勝利 LP 2400 手札3枚
モンスターなし
女神の加護
遊戯 LP 2700 手札2枚
ブラック・マジシャン
攻 2500
バスター・ブレイダー
攻 3100
伏せカードなし
皆が息を飲んで、フィールドを見守る。
1ターン前の勝利の圧倒的有利がまるで夢であったかのように状況が一転し、今度は遊戯が勝利を追い詰める。
目まぐるしく動く怒涛の展開に、応援する皆にも少々疲れの表情が見える。
しかし、誰もそれは口にしない。
目の前の二人が、泣き言も言わずに笑顔で戦っている。
それに自分たちが水を差すようなことは、何があってもしてはならない。
暗黙のうちに、皆がその意識を共有していた。
「……圧倒的に、勝利の状況が悪くなったわね」
その重苦しい空気の中、舞がポツリと口を開いた。
「勝利の手札は3枚。次のドローで4枚。少ないとは言えないけど、勝利のデッキスタイル的に、一部のカードを除いて単体のカードのパワーは遊戯のデッキに劣る。"ブラック・マジシャン"と"バスター・ブレイダー"を同時に相手取るには、リソースが足らない」
「そもそもやむを得んかったとはいえ、勝利は"女神の加護"という爆弾を晒してしもうとる。あのカードは破壊された時に、回復した3000ポイント分のダメージが返ってくるカード。こっから勝利は、"サイクロン"1枚引かれるだけで負けが決定する。こいつは、シャレにならんで」
「……遊戯が、圧倒的有利ってことだよな?」
舞の言葉と、それに追従する竜崎の言葉を聞いた本田が、恐る恐るそう発言する。
自信満々に、愉快そうにそれを言えないのは、本田自身も、この決闘に未だ流れる緊張感を理解しているからだろう。
そしてほんの数秒おいて、城之内が答える。
「ああ……だが、勝利の眼は死んでねえ。この決闘、まだまだ分からねえぜ」
「僕のターン、ドロー。僕は手札から、"貪欲な壺"を発動」
貪欲な壺
魔法カード
墓地のモンスター5枚を選択し、デッキに戻す
その後、カードを2枚ドローする
「カルート2枚、ハルマッタン、ギブリ、ラーの翼神竜の5枚をデッキに戻してシャッフルし、2枚ドロー」
「……ラーを、デッキに?」
「まさか、ラーの再召喚を狙ってんのか?」
「……いや、"地獄の暴走召喚"はもうない。BFたちの展開力は凄まじいが、今の遊戯はラーの再展開をそう簡単に許すとは狙えない」
こぼれた問いを、マリクが真っ向から否定する。
神は重い。
だからこそ、ラーの蘇生による即効性が生きる。
ここでデッキに戻すという選択に疑問符を浮かべるマリクの言葉には、説得力があった。
("死者蘇生"はもうないとはいえ、ここでデッキに戻すのはリスクのハズ。何を狙っている、勝利……)
(……遊戯君に"死者蘇生"されるリスクを考えても、戻すカードはこれで最善のハズ。でも……)
一方の勝利は、ドローカードを見ながら少し黙りこくる。
今の手札で、このターンに2体を突破する方法はない。
しかも、"女神の加護"をどうにかするためのカードも、存在しなかった。
(……遊戯君の攻め手次第じゃあ、負け。そもそも、"女神の加護"が狙われたその瞬間に、負けは決定する……これは、やばいな)
すでに汗にまみれた顔をいったん手の甲で拭い、息を吐く。
そして覚悟を決めたように、カードを場に出した。
「僕は、"BF-上弦のピナーカ"を守備表示で召喚」
BF-上弦のピナーカ
闇属性 鳥獣族 星3(チューナー)
攻撃力 1200
守備力 1000
墓地に送られたターン、仲間のBFを呼び寄せる
「さらに、カードを3枚セット。ターンエンドだ」
勝利 LP 2400 手札1枚
BF-上弦のピナーカ
守 1000
女神の加護
伏せカード3枚
遊戯 LP 2700 手札2枚
ブラック・マジシャン
攻 2500
バスター・ブレイダー
攻 3100
伏せカードなし
「うおっ。勝利の奴、伏せカードを一気に!?」
「さっきまで、遊戯を警戒してる感じだったのに……」
「さっきまでと、状況が変わったんや。さっきまでは、カードを一気に破壊されて、不利になる展開を予想しとった。だから"ブラックフェザー・ドラゴン"がいる状況化なら、破壊されても大きくマイナスにならん、"イージー・チューニング"と"女神の加護"をセットして戦っとった」
「でも勝利はもう、"女神の加護"を破壊されるだけで敗北する状況になった。だからこそ、カードの破壊に怯える必要はなくなった。遊戯の攻撃を防ぐことだけに、全力を注ぐ選択をしたのよ」
舞たちの言葉に、勝利の覚悟を感じる杏子たち。
しかし舞の表情は、未だ優れない。
(……勝利の選択は、正しい。でもこの厳しい状況で、勝利が初めて後手に回ったのも事実。次のターンで流れを引き戻さないと……まずい)
「俺のターン、ドロー!」
遊戯はドローカードを見る。
そして勝利にもばれない程度のほんのわずかな時間に、眉を顰めた。
(追撃のモンスターは、来なかったか……だが、攻め手としては悪くない。このまま方を付ける!)
「バトル! "ブラック・マジシャン"で、"BF-上弦のピナーカ"を攻撃! 『黒・魔・導』!」
「(くっ……素直に来たか。多少警戒してピナーカにカードを使ってもらいたかったが……)伏せカードオープン! "ゴッドバード・アタック"!」
ゴッドバードアタック
罠カード
鳥獣族モンスターに、1ターン限定で力を授ける
2回の即行動を可能にし、カードを破壊する
「ピナーカに新たな力を授け、このターンに遊戯君のモンスターに攻撃を仕掛ける! 対象は"ブラック・マジシャン"と"バスター・ブレイダー"!」
「こ、この土壇場でなんちゅうカードを……」
「これが決まったら、遊戯のフィールドが空っぽに!」
瞬間、ピナーカの体が燃え上がり、"ブラック・マジシャン"の杖の先からピナーカが消える。
そして、"バスター・ブレイダー"の目の前に、ピナーカが現れる。
「ピナーカ! 『紅蓮のムーン・ストライク』! 第1打!」
『ぴ!』
ピナーカが引いた弓が、"バスター・ブレイダー"の剣を貫き、鎧を破壊する。
"バスター・ブレイダー"が、たまらず膝をついて消えていく。
「続いて、"ブラック・マジシャン"に攻撃! 『紅蓮のムーン・ストライク』! 第2打!」
そのまま"ブラック・マジシャン"の背中をとったピナーカが、弓を番える。
"ブラック・マジシャン"は、もはや躱せる状態にはなかった。
「いけぇ!」
勝利が声を上げると同時に、弓が放たれる。
"ブラック・マジシャン"を弓が貫く……と思われたその瞬間に、"ブラック・マジシャン"が姿を消した。
「何っ!?」
「……危ないところだったぜ! 手札から、速攻魔法発動! "光と闇の洗礼"!」
光と闇の洗礼
速攻魔法
ブラック・マジシャンを更なる力を持つ魔術師へと姿を変える
「このカードによって、"ブラック・マジシャン"を生贄に捧げ、デッキからさらなる魔術師モンスターを特殊召喚する!」
「し、しまった!? 狙われたモンスターを先に逃がすことで対応する、『サクリファイス・エスケープ』!」
「強力な除去カードを、こんなに完璧に切り返すなんて……」
言いながら勝利と舞が、同じ場所を眺める。
"ブラック・マジシャン"を消し去った光りが輝くフィールドの一角に、一筋の闇が指した。
「さあ、行くぜ! 光と闇の間より、現れよ! "混沌の黒魔術師"!」
混沌の黒魔術師
闇属性 魔法使い族 星8
攻撃力 2800
守備力 2400
戦闘したモンスターをゲームから取り除く
墓地の魔法を、戦闘後に1枚回収する
このカードが場から離れるとき、除外される
「こ、"混沌の黒魔術師"……」
「当然、今召喚された"混沌の黒魔術師"にも、攻撃権がある」
はっとした表情で、場を見る勝利。
ピナーカの消滅により、勝利の場にはモンスターが消えている。
「バトル続行! "混沌の黒魔術師"で、勝利君にダイレクトアタック! 『混沌の呪文-カオスアルテマ』!」
混沌の黒魔術師
攻 2800
勝利 LP 2400
「っ! まだだ! 伏せカードオープン! "ハーフ&シャット"!」
ハーフ&シャット
速攻魔法
モンスター1体を選択して発動
そのモンスターは攻撃力を犠牲にし、そのターンの戦闘破壊を免れる
「っ! まだ耐えれるのか……」
「もちろん! "ハーフ&シャット"の効果によって、"混沌の黒魔術師"の攻撃力を、半分にする!」
混沌の黒魔術師
攻 2800 → 1400
勝利 LP 2400 ー 1400 = 1000
「ぐわぁ!」
目の前で爆ぜる闇の弾丸に、思わず声を上げる勝利。
それでも、勝利は前を向いていた。
「……まだまだ! さあ、これで君の攻撃は終わりかい? 遊戯君!」
「……ああ。これで、攻撃は終わりだ。だが、ターン終了時に、"混沌の黒魔術師"の効果が発動する! このカードがフィールドに召喚されたターンに、墓地から魔法カードを1枚手札に加える。俺が加えるのは、"天よりの宝札"!」
「っ! あかん!」
「なっ、なんだよ竜崎!? いきなり大声出しやがって……」
「そんぐらい、とんでもない一手ってことよ」
静かに告げる舞。しかし、焦りの色は隠せてはいなかった。
そして、マリクも続いた。
「さっき話していた通り、勝利の場には"女神の加護"がある。あのカードは破壊されたその瞬間に、勝利の敗北の未来を決定づける時限爆弾だ。そして遊戯の手札には、最強ドローカードの"天よりの宝札"が加わった。次のターン、遊戯は超ドローによって、"女神の加護"を破壊してけりをつけるつもりだ」
マリクの言うその未来を確実のものとするべく、遊戯は翳したディスクから吐き出された、"天よりの宝札"を拾い上げる。
「さあ、勝利君。次のターン、受けきれるものなら……なっ!?」
しかし、遊戯のその台詞を言いきる前に、遊戯の手から"天よりの宝札"が消えた。
そして、声が響き渡る。
『クワックワックワックワッ!』
「っ!? しまった! この声は!?」
「残念だったね、遊戯君。手札から、"D・D・クロウ”の効果発動!」
D.D.クロウ
闇属性 鳥獣族 星1
攻撃力 0
守備力 0
相手の墓地のカード1枚を奪い取り、次元の彼方へ葬りさる
「"天よりの宝札"を、異次元に葬り去る!」
「ぐっ……これで、ターンエンド」
「そして、僕の墓地のピナーカの効果発動! デッキから、"BF-黒槍のブラスト"を手札に加える!」
「……嘘。完全に遊戯に行きかけた流れを、たった1枚で……」
「あれが、黒羽勝利……」
勝利 LP 1000 手札1枚(ブラスト)
モンスターなし
女神の加護
伏せカード1枚
遊戯 LP 2700 手札2枚
混沌の黒魔術師
攻 2800
伏せカードなし
「さあ、行くよ! 僕のターン、ドロー!」
勝利は、よしっ、と声を零して、そのままカードを振り下す。
「僕は、"終わりの始まり"を発動!」
終わりの始まり
魔法カード
墓地の闇属性モンスターが7体いるとき発動可能
5枚を除外し、3枚ドローする
「このカードは、墓地に闇属性モンスターが7体いるときのみ発動可能な魔法カード!」
そして勝利は、墓地を見せる。
BF-蒼炎のシュラ
BFー月影のカルート
BFー東雲のコチ
BF-陽炎のカーム
ブラックフェザー・ドラゴン
BF-上弦のピナーカ
D.D.クロウ
「僕の墓地の闇属性モンスターはちょうど7体。この中の、シュラ、カルート、コチ、ピナーカ、D.D.クロウを除外して、カードを3枚ドローする!」
「……ここにきて、超ドローを」
「な、何ちゅうドロー力……」
「なるほど……カームとコチは、最初の"手札抹殺"でカルートと一緒に墓地に送られたカードだな。だからさっき、ラーをデッキに戻したのか。ラーは神属性。"終わりの始まり"のコストに使用できない。さっきの"貪欲な壺"でラーを墓地に残していたら、墓地の闇属性の数は6体。"終わりの始まり"は発動できなかった」
「……この綱渡りみたいなカード捌き。勝利と遊戯。この二人じゃなきゃ、一つのミスで、とっくに決闘は終わってるわ」
「僕は"BF-黒槍のブラスト"を召喚」
BF-黒槍のブラスト
闇属性 鳥獣族 星4
攻撃力 1700
守備力 800
BFがいるとき、手札から特殊召喚できる
モンスターの守備力にもダメージを与えることができる
「そして、"ビーストレイジ"を発動!」
ビーストレイジ
魔法カード
自軍のモンスターの攻撃力は、ゲームから除外されている鳥獣・獣の数×200ポイント上げる
「このカードによって、ゲームから除外されている僕の鳥獣モンスターの数だけ、ブラストの攻撃力を上昇する!」
「なっ!?」
遊戯の絶句に同意するように、皆が衝撃に言葉を漏らす。
「お、"終わりの始まり"で一気にカードを除外したのは、このカードにつなげるためだったってこと!?」
「……完璧だ」
舞の驚愕、そして、マリクの感嘆が、この場のすべてだった。
それは彼らに最も近い実力の男、海馬が歯を食いしばり、腕を組む手の力が強くなっていることからもわかった。
「に、兄サマ……」
モクバの声すらも、今の海馬には耳に入らない。
勝利の、遊戯の。
全ターン全身全霊の二人の決闘に、海馬すらも気づかぬ間に取り込まれていく。
「ダマスカス、デス、ゲイル、そして今除外した5体。除外の鳥獣モンスターは、全部で8体。よって、ブラストの攻撃力は、1600ポイントアップ!」
BF-黒槍のブラスト
攻 1700 + 1600 = 3300
「ブ、ブラストの攻撃力が……」
「"混沌の黒魔術師"を、上回った!?」
「バトル! ブラストで、"混沌の黒魔術師"を攻撃! 『デス・スパイラル』!」
BF-黒槍のブラスト
攻 3300
混沌の黒魔術師
攻 2800
遊戯 LP 2700 ー 500 = 2200
「くっ! "混沌の黒魔術師"は、除外される……」
「ゆ、遊戯のエースが、次々に……」
「……まさか勝利はこんなふうに、神だけではなく、現れる遊戯の主力モンスターたちをすべて倒していくつもりなのか。そんな、気の遠くなるような戦いかたで」
「この戦い方、どこかで……」
皆が勝利の戦いに震える最中、城之内は既視感に脳を取られる。
そして、向かい合う二人の姿を見て、はっとした。
それは、王国の戦いが終わった後の学校の教室で、偶然勝利と二人きりになった際の、ただの小話。
『……王国の、僕と遊戯君の戦いが?』
『ああ。俺が見てきた中で、遊戯を一番追い詰めたのはお前だ、勝利。だから、お前の戦い方を参考にさせてもらったのよ』
『はは……照れるなあ』
『それでも、負けちまったけどな』
『でも、それで遊戯君に肉薄したのは、間違いなく城之内君の実力だよ。それは、誇るべきだ』
『ああ……だが、遠いぜ』
『うん……でも、必ず届くよ。戦い続けている限り、いくらだって未来はある』
頑張ろう、城之内君。
遊戯君に、教えてやろうぜ。
君の仲間は、強いんだぞ。ってさ。
城之内は、改めて勝利を見る。
今遊戯と対面する勝利は、相変わらず汗にまみれ、息を切らし、今にももう一度倒れそうな顔色だった。
しかし……勝利は、笑っている。
その笑顔は、あの教室で自分に笑いかけた。
あの時の笑顔と、全く同じだった。
(……勝利。お前、あの時と同じ戦いを……)
遊戯のすべてを、勝利のすべてを以て迎え撃つ。
そのうえで、遊戯に勝つ。
勝利は、もう一度それをやろうとしているのだ。
この、決勝の舞台。
遊戯と対等に向かい合う、この舞台で。
(……あー。くそっ)
城之内は上を向き、そっと一歩後ろに下がり、皆の背後に回る。
こぼれ落ちそうになる涙を、見られたくはなかった。
(……俺も、行きてえ。あそこに……遊戯と勝利のいる場所に!)
「カードを1枚セットし、ターンエンド」
勝利 LP 1000 手札1枚
BF-黒槍のブラスト
攻 3300
女神の加護
伏せカード2枚
遊戯 LP 2300 手札2枚
モンスターなし
伏せカードなし
「俺のターン、ドロー! 俺は、"ソウルテイカー"を発動!」
ソウルテイカー
魔法カード
相手の表側表示モンスター1体を破壊する。
その後、相手は1000LP回復する
「この効果で、ブラストを破壊! 勝利君のLPを、1000回復する!」
「くっ! せっかく召喚したモンスターを、簡単にやってくれるよ」
(貫通能力で負荷をかけられるブラストを選択したけど、裏目に出たか……)
勝利 LP 1000 + 1000 = 2000
「そして俺は、"クリバンデット"を召喚!」
クリバンデット
闇属性 悪魔族 星3
攻撃力 1000
守備力 700
ターン終了時に生贄に捧げ、デッキから5枚カードを墓地に送る
その中の魔法・罠を1枚手札に加える
「バトル! "クリバンデット"で、勝利君に直接攻撃! 『クリネイル』!」
(……ここは、止めない!)
勝利 LP 2000 ー 1000 = 1000
「くっ……でも、"ソウルテイカー"の分が消えただけ。このターンに僕を倒しきることはできない!」
「ああ……その通り。勝負は、次のターンだ! ターン終了時に、"クリバンデット"の効果! このカードを生贄に捧げ、デッキからカードを5枚ドロー。その後魔法・罠カードを1枚選び、それ以外を墓地に送る!」
(実質的な、魔法・罠のサーチカードといっていいな……何を選ぶかで、次のターンの指標が決まる……)
勝利の緊張感が、場に伝わる。
皆の視線にあるのは、勝利の場の"女神の加護"。
今だ勝利の場の時限爆弾は、対処されていない。
(遊戯がこの効果で魔法・罠の破壊カードを手札に加えることができたら……ほどなくして決闘は決着するわ)
(……さあ、どうなるんや……)
「行くぜ……カード、5枚ドロー!」
遊戯はそう言って、デッキトップ5枚を勝利に見せる。
真紅眼の黒竜
超電磁タートル
砂塵の大竜巻
黒魔族のカーテン
六芒星の呪縛
「俺は"砂塵の大竜巻"を手札に加える!」
「っ! 最悪や!」
「……セットカード破壊カードが、加わった」
「ゆ、遊戯の勝ちってことか!?」
「……いや。今は遊戯のターン終了時だ。罠カードである"砂塵の大竜巻"は発動できず、もうセットもできない。つまり、遊戯があのカードで"女神の加護"を破壊できるのは、次の勝利のターン……勝利には、このターンのみ、対処手段を準備する猶予がある」
マリクの言葉に、場がひりつくのが全員に伝わる。
勝利 LP 1000 手札1枚
モンスターなし
女神の加護
伏せカード2枚
遊戯 LP 2300 手札2枚(砂塵の大竜巻)
モンスターなし
伏せカードなし
勝利は、全てを悟っているかの如く、カードを引いた。
「"BF-残夜のクリス"を召喚」
BFー残夜のクリス
闇属性 鳥獣族 星4
攻撃力 1900
守備力 300
BFがいるとき特殊召喚できる
1ターンに1度、魔法・罠による破壊を回避する
「クリス……」
「魔法や罠を止めるカードやない……ってことはこのターンで勝負を決めれへん限り……」
「遊戯の勝ち……」
(……違う。場を表面的に見るな。場も、手札も、墓地も。今も、前も。すべて見ろ!)
「……バトルだ! クリスで、遊戯君にダイレクトアタック!」
(……クリスの攻撃だけなら、耐えられるか? いや、"貪欲な壺”で戻したカルートが勝利君の手札に存在していた場合は、俺の負けだ。ここは使うしかない)
「墓地に存在する、"超電磁タートル”の効果発動!」
「……"クリバンデット”の効果で、墓地に送られたカードか」
超電磁タートル
光属性 機械族 星4
攻撃力 0
守備力 1800
墓地に存在する場合、場に磁力を発生させ、バトルを強制終了する
クリスの投げたクナイが遊戯に当たるその瞬間、不自然な動きでクナイがはじけ飛ぶ。
「このカードによってプレイヤーに磁場を生み、相手の攻撃を磁力ではじく」
「……バトルが強制終了させられる。僕はカードを1枚セットし、ターンエンド」
勝利 LP 1000 手札0枚
BFー残夜のクリス
攻 1900
女神の加護
伏せカード3枚
遊戯 LP 2300 手札2枚(砂塵の大竜巻)
モンスターなし
伏せカードなし
「……」
自分たちの心音がやたらうるさく感じるほどに、場は静寂だった。
ここで、決まるかもしれない。
この決闘中、何度も何度も頭を過ぎったそのフレーズが、再び強い念を以て脳を支配する。
勝利の伏せは、3枚。
いかに"砂塵の大竜巻"が手札にあるといえど、遊戯からすれば簡単に動ける状況ではない。
だがしかし、モンスターのいない遊戯は、もしここで何もせずに、伏せカードで"砂塵の大竜巻"を防がれるようなことになれば、遊戯はそのまま攻撃を受けて敗北する可能性がある。
どちらが勝つのか。
ことこの場に来ても触れぬ決着の天秤に、興奮ともどかしさが入り混じるような皆の想いが交差する。
終わるかもしれない。
終わってほしくない。
勝ってほしい。
負けてほしくない。
そんな矛盾の、連続だった。
(……遊戯)
(……勝利)
「……俺のターン、ドロー!」
遊戯の高らかな宣言に、皆の思考が断ち切られ、視線が集まる。
そして……そのカードに、空気が一変する。
「俺は……"円融魔術"を発動!」
円融魔術
魔法カード
墓地のモンスターで、最上級魔術師を融合召喚する
「このカードによって、俺は墓地のモンスターを除外して、魔術師融合モンスターを召喚する!」
「い、1枚で最上級モンスターの融合召喚やと!?」
「まさか、またブラック・パラディンを……」
「いや、違え! 遊戯が狙ってんのは!」
いち早くその狙いに気づいたのは、城之内。
それは、必然だったのかもしれない。
遊戯の墓地より、"ブラック・マジシャン”、そして……"真紅眼の黒竜”がフィールドに舞い戻る。
「れ、"真紅眼”!?」
「そうか……さっき、"クリバンデット”の効果で墓地に……」
「ってことは、召喚されるのは!?」
「俺は墓地に存在する、"ブラック・マジシャン”と、"真紅眼の黒竜”を融合!」
「……嘘だろ?」
「ここにきて……」
「奴が……くるのか!?」
場の熱気が、急激に上がる。
それと共に黒炎を伴い、降臨した。
「友情の力を以て、この決闘に終止符を打つ! 現れよ、"超魔導竜騎士-ドラグーン・オブ・レッドアイズ"!!」
超魔導竜騎士-ドラグーン・オブ・レッドアイズ
闇属性 魔法使い族 星8
融合モンスター
ブラック・マジシャン+レッドアイズ・ブラックドラゴン
攻撃力 3000
守備力 2500
その固い鎧鱗は効果を弾き、破壊を防ぐ
素材のモンスターの数だけ、相手モンスターを焼き払う
手札1枚で、発動したカードを燃やし尽くし、エネルギーに変換する
「……来たか。ドラグーン・オブ・レッドアイズ」
「ああ、この城之内君との友情のカードで、この決闘に終止符を打つ」
「……やってみなよ。できるものならね」
余りにも冷静な勝利のその言葉が、この絶望的なフィールドに不釣り合いで不気味に響く。
この状況で、一縷の恐怖さえも見られない。
勝利の姿に、驚愕を隠し切れないギャラリー。
中でも、表情を変えないながらも一際それに驚いているのが、海馬だった。
(……俺のブルーアイズでもな打ち崩されたあの忌々しきモンスターを前にあの態度……いったい、何を考えている? 勝利)
(……可能性は、ある。でも、9割方、負け……つながる可能性は、奇跡みたいなものか……)
勝利はここで、ちらと客席を見る。
心配そうな目で見つめる舞。睨むような瞳で見ている竜崎。
そして、真剣な表情で真っすぐ見るマリクの後ろで、静かに場を眺めるイシズを見つけた。
「……」
(……ああ、そうだ。信じた先に、奇跡は起こる。僕はもうそれを、教えてもらったんだ)
勝利は、大きく息を吐き、汗を拭う。
そして改めて、遊戯に向き直った。
「……さあ、どうする。遊戯君?」
それを見て、今度は遊戯が固まる。
(……勝利君のあの自信……ドラグーン・オブ・レッドアイズを、相手取る自信があるとでもいうのか……)
遊戯は、自身の手札を見る。
その手の中には、"砂塵の大竜巻”がある。
(ドラグーン・オブ・レッドアイズの無効効果があれば、"砂塵の大竜巻”を発動して勝利君の場の"女神の加護”を破壊し、決着をつけることができるかもしれない……)
そして、そこまで考えた遊戯は、自嘲気味にふっと笑う。
(……そんな手段で、というより、そんな情けない心で勝ったところで、俺の求めるものは得られない。そしてなにより……今の勝利君とぶつかり合うことを避けることは、臆病者の選ぶ道!)
「さあ、行くぜ! ドラグーン・オブ・レッドアイズの、効果発動!」
「っ! (来る!)」
ドラグーン・オブ・レッドアイズが、杖の先をクリスに向ける。
杖の先からあふれる炎の力が、クリスを逃がすまいと取り囲む。
「敵モンスター1体を破壊し、その攻撃力分のダメージを相手LPに与える!」
(……ドラグーン・オブ・レッドアイズの攻撃力は3000。クリスに攻撃しても勝てるけど、効果破壊を選んだのね。確かに、勝利はここまで戦闘補助カードも多数使ってるし、何より、ドラグーン・オブ・レッドアイズは破壊できないモンスター。先に効果で狙い打つのが、定石)
「クリスの攻撃力は、1900……」
「勝利のLPは、1000……」
「これが通れば、終わりや……」
「行けっ! ドラグーン・オブ・レッドアイズ! 『
クリスに、炎の弾丸が迫る。
その瞬間に、勝利が叫ぶ。
「させない! 伏せカードオープン! "ダメージ・ポラリライザー”!」
「っ! カウンター罠!?」
ダメージ・ポラリライザー
カウンター罠
効果ダメージを含む効果を無効にする
その後、互いにカードを1枚ドロー
「このカードによって、効果ダメージを与える効果を含むカード効果を無効にし、互いに1枚ドローする」
「……いいだろう。1枚ドロー」
「……おいおい。遊戯の奴、ドラグーン・オブ・レッドアイズの効果を忘れちまったのかよ? "ダメージ・ポラリライザー”をドラグーン・オブ・レッドアイズの効果で無効にしちまえば、そのままクリスを破壊して勝ってたんじゃ……」
「……スペルスピードも知らないの? このお馬鹿」
城之内の疑問の声を、舞の呆れ声が一蹴する。
「竜崎さん。スペルスピードって?」
「……簡単に言えば、カードの速さや」
「……速さ?」
静香と杏子の疑問に竜崎が答える。
「相手の"サイクロン”に対して、自分で"融合”や"死者蘇生”を発動できん。っちゅうのはなんとなく知ってるやろ? それとおんなじことや。通常魔法よりも、罠カードや速攻魔法の方が早さが上やから、通常魔法は"サイクロン”に発動できん。その速さの頂点にあるんが、『カウンター罠』なんや」
「……?」
自分の説明に未だ疑問符を浮かべる、女性陣と城之内。
それをかみ砕くために、竜崎は続ける。
「確かに城之内のいう通り、ドラグーン・オブ・レッドアイズにはカード無効効果がある。せやけど、それは相手のカードをなんでもかんでも無効にできるわけとちゃう。当然、ドラグーン・オブ・レッドアイズの効果にも速さが設定されてんねん」
「っ! 『カウンター罠』が1番早いから、ドラグーン・オブ・レッドアイズの効果じゃ無効にできない」
「そういうこっちゃ」
「強力無効効果の、数少ない穴ってわけね。さすがに抜け目ないわ、勝利は」
「……」
「おい、城之内。わからねえならもう一回聞いといた方が……」
「う、うるせえ!」
ギャラリーが騒がしくなる中、海馬とマリクは、静かに場を覗く。
その表情は、勝利に負けず劣らず険しいものだった。
(……確かに、カウンター罠による捌きは見事だった。だけど……)
(ドラグーン・オブ・レッドアイズには、2度の破壊効果がある。ましてや、破壊効果をかいくぐったとて、戦闘によって破壊されれば勝利は敗北する。状況は、まるで好転してはいない)
海馬の考えは正しい。
そして、それを誰よりも理解しているのは、勝利だった。
(……今の伏せカードだけじゃあ、ドラグーン・オブ・レッドアイズは受けきれない。この"ダメージ・ポラリライザー"の1ドローに、かかっている……)
意気込みで、崖っぷちを悟られてはならない。
何事もなく、しかし、魂を込めて。
勝利は、言葉を紡ぐ。
「効果により、僕も1枚ドロー」
勝利がそのカードを確認するよりも先に、遊戯が先に声を上げた。
「残念だが、ドラグーン・オブ・レッドアイズは、2体分の力を宿している。今度は、真紅眼の一撃だ!」
遊戯が、腕を振り上げる。
その手が指さす天には、真紅眼の影が燃ゆる。
「今度こそ、終わりだ! ドラグーン・オブ・レッドアイズ! 『
真紅眼の影が、クリスに迫る。
これがぶつかれば、クリスは業火に焼かれ、その炎は勝利をも焼くことになる。
「っ! 勝利!?」
「……まだだ! デッキは、必ず答えてくれる! 僕が信じている友達は、いつだって僕を助けに来てくれる!」
「何っ!?」
「手札から、"ライフ・コーディネーター”の効果発動!」
勝利の宣言と同時、クリスの目の前に、泡のバリアが展開される。
それにぶつかった燃える真紅眼は、勢いが殺される。
ライフ・コーディネーター
風属性 サイキック族 星2
攻撃力 800
守備力 400
「LPにダメージを与える効果」を持つカードを無効にし破壊する
「このカードによって、ドラグーン・オブ・レッドアイズの効果を無効化する。ドラグーン・オブ・レッドアイズは破壊できないが、『効果の無効』そのものは有効!」
「嘘っ!? 今の"ダメージ・ポラリライザー”で、"ライフ・コーディネーター”を引いたってこと!?」
「なんちゅう……いや、でも……」
「……確かに、君の執念のドローは、すさまじかった。だが、惜しかったな勝利君。俺は、ドラグーン・オブ・レッドアイズのもう一つの効果発動! 手札を1枚墓地に送り、"ライフ・コーディネーター”の効果を無効にし、破壊する! 『マナ・ドレイン』!」
するとドラグーン・オブ・レッドアイズの杖の宝石から放たれる光が、"ライフ・コーディネーター”のバリアを貫く。
そしてその穴から、徐々にバリアが崩壊し、真紅眼の炎がクリスに襲い掛かる。
「これで、クリスは破壊! その攻撃力分のダメージで、俺の勝ちだ! 決めろ、ドラグーン・オブ・レッドアイズ!」
BFー残夜のクリス
攻 1900
勝利 LP 1000
遊戯の宣言と共に、炎の火力が上がる。
終わった。
誰もが、そう思った。
「……うん。惜しかったね。遊戯君」
勝利を除いて。
「……なんだって?」
遊戯が、思わず声を漏らす。
「……速攻発動系モンスターが引けなかったら。遊戯君が、そのまま攻撃してきたら。遊戯君が、僕の手を、見逃したら。どのケースでも、僕はここで負けてた。僕がここに残っているのは、ただの奇跡だ」
「……奇跡? 勝利君、一体何を」
そこまで言って、遊戯がはっとする。
(……待て。いつ俺の中から、
なのに、なぜ。自分の中から、攻撃の選択肢が消えた。
(……一手目は、様子見だった。一度目の効果で、クリスを破壊しようとしたところまでは。その後だ。なぜ俺の中から、攻撃するという選択が消えた?)
"ダメージ・ポラリライザー”。
あのカードで、勝利が効果ダメージによる敗北を必死に回避しようとしていると、錯覚した。否、
(……誘導されていたというのか。効果ダメージを通す選択に。勝利君の、望む選択に!?)
「そう。僕が真に待っていたのは、君の効果発動だ! 今この瞬間に、ドラグーン・オブ・レッドアイズの破壊効果! "ライフ・コーディネーター”! そして、ドラグーン・オブ・レッドアイズの無効効果! 3つの効果が、同時発動した!」
「っ!?」
「なっ!?」
「この発動条件は!?」
「奇跡よ、再び! 発動! "
速攻魔法
同時に3枚カードが発動している場合のみ発動可能
それらの効果が発動する前に、モンスター1体を蘇生する
「この効果により僕は墓地のモンスターを、速攻召喚する!」
立ち上がる、一筋の光の柱。
そこに……漆黒の竜が舞い降りる。
「さあ。何度だって、共に戦うは、優しき竜! "ブラックフェザー・ドラゴン”!」
『ふぁーーー!』
「……信じられない」
「すごすぎる……」
「ほんとに……」
「さあ。発動効果の処理だ。"ライフ・コーディネーター”の効果は、ドラグーン・オブ・レッドアイズによって無効化される」
「……そして、ドラグーン・オブ・レッドアイズの効果で、クリスは破壊……」
「だが! その効果ダメージは、"ブラックフェザー・ドラゴン”が無効化する!」
ブラックフェザー・ドラゴン
攻 2800 ー 700(黒羽カウンター × 1) = 2100
勝利 LP 1000 手札0枚
ブラックフェザー・ドラゴン
攻 2100
女神の加護
伏せカード1枚
遊戯 LP 2300 手札1枚
ドラグーン・オブ・レッドアイズ
攻 3000
伏せカードなし
「……ドラグーン・オブ・レッドアイズの攻めを、耐えきった……」
「……クリスは、ドラグーン・オブ・レッドアイズの効果でやられた。だからこそ、攻撃対象は"ブラックフェザー・ドラゴン"しか残っとらん」
「"ブラックフェザー・ドラゴン"の、現在の攻撃力は2100。攻撃で与えるダメージは、900」
「……100、残る」
耐えきった。
遊戯の、怒涛の攻めを。そのわずかな隙間を。潜り抜けて見せた。
その結果に、皆が放心していた。
だが、遊戯は頭を振り、思考を無理やり切り替える。
(……落ち着け。俺の手札にはまだ、"砂塵の大竜巻”がある。"女神の加護”を破壊さえすれば、勝てるという状況は、動いてはいない。だがそのためには……)
遊戯は、フィールドを見上げる。
高く、気高くそこに立つ竜は、遊戯を見下ろしていた。
(ダメージ無効化の効果を持つ、"ブラックフェザー・ドラゴン"を倒す必要がある。しかもそれは、黒羽カウンターが乗せられてやむを得ず弱体化している今が、千載一遇のチャンス! 逃した勝ちを数えるな! まだ勝機は俺にある!)
そうして、遊戯は、駆け出した。
残る勝機に向かい、一直線に走り出した。
「バトル! ドラグーン・オブ・レッドアイズで、"ブラックフェザー・ドラゴン"に攻撃!」
「……
その瞬間に、遊戯の背筋に、悪寒が走る。
そう。
そこまでが、勝利の誘導。
効果ダメージを完全にいなし、攻撃すらも耐えきる。までではなく。
そう思わせるまでが、勝利の勝負。
「……ドラグーン・オブ・レッドアイズは、強力すぎる。特にカードの連鎖で戦う僕には、そのカードを超える手段は、そう多くない。だからこそ、一発の戦闘で、倒しきる必要があった。ドラグーンの効果を使いきった、この1回のタイミングで!」
「ば、馬鹿な!? 真に狙っていたのは……戦闘だというのか!?」
(ここまで狙って……あの、
「弱さだって、強さに変わる! 伏せカードオープン! "あまのじゃくの呪い”!」
「!!!!?」
あまのじゃくの呪い
罠カード
攻撃のアップ・ダウンを、逆転する
「この効果によって、攻撃力のマイナスとプラスが、逆転する!」
「なっ!? ってことは!?」
「……黒羽カウンターの力で下がっている"ブラックフェザー・ドラゴン”の攻撃力が、逆転して……」
ブラックフェザー・ドラゴン
攻 2100 ⇒ 3500
「攻撃力、3500……」
「"ブラックフェザー・ドラゴン”の迎撃! 『逆転の、ノーブル・ストリーム』!!」
ブラックフェザー・ドラゴン
攻 3500
ドラグーン・オブ・レッドアイズ
攻 3000
遊戯 LP 2300 ー 500 = 1800
「……す、すごい……」
静寂に響く、誰かの声。
否定できるものは、誰もいない。
(……確かに、一度見たカードだから、それを使われた時の対応策を事前に準備しておくことはできるから、同じ条件とは言えないけど……)
(海馬が、ブルーアイズがやられたドラグーン・オブ・レッドアイズを、たった1ターンで……)
舞も、竜崎も、マリクも。
絶対に、口にはしないであろうが、海馬でさえも、確信した。
この決闘は、歴史に残る伝説の決闘となる。
自分たちは今、とんでもないものを目にしているのかもしれない。と
勝利 LP 1000 手札0枚
ブラックフェザー・ドラゴン
攻 3500
女神の加護
伏せカードなし
遊戯 LP 1800 手札1枚
モンスターなし
伏せカードなし
「……俺はずっと、君の手のひらの上だな」
「そんなわけないでしょ。ただの運だよ。ほとんどのパターンで、僕の負けだった。僕はただ、運が良かっただけだ」
「よくいうぜ。その運での勝ちを拾うために、君は俺が想像もできないほどの先読みを重ねているはずだ。”貪欲な壺”でカルートを多く戻したのも、攻撃を戸惑わせる作戦か?」
「……さあね」
そう言った後、顔を見合わせ笑う。
しかし、同時に表情がそっと消えた。
先ほどまでの、楽しむ笑顔と全く違う。
いや、楽しんでいないわけではないだろう。しかしその二人の表情には、哀愁があった。
まるで一夏の思い出を、扇風機を片付けながら思い返すかのような。
終わりを悟ったからこその、切なさ。
二人とも、一流。
だからこそ、わかっている。
再び訪れたこの最高の決闘の舞台の幕引きが、近づいているということを。
タイトルは作中にも出てくる、終わりの始まりにしようとしたんですが、カードとしての終わりの始まりには、私が好きなカードであることを除き何の意味もないので自重しました。
次回、おそらく決闘ラストです。
果たして、勝つのはどっちか。
追記
ドラグーンの効果が2つ発動しているので、「同一チェーン上で同名カードの発動」があり、奇跡の蘇生は使えないという指摘がありました。
全くその通りで、別の効果だから使えるものだと勘違いしていました。
今更構成を歪めることも難しいので、原作、アニメ等でよくあるocgと作品内の差分ということで一つ、お目溢しの程をお願いできればと思います。
今後はこのようなことがないように気をつけます。
今後とも、勝利たちの決闘をよろしくお願いします。
勝つのは……
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勝利
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遊戯