勝利 LP 400 手札6枚
ブラックフェザー・ドラゴン
攻 2800
BF-アームズウィング
攻 2300
BFー弔風のデス
攻 1000
黒い旋風
召喚権 残り1回
海馬 LP 4000 手札2枚
守 2500
ブラッド・ヴォルス
攻 1900
X-ヘッド・キャノン
攻 1800
伏せカード2枚
『ふぁーーーーーー!!』
『きょーーーーーー!!』
"ブラックフェザー・ドラゴン"の雄たけびが空気を震わせる。
それに従うように、アームズウィングが叫ぶ。
その攻撃的な咆哮は、LPの差など感じさせずに、勝利の追い風を表現するかのような力強い叫びだった。
しかし海馬は、その圧倒的な力を前にしても、余裕の表情を崩す様子はなかった。
海馬の威風堂々たるその姿に、逆に勝利が苦笑いを零す。
(……圧力で勝とうだなんてさらさら思っていなかったけど……やはり彼の魂を揺るがすには、勝つしかない。僕を、BFを、世界に認めさせる。そして何より……海馬君に、僕たちを認めてもらうんだ!)
ふっと一つ息を吐き、燃ゆる瞳を海馬にぶつける。
海馬は一言、ほう、とだけ返す。
「……一気に、シンクロモンスターが2体。勝利が、全力を出してきやがった……」
「で、ですが……瀬人様のフィールドには、攻撃力3000の"青眼の白龍"がいます。黒羽勝利のモンスターの最大攻撃力は、"ブラックフェザー・ドラゴン"の2800。瀬人様のフィールドを突破することは……」
「……こざかしい。気づいていないとでも思ったか」
「……やっぱ、ばれちゃった?」
外野の声を咎めるかのような海馬の声に、勝利はサプライズに失敗したかのような悪戯な笑みで海馬に返す。
モクバたちはその言葉に、疑問符を浮かべるばかりだった。
「……兄サマ、勝利? 一体何を……」
「っ!? モクバ様! ブルーアイズが!?」
勝利 LP 400 手札6枚
ブラックフェザー・ドラゴン
攻 2800
BF-アームズウィング
攻 2300
BFー弔風のデス
攻 1000
黒い旋風
召喚権 残り1回
海馬 LP 4000 手札2枚
守 2500
ブラッド・ヴォルス
攻 1900
X-ヘッド・キャノン
攻 1800
伏せカード2枚
モクバたちの驚愕の視線の先には、頭を垂れ、羽をたたんだブルーアイズの姿。
「ぶ、ブルーアイズが、守備表示に!?」
「"BF-アームズウィング"のシンクロ素材として墓地に行った、"BF-突風のオロシ"の効果が発動していた。"青眼の白龍"は守備表示に変更させてもらったよ」
「……姑息な手を」
「す……すげえ。勝利はシンクロ召喚で強力モンスターを並べると同時に、兄サマのブルーアイズを突破する準備も整えてたってことかよ……」
「そして、これでラスト! 僕は"サモンチェーン"で増えた最後の召喚権を使い、"BF-竜巻のハリケーン"を召喚!」
『ふおっふおっふおっ!』
BF-竜巻のハリケーン
闇属性 鳥獣族 星1
攻撃力 0
守備力 0
シンクロモンスターを選択し、このターンそのモンスターの姿をコピーする
フィールドに巻き起こった小さな竜巻の中から生まれたハリケーンが、楽しそうに"ブラックフェザー・ドラゴン"にすり寄る。
そして自分の羽根をばらまき、翼を一振りすることで巻き起こる竜巻。
「な、なんだぁ!?」
「……」
強烈な風のエネルギーに、思わず視界を塞ぐ海馬兄弟。
そしてその竜巻が収まった中に生まれたのは……黒い羽でできた、2体目の"ブラックフェザー・ドラゴン"の姿。
「なっ!? なんで!? "ブラックフェザー・ドラゴン"は、1体だけのはずだろ!?」
「ハリケーンの効果。それは、自分の場のモンスターの姿を模倣することで、そのターン限定でそのモンスターの力をコピーすることができる効果。その力によって……僕のフィールドに、新たに生み出されるモンスター! 来い! "ブラックフェザー・ドラゴン2nd"!!!」
『……』
それは、吠えない。飽くまで、模倣だからだ。
しかし、与える威圧感は、ことこの瞬間に至っては、本物のそれと相違ない。
勝利 LP 400 手札5枚
ブラックフェザー・ドラゴン
攻 2800
ブラックフェザー・ドラゴン2nd(竜巻のハリケーン 効果発動中)
攻 2800
BF-アームズウィング
攻 2300
BFー弔風のデス
攻 1000
黒い旋風
海馬 LP 4000 手札2枚
守 2500
ブラッド・ヴォルス
攻 1900
X-ヘッド・キャノン
攻 1800
伏せカード2枚
勝利が展開した、完全なフィールド。
そのモンスターたちの攻撃力は海馬のモンスターたちすべてを上回り、誰が見ても、勝利がこの空間を圧倒している。
それでも、二人の真剣な表情は、この決闘の天秤が傾き切っていないことを証明していた。
「……行くよ」
「フン」
勝利が、腕を振り上げる。
それに答えるように、BFたちが飛び上がった。
「まずは、"BF-アームズウィング"の攻撃!」
"BF-アームズウィング"が空から銃を構え、力を籠める。
その銃口の先にいるのは……"青眼の白龍"。
「攻撃力の低い、"BF-アームズウィング"で、ブルーアイズを!?」
「この瞬間、"BF-アームズウィング"の効果発動! 守備表示モンスターを攻撃しようとしたとき、その攻撃力を500ポイントアップする!」
BF-アームズウィング
攻 2300 + 500 = 2800
「あ、アームズウィングの攻撃力がブルーアイズの守備力を上回った!」
「勝利のやつ、そのためにブルーアイズを守備に!?」
「そしてアームズウィングには、守備力を攻撃してダメージを与える効果がある! 行けっ! アームズウィング! 『ブラック・チャージ』!!」
銃から発射された漆黒の弾丸が、ブルーアイズを貫いた。
『ぎゃーーー!!』
BF-アームズウィング
攻 2800
守 2500
海馬 LP 4000 ー 300 = 3700
衝撃が、ブルーアイズ越しに海馬に伝わる。
とうとう削られた海馬のLP。
しかし、大した感傷を覚えることもなく、勝利は続ける。
「続いて! "ブラックフェザー・ドラゴン"2体で、海馬君のモンスターに攻撃! 『ノーブル・ツインストーム』!!」
ブラックフェザー・ドラゴン
攻 2800
ブラックフェザー・ドラゴン2nd(竜巻のハリケーン 効果発動中)
攻 2800
ブラッド・ヴォルス
攻 1900
X-ヘッド・キャノン
攻 1800
2体の"ブラックフェザー・ドラゴン"の巻き起こした竜巻が、海馬のフィールドを飲み込み、切り裂く。
海馬はそれにも反応することなく、モンスターたちが無残に消えていくのをただ眺める。
海馬 LP 3700 ー 900 ー 1000 = 1800
「……ラスト! "BFー弔風のデス"で、海馬君にダイレクトアタック! 『デスウィング』!」
「……伏せカードオープン。"機械仕掛けのマジックミラー"」
機械仕掛けのマジックミラー
罠カード
相手モンスターの攻撃宣言時に、相手の墓地の魔法カード1枚を自分フィールドに持ってくる
「俺はこの効果で、貴様の墓地の"貪欲な壺"を俺のフィールドにセットする」
「だが、攻撃は止まらない! いけぇ! デス!」
海馬 LP 1800 ー 1000 = 800
「に、兄サマのLPが、一気に……」
「これで、瀬人様と勝利のLPの差はわずか400! わからなくなりました!」
「……よくぞここまで展開した。と、ほめてやりたいところだが……その代償は、大きいようだな」
「……バトルフェイズ終了」
(……やはり、海馬君は気づいている。僕がこのターンに賭けたものの大きさを……)
勝利は、自分が展開したフィールドのモンスターたちを一瞥した後、手札を眺める。
これまでの手札をひっくり返したかのように、その手札のほとんどは、罠カード。
(序盤がモンスターばかりだったんだから、次はこうなるのが道理。次の海馬君のターンを耐えきり、反撃を決めて僕の勝ち。と行けばいい話だけど……)
続けて勝利は、ディスクの機能を起動する。
それは、除外カードの確認。
勝利が発動した、"強欲で貪欲な壺"によって消えていった、再利用不能の除外カードたちだった。
(……クリス、ゼピュロス、ゲイルに、カルート、コガラシ。ついでにシムルグまでイってる……今度は、エースモンスターの不在だ)
勝利は先のすべてを頭に浮かべ、そっと目を閉じる。
そして、全てを察し心の中で舌打ちを鳴らす。
(……次のターンに海馬君を相手に戦い抜く力は、もう僕にはない。ならば、どうする? 諦めない。それだけは、決まっている。なら、後僕にできることは、なんだ?)
勝利は、そっと目を開く。
そして、カードを発動した。
「……僕は、"封印の黄金櫃"を発動」
封印の黄金櫃
魔法カード
デッキからカードを1枚、黄金櫃に封印する
2ターン後の初めに、そのカードを手札に加える
「僕はこの黄金櫃に、"死者蘇生"のカードを封印する」
フィールドに突然現れた黄金の箱に、勝利はデッキから引き抜いたカードを放り込む。
その箱は、重たい動きの蓋を箱にかけ、ゆっくりと消えていく。
「このカードは、2ターン後の未来にカードを封印し、2ターン後にそのカードを手札に加える」
「……兄サマの攻撃を2ターン耐えきって、"死者蘇生"で総攻撃を仕掛けるってわけかよ」
モクバの想像をそのまま吐露した言葉に、勝利は心の中でだけ安堵する。
(……できれば、海馬君にもそう思ってほしいけどね。実際は、僕のデッキで後まともに戦えるカードは、今の"死者蘇生"を抜いたら、数えられる程度しかない。僕には、2ターンも先の未来を見ている暇はない)
「……カードを4枚セット! これで僕は、ターンエンドだ!」
「さあ、借金の清算の時だ」
「……わかってる! シムーン、そしてハリケーンの効果が発動!」
瞬間、勝利の場から、"黒い旋風"が毒々しい色の煙を伴い消える。
そしてその煙が紫色の風となり、勝利に勢いよく襲い掛かる。
「くっ! "ブラックフェザー・ドラゴン"!!」
『ファー!!!』
勝利を蝕まんと襲い掛かる色の悪い風の刃を、"ブラックフェザー・ドラゴン"が受け止める。
ブラックフェザー・ドラゴン
黒羽カウンター 0 → 1
攻 2800 → 2100
「シムーンの効果。その効果を使ったターンの終わりに、"黒い旋風"を墓地に送り、僕に1000ポイントのダメージを与える。そしてその効果は、"ブラックフェザー・ドラゴン"が受け止めた。そして、ハリケーンの効果……」
続いて"ブラックフェザー・ドラゴン"を模した影を伴っていたハリケーンの姿が、フィールドに戻る。
「ハリケーンは効果を使ったターン終了時に、その力を失い元に戻る」
「フッ……結局今のターンで貴様は俺のLPを削るのと引き換えに、無防備な雑魚モンスターと、攻撃力の下がったエースモンスターを晒しただけということだ!」
「ぐっ……ターン終了!」
勝利 LP 400 手札0枚
ブラックフェザー・ドラゴン
攻 2100
BF-竜巻のハリケーン
攻 0
BF-アームズウィング
攻 2300
BFー弔風のデス
攻 1000
伏せカード4枚
海馬 LP 800 手札2枚
モンスター無し
伏せカード2枚(貪欲な壺)
「俺のターン、ドロー」
ターンを開始する海馬。
勝利は、ひっそりと息を飲んだ。
(……海馬君が、勝負どころと思って攻めてきてくれるならば、勝機はある……だが海馬君が、僕と同じく罠を固め、持久戦に移ろうとしたら……)
「……この俺を甘く見るな。黒羽勝利」
「っ!? 海馬君……」
「貴様が息切れを起こしていることなど、俺はわかっている。このターンは見に回り、貴様の限界まで耐えに徹するのが正着であるということもだ」
「……」
あまりにも図星なその言葉に、勝利は思わず言葉を失う。
怯えたから、ではない。困惑したからだ。
「……そう思うなら、そうすればいいじゃないか。君は別に、このターンに僕に勝たなきゃいけないわけでもないだろう?」
飽くまで平然を。そう心に言い聞かせながら、勝利は強気な言葉を返す。
しかし海馬は、より強い言葉で、確信めいた口調で勝利に返した。
「フン! そんな後ろ向きな勝利になど、何の意味もないわ!」
「っ……海馬君……」
「時間を稼ぎ、逃げ惑い、掴んだ勝利になど価値はない! 俺は、勝たねばならんのだ! 貴様に……そして、貴様の先で待っている、遊戯に!!」
「海馬君、君は……」
海馬は震える拳を突き出す。
強く、気高く、力強いその姿に、勝利は海馬の想いを完全に理解した。
(海馬君……君は、悔しかったのか……遊戯君に負け、バトルシティベスト4に甘んじたことが……ほんのわずかな差で、外野がつけたくだらない序列といえど、自分よりも遊戯君に近い、No2という場所に、自分以外の人間が立っていることが……)
誇り高いことは知っていた。
ただ、知っているだけで、理解はしていなかった。
海馬の、御心。
海馬の中にある、勝利に対する、隠れた劣等感。
海馬は、決勝を見て思った。
遊戯に最も近い決闘者。それは、もしかしたら。と。
「俺にとって戦いとは、自分の価値を証明するためのもの! 勝者にのみ与えられるたった一つの果実を己がものにすべく、至高の削りあいの果てにある栄光! それを我が手中に収め、完全なる勝利を手にすることこそが、俺が戦う意味!」
「……」
「罠を張りたければ張るがいい! 小細工を仕掛けたければ、いくらでもするがいい! 貴様の持ちうるすべての力で挑んで来い! 俺のブルーアイズが! その力ごと粉砕してくれるわ!」
「……クックックック!」
海馬のその言葉を聞いた勝利が、とうとうこらえきれなくなり、大きく笑う。
そして、ひとしきり笑った後に、ディスクを海馬に向ける。
やれるものなら、やってみろ。
倒せるものなら、倒してみろ。
そんな様子の勝利。そして、それに呼応するように、"ブラックフェザー・ドラゴン"たちが鳴く。
「……いいだろう! 君の攻めを、僕のカードが受けきってみせる! そしてこの決闘……勝つのは、僕だ!」
「フン。俺は"強欲な壺"を発動!」
「……ここでか」
強欲な壺
魔法カード
カードを2枚ドローする
「このカードによって、カードを2枚ドロー」
海馬がデッキに手を掛けたその瞬間に、勝利も動く。
「伏せカードオープン! "ブラック・ブースト"!」
「何?」
ブラック・ブースト
通常罠
フィールドのBFチューナー2体をゲームから除外してカードを2枚ドローする
「フィールドの、ハリケーンと、デスを除外することで、カードを2枚ドロー!」
「……俺も2枚ドロー」
勝利 LP 400 手札2枚
ブラックフェザー・ドラゴン
攻 2100
BF-アームズウィング
攻 2300
伏せカード3枚
海馬 LP 800 手札4枚
モンスター無し
伏せカード2枚(貪欲な壺)
「勝利の奴、低攻撃力のモンスターを逃がして、手札を稼ぎやがった!」
(僕のデッキに残っているカードを考えても、海馬君の手札が増える前のこのタイミングの発動で問題ないはず。後は、僕のカードの発動タイミング次第だ!)
「さらに俺は、"闇の誘惑"を発動!」
「っ! 海馬君も!?」
闇の誘惑
魔法カード
デッキからカードを2枚ドローし、闇属性モンスターをゲームから除外する
「2枚ドロー! その後、"ロード・オブ・ドラゴン-ドラゴンの支配者-"をゲームから除外!」
「……」
海馬の動きの一挙手一投足に、勝利の全神経が注がれる。
一つのミスで、決着が歪む。
それを二人とも、理解していた。
(…………緊張感が、高まっていくのがわかる……まるで、破裂する瞬間の風船を見ているみたいに……)
「……俺はセットカード。"貪欲な壺"を発動!」
(っ! 来た!)
貪欲な壺
魔法カード
墓地のモンスター5枚を選択し、デッキに戻す
その後、カードを2枚ドローする
「俺は、"青眼の白龍"3体、"青眼の究極竜"、"伝説の白石"の5枚を選択! デッキに戻し、カードを2枚ドローする!」
「させない! 僕は手札から、"D・D・クロウ"の効果発動!」
『クワッ!』
D.D.クロウ
闇属性 鳥獣族 星1
攻撃力 0
守備力 0
相手の墓地のカード1枚を奪い取り、次元の彼方へ葬りさる
「"D・D・クロウ"の対象に、"伝説の白石"を選択! 効果によって次元の彼方に除外される!」
「……"貪欲な壺"は対象を失い、不発となる」
海馬が投げ渡した"貪欲な壺"を自身の墓地に置きながら、勝利は海馬の場から目を切らずに見つめる。
その視線の先は、海馬の伏せカード。
(……わかってる。"貪欲な壺"は、単なる囮。本命は、伏せカードの"異次元からの帰還"。)
異次元からの帰還
罠カード
LPを半分支払って効果発動する
除外されたモンスターを可能な限りフィールドに召喚する
(本来ならブルーアイズたちを除外したいところだけど、それをやったら最後、海馬君の罠が発動して除外からブルーアイズが降臨する。ここは、これがベストのハズ……)
「俺はさらに、モンスターカードを召喚する! ウイルスカード、"同族感染ウイルス"!」
「っ!? こ、ここでウイルスカードだって!?」
同族感染ウイルス
水属性 水族 星4
攻撃力 1600
守備力 1000
手札を1枚捨て、宣言した種族のモンスターに感染する
ふよふよと場に浮き出た嫌悪を催させるそのモンスターに、勝利が思わず汗を垂らす。
「覚悟するがいい! "同族感染ウイルス"の効果! 手札を1枚捨て、ドラゴン族を宣言! この効果によって、"ブラックフェザー・ドラゴン"にウイルスを感染させ、破壊することができる! 行けっ、ウイルスモンスターよ!」
「やらせて、たまるかあ! 僕は手札から、罠カード発動! "ブラック・バード・クローズ"!!」
「っ! 手札から罠カードだと!?」
ブラック・バード・クローズ
カウンター罠
場にに「BF」シンクロモンスターが存在する場合、手札からも発動できる
相手モンスターが効果を発動した時、「BF」1体を生贄にその発動を無効にし破壊する
「このカードは、BFシンクロモンスターが存在する場合手札からも発動できる特殊罠カード! "BF-アームズウィング"を生贄に、"同族感染ウイルス"を吹き飛ばす! 行けっ! アームズウィング! 必殺、『ブラック・バード・クローズ』!」
その宣言で、大きく羽ばたいたアームズウィングが、ウイルスに突っ込んでいく。
ウイルスを自ら取り込んだアームズウィングは苦しそうにしながらも、ウイルスを一身に背負いながら自ら墓地へと姿を消す。
「……ありがとう。アームズウィング」
勝利 LP 400 手札0枚
ブラックフェザー・ドラゴン
攻 2100
伏せカード3枚
海馬 LP 800 手札2枚
モンスター無し
伏せカード1枚
「さあ。君の虎の子の除去カードは破壊した。まだ手はあるかい。海馬君?」
「……フン。確かに今のカード捌きは予想外。全く見事だった。だが貴様が決死の想いでその相棒を守ったことにより、新たな情報を俺に晒すこととなった」
「……」
「今の2手。貴様は、手札のモンスターと罠で対処した。今の手札はこのターンの初めに、ドローカードによる偶発で手に入れたもの」
海馬は、自らの言葉にほくそ笑む。
勝利が口を開く隙もなく、海馬は推理を続けた。
「それに頼るしかなかった。それでしか防ぐことができなかった。ということは……貴様のフィールドに伏せられたカードは、妨害系のカードは極端に少ないということだ」
「……成程」
勝利の表情からは、何も読めない。
しかし海馬はすでに、自分の想像を確信に変えていた。
(ここまで発動することがなかったということはおそらく、攻撃時に発動する罠か。もしくは、モンスターそのものを狙い撃つ破壊系罠といったところか……であれば、俺の勝利はゆるぎない!)
「さあ、行くぞ勝利! 俺は墓地に存在する、"太古の白石"の効果を発動!」
光属性 ドラゴン族 星1 チューナー
攻撃力 600
守備力 500
墓地に送られたターンの終了時、卵がかえり、ブルーアイズを場に降臨させる
墓地から除外し、墓地のブルーアイズを手札に返す
「ほ、
『"同族感染ウイルス"の効果! 手札を1枚捨て、ドラゴン族を宣言!』
(しまった!? "同族感染ウイルス"の効果は、このカードを墓地に埋葬するための囮!?)
「このカードの効果によって、墓地の『ブルーアイズ』カードを手札に戻すことができる。俺が戻すのは……」
そう言って海馬が、墓地からカードを1枚取り出す。
そのカードを見て……勝利は、全てを理解した。
「"青眼の究極竜《ブルーアイズ・アルティメットドラゴン》”!!」
「っ!!!!? まさか……君が狙っていたのは、ずっと……」
(アルティメットドラゴンの、再召喚!? ってことはもう、手札には……)
「融合モンスターのアルティメットは、融合デッキに戻る。さあ、覚悟しろ勝利! これが、俺のキーカード! "
「くっ! やはり!」
魔法カード
墓地のドラゴンをゲームから除外し、ドラゴン融合召喚を行う
「さあ、今一度最強の竜の降臨のため、その身を捧げよ! 墓地の3体のブルーアイズ!」
墓地から飛び出し、再び天に舞うブルーアイズたちを呆然と眺める勝利。
その表情は、悔しさが滲んでいた。
("貪欲な壺"も、"同族感染ウイルス"も、果ては早々に切り札を召喚したことも……すべては、この最後を思い描いていたがための、過程に過ぎなかったってことか……)
「さあ、再びその姿を現すがいい! "青眼の究極竜《ブルーアイズ・アルティメットドラゴン》”!!!!」
『『『グギャア――――――!!!!』』』
二度目の登場。
しかし心なしか一度目よりも、その姿は、その恐ろしさは、力を増していた。
青眼の究極竜《ブルーアイズ・アルティメットドラゴン》
光属性 ドラゴン族 星12
攻撃力 4500
守備力 3800
「……そして、それだけじゃない」
「わかっているじゃあないか。伏せカードオープン! "異次元からの帰還"!」
異次元からの帰還
罠カード
LPを半分支払って効果発動する
除外されたモンスターを可能な限りフィールドに召喚する
「このカードにより、俺はLPを半分支払う!」
海馬 LP 800 ÷ 2 = 400
「そして、除外されたモンスターを、フィールドに特殊召喚する。この意味が、分かるな?」
問う海馬。
しかし、勝利の解答が待ちきれないといった様子で、自身のカードを並べていく。
「さあ……現れるがいい! "ロード・オブ・ドラゴン-ドラゴンの支配者-"! そして……"
不意に避けた次元の裂け目から、白銀の龍が唸りを上げながら舞出でる。
海馬の理想を体現するかのようなフィールドが、完成した。
勝利 LP 400 手札0枚
ブラックフェザー・ドラゴン
攻 2100
伏せカード3枚
海馬 LP 400 手札1枚
青眼の究極竜《ブルーアイズ・アルティメットドラゴン》
攻 4500
攻 3000
攻 3000
攻 3000
ロード・オブ・ドラゴン-ドラゴンの支配者-
攻 1200
伏せカード無し
「フッフッフッフッフ! アーッハッハッハッハッハ! 強靭! 無敵! 最強! 粉砕! 玉砕! 大喝采!」
まるで少年のように雄たけびを上げる海馬にしかし、咎める気力すらもわかない勝利が、冷静に場を判断する。
「……この局面で、アルティメットの召喚。そして、ブルーアイズが3体……仕舞にゃ、"ロード・オブ・ドラゴン-ドラゴンの支配者-"のおまけつき」
(……まいった。やばすぎる。これが、海馬瀬人の実力)
ロード・オブ・ドラゴン-ドラゴンの支配者
闇属性 魔法使い族 星4
攻撃力 1200
守備力 1100
ドラゴン族を支配する力を持つ魔術師
ドラゴン族への攻撃を封じる
「ま、まさか……こんな、こんなフィールドが起こりえるのか……」
「すっげぇ! やっぱすげえぜ兄サマは!!!」
「……さあ。今ならば、貴様のサレンダーを認めてやってもいいぞ? どうする、勝利?」
ブルーアイズたちを従え上機嫌の海馬は腕を組み、反応を楽しむように勝利を見る。
100%の自分の勝ち。
それを疑わないからこその、その言葉だった。
勝利はそんな海馬の様子に、一つため息をついて答える。
「……確かに、ここから逆転する方法は、ないに等しい。諦めることは、利口なのかもしれないね」
勝利の言葉を聞き、海馬は笑みを消した真剣な表情に変わる。
それは勝利が、言葉とは裏腹に、諦めを見せる様子がなかったからだ。
「でも。この決闘を途中で投げ出すことが正解なら、僕は、一生馬鹿でいい」
勝利は、再びディスクを構え、海馬に正対する。
最後まで、決闘を戦いきる。それは意思表示だった。
「全力で、かかって来いよ。海馬君! 何度だって言ってやる! この決闘……勝つのは、僕だ!」
「……ならばその心ごと、貴様の勝機をへし折ってくれるわ! 魔法カード、"スタンピング・クラッシュ"を発動!」
スタンピング・クラッシュ
魔法カード
ドラゴン族モンスターで魔法・罠を踏みつぶし破壊。
プレイヤーに500ダメージを与える
「このカードによって、魔法・罠カードを破壊! そして貴様に、500ポイントのダメージを与える! 破壊の対象は、その真ん中のカードだ! アルティメットよ! 伏せカードを踏みつぶせ!」
「っ……」
アルティメットドラゴンが大きく振り上げた足が、勝利のフィールドに突き刺さる。
カードがばらばらに破壊され、その衝撃が勝利を襲う。
「ぐっ! "ブラックフェザー・ドラゴン"!!」
『ファー!!!』
ブラックフェザー・ドラゴン
黒羽カウンター 1 → 2
攻 2100 → 1400
ダメージを、"ブラックフェザー・ドラゴン"が受け止め、何とかダメージを免れる。
ただ、状況は悪化の一途をたどるばかりだった。
「……伏せカードは、"時の機械-タイム・マシーン”だ。破壊される」
時の機械-タイム・マシーン
罠カード
モンスターが攻撃を受けた時、1ターン過去からそのモンスターを呼び戻すことができる
「ふぅん。大した能力のない雑魚罠カードか。だがこれにより、貴様の大事な相棒はもはや低級モンスターでも破壊できる攻撃力。ほかに貴様を守るモンスターもいない。まだ、戦いを続ける気か?」
「……」
その瞳に、海馬はもうこの決闘の決着に言葉はいらないことを察する。
そして高らかに、その指先を天に掲げた。
「光栄に思うがいい。この至上最高のモンスターの一撃で、葬り去られる名誉を与えてやる」
三つ首の口に、エネルギーがたまっていく。
もはや勝利と"ブラックフェザー・ドラゴン”に、躱すすべはないことは誰もが見て取れる。
「さあ勝利! この一撃に沈むがいい! 『アルティメット・バースト』!!!!!!」
青眼の究極竜《ブルーアイズ・アルティメットドラゴン》
攻 4500
ブラックフェザー・ドラゴン
攻 1400
光が、フィールドを包み込む。
しかしその一瞬に、闇が光を飲み込むべく、圧倒的速度で膨らんでいった。
「……僕たちは、負けない! 伏せカードオープン! "あまのじゃくの呪い”!」
「っ!!?」
あまのじゃくの呪い
罠カード
攻撃のアップ・ダウンを、逆転する
「この効果によって、場の攻撃力のアップと、ダウンが、逆転する!!」
ブラックフェザー・ドラゴン
攻 2800 ー 1400 = 1400
↓
攻 2800 + 1400 = 4200
「うおっ!! "ブラックフェザー・ドラゴン”の攻撃力が、一気に!?」
「いや、ですが!?」
「これは……」
「かまうな! 『アルティメット・バースト』!!!!!!」
「っ! "ブラックフェザー・ドラゴン”! 『ノーブルストリーム』!!!』
青眼の究極竜《ブルーアイズ・アルティメットドラゴン》
攻 4500
ブラックフェザー・ドラゴン
攻 4200
勝利 LP 400 ー 300 = 100
「うわああああああ!!!」
渾身の迎撃も空しく散っていった相棒への攻撃の余波で、勝利の体が大きく仰け反る。
必死に体を保ち続けるが、勝利の目の前に映るのは、今だ絶望の只中だった。
勝利 LP 100 手札0枚
モンスター無し
伏せカード1枚
海馬 LP 400 手札1枚
青眼の究極竜《ブルーアイズ・アルティメットドラゴン》
攻 4500
攻 3000
攻 3000
攻 3000
ロード・オブ・ドラゴン-ドラゴンの支配者-
攻 1200
伏せカード無し
「勝利の場から、モンスターが消えた……」
「……ここまでよくやったと褒めてやる。だが……」
今一度、海馬が手を振り上げる。
その瞬間に、3体のブルーアイズが、とどめを構えた。
「これで終わりだ! ブルーアイズの攻撃! 『滅びの…」
「っ……伏せカード、オープン!」
勝利が、最後の力を振り絞るように、声を上げる。
そして勝利の目の前の、最後のカードが顔を見せる。
そのカードを見た海馬は、モクバでさえ見たこともない表情をしていた。
「届かなかった……勝てなかった……それでも、勝利の果実は、渡しはしない! 罠カード、"ヘル・ブラスト”!!』
「っ!!!!!? へ、"ヘル・ブラスト”だと!!?」
ヘル・ブラスト
罠カード
フィールドのモンスターが破壊された時、場の攻撃力が一番低いモンスターを道連れに自爆する
そのモンスターの攻撃力の半分のダメージを、お互いに受ける。
ブルーアイズが、勝負を決めるための最後の一撃を溜め込む最中、フィールドに並ぶ、ロード・オブ・ドラゴンの体が光り輝く。
「……今は、僕の力が、足りなかった。ブルーアイズに勝つことは出来なかった。倒すことは、叶わなかった」
「おのれ……勝利! 黒羽勝利!」
「でも、覚えておきな……次は必ず、僕が勝つ!」
そして、終わりを告げる爆発と悲鳴が、フィールドに鳴り響いた。
ロード・オブ・ドラゴン-ドラゴンの支配者-
攻 1200
ヘル・ブラストにより、破壊
勝利 LP 100 ー 600 = 0
海馬 LP 400 ー 600 = 0
決着は、つかなかった。
勝ち負けでアンケートをとっておきながら、決着は引き分けというこの所業
アンケートに引き分けなんて入れたらバレバレになってしまうので、ご了承をば。
次回、この決闘の後日談を描いて番外編が終了する予定です。
そしていよいよ乃亜編へ。
なのですが。
お盆休みに電波のない実家に帰省することになるため、更新不能になります。なので乃亜編に入る直前が、おやすみになってしまうと思います。
その間、書きだめの時間としていただこうかなと思ってます。
よろしくお願いします。
勝つのは……
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BF 勝利
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青眼 海馬