遊戯王~黒き羽根は夢に舞う~   作:haruko

93 / 93
お待たせしました。
vsジャッジマン 完結です。

追記
休日出勤と夜勤の兼ね合いで時間が取れず、一回空きます。
次回は9/18になりますので、よろしくお願いします。


二人の描く未来! 燃えよ、メテオ・ブラック・ドラゴン!

 

 

 

ジャッジマン LP 200 手札0枚

 

 

裁きを下す女帝

 

攻 2100

 

冠を戴く蒼き翼

 

攻 1600

 

伏せカード2枚

ラッキーパンチ発動中

 

 

竜崎 LP 1400 手札1枚

 

真紅眼の黒竜(デッキマスター)

 

攻 2400

 

伏せカード1枚(攻撃の無力化)

 

 

静香 1300 手札2枚

 

モンスターなし

 

伏せカード1枚

 

 

 

「私のターン、ドロー!!」

 

 

 

高らかに宣言する静香。

しかし快活なその様子と裏腹に、それを見守る杏子たちの表情は優れない。

 

「……ねえ。遊戯。勝利君。竜崎君は、『どうせ勝つ』なんていってたけど、本当に勝てるの?」

 

「うん……正直竜崎君が何を以てそういっているのかは、僕にもわからない」

 

遊戯も小さく頷く。

概ね杏子と同意見だった。

 

「確かに、静香ちゃんの"運命の分かれ道”の効果で、相手を追い詰めることはできたし、竜崎君は"真紅眼の黒竜”を召喚できた。でも、真紅眼は飽くまで竜崎君のモンスターだから、静香ちゃんのターンに攻撃することはできない。しかも竜崎君はデッキマスターを召喚してしまったから、相手に除去系カードを引かれるだけで敗北が決まる」

 

「……つまり、確実に勝てるというのであれば、このターンに決めきらなければならない。状況をどこまで正しく理解しているかはわからないけど、静香ちゃんも、自分がやらなければならないってことはわかっているはずだ」

 

遊戯の言葉を、勝利が引き継ぐ。

そして静香と竜崎を交互に見つめる。

 

覚悟を決めて、前を向く静香。

それを、ただ真っすぐに、誇らしげに見つめる竜崎。

 

 

 

(この勝負を決める分かれ目はただ一つ。竜崎君が思い描く勝利の道筋を、静香ちゃんが描くことができるかどうか。それにかかっている……)

 

 

 

 

「……頑張れ、静香ちゃん!」

 

 

 

 

(……フフフ。無駄ですよ。確かに、さっきのターンに予想外の展開でダメージを受け、勝利を逃したことは認めます。しかし、私の場はすでに万全。相手の展開を封じる策も、ダメージを封じる策も整えてある。ここを耐えて、レッドアイズを破壊することさえできれば、私の勝利は揺るぎません!)

 

伏せカードをちらと確認しながら、自身に満ちた表情を浮かべる"ジャッジマン”大岡。

しかし、そんな様子に怯むこともなく、静香は必死に、自分の手札に向き合っていた。

 

 

(私の手札にあるのは……"堕天使マリー”と、"ビックバン・ガール”と、あとは魔法カードの“幻惑の巻物”だけ……)

 

 

堕天使マリー

 

闇属性 悪魔族 星5

 

攻撃力 1700

 

守微力 1200

 

このカードが墓地に存在する場合、

自分のスタンバイフェイズ時に1度だけ、自分は200ライフポイント回復する

 

 

ビックバン・ガール

 

炎属性 炎族 星4

 

攻撃力 1300

 

守備力 1500

 

自分のLPが回復するたびに、相手に500のダメージを与える

 

 

幻惑の巻物

 

装備魔法

 

装備モンスターの属性を変更する

 

 

 

(相手の一番低い攻撃力が、"冠を戴く蒼き翼"の1600で、"ジャッジマン"さんのLPが200だから……攻撃力1800以上のモンスターを出して攻撃すればいいのよね)

 

状況を整理しながら、自分の手札を確認するが、その数値を見て肩を落とす。

 

(……だめ。勝てるカードは"堕天使マリー”だけど、攻撃力が足らないし……そもそも、マリーは星5のモンスターだから、1体の生贄モンスターが必要なはず……)

 

今、静香の場にモンスターはいない。

まさか竜崎のデッキマスターである、"真紅眼の黒竜”を生贄にするわけにもいかない。

 

(……だめ。やっぱり、何も浮かばない。どうすれば……)

 

 

 

お兄ちゃん。

 

 

心で、助けの声を挙げようとした静香だったが、はっとして頭を振る。

弱い方向に流れかけていた自分の心に喝を入れるように、ふっと息を吐き、前に向き直る。

 

 

 

 

(……ダメ! 私が、戦うって決めたんだから! 私がやるんだ! 竜崎さんと、一緒に勝つために!)

 

 

 

 

 

 

その時。

その決意に答えるように、誰にも見えないほど小さく、ペンダントが静香の胸で光る。

 

 

 

 

 

 

『そうだ。その意気だぜ! 静香!』

 

 

 

 

 

(……そうだよね。お兄ちゃんなら、絶対にあきらめない!)

 

 

 

 

 

響く声を、力に変える。

その様子を見て、心に響く城之内の声が弾んだように聞こえた。

 

 

 

 

『戦え、静香! お前には、頼りになる仲間たちがついてるんだぜ! みんなで、力を合わせるんだ!』

 

 

 

 

 

(……仲間と、力を合わせて……)

 

 

 

 

 

 

 

 

『目には目を。速攻融合召喚デッキには、融合召喚や!』

 

『融合モンスターに対応するためには、融合モンスターの速攻召喚。そんな単純な手が、この敏腕弁護士大岡に読めないとでも思いましたか?』

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ!!?」

 

(気づいたか……静香)

 

 

 

 

静香は、横の竜崎を見る。

竜崎は目を合わせず、腕を組んで、静かに前を見る。

 

アドバイスはしない。

その約束を、証明するように。

 

(……竜崎さん。前のターンのあれは、私に融合召喚の可能性を気付かせるための……)

 

静香は改めて、手札を見直す。

"堕天使マリー”を見て、手札を少し強く握る。

 

(……さっき竜崎さんは、場にモンスターが1体しかいなくても融合できてた。ジャッジマンさんも、手札のモンスターだけで融合してた。ってことは、モンスターは場に出さなくても融合できる! この方法なら! でも……手札に、"融合”のカードがない……それに、マリーの相方も……)

 

このままでは、融合召喚はできない。

どうすべきか。

悩みこもうとしたその時に、自身の傍に何者かが寄り添う。

 

「あっ……女神様」

 

「……」

 

デッキマスター、"心眼の女神”が、静香に笑いかけた。

 

「っ! そうか! 女神様の効果は……」

 

カードを読み直し、心を躍らせる静香。

 

「私は……デッキマスター、"心眼の女神”様を、召喚!」

 

 

心眼の女神

 

光属性 天使族 星4

 

攻撃力 1200

 

守備力 1000

 

このカードを融合素材モンスター1体の代わりにする事ができる。

 

 

 

「デッキマスター、"心眼の女神”……なるほど。あのカードは、僕の融合呪印生物と同タイプの……」

 

「そうか! その方法なら、一気にこの状況を打開できる!」

 

勝利と遊戯がそれに気づき、自然と声が踊る。

 

(後は……"融合"のカードがあれば!)

 

「私は伏せカード、"強欲な瓶”を発動します!」

 

 

 

強欲な瓶

 

罠カード

 

デッキからカードを1枚ドローする

 

 

 

「このカードで、デッキからカードを1枚ドローします!」

 

「1枚ドロー……」

 

「あの様子だと、"融合”カードは手札にないんだね。ここで、キーカードを引けるかどうか……」

 

「そんな……たった1枚のドローで……」

 

不安な声が、後ろの遊戯たちから漏れ聞こえる。

 

しかし、静香に、恐怖はなかった。

 

一度目を瞑り、祈るようなそぶりを見せた後、デッキに手をかける。

 

 

 

「……カード……ドロー!!」

 

 

 

引いた1枚をちらと見て。

弾けるような笑顔と共に、フィールドに配置する。

 

 

 

 

 

「私は……"融合”を発動します!」

 

 

 

 

 

「っ!!?」

 

「引いた!!?」

 

「す、すごい!!!」

 

 

 

 

融合

 

魔法カード

 

決められたモンスター2体以上で融合を行う

 

 

 

 

(この豪運……いや、勝負強さ。まさに、城之内君だ!)

 

「このカードで、2体のモンスターを融合します! 私はフィールドの"心眼の女神”様を、"慈悲深き修道女”様として……」

 

 

 

 

「……グフフ。やはりあなたは素人だ。前のターンの竜崎のプレイから、何も学んでいない」

 

 

 

 

「えっ?」

 

「私は、伏せカードを発動します! カウンター罠、"しっぺ返し”!」

 

「っ!!?」

 

 

 

しっぺ返し

 

カウンター罠

 

自分が発動した魔法・罠と同じカードの発動を無効にし、破壊する

自分の墓地から同名カードを手札に加える

 

 

 

「効果の説明はいりませんね? あなたの"融合”を無効化し、私の墓地の融合を手札に加える!」

 

「そ、そんな……」

 

 

 

「嘘っ!? 静香ちゃんの最後の切り札が!!?」

 

「……静香ちゃん」

 

 

 

静香が手札にかけた手と、"心眼の女神”を包み込もうとした魔法の力が弾き飛ばされ、融合が中断される。

 

 

 

ジャッジマン LP 200 手札1枚(融合)

 

 

裁きを下す女帝

 

攻 2100

 

冠を戴く蒼き翼

 

攻 1600

 

伏せカード1枚

ラッキーパンチ発動中

 

 

竜崎 LP 1400 手札1枚

 

真紅眼の黒竜(デッキマスター)

 

攻 2400

 

伏せカード1枚(攻撃の無力化)

 

 

静香 1300 手札3枚(堕天使マリー、ビックバン・ガール、幻惑の巻物)

 

心眼の女神(デッキマスター)

 

攻 1200

 

伏せカードなし

 

 

「さあ……これであなたたちのフィールドには、デッキマスターが1体だけ。あなたはただ悪戯にデッキマスターを召喚して、自らの身を危険にさらしただけ。さあ、次のターンで、あなたたちを葬って見せましょう!」

 

「……」

 

 

先ほどまでの自信がとうとう崩れ、陰り出す静香の表情を見て勝利は歯噛みする。

 

(……諦めるな、静香ちゃん。竜崎君を、信じろ。竜崎君の事を、よく見るんだ!)

 

 

勝利は、すべてを理解した。

竜崎が、何を狙っているのかを。

 

 

勝負は、まだ終わっていないということを。

 

 

 

そして、そんな勝利の想いを察することもなく、大岡が自慢げに語りだす。

 

 

 

「やはり先ほどの乃亜様の提案を却下したのは、あなたの致命的ミスでしたね、竜崎。あなたの判断ミスによって川井静香も、あなたも、体を奪われることとなる」

 

「……フン」

 

 

 

大岡の言葉に、竜崎は嘲るように笑う。

 

 

「言うたはずや。『どうせ、勝つに決まってる』ってな」

 

 

 

「っ!!? 竜崎さん……」

 

「減らず口を……」

 

 

 

ただただ負け惜しみを吐くだけだ、と苛立つ大岡。

しかし、静香はその言葉の真意を捉えていた。

 

 

 

(竜崎さんは、まだ勝てるって言ってる……あるんだ。竜崎さんが気づいている、勝つための手が!)

 

竜崎を信じ、改めて自分の手札と睨み合う静香。

しかし、その手札の内容は、先ほどまでと何も変わりはしない。

 

(……私が今から強いモンスターを出すためには、融合しかない。でも、もう"融合"は手札にないし……)

 

いくら手札を見つめても、答えは出ない。

自分の力のなさに、及ばなさに、情けなくなり、涙が零れ落ちそうになる。

 

 

 

 

 

(……どうして。私の手札が見えるわけでもない竜崎さんには、勝つ方法がわかるのに、どうして私にはわからないの……っ!!!?)

 

 

 

 

 

その瞬間。

静香の体に、突き抜けるような一筋の電流が走る。

 

 

 

 

 

(……そうだ。竜崎さんは、私の手札は見えていない。なのに、『絶対に勝てる』って確信してる……ってことは……私の手札は関係ない(・・・・・・・・・)?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(気づいたか。静香ちゃん!)

 

持ち前の勘で様子が変わったことを察した勝利が、その展開に思わず顔を綻ばせる。

 

(そうだ……見るんだ。静香ちゃん。君と竜崎君は互いの手札を見ることもできなければ、戦略を話すこともできない。でもだからと言って、共に戦えないわけじゃあない。竜崎君は、会話以外の全ての方法で勝つための道を示しているぞ!)

 

 

 

わざと"融合"カードが無効にされる様を見せたことも。

わざと勝ちを確信したような言葉を残したことも。

 

 

自身の伏せカードが残っているのに、デッキマスター召喚という危険を冒してまで、"真紅眼の黒竜”を召喚したことも。

 

 

 

(見つけ出すんだ、静香ちゃん。竜崎君の、魂のメッセージを!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(そうだ……竜崎さんは、勝ちを確信している……ってことは、あるんだ。竜崎さんがわかっている場所に、勝つためのカードが!)

 

気づいた静香は、今まで穴が開くほどに見つめていた手札をそっと伏せ、墓地を、場を。見えている場所を処女地を荒らすが如く確認していく。

そして……自身のデッキマスター。"心願の女神”と目が合ったところで、体を止める。

 

「……女神様。あなたは……」

 

『はい。私のデッキマスター能力によって、手札の魔法カード1枚を捨てて、場のモンスターの融合召喚を行うことができます』

 

 

 

「っ!!!? しまった!!? デッキマスター能力による、融合召喚!!?」

 

「へっ。やっぱりな」

 

 

 

女神の言葉に、狼狽える大岡。

そして対照的に、竜崎が笑う。

 

「もとより融合素材代用モンスターや。融合関連の効果を、もっとるとおもっとったで!」

 

「っ! すごい、竜崎さん! あっ、でも……」

 

静香は改めて、伏せていた手札を開く。

手札に、魔法カードはある。

しかし、残りのモンスターを見て、歯噛みする。

 

(さっきまで融合に使おうとしていたマリーは、星5モンスター。女神様の効果は場のモンスターを融合するから、この子を出さないといけないけど……生贄のモンスターがいない。このままじゃ、やっぱり融合は……)

 

できない。

そこまで考えたところで、静香の頭を閃きが貫く。

 

 

 

 

 

竜崎が、勝ちを確信している。

それはつまり……今のフィールドのモンスターだけで、勝ちまでの道筋が完結していることを意味する。

 

 

 

 

 

「っ!!?」

 

(これって、もしかして……)

 

 

 

 

 

静香が、竜崎を見る。

竜崎は、ほんの少しだけ口元を上げて、ほんの僅かだけ頷く。

 

そして、竜崎の目の前には……"真紅眼の黒竜”が、威風堂々と立っていた。

 

(……私には、わからない。私には決闘の知識も、技術も、何もないから……でも……)

 

 

 

 

 

静香は、証人台を降りて、一歩前に出た。

それに合わせるように、竜崎が笑い、前に出る。

 

 

 

 

 

(私には……竜崎さんが……私を強くしてくれる人たちがいる! 私は何もできないけど……私は、竜崎さんを信じます!)

 

 

 

 

 

「"心眼の女神”様の、デッキマスター能力発動! 手札の"幻惑の巻物”を捨てて、フィールドで融合召喚を行います! 『フュージョニック・アイ』!」

 

 

 

 

 

 

「フィールドの2体って……」

 

「ま、まさか……」

 

 

 

 

 

「竜崎さん……一緒に、戦ってください!」

 

「最初っからいっとるやろ。一緒に戦って、勝たせたるってな!」

 

 

 

 

 

「っ! はい! 私のデッキマスター、"心眼の女神”様と!」

 

「ワイのデッキマスター、"真紅眼の黒竜”を!」

 

 

 

 

 

「「融合!」」

 

 

 

 

 

「れ、レッドアイズの融合!?」

 

「……遊戯君、これって」

 

「……うん。伝説とされている、あのモンスターだ!」

 

 

 

 

 

レッドアイズが、空を舞う。

それに沿うように飛び上がった女神の体に、炎が灯る。

 

 

 

 

 

「"心眼の女神”を、"メテオ・ドラゴン”として扱うで! この2体で、融合や!」

 

「こ、これは……」

 

 

 

 

一瞬の閃光と共に、炎の弾丸が、フィールドに降り注ぐ。それは……隕石だった。

 

そして最後に……大きな大きな炎の塊となって、そのモンスターがフィールドに降り注いだ。

 

 

 

 

「これが可能性の竜、レッドアイズの到達点や! 流星竜! "メテオ・ブラック・ドラゴン”!!」

 

 

 

 

 

メテオ・ブラック・ドラゴン

 

融合モンスター

 

「真紅眼の黒竜」+「メテオ・ドラゴン」

 

炎属性 ドラゴン族 星8

 

攻撃力 3500

 

守備力 2000

 

 

 

 

「は、初めて見た……"メテオ・ブラック・ドラゴン”……」

 

「……海馬君のアルティメットドラゴンに並ぶほどの、M&W界の伝説とされている竜だ……」

 

「す、すごい……そんなすごいモンスターを、静香ちゃんが……」

 

 

 

 

「ば、馬鹿な……」

 

 

 

 

"メテオ・ブラック・ドラゴン”の圧倒的覇気に、大岡が席から崩れ、後ずさる。

それを追うように一歩踏み出した"メテオ・ブラック・ドラゴン”によって、裁判所の壁にひびが入る。

 

 

 

 

「さあ。決めたれ! 静香!」

 

「ハイ! バトルです! "メテオ・ブラック・ドラゴン”で、"裁きを下す女帝”に攻撃! 『メテオ・ダイブ』!」

 

 

 

メテオ・ブラック・ドラゴン

 

攻 3500

 

裁きを下す女帝

 

攻 2100

 

 

 

 

飛び上がった"メテオ・ブラック・ドラゴン”が、圧倒的熱量を以てフィールドへと突撃する。

それが決まれば、決闘が決まることは、誰が見ても明らかだった。

 

 

 

「ま、まだだ! 私は、"ガード・ブロック”を発動します!」

 

 

 

ガード・ブロック

 

罠カード

 

敵からのダメージを打ち消し、ドローに変換する

 

 

 

着弾のその瞬間に大岡の罠が発動し、熱風が大岡に届く寸前に消え失せる。

 

 

「このカードによって、この戦闘によるダメージを、ドローに変換します! 私はカードを1枚ドロー!」

 

「ああっ!? せっかくのダメージが!!」

 

「まずい! このターンを耐えきられたら……」

 

 

 

(っ!? このカードは……"治療の神 ディアン・ケト”!)

 

 

 

治療の神 ディアン・ケト

 

魔法カード

 

LPを1000回復する

 

 

 

そのカードを見て、大岡は思わずほくそ笑む。

 

(このカードを次のターンに使えば、LPを1000回復し、再びデッキマスター能力、『無期懲役』を使用できる。今相手の"メテオ・ブラック・ドラゴン”は、二人のデッキマスターの融合体。あのモンスターさえ除外できれば、私の勝ち!)

 

 

 

 

「……グフフ。危ないところでしたよ。ですが、これでバトルは終了! さあ、ターンを終了しなさい!」

 

 

 

 

 

ガベルを勢い良く打ち鳴らし、大岡が宣言する。

 

 

 

 

 

「……へっ」

 

 

 

 

 

しかしそれを見て、未だ表情を崩さずに笑うのは、竜崎だった。

 

 

 

 

 

 

「な……なにがおかしいのです!?」

 

「何べんも言わしなや。言ってるやろ。『ワイらの勝ち』やってな」

 

 

 

 

 

 

いうと竜崎は、人差し指を振り上げ、天に翳す。

 

すると……"メテオ・ブラック・ドラゴン”が、再度宙を舞った。

 

 

 

 

「ば、馬鹿な……"メテオ・ブラック・ドラゴン”の攻撃は、終了したはず……」

 

「ああ。"メテオ・ブラック・ドラゴン”はな」

 

 

 

 

すると"メテオ・ブラック・ドラゴン”の影から、一つの影が姿を現す。

それは……"真紅眼の黒竜”だった。

 

 

 

「"真紅眼の黒竜”のデッキマスター能力! このカード、および、このカードを融合素材にしたモンスターの攻撃後に、"真紅眼の黒竜”が攻撃力の半分でプレイヤーに追撃する効果や!」

 

「な、なんですってぇ!!!?」

 

 

 

「レッドアイズの攻撃力の半分ってことは……」

 

「真紅眼の攻撃力、2400の半分、1200」

 

「決まりだ……クックック。すごいや、二人とも!」

 

 

 

「さあ、静香。決めてこい。お前の初陣の、勝鬨を上げてくるんや!」

 

「竜崎さん……はい! ありがとうございます!」

 

 

 

 

 

「馬鹿な……この私が……この大岡が……こんな素人決闘者に!!」

 

 

 

 

 

「ふん……どんな相手でも、侮ったら負けんねん。ワイはそれを、王国で学んだ。お前も、よう覚えておくんやな」

 

 

 

 

 

「"真紅眼の黒竜”の攻撃!」

 

 

 

 

 

「「黒炎弾(ダーク・メガ・フレア)!!!!」」

 

 

 

 

 

 

ジャッジマン LP 200 ー 1200 = 0

 

 

 

 

 

 

「ぐわああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……か、勝てた……? 勝てたんですか? 私……」

 

「おう。やったな。ワイらの勝利や」

 

 

全てを終え、消えていく大岡の姿を見届けたあと、震える手を抑え込むようにして抱える半信半疑の静香の背中を、駆け寄ってきた竜崎が軽くたたく。

すると、何かが決壊したかのように、静香の瞳から涙が溢れだし、竜崎の胸元に飛び込んだ。

 

「おいおい……なに泣いてんねん。勝ったゆうとるやないか」

 

「……私、迷惑ばっかりかけて……何度も、嫌になっちゃいそうで……でも……竜崎さんのおかげで、最後まで戦えました」

 

「……へっ。勝たせてやったのはワイの手助けもあったやろうけどな。最後まで戦ったんは、まぎれもなくお前の力や。それにそんな偉そうなこと言えたもんでもない。正直、お前の予想外の罠が無かったら、どうなってたかわからへんかった。だから……ありがとうな。静香」

 

「……竜崎さん」

 

 

 

 

「竜崎君!」

 

「静香ちゃん! やったね!」

 

「ホント、はらはらしちゃったわよ!」

 

 

二人に駆け寄ってくる勝利たちの姿を確認し、涙を拭い、微笑む静香。

 

しかし次の瞬間に、支える糸がぷつりと切れたかのように、竜崎の方に倒れこむ。

 

 

「うおっ……なんや? こいつ……寝とるんか?」

 

「……仕方ないよ。初めての決闘が、こんなに激しい決闘になっちゃったんだ。きっと静香ちゃんも、疲れちゃったんだよ」

 

「そうね。静香ちゃん、頑張ったものね」

 

安心しきった表情で眠る静香の表情を見て、杏子たちは静香の様子を見ながら、優しく言う。

 

「きっと、竜崎君の事を信頼できるから、こんなに安らかに眠っていられるんだね。初めての決闘を支えてくれた竜崎君だからこそ、こんなに安心できるんだよ」

 

「……アホ。恥ずかしい事口に出すんやないわ」

 

顔を赤くした竜崎が、まんざらでもない表情を見られまいと顔を逸らすのを見て、勝利たちが笑う。

つかの間の、優しい時間が流れてきた事実を、皆は喜んでいた。

 

 

 

「……でも、まだ気を抜いてはいられないね」

 

そんな中、改めて空気を引き締めるべく、遊戯がそれを口にする。

勝利たちも真剣な表情を作り直し、遊戯に同意した。

 

「うん。BIG5は、残り2人」

 

「合流できてないのは、残り5人や」

 

「海馬君とモクバ君。本田、御伽君。そして、舞さんね」

 

「孔雀舞は大丈夫やろ。モクバにもどうせ海馬が張り付いとる。それより、心配なんは他二人や。」

 

「そうよね。本田なんか、私より決闘へたくそなんだから!」

 

「……そうだね。早くみんなと合流しないと」

 

そんな言葉を聞きながら、勝利は、そっと上を見る。

 

 

 

(……舞さん)

 

 

 

勝利は最愛の彼女を思い浮かべ、3人にばれぬよう少し顔を顰めて考える。

 

普通に考えれば、相手がだれであれ、舞が遅れを取るということは考えづらい。

優先すべきは、本田たち。

遊戯たちの判断は、正しい。

 

 

だが。

自分の心を騒めかせる、嫌な予感が振り払えない。

 

 

(……なんでかはわからない。けど、乃亜や、僕が戦った大下の言い分を見るに、乃亜の後ろにいる何者かが、乃亜とは別の思惑で動いている可能性がある。その、歪んだ悪意に、巻き込まれてしまうなんてことは……)

 

 

推理にすらなりえない。

ただの、想像の域を出ない。

 

 

しかし、脳の警報が鳴りやまない。

 

 

 

「ま、じっとしててもしゃあないのは確かや。さっさと移動するで」

 

竜崎が、未だ眠る静香を負ぶる。

竜崎の移動の意思表示に、遊戯たちも乗った。

 

「そうだね。みんなを、探そう!」

 

「ええ! 早いところ、全員で合流したいわ!」

 

「……うん。そうだね」

 

そういって、駆け出す皆の後姿を眺めながら、胸を少しだけ抑えた勝利が後を追う。

 

 

 

 

 

 

(……頼む。何も、起こらないでくれ)

 

 

 

 

 

 

しかし、本当はわかっていた。

 

 

 

 

 

 

自身の、観察眼。

それに基づく、己の直感。

 

 

 

 

 

 

自身の忌むべき過去で培われたそれは……舞曰く、超常の域。

 

 

 

 

 

 

良きも悪きも関係なく。

勝利の感じたものが、事実として、その目の前に現れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「勝利……すまねえ!! すまねえ!!」

 

「僕たちの……僕たちのせいなんだ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

合流した仲間の、悲痛な叫びと謝罪の声が。

勝利の耳を、通り抜けていった。

 

 

 

 

 

 





「蒼き龍は勝利をもたらす。せやけどな、赤き竜がもたらすんは勝利にあらず。可能性や!」
バンダイ版の映画なんぞ誰も知らんでしょうということでカット。
好きなセリフなんですけどね。

ということで、ジャッジマン戦完結。
竜崎のデッキマスター、レッドアイズの効果は、リメイクカードのメテオブラックドラゴンを参考にしました。
ここから、リメイクカードの効果が逆輸入されたんだよね。という妄想から。

乃亜編開始前は、竜崎のデッキマスターをどうするのか、めちゃめちゃ悩んでいました。キングレックスやタイラントドラゴンなど、皆さんにいろんな効果を考えてもらいましたが、どうにもいい決闘展開が作れず。
ですが、竜崎と静香の二人で戦うと決まった時に、これらの展開は芋蔓式に決まりました。やはりワンアイデアが大事ですね。
展開のアイデアを下さる皆様も、ありがとうございます。

さて、若干不穏な気配を見せつつ、次回もお楽しみに。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

軍貫使いはZEXALで寿司を握る(作者:Dの軍貫 シンキハヨ・チョーダイナ)(原作:遊戯王)

転生したら寿司屋の息子になったらしい人がZEXALでそれっぽく振る舞うみたいな話。一気見で熱が高まって収まらないので書いてみました。▼みんなも軍貫使おう!


総合評価:3166/評価:8.08/連載:54話/更新日時:2026年09月08日(火) 13:00 小説情報

ラーイエローの神楽坂(作者:ラララララクダ)(原作:遊戯王)

※原作ネタバレ注意▼なぜか神楽坂に転生した【ラーの翼神竜】大好き主人公が、精霊たちと一緒に遊戯王世界を生きていく話。▼なお、肝心のラーはまだ手に入っていない模様。▼初めての投稿です。▼拙い部分も多いと思いますが、よろしくお願いします。


総合評価:2622/評価:8.29/連載:28話/更新日時:2026年08月16日(日) 20:00 小説情報

遊戯王GX 転生しましたがシンクロやエクシーズ等の召喚方法は使えない。何故かガチャ運はメッチャ良い件(作者:zero3 ガイル)(原作:遊戯王GX)

▼よくあるOCGプレイヤーが遊戯王GXの世界に転生する二次創作。そんな世界は基本的に無印やGXにないシンクロ、エクシーズ、ペンデュラム、リンク召喚といった召喚方法で無双する転生者は多いだろうが俺には前世で使用したカードがないからこの世界でメジャーなアドバンス召喚・儀式召喚・融合召喚を駆使してデッキを構築するしかない。▼だけど前世以上に無駄にガチャ運が良いせい…


総合評価:714/評価:7.05/連載:18話/更新日時:2026年05月15日(金) 12:00 小説情報

遊戯王DMT―転生したら城之内だった件―(作者:Laginera)(原作:遊戯王)

表紙: ▼【挿絵表示】▼(ChatGDPで作成しました)▼事故で死んで生き返ったオレがいたのは遊戯王の世界だった。▼だがよりによってオレが転生したのは一般人なのに毎度カードゲームで死にかける「城之内克也」だった!▼このままだとバトルシティでラーに魂ごと焼かれてしまう!▼そもそもカードゲームがそこまで好きでもないのにデュエルモンスターの世界に転生するというのが…


総合評価:602/評価:8.67/連載:30話/更新日時:2026年09月12日(土) 19:34 小説情報

ファンサービスは僕のモットーですから(作者:ジャギィ)(原作:遊戯王)

ガワだけIVになったARC-V転生者


総合評価:12110/評価:8.84/連載:22話/更新日時:2026年06月14日(日) 20:44 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>