶悪なものに見えるのかもしれないけど。
僕には……そうは見えなかった。
君たちはただ、純粋に何かを求めて戦っているだけ。
それが、わかったから。
だから……僕は、君にお願いをしに来たんだ。
……僕と一緒に、戦ってほしい。
僕に、遊戯君に……圧倒的王に立ち向かうための、力を貸してほしい。
……ん?
カーの……魂の源泉?
……『精霊王』?
……違うよ。
僕は、黒羽勝利。
ただの……決闘が大好きな、一人の決闘者さ。
勝利 LP 3000 手札2枚
BFー極北のブリザード
攻 1300
ラーの翼神竜
攻 4200
伏せカードなし
遊戯 LP 4000 手札3枚
魔導戦士ブレイカー
攻 1600
伏せカード1枚
「……まさか、早くも"ラーの翼神竜”を使ってくるとはな。それも……古代神官文字を使わずに、ラーを従えて……」
「従えたんじゃあないよ。一緒に、戦ってもらうんだ」
「……フフフ。勝利君らしいな」
友との会話のスタンスを崩さない二人の間に降臨した、その力を見せつけるかのように威圧感を放つラーの姿に、見守る皆が何とも言えない表情を浮かべながら萎縮する。
「おいおい……ラーをこんな早い段階で出しちまう勝利も勝利だし、それを見てあんな楽し気に話してる遊戯も遊戯だぜ……」
「大丈夫なんだろうな、遊戯の奴……」
「……ま、大丈夫ってことなんやろな」
皆がもっともな不安を述べる中、竜崎は少し顔を引きつらせながらも、冷静に場況を判断する。
舞も、それに同意した。
(……こんなに早期に、ラーを召喚した。でも、勝利は、勝負を焦っているわけじゃあない。飽くまで全力を尽くして遊戯と戦うために、神を召喚しているに過ぎない)
神を、特別視していない。
神を一人の仲間と判断し、全力で遊戯とぶつかるための手段の一つとして考えている。
だから、こういう展開になっている。
それを、舞は理解していた。
(……とはいっても、神の力は強大。ここで対応できなければ、遊戯の負けは一気に近くなる。さあ、どうするのか見せてみなさい。遊戯)
「……行くよ」
勝利が腕を、天高く掲げる。
それに答えるように、ラーが翼を広げた。
勝利に、完全に従っている。
疑ってなどいなかったが、それがはっきりと分かった遊戯は、軽く息を吐き、構える。
「……来い!」
「"ラーの翼神竜"! "魔導戦士ブレイカー”に攻撃! 『ゴッド・ブレイズ・キャノン』!」
ラーが、構える。
その力には、圧倒的熱量が込められている。
しかし、それを見ていたマリクは気づいた。
(……確かに、この力は、僕の闇の人格が扱っていた力と同等……いや、あるいはそれ以上かもしれない……でもこの力に、悪しき想いは存在しない……)
「勝利の、言った通りだった……力に悪も、闇もない……正しい心で扱えば、それに答えてくれる」
「マリク……」
「いけぇ!」
輝く力が、放たれる。
遊戯は、その着弾の寸前に、手札を掲げた。
『くりくりくりくり~~~~!』
「っ! く、"クリボー”!!?」
光の塊に、ブレイカーは飲まれる。
しかし、その光は遊戯に届く前に、大量の"クリボー”の壁にせき止められる。
やがて収束していく力に、遊戯は不敵に笑った。
「"クリボー”の効果発動! こいつを手札から捨てることにより、その戦闘で発生するダメージは0になる! これはダメージに対する効果だから、神の攻撃も止められるぜ!」
「……なるほど」
(手札から止めてくるか……これは、やられた)
(ありがとう。"クリボー”)
『くりくり~』
遊戯に笑顔を見せて、ラーにはふんぞり返るような様子を見せつけながら、"クリボー”が墓地へと消えていく。
その様子に、勝利は思わず吹き出して笑う。
「……でも、そうでなくちゃ! バトル続行! ブリザードで、遊戯君にダイレクトアタック! 『アイシクル・ショット』!!」
「くっ! (これは……止めない!)」
遊戯 LP 4000 ー 1300 = 2700
「ぐわ!」
その一撃に、安堵、歓喜、不安。
様々な声が湧き上がる。
「これで、LPは勝利の方がリードした!」
「しかも勝利の場には、"ラーの翼神竜”や……」
「大丈夫かよ、遊戯のやつ……」
「まだまだ! 遊戯はこれからよ!」
「おうよ! 頑張れ、遊戯!」
「……当然、これじゃ終わらないよね?」
「ああ! もちろんだぜ!」
「そう来なくっちゃ。僕はカードを1枚セットし、ターン終了」
勝利 LP 3000 手札1枚
BFー極北のブリザード
攻 1300
ラーの翼神竜
攻 4200
伏せカード1枚
遊戯 LP 2700 手札2枚
モンスターなし
伏せカード1枚
「……」
遊戯は、デッキを神妙な面持ちで見る。
このターンの遊戯の想いは、皆よくわかっていた。
「……神のカードの攻撃を、何回も受けられるはずはないわ」
「神のカードやなくてもや。もうブリザードの攻撃すら、何度も受ける余裕はないで」
「遊戯はこのターン……遅くても次のターンまでにラーを突破する糸口を見つけなければ、勝利になすすべなく敗北する」
舞、竜崎、マリクが、神妙な面持ちで場を見つめる。
その言葉を振り切るように、城之内が声を上げる。
「へっ! 遊戯なら、なんとかするさ!」
(……してもらわなきゃ困るわ、遊戯。勝利の念願の決闘を、こんな体たらくで終わらせないでよ!)
「……俺のターン、ドロー! 俺は、"強欲な壺”を発動!」
「……かーっ! なんちゅうドローや!」
「勝利の先読みと同じくらい、あいつのドローもイカれてるわね」
強欲な壺
魔法カード
デッキからカードを2枚ドローする
「デッキからカードを2枚ドロー! っ……」
(……まだ、足りない。だが、このカードなら……)
「俺はカードを1枚セットし、ターンエンドだ!」
勝利 LP 3000 手札1枚
BFー極北のブリザード
攻 1300
ラーの翼神竜
攻 4200
伏せカード1枚
遊戯 LP 2700 手札3枚
モンスターなし
伏せカード2枚
「いっ!? 1枚カードを伏せただけ!?」
「だ、大丈夫だよな? 遊戯……」
「……僕のターン、ドロー」
遊戯を心配する声を他所に、圧倒的有利の状況を見ながら、勝利は考え込む。
(……今伏せたカードは、ラーの攻撃を耐えるカードで間違いない……だが、問題はその後。遊戯君は、ラーを突破するつもりだ。でも、それはどうやってなのか……考えろ。有利な時ほど、見えるものはあるはずだ……)
勝利は、自分の手札。自分のフィールド。そして、遊戯のフィールド。遊戯の手札。遊戯の顔。
それらを、順番に、順番に見定めていく。
そして、ふっと息を吐き、声を上げた。
「……バトル! "ラーの翼神竜”で……」
「伏せカードオープン! "和睦の使者”!」
「っ!?」
和睦の使者
罠カード
このターン、戦闘によるすべてのダメージを0にする
「このターン、戦闘によって発生するモンスター、そして俺へのダメージはすべて0になる!」
「……なるほど。飽くまでダメージに対してのカードだから、ラーの攻撃でも無効化できる……」
勝利は振り上げようとして宙ぶらりんになった手を、そっと下す。
「戦闘ダメージに対してのカード。勝利の"ガード・ブロック”と同じ……いや、どちらかというとカードのタイプは、海馬が使ってた"威嚇する咆哮”かしら?」
「ああ。勝利が神を使ってくる可能性を考慮して用意された、対策カードやな」
「……フン」
「流石に、通らないよね。ブリザードを守備表示に変更。そして……カードを2枚セットし、ターン終了だ」
勝利 LP 3000 手札0枚
BFー極北のブリザード
守 0
ラーの翼神竜
攻 4200
伏せカード3枚
遊戯 LP 2700 手札3枚
モンスターなし
伏せカード1枚
(……遊戯君が、ラーを超えようとするのであれば……)
勝利は、自分の行動を整理し嚙みしめるように遊戯のターンを見つめる。
対する遊戯も、一呼吸おいて、カードを引く手に力を籠める。
「……俺のターン、ドロー!」
(……よし! これなら!)
「俺は、伏せカードオープン! "マグネット・コンバージョン”!」
「……"マグネット・コンバージョン”?」
マグネット・コンバージョン
罠カード
墓地の磁石の戦士2体を手札に加える
「このカードによって俺は2体の『磁石の戦士』を墓地から手札に加えることができる!」
「……って、遊戯の墓地にマグネットモンスターなんて……」
「……っ! もしかして!」
「……最初の"手札抹殺”で……」
「ふっ。正解だ! 俺は墓地から、"磁石の戦士α”、"磁石の戦士γ”を手札に加える!」
遊戯は見せつけるように、墓地から2枚のカードを回収する。
この後の展開が察せないはずもなく、勝利の頬に汗が伝う。
「さあ、今度はこっちの番だ! 勝利君! 俺は手札に存在する、"磁石の戦士”α、β、γを墓地に送り、変形合体を行う!」
「おいおい……」
「神が降臨したかと思ったら、今度はこんな段階で、合体能力モンスター!?」
「……なんちゅう展開の速さや。これが、バトルシティの決勝を戦うやつらの決闘っちゅうことか」
「現れよ! "磁石の戦士マグネット・バルキリオン”!」
磁石の戦士マグネット・バルキリオン
地属性 岩石族 星8
攻撃力 3500
守備力 3800
3体のモンスターが集まり、完成したバルキリオンが場に着地する。
しかし、見事完成された合体マグネットモンスターたちでさえ、ラーの威光に威圧され、萎縮していた。
「……さすがは遊戯君。僕の手札を破壊するという目的で、マグネットモンスターを墓地に送っておき、手札が整ったときに回収して攻め立てる。というコンボは、見事なものだ。でも……君が高攻撃力モンスターを召喚することを、僕が見越せなかったとでも思うかい?」
そういいながら、勝利は自分の場を指さす。
勝利 LP 3000 手札0枚
BFー極北のブリザード
守 0
ラーの翼神竜
攻 4200
伏せカード3枚
遊戯 LP 2700 手札2枚
磁石の戦士マグネット・バルキリオン
攻 3500
伏せカードなし
そう。確かにバルキリオンは強力なモンスターだが、あくまでそれは通常の場の場合。
今勝利の場には、圧倒的力を持った、絶対不可侵の存在。"ラーの翼神竜”がいる。
さしものバルキリオンでも、超えられない存在だった。
皆も頭の中で、遊戯の策を模索した。
(超えられるとするならば、海馬の時の"武装再生”のような強化『コンバット・トリック』カードだけど……)
武装再生
速攻魔法
モンスターの攻撃力を800上げる
または、墓地の装備カードを適切な対象に装備する
(……さすがに、そう都合いいカードをいつも引けへんやろ。いや、そもそも……)
(勝利の場には伏せカードが3枚。普通のカードでは、まずその伏せが突破困難である可能性が高い……)
遊戯の状況の厳しさは、火を見るより明らか。
それは、誰の目から見てもそうだった……と、思われた。
勝利の笑顔が少し引きつり、遊戯が笑う。
そんな二人を見るまでは。
「……"磁石の戦士マグネット・バルキリオン”の効果発動! 自身を、分解する!」
「えっ!?」
「せっかく召喚したバルキリオンを、分解!?」
「何やってんだ!? 遊戯の奴!?」
宣言と同時、バルキリオンの体が別れ、3つの体を改めて構成しなおしていく。
磁石の力で体をなす、合体モンスターならではの、分解召喚だった。
「現れるがいい!
地属性 岩石族 星4
攻撃力 1400
守備力 1700
α,β,γで変形合体する
地属性 岩石族 星4
攻撃力 1700
守備力 1600
α,β,γで変形合体する
地属性 岩石族 星4
攻撃力 1500
守備力 1800
α,β,γで変形合体する
「……一気に、モンスターが3体……っ!」
遊戯の戦術に気が付いた皆の、顔色が変わる。
あまりにも信じがたい。
しかし、遊戯の表情が、それをやり遂げたことを如実に語っている。
「まさか!? 遊戯の手札にももう!?」
「信じられへん……なんなんやこの決闘……」
「今度は、俺の番だ! 磁石の戦士α、β、γの3体を生贄に捧げる!」
瞬間、ラーに負けじと輝きを放つように、稲妻が場を駆ける。
そして……雲の切れ間より、それは、舞い降りた。
「我がフィールドに、降臨せよ! "オシリスの天空竜"!」
轟音が、場を貫く。
唸り声が、ラーに向けて放たれる。
ラーは静かに、口から熱を零す。
《SAINT DRAGON -THE GOD OF OSIRIS》
ATTACK X000
DEFFENCE X000
Everytime the opponent summons creature into the field,
the point of the player's card is cut by 2000 points.
X stand for the number of the player's cards in hand.
「……で、でよった……"オシリスの天空竜”……」
「勝利の神と……遊戯の神が……揃った」
「で、でも……遊戯さんのオシリスは……」
勝利 LP 3000 手札0枚
BFー極北のブリザード
守 0
ラーの翼神竜
攻 4200
伏せカード3枚
遊戯 LP 2700 手札1枚
オシリスの天空竜
攻 1000
伏せカードなし
「攻撃力……1000」
「フン……当然だ。オシリスの攻撃力は、手札の枚数によって決定する。生贄を揃えるために大幅に手札を使ったこの状況では、オシリスの力は十分には発揮できない」
海馬が吐き捨てるように言う。
しかし、海馬の瞳は、遊戯を捉えて離さなかった。
(……そんなことは遊戯も百も承知のはず。つまり、あの最後の手札は……)
「そして、これが最後の一手だ! 俺は手札の、"天よりの宝札”を発動!」
「……やっぱり」
(そのカードを手札に残していたか……)
天よりの宝札
魔法カード
互いのプレイヤーは手札が6枚になるようにドローする
「このカードによって、俺はデッキからカードを6枚ドロー!」
「……僕も、6枚ドロー!」
「これで……」
「オシリスの攻撃力が、跳ね上がる……」
オシリスの天空竜
攻 1000 ⇒ 6000
「こ、これで……遊戯のオシリスが、勝利のラーを……」
「上回りおった……」
オシリスのその身に、先ほどより豪快な電流が迸る。
心なしかその姿が、ラーよりも大きく膨張したかのように見える。
(勝利のフィールドには、伏せカードが3枚あるけど……ここは当然……)
(引くはずがない)
「……バトル!」
遊戯の宣言に、大気が震える音がする。
ラーが、大きく羽ばたき、オシリスの上を舞う。
しかし、その姿を追うオシリスが、その体でラーを捉える。
ラーの反撃を、封じ込めた。
「オシリスの攻撃! 『超電導波ーサンダーフォース』!!!」
オシリスの天空竜
攻 6000
ラーの翼神竜
攻 4200
「くっ……さすがに、躱せないか……でも、ダメージは受けない! 伏せカードオープン! "ガード・ブロック”!」
ガード・ブロック
罠カード
敵からのダメージを打ち消し、ドローに変換する
オシリスの光線が、ラーの羽を貫く。
だが、ラーは黙してその身を焦がし、消えていった。
「……"ガード・ブロック”の効果で、ダメージを無効化し、カードを1枚ドロー」
「……カードを1枚セットし、ターン終了だ」
勝利 LP 3000 手札7枚
BFー極北のブリザード
守 0
伏せカード2枚
遊戯 LP 2700 手札5枚
オシリスの天空竜
攻 5000
伏せカード1枚
「……おいおい。今ので、終わりか? せっかく遊戯のすげえ戦術で勝利のラーを倒したってのに、勝利はたいしてリアクションしねえし」
「確かに……遊戯も、なんか浮かない顔だわ」
「……あたしたちが感じている違和感を一番強く感じているのは、遊戯でしょうね」
「結局発動したカードも、ダメージ無効だけで大したカードやなかった。いったい、何を狙っとるんや……?」
神がぶつかり合ったというのに、物静かにターンを終える二人に、拍子抜けなような、不完全燃焼のような空気が場に漂う。
そんな中、勝利が平然とターンを開始した。
「僕のターン、ドロー。そして、先にこいつを発動しておこうかな。伏せカードオープン。"闇の誘惑”」
闇の誘惑
魔法カード
デッキからカードを2枚ドローし、闇属性モンスターをゲームから除外する
「カードを2枚ドロー。そして……"BFー弔風のデス”をゲームから除外する」
「……"闇の誘惑"だと? ま……まさか……」
「……クックック」
その瞬間に、浮かない表情をしていた遊戯の顔が明確に歪み、逆に表情を殺していた勝利がこらえきれずに笑う。
「な、なんだぁ? 何が起こってるってんだ?」
「……ねえ、竜崎さん」
「……なんや、静香?」
困惑する兄を他所に、静香が竜崎に問いかける。
「勝利さんの"闇の誘惑"って、魔法カードですよね? 魔法カードって、相手のターンに発動できないから、あまり伏せる意味はないっていう……」
「よう覚えとるやないか。その通りやな」
「……じゃあ、なんで勝利さんは前のターンに、"闇の誘惑"を伏せてたんですか?」
「た、確かに……ってちょっと待て静香! なんで俺じゃなくて竜崎に聞くんだよ!?」
勝手に怒り狂う城之内に、竜崎と舞が辟易とした表情を作る。
その様子に怒りを増大させた城之内を、あしらうように杏子たちが嘲る。
「あんた、今『確かに』って言ったじゃない」
「どうせよくわかってねえんだろ? 竜崎たちにまかせとけって」
「ば、馬鹿にすんじゃねえ! 俺だってバトルシティのベスト8の実力者なんだぞ!」
「お兄ちゃん、わかるの?」
愛すべき妹のその問いに、城之内はへっ、と鼻をこすり笑う。
嫌な予感。と、杏子と本田が零す。
「へへん。勝利が魔法カードを伏せた理由。それはズバリ! ブラフ(はったり)だ!」
瞬間、決闘者たちの纏う温度が、1段下がる。
しかし熱心に耳を傾ける静香に、城之内はそのまま上機嫌に語った。
「勝利は、自分のモンスターを守るために魔法カードをハッタリとして伏せた! そうすれば遊戯は、それは罠カードが伏せてあると読む! レベルの高い決闘者の間にこそ発生する読み合いがある! だからこそ、勝利はその読み間違いを誘うためにわざと魔法カードを……」
「ものを知らんのならいっそ黙って消え失せろ。素人決闘者」
滔滔と語る城之内の言葉をあまりにも強い言葉で貶めたのは、当然というか、またしても海馬だった。
城之内は言葉にならない声を挙げながら、顔を真っ赤にして海馬に向けて拳を握る。
それを見た舞と竜崎が、大きくため息を吐いた。
「……城之内。ちったあ頭使えや。勝利はラーを、神を従えとったんやで?」
「その時点で、遊戯がラーを超えるには、オシリスかオベリスク。それに相当する力が必要なのよ? そもそも、たどり着いたワンチャンスを逃したら、勝利の神を倒す手段はなくなるわ。伏せカードなんかに日和っている暇はない。つまり、魔法カードのブラフなんて、何の役にも立たないわ」
「あっ……」
「……やっぱりな」
「城之内だもの」
怒りの拳を力なく下に卸し、がっくりと項垂れる城之内。
気遣いか、はたまた本当に目に入っていないのか、静香がそのまま問いを続ける。
「……じゃあ、なんで勝利さんは、"闇の誘惑”を伏せていたんでしょう?」
「……それは正直、あたしにもわかってない」
「ワイもや。それで遊戯が顔色かえる意味も、なんもわからん」
諦めの言葉を口にした舞と竜崎は、そのまま目線を横に逸らす。
その目線の先には、先ほど城之内にきつい一撃を食らわせた海馬と、未だ一心不乱にフィールドを見つめるマリクの姿があった。
「……海馬。あんたなら、わかるの?」
「マリク。お前も、なんかわかるんか?」
彼らと同じ土俵に上がる、悔しいが自分たちよりも上のステージにいるこの二人ならば。
その答えが導き出せるのかもしれない。
そんな縋るような想いも載せて、二人は問うた。
しかし、その二人は、無言で決闘を見つめるばかりだった。
「……へっ。偉そうなこと言って、結局おめえも何が何だかわかってねえんじゃねえか」
「なんだと!? 城之内! お前、兄サマに向かって何言うんだ!」
「へんだ! 先に口出ししてきやがったのは海馬の方だろうが!」
「モクバ、かまうな。負け犬が移る」
「~~~~~~~!!!」
軽く海馬にいなされる城之内。
その表情は、今にも爆発しそうな保護真っ赤だった。
「てんめえ……言いたい放題言いやがって! だったら言ってみろよ! 勝利がわざわざ魔法カードを伏せた理由ってやつを!」
「……カードを伏せて、手札を先に減らしておいた方が、"天よりの宝札”のドロー枚数が増える。それだけのことだ」
その海馬の一言を理解した何人かに、冷たい汗が流れる。
海馬の言葉を咀嚼するたびに、体の温度が奪われていくような錯覚に陥る。
「……海馬。あんた、何を……」
「……お前の言い分やと、ここまで全部、勝利の読み通りやったっちゅうように聞こえんで……遊戯がオシリスを出したことも……"天よりの宝札”で、手札を増やすことで攻撃力をあげたことも……」
「……」
海馬の、無言。
それが海馬の読みを言い当てていることの裏付けであった。
「……って、いやいや! さすがにありえねえだろ!? 遊戯が、オシリスを召喚して、手札増やすところまで読み切ったって、そんなもんノーヒントでわかるわけねえじゃねえか!」
「……こればっかりは、城之内と同意見や。いくら勝利の読みが鋭いゆうたかて、推測も何もないところからそないなこと当てるなんて、ほんまもんの超能力や」
言葉にはしないが、舞も心で同意する。
勝利は、前に自身の過去を語ってくれた時に話していた。
勝利の勘とは、感覚に優れた勝利の独特の直感力であり、それは幼少期の辛い経験からなる驚異的な観察眼に基づくものである。
それも確かに、決闘においては強力な武器になりえるものだが、あくまで、存在するものを読み解くという力。
無から情報を得るわけでもなければ、未来が見えているわけでもない。
我々の常識で計り知れない場所を見ているだけで、彼の力には根拠があるはずなのだ。
「……考えられるとしたら、一つ前のターン。遊戯が、"和睦の使者”を発動したターンかな」
マリクが、ゆっくりと口を開く。
無表情に見えるマリクだったが、マリクの首筋にも、湿った一筋の跡が残っていた。
「"和睦の使者”は、戦闘によるダメージを0にするカード。そしてそれは、フィールドのモンスターにも影響を及ぼす。そのターンモンスターはダメージを受けないため、戦闘では破壊されなくなる」
「……っ!? なるほど……本来ならモンスターを出しておけば、確実に1体を場に残しておくことができるターンだった」
その舞の言葉に、竜崎も気づく。
「……それをせんかった。っちゅうことは、無理にこのターンに1体を残そうと戦でも、次のターンまで待てば大量展開の手筈が整っとった……っちゅうところまでは勝利が読める……言わんとすることはわかるな」
「……(わ、わからねえ! どういうことだ!?)」
未だ混乱中の城之内を尻目に、竜崎は自分の疑問を想うがままにぶつける。
「せやけど、そこまでや。仮に、『モンスターを大量展開して神の召喚を狙う』っちゅうところまで読めるんはわからんでもない。やけど、そっから"天よりの宝札”にはつながらんやろ?」
「……竜崎と同意見よ。そこから、オシリスにつながるまでのロジックが抜け落ちてるわ。勝利が、そんな中途半端な賭けをするわけがない」
二人の言葉に、マリクが大きく息を吐いた。
それをちらと見た海馬の表情が、マリクの思いに、考えに同意しているかのように見えた。
「……勝利は、本当にすごい決闘者だ」
「……マリク?」
「ずっと、気になっていたんだ。勝利が、カルートを暴走召喚の対象に、神の生贄に選んだ理由が」
「……いきなり、何の話や?」
竜崎の言葉に、皆が頷く。
その素直な言葉は、全員の総意だった。
「……カルートは、強力なカードだ。確かに、遊戯がカルートを対処することを読んで、"地獄の暴走召喚"の対象に選んだ一連の流れは見事だった。しかしその結果、カルートはデッキから消えた。カルートの奇襲性を考えれば、デッキに残しておいてもいいカードのはずだ」
「それは……間違いないわね」
『コンバット・トリック』の優秀さは、竜崎と勝利がさんざ説いた通り。
それが手札から突然飛んでくる。その奇襲性は魔法カードや罠カードの比ではない。
それほどまでに、カルートは強力なカードだった。
「そもそも、カルートは特殊召喚効果を持たない。"地獄の暴走召喚"は特殊召喚した瞬間を対象にするんだから、生贄にするならそれこそ簡単に特殊召喚できるゲイルなんかを暴走召喚させればいい。なのに勝利は、わざわざカルートを暴走召喚の対象に選んでいる……それが、疑問だった」
「確かに……なんでなんだ?」
未だ疑問符が消えない城之内や杏子たちは、呆けた顔を見せる。
しかし対照的に、何かに気づいた舞と竜崎は、言葉を失う。
「……んな、あほな……」
「そこまで考えて……勝利……」
「お、おいおい! 待てよ!? 納得してねえで、説明しろっての!」
そんな城之内に、とどめと言わんばかりに、マリクが告げる。
勝利が立てた、戦略の頂上を。端的に明らかにする。
「ゲイルの攻撃力は、1300。3体を生贄にした時のラーの攻撃力は、3900。オベリスクを、
その驚愕の告白に、とうとう、音が消える。
絶句とは、このことだった。
「だから……勝利は読めたんだ。"天よりの宝札”で、オシリスの攻撃力を上げることが。オベリスクを超える攻撃力で攻めるには、一気に手札を増やすしかないからな」
「あんたとの決闘の時に、勝利は"天よりの宝札"でしてやられたわよね、竜崎。その経験で、読み切ることができたのかもしれないわ」
「……あんな化け物、育てた覚えないわ」
「そして……」
続けるマリクに、息を呑む。
「……そ、そして?」
「……ここまで読めている勝利が、召喚されたオシリスを、野放しのままにしておくはずはない。おそらくすでに……」
勝利 LP 3000 手札9枚
BFー極北のブリザード
守 0
伏せカード1枚
遊戯 LP 2700 手札5枚
オシリスの天空竜
攻 5000
伏せカード1枚
「……さあ、覚悟はいいかい? 遊戯君」
言いながら勝利は、ディスクに手を掛ける。
その手の先は、最後の伏せカード。
「っ! くっ……」
「伏せカード、オープン! "死者蘇生”!」
死者蘇生
魔法カード
敵味方問わずモンスターの魂を蘇生させ、味方にする事が出来る
勝利の宣言よりも前に、天が光輝く。
まるでそれが、導かれた定めのように。
その甦りし太陽の如き姿に、オシリスの電撃が炸裂する。
オシリスの特殊能力、『招雷弾』。
場に召喚されたモンスターの攻撃力に問答無用で2000ダメージを与える、強力な制圧効果。
しかし、その力をまるで意に介さずに、目を瞑る勝利の問いかけにゆっくりと答えるように翼を広げる"ラーの翼神竜”。
「残念だね、遊戯君。神の能力にも、ランクがあるみたいだ。オシリスの特殊能力じゃあ、ラーの炎は貫けない」
「くっ!」
「そして……"ラーの翼神竜”! 第2の効果!」
そしてその広げた羽を、聖なる炎へと変化させていく。
今度はオシリスが、その姿に圧倒される番だった。
「ラーの第2の能力! LPを1000捧げることによって、フィールドのモンスターを焼き尽くす! たとえそれが、神であっても!」
灼熱の太陽神が、身を翻す。
遊戯には、息を飲むことしかできなかった。
「焼き尽くせ、"ラーの翼神竜”! 『ゴッド・フェニックス』!!!」
『ーーーーーー!!!』
炎の柱が、天空を突く。
まるで、どこまで飛んでも捉え離さぬ、炎の檻のように。
そのまま、ほんの十数秒。
檻の中で、天空竜は灰燼と化した。
「……オシリスが……」
「たったの1ターンで……」
決闘が進むにつれて、勝利に追い詰められていく遊戯の姿に、震える声を隠せない城之内たち。
しかし、同じく不安げな表情を見せる舞が見つめるのは、遊戯ではなかった。
その理由は、愛しの彼の表情にある。
「……」
「……勝利」
平然と振る舞うその男。
その顔には、夥しい量の汗が滴っていた。
(……いくらケガが治ったって言ったって、1日眠っただけで体力が回復しきるわけない。ましてや、こんな……決闘の序盤から、相手の全てを読み切って戦うようなプレイング……最後まで持つわけない)
「しょう……」
声をかけようとしたその瞬間、勝利が舞に微笑み、人差し指を口に当て、
ごめん。
と口を動かす。
そして汗を腕で必死に拭い、遊戯へと向き直る。
それを見て、舞は確信した。
(……やり切るつもりなのね。この決闘を……あんたの全力を、最後まで……)
(いつも心配かけて、ごめんね。でも……この決闘だけは、この最後の決闘だけは! 死力を尽くして、遊戯君に勝ちに行く! 僕の全てを賭けて戦う! それができなきゃ、僕は一生後悔する!)
勝利は、役目を終えたラーを墓地に向かい入れる。
そして遊戯に、改めて宣言した。
「これが、僕の全力だよ。遊戯君。僕だって、1ターンたりとも気を抜いてやる気はない」
「っ! 勝利君……」
遊戯とて、当然勝利の状態には気づいている。
しかし……そんなことがどうでもいいと思えるくらいに……勝利の笑顔に飲まれていた。
「僕には……海馬君のような気高さはない。マリクのような執念も、城之内君のような勝負運も、竜崎君のようなパワーも、舞さんのような華麗さも、そして。遊戯君のような、絶対的強さもない」
「……」
『ぴぃ! ぴぃぴぃぴぃ!』
聞こえるはずもない。
しかし、そこに存在して、戦っているブリザードの姿に、勝利は笑いながら言う。
「……でも、僕にも、誰にも負けないことがある。展開を、先を読むこと。カードを信じること。そして……誰よりも、決闘を楽しむことだ!」
「っ!?」
勝利の言葉に遊戯が目を見開く。
そして、何を思い出したのか、急に笑い出す。
「ハハハハハ! そうだ。そうだったな。俺は……王国で戦ったとき、君のその笑顔を、歪めてしまった。だからこそ今、このバトルシティで……全力で楽しむ、最強の君に勝ちに来たんだ!」
まるで、鏡写しのように。
二人の笑顔が、揃う。
見ている皆が、心の中で改めて確信した。
この二人のうちのどちらかが、この、最高の決闘の勝者になるのだと。
どちらかが……決闘王になるのだと。
舞は、ため息交じりの笑みを零しながら、勝利に拳を突き上げる。
(……そんな笑顔で決闘できるんなら……やり切りなさいよ、最後まで!)
「がんばれ! 勝利!」
「さあ、楽しもうぜ! 遊戯君!」
「来い! 勝利君」
高めあう、二人の決闘者。
最高に楽しい激動の決闘の決着は、近いようで、あまりにも遠い。
それを二人は、何よりも喜んだ。
後何話になるか、正直私にも読めません。
最後までお楽しみに。
勝利にたいそうな過去フラ立ててますが、活動報告で周知済みの通り、王の記憶編はあんまりやる気ないんですよね……
設定は存在するので、気が向いた時に番外編的に書くかもしれません。
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ぜひお知恵をお借りできると幸いです。よろしくお願いします。
勝つのは……
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