デッキマスター能力
モンスター効果や魔法・罠の発動とは別に、決闘中に使うことができる特殊能力
持っている効果はモンスターの種類だけ存在する
乃亜編特殊ルール②
デッキマスター召喚
デッキマスターは、通常の召喚とは別に召喚が可能
生贄不要。召喚条件なども無視して、融合モンスターを召喚することも可能
フリーチェーンの召喚であり、相手ターンなどに突如召喚することも可能
(本田君はこれでレアメタルナイトを相手ターンに召喚していた)
久しぶりにこのコーナーが返ってきました。
深海の戦士 LP 2700 手札4枚
モンスターなし
暗闇を吸い込むマジック・ミラー
伏せカードなし
勝利 LP 1700 手札1枚
BF-疾風のゲイル
攻 1300
BFー流離いのコガラシ
攻 2300
伏せカード1枚
軽く息を吐いた勝利は、改めてフィールドを見渡す。
場には、BFモンスターが2体。相手の決闘者、大下こと"深海の戦士"の場にはモンスターはいない。
LPこそリードされているが、状況は勝利の圧倒的有利……ではあるものの、勝利の表情はいまだ険しかった。
(……デッキマスター、"深海の戦士"のデッキマスター能力、『リフレクションホール』。モンスター2体を生贄に、モンスターへの攻撃を相手にはじき返す効果。僕のLPの状況じゃあ、もう1度の攻撃もままならない)
「さて。それでは私のターン、ドロー。ふむ、いいカードだ。私は手札から、"ブラック・ホール"を発動!」
「っ!?」
ブラック・ホール
魔法カード
フィールド上のモンスターをすべて破壊する
「このカードで、貴様のフィールドモンスターをすべて破壊する!」
「ちぃ! 伏せカードオープン! "ブラック・ブースト"!」
ブラック・ブースト
通常罠
フィールドのBFチューナー2体をゲームから除外してカードを2枚ドローする
「コガラシとゲイルの2体を除外し、2枚ドロー!」
「ふっ。やはりBFのサポートカードか。モンスターがいなくなったことで、"ブラック・ホール"は不発に終わる」
自身の発動したカードが敵モンスターを捉えることなく消えていく様を眺める大下だったが、その表情には笑みが浮かぶ。
対称的に、敵のカードを躱した勝利はいまだ苦い顔のままだった。
「数の上での物量戦が戦いにおいて重要なことは、古今東西の兵法書に記されている。そういった面では貴様の戦術は悪くないのだろうが……プロイセンの軍事理論家は、『数の優勢というものは、勝利の要因の一つに過ぎない』とも語っている」
「……」
滔滔と語る大下の言葉を、唇を嚙みしめながら聞く
「黒羽勝利。貴様のデッキは基本、『BF』というモンスターを中心とした鳥獣系デッキであり、伏せられているカードのほとんどがそのモンスターたちと合わせて初めて効果を発揮するカード。つまり、私がモンスターを先に破壊してしまえば、貴様はモンスターがいなくなる前に伏せカードを発動せざるを得なくなる。今のようにね」
「っ!?」
(……こいつ。事前の調査による戦いが得意というだけじゃない。決闘を……いや、戦い方というものを、心得ている!)
思わぬ強敵に、勝利は気を引き締めなおし、新たな手札を見ながら敵を見据える。
「さあ、行くぞ! 私は、"早すぎた埋葬"を発動!」
早すぎた埋葬
装備魔法
LPを800払い、墓地のモンスターを蘇生し、このカードを装備する
「LPを800支払い、墓地の"イピリア"を蘇生。そして、"イピリア"の召喚により、カードを1枚ドロー」
深海の戦士 LP 2700 ー 800 = 1900
「そして手札から、"ヨーウィー"を召喚」
ヨーウィー
地属性 爬虫類族 星3
攻 500
守 500
デュエル中に1度、このカード1体のみが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、次の相手のドローをスキップする
「そして"ヨーウィー"の効果。次の相手のドローフェイズをスキップする。貴様は手札を増やすことも許されないというわけだ」
「ぐっ!」
「フフフ。さて、プロイセンの将軍は言った。『栄冠は最後の勝利者に与えられるものだ。その経過がどうであれ、最後に勝った者が勝利者だ』とね。圧倒的有利のこの状況ではあるが、私は手を緩めはしない。さあ、バトルと行こう!」
深海の戦士 LP 1900 手札3枚
イピリア
攻 500
ヨーウィー
攻 500
暗闇を吸い込むマジック・ミラー
早すぎた埋葬
伏せカードなし
勝利 LP 1700 手札3枚
モンスターなし
伏せカードなし
(次のドローなし)
(……"イピリア"と"ヨーウィー"の攻撃力は、合わせて1000。僕のLPは1700だから、ギリギリ生き残る……いや、違う!?)
勝利ははっとして、前を向きなおす。
勝利の目線の先では、大下こと"深海の戦士"が怪しく笑っていた。
「さあ、"イピリア"、"ヨーウィー"! プレイヤー、黒羽勝利にダイレクトアタックだ!」
「っ!? 手札から、"BF-熱風のギブリ"の効果発動!」
BFー熱風のギブリ
闇属性 鳥獣族 星3
攻撃力 0
守備力 1600
相手の直接攻撃時、このモンスターに攻撃させる。
攻撃の時、守備力を攻撃力に変換できる
「手札から、このカードを特殊召喚する! 手札の発動は、マジック・ミラーでも吸収することはできない!」
「ほう……ここで耐えるとは……ばれてしまったかな?」
「……」
勝利はその言葉に返すことなく、無言で額の汗を拭う。
そう。今の攻撃、2体ならば耐えられるとカードの発動を怠れば、勝利はさらにピンチに陥っていた。
今、場のモンスターは2体。このモンスターたちの攻撃なら、耐えられる。
しかし、今戦っているこの決闘には、もう一つ、意識の外、理外から現れる攻撃がある。
デッキマスター。
このモンスターたちは、どのタイミングでも通常の召喚とは別に召喚することができる。
当然、今のバトルフェイズに召喚し、勝利に追撃を与えることもできた。
耐えきれるからとギブリを温存していれば、勝利は手痛いダメージをうけ、カードを使わされ、さらに追い詰められることとなっていただろう。
改めて、このデッキマスターシステムという特殊な決闘の恐ろしさを垣間見た勝利は、とっさの判断が間に合ったことに安堵する。
しかしすぐに意識を切り替え、正面の敵を見据えた。
「私はカードを1枚セットし、ターンエンド」
深海の戦士 LP 1900 手札2枚
イピリア
攻 500
ヨーウィー
攻 500
暗闇を吸い込むマジック・ミラー
早すぎた埋葬
伏せカード1枚
勝利 LP 1700 手札2枚
BFー熱風のギブリ
守 1600
伏せカードなし
(次のドローなし)
「……僕のターン」
「おっと。忘れてはいないだろうね。"ヨーウィー"の効果により、君はドローはできない」
「……わかっている」
勝利はデッキに伸ばしかけた手を、そっとひっこめる。
そして、自身の場と手札を見つめなおして、絶望の先の希望を探る。
(……奴の対策は、僕のデッキを正確に封じ込めている。BFたちの効果。そして、『BF』と魔法・罠のホットラインを断ち切ることによって、僕に思うように決闘をさせないようにしている)
勝利は、ちらと手札を見る。
敵にばれるまいと平然を装ってはいるが、苦しい状況であることは明白だった。
(手札は、低級BFが2体。効果は悪くないものの、この場面ではとても使えない。そもそも、魔法や罠を張ろうにも、おそらく、奴には読まれている……いったい、どうすれば奴に勝てる……)
頭の中を、必死に回し、勝利の可能性を探る勝利。
それを感じ取ったのか、大下が邪悪な笑みで弾んだ声を発する。
「さて、どうやって勝てばいいかわからない。といったところかな? また、兵法と心得の一つでも教えてあげようかな?」
「っ! うるさい。黙っていな」
「まあ、そんな貧弱なモンスターをデッキマスターに据えた時点で、貴様の運命は決まっていたようなもの。いかに優れた格言を知っていたとしても、宝の持ち腐れというものだな」
「うるさい! 黙ってろと言って……っ!?」
(……デッキマスター……)
瞬間、勝利の目の奥が光る。
目線だけを横に動かし、肩でおとなしく出番を待つフェーンを視界に入れる。
フェーンは、よくわからずに首を傾げるだけ。
その様子に、くすっと笑った後、勝利は手札からカードをつまみ、フィールドに置く。
「手札から、"BF-竜巻のハリケーン"を守備表示で召喚し、ターンエンド」
BF-竜巻のハリケーン
闇属性 鳥獣族 星1 チューナー
攻撃力 0
守備力 0
海の戦士 LP 1900 手札2枚
イピリア
攻 500
ヨーウィー
攻 500
暗闇を吸い込むマジック・ミラー
早すぎた埋葬
伏せカード1枚
勝利 LP 1700 手札1枚
BFー熱風のギブリ
守 1600
BF-竜巻のハリケーン
守 0
伏せカードなし
「フッ。何かと思えば、そのような貧弱モンスター1体を壁にしただけ。もはや決着は目前だな」
(……このターンだ。このターンを耐えきれば、勝機はある!)
「私のターン、ドロー。さあ、いよいよこの戦も終焉が近づいてきたようだな。我々と同じ暗闇の中に沈み、闇を彷徨う恐怖におびえる日々を過ごすがいい。フハハハハ!」
「……暗闇、ね。まあ、慣れてはいるけど。もう一度行きたくはないから、頑張らせてもらうよ」
「フン。減らず口を。私は"イピリア"を生贄に、"伝説のフィッシャーマン"を召喚!」
伝説のフィッシャーマン
水属性 戦士族 星5
攻撃力 1850
守備力 1600
「……ギブリの守備力を、上回ったか」
「さあ。絶望を味わうがいい! バトル! "伝説のフィッシャーマン"で、"BF-熱風のギブリ"を攻撃!」
伝説のフィッシャーマン
攻 1850
BFー熱風のギブリ
守 1600
「ぐっ……ギブリは破壊される」
「まだだ! "ヨーウィー"で、"BF-竜巻のハリケーン"に攻撃!」
ヨーウィー
攻 500
BF-竜巻のハリケーン
守 0
「……ハリケーンも破壊される」
「さあ……これだけでは終わらんぞ! 私はデッキマスター、私自身、"深海の戦士"を召喚!」
深海の戦士
水属性 戦士族 星5
攻撃力 1600
守備力 1800
「当然。攻撃の権利がある。さあ、その体! こちらに渡していただこう!」
"深海の戦士"の槍が、勝利を貫く。
勝利は胸を抑え、蹲る。
勝利 LP 1700 ー 1600 = 100
「ぐぅ!!!」
「ぎりぎり耐えきられたか。しぶとい奴だ。さらに私はカードを1枚セットし、ターンエンド」
深海の戦士 LP 1900 手札1枚
深海の戦士(デッキマスター)
攻 1600
伝説のフィッシャーマン
攻 1850
ヨーウィー
攻 500
暗闇を吸い込むマジック・ミラー
伏せカード2枚
勝利 LP 100 手札1枚
モンスターなし
伏せカードなし
(……追い詰められたか。苛立ちを抑え、怒りを鎮めろ。認めるんだ。この人は……強い。もしかしたら、戦略家という側面だけを見れば、僕や遊戯君を上回るのかもしれない)
痛む体と、逸る心を抑え込み、息を吐く。
(……相手の強さを見ろ。目を逸らすな。見て、考えろ。僕が奴なら、ここで考えることはなんだ?)
奴の場には、モンスターが3体。
一見盤石なように見えるが、相手のフィールドには落とし穴がある。
それこそが、奴本人。デッキマスター、"深海の戦士"だった。
(……一度場に出たデッキマスターモンスターが破壊されれば、問答無用でこのゲームは僕の勝ちになる。僕の勝機は、そこにしかない……)
(……とでも思っているだろうが、私の伏せカードは、"デストラクション・ジャマー"。黒羽勝利。貴様の手の内などすべてお見通しだ)
デストラクション・ジャマー
カウンター罠
手札を1枚捨て、モンスターを破壊する効果を持つカードを無効にして破壊する
(私を攻撃しようとすれば、『リフレクションホール』で攻撃をはじき返し、魔法・罠で破壊しようとすればカウンター罠で無効。耐え忍ぼうとしても、もう一枚の伏せカードがそれを許さない。まさに、完璧な布陣。兵力でも、戦略でも、私が完全に上回った!)
「さあ、黒羽勝利。ターンを進めるがいい。貴様の、最後のターンだ!」
その声に、突き動かされるかのように。
勝利は、重々しく、デッキに手を掛ける。
「……僕のターン。ドロー」
そして引いたそのカードを、そっとディスクにセットした。
「……カードを1枚セット。これで、ターンエンド」
「っ! フフフフフ……ハハハハハハハ! いよいよ万策尽きたようだな、黒羽勝利!」
フィールドの真ん中で、"深海の戦士"が高らかに声を上げる。
それは、勝利を確信した笑みだった。
(奴のフィールドに、『BF』モンスターはいない。つまり奴の伏せカードが、BFサポートカードであった場合、何の意味もないカードと化す。とすれば、奴がセットしたのは、逆転のための攻撃反応型罠カード。つまり……私の手を防ぐ手段は、奴にはない!)
「これで終わりだ! 黒羽勝利! 私は伏せカード、"砂塵の大竜巻"を発動!」
砂塵の大竜巻
罠カード
フィールドの魔法・罠カードを1枚破壊する
そのカードを開いたその瞬間、勝利のフィールドに、嵐が吹きすさぶ。
「このカードの効果により、貴様のその伏せカードは破壊される! そしてフィールドは丸裸! 貴様にはもう私の攻撃を止める手段はない! この勝負、私の勝ちだ!」
高らかに宣言し、声を上げて嗤う大下。
「……クックック……惜しかったね」
だが、その声に重ねるように、勝利の笑い声が場に響いた。
「……なに?」
「勝つための条件は、『敵を自滅の道に誘い込む事』。だっけ。学ばせてもらったよ。あんたは、正しかった」
「い、一体何を……」
「あんたの推理は正解だよ。この伏せカードは、BFモンスターと組み合わせるためのサポートカード。BFが場にいない今の状況じゃ、ブラフにしかならないハズレカードさ。当然、今破壊されてしまえば、効果は発動できずに終わる」
勝利が笑顔で語るその言葉は、まさに大下の予想通り。
大下が望む未来へと決闘が進んでいることを証明する言葉だった。
然し、大下の表情は徐々に曇っていく。
何が起きているのか、これから何が起こるのか。
ここまで決闘を自分の思い通りに進めてきた彼にも、まるで読めなかった。
「……そう。このカードは、BFが場にいなければ発動しない。なら、こうすればいい! この瞬間僕は、デッキマスター、フェーンを場に召喚する!」
「なっ!!? なんだと!!?」
BFー鉄鎖のフェーン
闇属性 鳥獣族 星2
攻撃力 500
守備力 800
相手に直接攻撃できる。
相手にダメージを与えた際に鉄鎖を使い、相手の行動を制限する
勝利の肩から空に飛び出したフェーンが、"砂塵の大竜巻"に飛ばされた1枚のカードを空中でキャッチする。
そしてそのカードを、したり顔で大下に見せつけた。
「じ、地雷カード!!? し、しまった!!」
「そう。僕が伏せたカード、それは……地雷型罠カード、"BF-マイン"!」
BF-マイン
罠カード
BFが仕掛ける地雷。破壊しようとすると爆発する。
相手に1000ポイントのダメージ。その後カードを1枚ドロー
フェーンが竜巻の中から拾ったそのカードを、大下こと"深海の戦士"に投げつける。
そして、足元に飛んできたそのカードが、一瞬にして強い光を放ち、大下の視界が真っ白になる。
「起爆! "BF-マイン"!」
「ぐおおおおおおおおお!?」
海の戦士 LP 1900 ー 1000 = 900
地雷の爆破によって直接ダメージを受けた"深海の戦士"のLPが、大きく削られる。
それを見たフェーンが、満足そうに勝利の場へと戻っていく。
「"BF-マイン"が伏せられているかつ、場にBFモンスターがいる状態で相手がこのカードを破壊した時、相手に1000ポイントのダメージを与える。僕はデッキから、1枚ドローできるおまけ付きでね。ドロー」
「ぐっ! (まさか、こんな形で……デッキマスターの召喚を利用し、カードの発動条件を満たすとは……)だが! これで貴様のターンは終了! 貴様の貧弱なデッキマスターはその身をさらしたまま、私のターンへと移行する!」
深海の戦士 LP 900 手札1枚
深海の戦士(デッキマスター)
攻 1600
伝説のフィッシャーマン
攻 1850
ヨーウィー
攻 500
暗闇を吸い込むマジック・ミラー
伏せカード1枚
勝利 LP 100 手札2枚
BF-鉄鎖のフェーン(デッキマスター)
攻 500
伏せカードなし
「私のターン、ドロー! これで貴様は終わりだ、バトル! 私自身の手で、貴様をモンスターごと葬ってくれるわ!」
言いながら"深海の戦士"が槍を構え、勝利の場のフェーンへと襲い掛かる。
「死ねぇ! 黒羽勝利!」
「勝つための条件。『技量を保有する事』! 僕は、フェーンのデッキマスター能力を発動! 『バインディング・チェーンズ』!」
「な、何ぃ!?」
大下は、その光景に声を上げる。
自身の、"深海の戦士"の体が。否、"深海の戦士"だけではない。
"伝説のフィッシャーマン"も、"ヨーウィー"も。自軍のモンスターの全てが、フェーンの懐から伸びる鎖によって、全身を拘束されてしまっている。
「フェーンのデッキマスター効果。ゲーム中に1度だけ、任意のタイミングで、場のモンスターの表示形式をすべて自由に変更することができる!」
「ぐっ……ということは、私のモンスターたちは……」
その言葉を最後まで言い切る前に、フェーンが、自身から伸びるチェーンを振り上げ、"深海の戦士"たちをフィールドの水面にたたきつけた。
そのまま怯えたモンスターたちは攻撃態勢を解除し、守備体制をとる。
その後ろに鎮座する、一連の行動に対して微動だにしない罠カードを見て、勝利は胸をなでおろして、少し笑う。
「……思った通り。デッキマスター能力っていうのは飽くまで、モンスターによって僕に与えられた効果であって、モンスター効果とは別物として扱う。じゃなきゃ、通常モンスターのデッキマスター能力も効果無効カードで無効にできちゃうし、"天罰"みたいなカードなら、デッキマスターをその場で破壊することもできちゃうもんね」
「お、おのれぇ……!」
「当然、お前の場のモンスターはすべて守備表示にする。すでにバトルは開始したから、表示形式の変更はできない。あんたのこのターンの攻撃は、封じさせてもらったよ」
フィールドのはるか後方にたたき落とされた"深海の戦士"は、苦虫を嚙み潰したように歯ぎしりを鳴らし、悔しさをそのまま顔に表した。
「だが! 私の場のモンスターがまだ残っていることには変わりはない。貴様のデッキマスター能力は、発動するのは1度きり! 次のターンにもう一度総攻撃を仕掛ければ、その時はもう貴様に耐える手段はない!」
深海の戦士 LP 900 手札1枚
深海の戦士(デッキマスター)
守 1800
伝説のフィッシャーマン
守 1600
ヨーウィー
守 500
暗闇を吸い込むマジック・ミラー
伏せカード1枚
勝利 LP 100 手札2枚
BF-鉄鎖のフェーン(デッキマスター)
攻 500
伏せカードなし
「……敵ながら、あんたにはいろいろと学ばせてもらった。戦いの心構え。戦略の奥深さをね。だから、僕からも2つ、いいことを教えてあげるよ。その心に、刻み付けていくといい」
「……なに?」
勝利は、睨む大下に、Ⅴサインを向けるように指を突き出した。
「一つ。『純粋に勝利を欲するのであれば、徹頭徹尾、相手を侮ることも、嘲ることもなく勝負に向き合うこと』。あんたには、それができていない。だから、僕の友達に裏をかかれたんだ」
指を一つ折ってそう告げる勝利に、大下は血液をすべて頭に上らせる勢いて、怒り狂う。
「だ、黙れ!! 貴様、一体誰に向かって……」
「そして、もう一つ……」
そんな大下を無視して、勝利は2本目の指を折り、そして、にやりと笑った。
「僕の友達を侮ったものに……次は訪れない! 僕のターン! そして……バトルだ!」
「なっ!? なんだと!!?」
(奴のフィールドには、攻撃力500のフェーンが1体のみ。効果は発動できず、攻撃力も足りていない……いや、そもそも。攻撃をしたその瞬間に、私のデッキマスター能力『リフレクションホール』を使って、私の勝利が確定するはず……)
だが、そんな大下の予想図を引き裂くように。
フェーンは、大下の手の届かない空を舞った。
「フェーンは、相手プレイヤーにダイレクトアタックすることができる効果がある。そう。"深海の戦士"。プレイヤーとしての"深海の戦士"。つまり、あんた自身にね」
「だ、ダイレクトアタック!!? しまった!!?」
大下が、反応を隠すことすらもできずに狼狽える。
その様子を見て、勝利は、決着を確信した。
(私の『リフレクションホール』は、モンスターへの攻撃を弾き返す効果! ダイレクトアタックをされてしまっては、はじき返すことはできない!!?)
「フェーンの効果は、発動を介さない永続効果。マジックミラーでも止めることはできない」
そして、フェーンが急降下してくる。
"深海の戦士"の頭上目掛けて、一直線に下る。
「そして……ラストだ。"BF-極夜のダマスカス"の効果発動!」
BF-極夜のダマスカス
闇属性 鳥獣族 星2
攻撃力 1300
守備力 700
使用後、このカードは『BF』を強化する。攻撃力500アップ!
「このカードによって、フェーンの攻撃力を500アップする。これも手札からの発動だ。当然、マジックミラーでも止められない!」
BF-鉄鎖のフェーン(デッキマスター)
攻 500 + 500 = 1000
「ば、馬鹿な……あと一歩で……あと一歩のところで……」
「……そう。あと一歩だった。足りなかったのは、戦略でも、カードでも、運でもない……お前の、心だ。決闘者の心を磨いて、出直して来な!」
「く……くそおおおおおおおおお!!!?」
「"BF-鉄鎖のフェーン"の攻撃! 『ダマスカス・チェーン・カッター』!!」
深海の戦士 LP 900 ー 1000 = 0
「おのれ……体が……私のからだああああああああ!?」
断末魔と共に、光を伴って、大下の姿が消えていく。
その、気持ちいいとはいいがたい景色を最後まで眺め、目の前に静かな湖畔が戻ってきたところで、勝利は力を抜き、その場にへたり込んだ。
「……ふう。疲れた」
(……デッキマスター能力と、デッキマスターの召喚。普段の決闘とは違う手段でモンスターを展開することもできるし、普段では考えられない防御で凌ぐこともできる……いつもの決闘とはあまりにも違いすぎるこの環境。そして……)
勝利は軽く手のひらを開き、閉じるを繰り返し、五体を確認する。
(体に発生するダメージ……あれも凶悪だ。静香ちゃんたちはもちろんのこと、闇のゲームの経験がない竜崎君もまた、何度も巻き込むのは危険だ。そして何よりも……)
勝利は、先刻の決闘を思い出す。
限界ギリギリまで削られた、自分のLP。
一手間違えれば結果はまるで違っていたであろう、薄氷の勝利。
その激闘に、限界とは言わずとも、勝利は疲弊していた。
(……あんなレベルの決闘者が、あと4人……そしてその先に、あの乃亜という少年がいる。そしておそらく、その裏にも……何者かが)
これ以上、ここにいるのも、皆を巻き込むのも、危険だ。
勝利は改めてそう判断した。
決意を新たに立ち上がろうとしたその時、甲高い声が響き渡る。
『ぴーーーー!』
「っ!? ジェット!」
青い空を翔けるBF。ジェットが、勝利の手元へと着地する。
「わかるか? 竜崎君と、静香ちゃんの場所が?」
『ぴー!』
自信満々に胸を張るジェットに、勝利は思わず笑みを浮かべ、頭を優しくなでる。
「よしっ! 案内してくれ!」
『ぴぃ!』
ジェットが、再度飛び上がる。
そして森の上を行くのを、勝利が追いかける。
(まっててくれ……竜崎君、静香ちゃん! それにみんな!)
まずは1勝。
然し、この醜悪なゲームは、まだ始まったばかりだった。
ということで、深海の戦士と勝利の決闘は、勝利の勝ち。
まあ勝ちはあたりまえといえば当たりまえですが、個人的には当初の想定よりかなり苦戦させてしまったなというところ。
アニメでも遊戯が結構苦戦していたので、戦略家としてはそこで競ることができる技量の持ち主というところを判断させていただきました。
ちなみにフェーンの能力は私のオリジナル。
募集した中の一部を参考にさせていただきましたが、大下と戦うのであればダイレクトアタッカーで決めたかったので採用しました。
皆さんが活動報告で考えてくださった効果を見て改めて思ったのは、デッキマスター能力のイメージと強さのバランスはかなり難しいなというところですね。
強くしすぎないように、イメージを崩さないように、かなり四苦八苦してくださっている様子が見受けられました。
ありがたく参考にさせていただいております。
この場で改めてお礼申し上げます。
決闘は2話くらいのサイズ感でポンポン進めていく予定です。少なくともBIG5それぞれの決闘はそれぐらいでいいかなと思ってます。
BIG5一人一人にバトルシティ級の尺使ってたらいつまでたっても乃亜編が終わらなくなってしまうのでね。
さて。
お次は、どなたの決闘でしょうか。
予想して楽しみにしてくださると幸いです。