遊戯王~黒き羽根は夢に舞う~   作:haruko

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乃亜編特殊ルール③

複数人の決闘の場合は、味方への攻撃を自分のモンスターで受けたり、味方のモンスターと自分のモンスターを融合したりというプレイが可能


乃亜編のタッグ以上でやる決闘のルールは、原作ルールと、所謂タッグフォースルールをよきように合わせてお届けさせていただきます。
遊戯たち側が連続行動するのは、そりゃいくら何でも卑怯でしょうよ。


許されざる審判! 猛る静香と、竜崎の約束!

 

 

時は進み、勝利が大下との決闘に勝利した、数分後の別の場所。

 

 

 

「杏子。寒いから、これを着て」

 

「あ、ありがとう遊戯。さっきも助けに来てくれたのに、服まで……」

 

「いいよ。僕だって、杏子の"ブラック・マジシャン・ガール”に助けてもらったんだ」

 

 

刺すような風が吹きつける氷河の中で、杏子と遊戯が笑いあう。

 

 

勝利に決闘を任せ、仲間と合流するためにこの空間を駆けた遊戯は、決闘が始まるすんでのところで杏子との合流を果たし、BIG5が一人、大瀧修三こと"ペンギン・ナイトメア”と二人で戦うこととなった。

 

敵の嫌らしい戦術と寒さに四苦八苦しつつも、遊戯のデッキマスター、"ブラック・マジシャン”と、杏子のデッキマスター"ブラック・マジシャン・ガール”の華麗なる連携コンボにより、勝利を収めることとなった。

 

 

「それより、早くみんなを見つけないと。勝利君は、後から合流するって言ってた。まずは静香ちゃんや、本田君たちを探そう!」

 

「っ! そうね。静香ちゃんは決闘なんかしたことないし、本田なんて決闘のセンス0なのよ! 挑まれたら、絶対負けちゃうわ!」

 

「急ごう!」

 

 

 

(みんな……無事でいてくれ!)

 

 

 

遊戯と杏子は、この空間を抜け出すべく走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う……ううん……こ、ここは?」

 

柔らかい草木の感触を背に、静香は目を覚ます。

目の前の景色と自分の記憶の整合性が合わずに一瞬パニックに陥るが、突如響いた低い声が、静香の正気を取り戻させた。

 

「気ぃ付いたか?」

 

声の方向に目をやると、傍らには竜崎が鋭い目を周りに向けながら立っていた。

 

「りゅ、竜崎さん!?」

 

竜崎の存在を確認し、静香は記憶の整理をつける。

 

ここが、バーチャル空間の中の一部分であるということ。

遊戯や勝利、舞。全員が、あのBIG5とやらの魔の手にかかり、分断されてしまったこと。

 

そして……今ここにいる竜崎は、自分が一人切り離されようとしたその時に、飛び込んできてくれたということ。

 

全てを思い出した静香は申し訳なさそうにすぐに立ち上がり、竜崎と目を合わせる。

 

「ありがとうございます」

 

「別に大したことしてへん。ワイが起きてからまだ十数秒や」

 

「いえ、それもですけど……私の事を助けに、飛び込んできてくれましたよね? 嬉しかったです」

 

「それも含めてや。大した事あらへん。ワイがやらんかったら、どうせ勝利がやってたやろうしな。それより……問題はこっからや」

 

言いながら竜崎は、改めて周りを見回す。

二人が倒れていたのは……わずかな自然の中。

 

水辺と植物が少しだけあるが、その周りはなんと、砂漠に覆われていた。

 

 

「……ここって……」

 

「びびんなや。バーチャル空間であることに間違いはないんや。あんな奴らの策に乗るんも腹立つけど、一応これはゲームやといっとった。ということは、クリアの条件があるはずや」

 

 

そう言って、竜崎は砂漠に一歩を踏み出し、振り向かずに言う。

 

 

 

「生きて……帰るで。全員でな」

 

「っ! はい!」

 

 

 

 

竜崎がほんの少しだけ前を歩いて、静香がそれに追従する形で砂漠を歩く。

そんな中、竜崎が思わず額を伝ってきた汗を自然に拭った後、自分の行動に違和感を覚える。

 

(……なんやこれ? なんで汗かいとるんや? この空間は、ソリッドヴィジョンのはずやろ?)

 

ソリッドヴィジョン。ようは、決闘中の決闘盤が映し出しているものと同じ、立体映像。

どれだけ精巧に作られていようが、映像である以上暑さを感じるはずもない。

だが、自分の体が何よりも正直に、体の異常を訴えている。

 

自分だけの勘違い、リアルな映像によるプラシーボで体が反応してしまっているだけだろうか。

そう思って静香を見るが、どうやら静香も明確に暑さ、疲れを身に感じているようで、竜崎と同じように汗を垂らし、顔を歪めていた。

 

「はぁ……はぁ……」

 

「……次に日陰見つけたら休みいれるで」

 

「す、すみません」

 

「ワイかて休みたいねん。それに、進んでいくことに意味があるのかもようわからん。今は、待ちや」

 

「っ……はい!」

 

そういって、歩を進めた二人は、ほどなくして現れた二度目の水辺で、腰を下ろした。

 

 

 

 

 

 

「……ほー。ここ最近まで目が……」

 

「はい。なので、お兄ちゃんの決闘を見るのも、皆さんの事を知ったのも、今回が初めてだったんです」

 

「なるほど……そいつは、酷なもん見てもうたな」

 

「……はい」

 

休憩がてら世間話敵に静香の話を聞こうとした竜崎は、自分の選んだ話題のミスに気付いて思わず歯噛みする。

思い出されるのは、昨日の城之内と、マリクの決闘。

おおよそまともな決闘とはいい難く、卑劣な戦術によって最愛の兄を失いかけた静香の心中は察するに余りある。

 

(……やっぱこの役は勝利か、孔雀舞にやらせるべきやったか……ワイじゃ役者不足や……)

 

気まずそうに頬を書きながら、出かかったため息を飲み込んでから、もう一度静香に向き合う。

 

 

 

「……ま、無理しなや。必ず目覚ます、なんて無責任なこと言うつもりはあらへんけどな。少なくともこの場の決闘は、城之内の代わりに、ワイが戦ったる」

 

「はい! ありがとうございます! 竜崎さんと一緒に入れて、本当に心強いです!」

 

 

 

 

自分の言葉に元気を取り戻した静香に、安心すると同時に違和感を覚える。

違和感の元は、静香の目。

真っすぐに、キラキラとした純粋無垢な期待の目を向ける静香に、竜崎の頭は疑問符が支配する。

 

「……なんでそんな喜んどるんや? そんなはしゃがれるようなことをした記憶ないで?」

 

「いいえ……舞さんが、話してくれました。竜崎さんの事」

 

「……? ワイの事を、孔雀舞が?」

 

 

ほんの少しだけ、何を言ったのか。と苦い顔をする竜崎だったが、静香の様子は、まるでスーパースターを見つけたかのような反応で、竜崎はさらに混乱した。

 

 

「はい! 王国での決闘の事、お兄ちゃんはあんまり話してくれなかったけど……舞さんがバトルシティに連れてきてくれたときに、教えてくれたんです。お兄ちゃんが、私のためにどんな風に戦ったのかって。その中で、舞さん言ってました。竜崎さんと戦ってなかったら、お兄ちゃんは決闘者王国を勝ち残ることはできなかったっだろうって……」

 

「……適当抜かしよって」

 

竜崎は何かをごまかすように体を伸ばし、もう一度静香に相対する。

 

「なんもしてへん。ワイは城之内と戦って、負けただけや。勝ち残ったのは、城之内の実力……と、並外れた運の力やろ」

 

少し笑いながら、竜崎はそういう。

しかし静香は、笑みのまま首を振った。

 

「本田さんも、言ってました。多分、今お兄ちゃんが一番憧れている決闘者は、竜崎さんだって。遊戯さんの事は好敵手だと思ってるし、勝利さんの事も尊敬してるだろうけど……お兄ちゃんの今一番の目標は、竜崎さんに認めてもらうことだろうって」

 

「……」

 

竜崎は無言で、赤くなった顔を逸らす。

ここまで面と向かって自身の事を褒められたのは全国大会3位の肩書で闊歩していた時以来であり、勝利に負けて心を一新してからは初めての経験であるため、どうにも気恥ずかしさが抑えられずにかゆい感じがした。

 

「……正直に言うと私、そのお二人の話が、よくわかってなかったんです。竜崎さんとの決闘はお兄ちゃんが勝ったって聞いたから、お兄ちゃんが竜崎さんに憧れてるって聞いても、ピンときてませんでした」

 

「実際その通りやろ。ワイかて、今ピンと来てないわ。なんでワイが城之内に憧れられんねん」

 

「でも、勝利さんと、竜崎さんの決闘を見て、わかったんです。竜崎さんとぶつかり合ってる勝利さんが、とっても楽しそうで。竜崎さんも、すごく楽しそうで。決闘の内容は難しいことが多くて、わからないこともたくさんあったけど……私なりに思ったんです。強い相手と決闘して、高めあって強くなるって、こういうことなのかなって」

 

「……」

 

(……こいつ。なかなか本質的なところが見えとる。この妙に鋭い感覚、さすがは城之内の妹やな)

 

ほんのりと赤みが残る竜崎の頬に、一滴の冷たい汗が伝う。

そんなことなど気にも留めない静香が、そのまま笑顔で告げる。

 

「だから私、今、そんなに不安に思ってないんです。だって憧れのお兄ちゃんの、憧れる決闘者さんが目の前にいるから」

 

「……わかったわかった。その辺で……っ!?」

 

瞬間、竜崎が立ち上がり、空中を見つめる。

静香が突然の竜崎の動きに驚くが、竜崎の動きに合わせて、すっと後ろに収まる。

 

「……竜崎さん?」

 

「下がっとれ。なんか来るで。決闘者の、勘みたいなもんやけどな」

 

 

 

 

その瞬間、空間が、砂漠が、空が。ありえない方向へと歪みだす。

 

景色がまるで別のものに入れ替わっていくその光景に不快感を覚えた竜崎と静香は、思わず目を伏せた。

 

そして…しばらくしたところで目を開いた二人が立っていたそこは……

 

 

「……さ、裁判所?」

 

 

そう。法廷だった。

原告、被告という立場の人間が争う場所。

そして、竜崎たちがいる傍聴人席。

その前には、証人が立つための証言台。

 

見たことはなくても、はっきりとわかる。

ここは、法廷。

 

罪人を、裁く場所だった。

 

 

 

 

「静粛に」

 

「っ!?」

 

 

 

唐突に響いた声に体を反応させながら、音の出所を探る。

すると裁判所の中央でガベルを打ち鳴らすモンスターが、竜崎と静香を裁判長の立場から見下ろしていた。

 

 

 

 

「……お前は、"ジャッジマン"!? またモンスターかいな……」

 

「そう。この場はこの私。BIG5が一人。海馬コーポレーションの顧問弁護士を務めていました、大岡筑前が務めさせていただきます」

 

 

 

 

男は自身気に、名前と役職を名乗る。

それだけで、竜崎は、目の前のそいつが敵であることを認識した。

 

 

「……なるほど。ワイらが戦わなあかんのは、お前っちゅうわけやな」

 

「私は、海馬コーポレーションを大きくするために、すべての訴訟に勝利を収めてきました。私にかかれば、白いものも黒にすることができる。今の海馬コーポレーションが大きくなったのは、私のおかげであると認識いただけると」

 

「どうでもええ。お前がどんな悪徳弁護士やろうが、ワイらには関係ない話や。当然、お前が何を欲しがってようと、ワイがお前らに手加減してやる義理もないわ」

 

竜崎が一歩前に出る。

それを見て大岡は、鼻を鳴らして笑う。

 

 

 

 

「フフフ……さて、裁判の時間です。私の相手になっていただくのは、どちらかな?」

 

 

 

 

 

「え……」

 

静香が戸惑いながら、竜崎を見る。

竜崎はそんな反応を待つまでもなく、前に踊り出て宣言する。

 

「ワイが相手や! かかって来い!」

 

「竜崎さん!」

 

「さがっとれ」

 

そのやり取りを見ていた大岡が、大きく笑う。

 

「フフフフフ。別に二人同時でも構いませんよ? 実は諸事情で、私が予定より多くの体を回収しなければならなくなりましてね。手っ取り早く仕事を済ませられるのなら、それもまたありがたい話です」

 

「っ! あの人……竜崎さんの事、甘く見てますね……」

 

「……」

 

怒る静香を他所に、竜崎は冷静に聞いた情報から状況を読む。

 

(……体が足らんくなった……っちゅうことは、誰かが先に決闘して、勝ったんやな。速度から言って遊戯か、勝利か。予想通り、分担して各個撃破していくつもりっちゅうわけや。せやったらやっぱり、急がなあかん)

 

敢えて敵の挑発に乗り、さっさと決闘を片付けよう。

そういった目論見で、大岡の発言を泳がすこととする竜崎。

 

「所詮は、ターゲットの人間から外れた二人。一人は素人。一人は勝利はおろか、城之内にすら敗れる程度など、これまでに碌な成績なし。私の力をもってすれば、2つの体を同時に奪うことなどたやすいこと」

 

調子に乗る大岡に、ひっそりとほくそ笑む竜崎。

ここまできてしまえば、後は簡単な話。

 

「御託はええ。時間がないのはお互いさまや。とっととワイと決闘を……」

 

 

 

 

「私もやります!」

 

 

 

 

そんな竜崎の思惑を引き裂くように、静香の声が響き渡る。

その声には、その表情には、明確な怒りが乗って見えた。

その様子に明確に動揺したのは、大岡よりも、竜崎の方だった。

 

 

「お、おい、お前。何を……」

 

「あなた! 竜崎さんの強さも知らないくせに、好き勝手言って! 竜崎さんも、勝利さんも、お兄ちゃんも! とってもかっこよくて、強くて、すごい決闘者なの! それを……もう私、許しません!」

 

「ほう……なるほど。では、あなたも一緒に決闘すると?」

 

「ちょ、ちょおまて……」

 

「もちろんです! 私が、竜崎さんたちの強さを証明して見せます!」

 

 

 

「では……決闘は成立ですね」

 

 

 

 

そういった瞬間に、大岡がにやりと笑みを零す。

その瞬間に竜崎は、自分がはめられた側であったことに気づく。

 

だが、時すでに遅し。

自分の、そして静香の手元に決闘盤が生成され、二人の足元には証言台のような場所が生成される。

そして二人を乗せたその台は勝手に動き出し、自然と竜崎と静香の間に距離を作る。

 

 

(しもたっ! こいつの狙いは初めから、こいつをワイと組ませて、同時に相手取ること!?)

 

 

(フフフ……KCデータにおけるダイナソー竜崎の決闘者レベルは、6。低くはないが高くもない立ち位置。しかし、今この場で、遊戯や勝利、瀬人様と共にいるという情報も合わせると、現在の実力はかなり未知数。だが、こっちの少女の方はほぼ間違いなく決闘者としてはシロート。二人を組ませれば、戦力は大幅にダウンするでしょう)

 

「さあ、デッキを構築しなさい。そもそも、できるかどうかもわかりませんがね」

 

大岡のその言葉と、嫌らしい笑みを確認した竜崎は、思わず舌打ちを小さく鳴らす。

 

(あかん。この男、見た目以上に切れよる。弁護士の名は伊達とちゃう……なめてたのは、ワイの方……いや……)

 

竜崎は、ちらと横目に静香を見る。

案の定、勇んで出てきたはいいものの、どのカードを選べばよいかがわからずに困惑する静香。

 

(見た目と違うて勝気強い性格なんは、勝利たちとのやり取りですでにわかっとった。あんときは性格を理解しきれとらん故の『ミス』やったが、わかっているうえで、乗せられとるのに気づかんかった。これは、ワイの『マヌケ』や……)

 

やはり、自分がここにいるのは、間違いであった。

勝利に、舞に、任せるべきだった。

 

 

一瞬、あの時突発的に飛び込んだ自分の行動を、誤りだと考えそうになる。

 

 

「竜崎さん……」

 

しかし、竜崎の意識が、静香に引き戻される。

静香の瞳には迷いが見えたが、その中には確かな闘志が燃えていた。

 

 

竜崎の頭に、静香の言葉が蘇る。

 

 

『私の事を助けに、飛び込んできてくれましたよね? 嬉しかったです』

 

『竜崎さんと一緒に入れて、本当に心強いです!』

 

『だから私、今、そんなに不安に思ってないんです。だって憧れのお兄ちゃんの、憧れる決闘者さんが目の前にいるから』

 

 

(……ったく、城之内もこいつも……なんも考えんと、アホみたいに人の事信じよって……)

 

 

竜崎は、一発自分の頬を張る。

そして、愉快そうに笑っていた大岡に向き直った。

 

(ワイみたいな決闘者を、心強いや、憧れや言うてるやつの前で、情けない事考えなや! ハッタリでもいい、強くあれ!)

 

「おい」

 

「っ! はい!」

 

 

 

「デッキの構築はアドバイスできることはいくつかはある。モンスターばっかじゃなく魔法と罠も選べとか。コンボになりそうな同系統のカードを集めろとかや。けど、結局はデッキ使うて戦うのはお前や。お前の、好きなように組め」

 

「は、はい……えーっと……」

 

 

 

 

 

 

「大丈夫や。ワイが、絶対に勝たせたる」

 

 

 

 

 

 

「っ!? は、はい!」

 

自信をもって、カードを選び始める静香。

 

そしてそれを見届けた後、竜崎もデッキ構築を始める。

 

(さて……ダイナソーカードを中心にするのはいつも通りでええとして……ワイのモンスター単体を強化する戦法はあんま役に立たん。全体強化や、敵モンスターの弱体化。そういうカードを入れて、フォローに回ることも考えなあかん。くそ……我ながらガラやないな。でも、やらなしゃあない! ここでこいつの体取られたら、城之内が起きた時に何言われるかわからへんわ)

 

そうやっていつも通りのカード。そうでないカードを順番に選択しながら、デッキをまとめていく竜崎。

 

そんな中、1枚のカードが目に留まる。

 

 

 

 

 

「っ!(れ、真紅眼……)」

 

 

 

 

 

それは、一度は竜崎が手にしていたカード。

そして……自分には不相応のカードと判断し、あの王国の戦いのおりに、城之内に託したカード。

 

 

 

 

"真紅眼の黒竜"。

 

 

 

 

そのカードと、目が合うような。

そのカードが、自分を見つめているような。

 

 

そんな感覚がした。

 

 

 

 

(……城之内の代わりとして、こいつを助けるためや。真紅眼。もう一度だけ……ワイに力を貸してくれ!)

 

 

 

 

「できましたかね? では、デッキマスターの選択を」

 

 

 

 

「私は……"心眼の女神"サマ!」

 

「ワイは……"真紅眼の黒竜"や!」

 

 

 

 

「ふむ……私は当然、私自身。"ジャッジマン"を選択します。ではこれより、被告人ダイナソー竜崎と、川井静香との決闘を開始する!」

 

 

 

 

もう一度、ガベルが鳴り響く。

それが、開戦の合図だった。

 

 

 

 

「何が被告人や! 舐め腐りよって!」

 

「絶対……負けません!」

 

 

 

ジャッジマン LP 4000

 

「デュエル!」

 

竜崎&静香  LP 4000 & 4000

 

 

 

「先行は譲りましょう。ちなみにターンは、川井静香→私→ダイナソー竜崎→私→川井静香と進んで一周します。当然、相手がターンを進めてない状態で攻撃はできないため、私は2度目のターンから攻撃が解禁されることとなります」

 

「……なるほど」

 

(要は、タッグ決闘の2対1バージョンっちゅうわけや。ワイらの2倍の速度でターンが回る分、奴の方が動きやすい。が、その分手札の枚数の消耗は早くなるっちゅうわけや。なんや、どんな不公平突き付けてくんのかと思たら、不気味なほど対等なルールやな)

 

(フフフフフ。表面上だけでも対等の決闘として、乃亜様に見せなければなりませんからね。ですがそもそも……対等であるというのは、パートナーがまともな決闘者であるとするのならばの話)

 

 

「私のターンからですね! ドロー! ええっと……」

 

 

おぼつかない手つきでカードを必死にまとめる静香の姿を見て、"ジャッジマン"こと大岡がほくそ笑み、対称的に竜崎の顔が歪む。

 

「ええっと……このモンスター! お兄ちゃんだったら……かっこよく、攻撃表示よね! 私は、"デーモン・テイマー"を、攻撃表示!」

 

 

デーモン・テイマー

 

星3 地属性 戦士族

 

攻 800

 

守 700

 

リバースしたとき相手フィールド上の悪魔族モンスター1体をエンドフェイズまで支配する

 

 

「うげっ!」

 

「えっ……私、何かやっちゃいましたか?」

 

「ククククク……一応言っておきますが、過度なアドバイス、相談などは禁止ですよ。ダイナソー竜崎」

 

「んぐ……」

 

先んじて釘を刺されたことで、言葉が喉につかえる竜崎。

恨めしそうな表情を浮かべながら、敵の表情とフィールドを交互に見る。

 

("デーモン・テイマー"はリバースモンスター……ちゅうのを差し引いても、こんな低攻撃力のモンスターをしょっぱなから攻撃表示やと……ホンマに、ホンマの初心者や。これは……あかん)

 

「さて、それでは私のターンですね。ドロー。私は"辺境の大賢者"を召喚」

 

 

辺境の大賢者

 

地属性 魔法使い族 星3

 

攻撃力 1600

 

守備力 800

 

戦士族への魔法攻撃を無効にする

 

 

 

「まだ攻撃できないので、これでターンを終了します」

 

「ワイのターン。ワイは、"セイバーザウルス"を召喚や」

 

 

セイバーザウルス

 

地属性 恐竜族 星4

 

攻撃力 1900

 

守備力 500

 

 

 

「さらにカードを1枚セットし、ターンエンド」

 

 

 

 

 

ジャッジマン LP 4000 手札5枚

 

 

辺境の大賢者

 

攻 1600

 

 

竜崎 LP 4000 手札4枚

 

 

セイバーザウルス

 

攻 1900

 

伏せカード1枚

 

 

静香 LP 4000 手札5枚

 

 

デーモン・テイマー

 

攻 800

 

 

 

 

「私のターン。さて。このターンから、攻撃が可能になりますよ」

 

「ぐっ……」

 

竜崎は、歯ぎしりを鳴らす。

それは、自分が攻撃されるからではない。

 

(……あの攻撃表示は罠……なわけはないですね。フフフ。先に、彼女を痛めつけることとしましょう)

 

「ドロー。おお、これはいいカードですね。私はこのターンで、"融合"を発動します」

 

 

融合

 

魔法カード

 

決められたモンスター2体以上で融合を行う

 

 

 

「っ! 早速きよったか……」

 

「……融合。海馬さんや竜崎さんが使っていた……」

 

 

 

 

 

 

「このカードによって、"辺境の大賢者"と"憑依するブラッドソウル"を融合! "魔人 ダーク・バルター"を融合召喚します!」

 

 

魔人 ダーク・バルター

 

闇属性 悪魔族 星5

 

融合モンスター

 

「憑依するブラッド・ソウル」+「辺境の大賢者」

 

攻撃力 2000

 

守備力 1200

 

通常魔法カードが発動した時、1000ライフポイントを払って効果を無効にする。

このカードが戦闘破壊したモンスター効果は無効化される

 

 

 

(……なるほど、融合デッキかいな……一気に高攻撃力が並ぶデッキや。こりゃ、初心者の相手としては厳しいで……)

 

 

 

「さて、行きますよ! "魔人 ダーク・バルター"で、"デーモン・テイマー"に攻撃! 『暗黒の裁き』!」

 

 

魔人 ダーク・バルター

 

攻 2000

 

デーモン・テイマー

 

攻 800

 

 

静香 LP 4000 ー 1200 = 2800

 

 

「きゃああ!!!? い、痛い……」

 

「っ!? なんやと!?」

 

静香の反応に、目を見開く竜崎。

すぐに何かを悟り、敵を睨む。

大岡は、"ジャッジマン"の姿で、楽しそうに笑った。

 

「フフフ……この空間では、痛みがリアルにあなたたちの体に反映されます。苦しみたくなければ、無為なダメージは受けないようすることですね」

 

「おんどれ……先に言えや!」

 

苛立ちをそのままぶつけた後、静香の方を見る。

肩を抑え、小さく縮こまる静香を見て、舌打ちを鳴らしそうになる。

 

「……まだいけるんか?」

 

「は、はい……」

 

「ふっ。闘志だけは立派ですがね。実力が伴わなければただの空元気。私はモンスターを1体セットし、ターンエンド」

 

その宣言を受け、静香はゆっくりとカードを引く。

 

「私のターン。ドロー……」

 

「無理しなや。耐えとったら、あんな奴ワイが何とかしたる。まずは、守備を固めとくんや」

 

「は、はい!」

 

竜崎が、できる限り優しくかけた声で、静香は顔を上げる。

 

「えーっと……なるべく守備力の高いモンスターを……こ、これね! "慈悲深き修道女"を、召喚!」

 

 

慈悲深き修道女

 

光属性 天使族 星4

 

攻撃力 850

 

守備力 2000

 

このカードを生贄に捧げ、このターン戦闘破壊されたモンスター1体を手札に戻す

 

 

 

 

 

 

ジャッジマン LP 4000 手札3枚

 

 

魔人 ダーク・バルター

 

攻 2000

 

伏せモンスター1枚

 

 

竜崎 LP 4000 手札4枚

 

 

セイバーザウルス

 

攻 1900

 

伏せカード1枚

 

 

静香 LP 4000 手札5枚

 

 

慈悲深き修道女

 

攻 850

 

 

 

 

 

「おやおや……そんなモンスターを攻撃表示とは、豪気な方ですね」

 

「えっ……?」

 

竜崎が、その様子を見て思わず顔を手に置いて落胆する。

 

「……カードを縦に置いたら、攻撃表示で出したことになるんや。守備にしたいなら、ディスクに横向きにセットするんや」

 

「そ、そんな……」

 

「一度出したら次のターンまで表示形式の変更はできません! さあ、終了を宣言しなさい!」

 

「……ターンエンドです」

 

 

(フフフ……裁判でも決闘でも、素人を相手取るなど簡単なことですね)

 

「私のターン。さて、まずは体を一つ、着実に奪いに行くとしましょうか。私は、伏せモンスター、"クリッター"を反転召喚」

 

 

クリッター

 

闇属性 悪魔族 星3

 

攻撃力 1000

 

守備力 600

 

墓地に送られた時、デッキから攻撃力1500以下のモンスターを手札に加える

 

 

モンスターをそろえた大岡は、当然のように静香に目を向ける。

静香は不安そうに自軍のモンスターや"心眼の女神"に目を向けるが、モンスターたちもどうしようもなくただ目線を逸らすだけだった。

 

 

(我がデッキマスター能力を使ってもよいですが……それは、ダイナソー竜崎に取っておくとしましょう。そんなものを使わなくとも、この小娘を葬るなど容易なこと)

 

 

「さあ、行きますよ! "魔人 ダーク・バルター"で、"慈悲深き修道女"を攻撃! 『暗黒の裁き』!」

 

 

魔人 ダーク・バルター

 

攻 2000

 

慈悲深き修道女

 

攻 850

 

 

 

大岡の高らかな宣言に、静香は思わず目を伏せる。

しかし怯える静香の耳に届いたのは、頼もしい、そして楽しそうな声だった。

 

 

 

「……なんや。口はともかく、決闘はさほどうまくなさそうやな。助かったわ」

 

「……なんですって?」

 

「伏せカード、オープン! "反転世界"! こいつで、攻守逆転や!」

 

「っ! し、しまった!?」

 

 

 

反転世界

 

罠カード

 

フィールド上の全ての効果モンスターの攻撃力・守備力を入れ替える

 

 

 

「このカードで、全部の効果モンスターの攻守が入れ替わんで。この場に通常モンスターは、ワイの"セイバーザウルス"だけ。それ以外の全てのモンスターの攻守が逆転する!」

 

瞬間、場の景色が歪み、大岡の場の2体のモンスターの顔が歪む。

それと対照的に、"慈悲深き修道女"は立ち上がり、迎撃を構えた。

 

 

 

魔人 ダーク・バルター

 

攻 2000 → 1200

 

守 1200 → 2000

 

 

クリッター

 

攻 1000 → 600

 

守 600 → 1000

 

 

 

慈悲深き修道女

 

攻 850 → 2000

 

守 2000 → 850

 

 

 

「これで、"慈悲深き修道女"の攻撃力が、"魔人 ダーク・バルター"を上回ったで。行ったれ!」

 

「っ! はい! "慈悲深き修道女"の攻撃! 『聖なる祈り』!」

 

 

 

魔人 ダーク・バルター

 

攻 1200

 

慈悲深き修道女

 

攻 2000

 

 

ジャッジマン LP 4000 ー 800 = 3200

 

 

「ぐおお!!? お、おのれぇ……」

 

「なんや。ダメージはお前らにも入るんかい。ええ趣味しとるのお。俄然やる気出てきたわ」

 

「竜崎さん! ありがとうございます!」

 

「かまへん。へこんでる暇ないで。ガンガン攻めたるんや!」

 

竜崎はまっすぐ敵を見据えつつも、静香に軽く手を挙げて答える。

 

 

 

「こんな状況やけどな。せっかくの初決闘や。きっちり戦って、勝ち切って見せろや。その手伝いくらいはしたる」

 

「っ! は、はい!」

 

 

 

(フフフフフ。少々油断してしまいましたかね……ですが、いい気でいられるのもこれまでですよ……私は、白も黒としてきた、最強の弁護士なのですからね)

 

 

 

 

"ジャッジマン"大岡の手元で、怪しげにコインが光る。

不穏な空気は、未だ拭いされてはいなかった。




ということで、ジャッジマン大岡と、多分みなさんお待ちかね?の竜崎&静香
どなたか予想はできていた方はいらっしゃるでしょうか。


確信を持って言えることは、こんな組み合わせで決闘を描く作品は後にも先にも拙作ぐらいのものではないかということです。


なんかこの組み合わせの決闘がやたら期待されていたことこそが、乃亜編を描こうと思った決め手でもあります。


そしてエロペンギンはカット。
そもそも杏子一人で勝ち切ることができていた決闘に、遊戯が入ってきて敗北となるはずもなく。目新しいことも起きないのでバッサリ行きました。

大瀧修三は後で出してあげるから待ってなさい。


さて次回は、
あの能力が牙を向きます。

改めて……こいつだけ能力、やばすぎ。
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