遊戯王~黒き羽根は夢に舞う~   作:haruko

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また体調崩してますが、無理やり書いてます。
やはり年のせいか、体調不良が多いですね。
三日を維持できるよう、頑張ります。

vs機械軍曹 決着です。


「必ず戻る」

 

 

機械軍曹 手札1枚 LP 4000

 

重爆撃禽(じゅうばくげきん) ボム・フェネクス

 

攻 2800

 

伏せカードなし

 

 

舞 手札0枚 LP 1500

 

ハーピィ・レディ1

 

守 1400

 

ハーピィ・レディ

 

守 1400

 

ハーピィ・レディ・SB

 

守 1300

 

伏せカードなし

 

 

本田 手札0枚 LP 700

 

レアメタル・ヴァルキリー(風属性)

 

攻 1500

 

幻惑の巻物

伏せカード1枚

 

 

御伽 手札3枚 LP 1000

 

ゴッドオーガス

 

攻 3300

 

伏せカード1枚

 

 

 

「じゅ、重爆撃禽(じゅうばくげきん) ボム・フェネクス……」

 

「デッキマスターの、融合モンスター……」

 

「これが、奴の切り札なのか……」

 

 

 

融合モンスターの降臨。

その熱量と圧力に、誰もが息を飲み、声を抑えた。

無駄な動きを一つすれば、すぐさま牙を向き、焼き尽くしてしまう。

そんな圧倒的パワーが、そのモンスターにはあるということを、このモンスターの威圧感だけで理解されられた。

 

 

 

『フッフッフッフ。まさかワシの切り札、ワシの最高傑作まで見せることになるとは思わなんだ。貴様らを褒めてやろう。だが、これですべておしまいだ』

 

 

 

融合し、ボムフェネクスと共になった"機械王”の声が頭上から響き渡る。

その声を振り払うかの如く、御伽が声を荒らげた。

 

「フン! 確かに攻撃力の高い、強力なモンスターだ! だが、所詮は1体のモンスター! 僕らのモンスターを1体ずつしか倒すことはできない!」

 

「おうよ! 俺たちの絆は、そんなモンスターには砕かれやしねーぜ!」

 

御伽を追うように意気込む本田。

しかし、その言葉を聞いていた舞は、そっと唇を嚙み、展開を見定めていた。

 

(こいつのデッキは、高速バーンダメージデッキで間違いはない。そして、強力な効果ダメージで責め立てるのは、炎族デッキの常套手段。こいつの狙いは、多分……)

 

 

 

『……フフフフ。愚かなことだ。貴様らの友情ごっことやらで、本当に強くなったと、このワシを倒せるとでも思っているのか』

 

 

 

「なんだと!?」

 

苛立ちをぶつける本田。

しかし、頭上のボムフェネクスから響き渡る声は余裕を崩さず、愉快と言わんばかりに見下ろしてくる。

 

 

 

 

 

 

『貴様らは……あのバトルシップを見ただろう?』

 

 

 

 

 

「……いきなり、何の話よ?」

 

質問の声などどこ吹く風といった様子で、大田は話を続けた。

 

 

 

 

 

「あれこそが、ワシの、海馬コーポレーション軍事工場責任者、この大田宗一郎の全てが詰まっている。あの飛行船の技術の根幹を作り上げたのはワシだ。ワシこそが戦いの船。戦争のための船。バトルシップを作り上げたのだ! だというのに……」

 

 

 

 

震える声が、場に響き渡る。

体があったなら涙ながらの弁舌になったであろうそれが、天空から降り注いだ。

 

 

 

『それを海馬瀬人は、勝手に下らぬ決闘艇なるものに作り替えた! それだけではない! ワシが心血を注いで作り上げたヘリを! 積み上げた技術を! 奴は当然のように奪い取っていった。そしてワシが作った軍事工場を、奴は……奴は無用の長物と呼び、破壊を命じた! この苦しみが……あの時の口惜しさ、悔しさが! 貴様らにわかるか!?』

 

 

 

「……知るわけないでしょ。そんなの」

 

 

 

冷たく言い放つ舞。

だが、それも想定内だったのか、大田は意に介さずに続けた。

 

 

 

 

『だからこそ、ワシは決めたのだ! このボムフェネクスで! 世界を力で席巻するはずだったこのワシの作り上げた最終兵器で! 海馬瀬人も、その仲間も、消し炭にして見せるとな! 見るがいい! このボムフェネクスの力を!』

 

 

 

そういうと、ボムフェネクスの姿の大田が、大きく舞う。

その姿は、こんな場面でなければ美しいとこぼしてしまいそうなほど幻想的で、煌めいている。

然しその体の随所から見える機械の部品が、アンバランスさを強調し、不気味さを演出していた。

 

 

『さあ、まずは準備だ。ワシは最後の手札を場にセットする』

 

 

 

機械軍曹 手札1枚 LP 4000

 

重爆撃禽(じゅうばくげきん) ボム・フェネクス

 

攻 2800

 

伏せカード1枚

 

 

舞 手札0枚 LP 1500

 

ハーピィ・レディ1

 

守 1400

 

ハーピィ・レディ

 

守 1400

 

ハーピィ・レディ・SB

 

守 1300

 

伏せカードなし

 

 

本田 手札0枚 LP 700

 

レアメタル・ヴァルキリー(風属性)

 

攻 1500

 

幻惑の巻物

伏せカード1枚

 

 

御伽 手札3枚 LP 1000

 

ゴッドオーガス

 

攻 3300

 

伏せカード1枚

 

 

 

 

『フッフッフ。さあ、これで準備は整った』

 

 

「い、一体……」

 

「何が始まるってんだ……?」

 

 

先ほどまで余裕を返していた御伽や本田も、この事態の異様さを察知し、不安げな顔を見せる。大田はそれを見て、もう一つ笑った。

 

 

『フハハハ! さすがに気が付いたか。だがもう遅い。戦いにおいて重要な戦略にして、優勢を奪うための条件の一つ。制空権! 貴様らはすでに、このワシに制空権を取られている! その事実が、どれだけ恐ろしいことかを、思い知りながら死んでいくがいい!』

 

 

そういうと、ボムフェネクスが翼を開く。

そしてその翼から、無数の火球が生成される。

 

 

 

 

『"重爆撃禽(じゅうばくげきん) ボム・フェネクス”の効果発動! このターンの攻撃を放棄する代わりに、フィールドのカードの枚数の数だけ、相手フィールドに火球の弾丸を打ち下ろす! そしてその数×300ポイントのダメージを、相手に与えることができるのだ!』

 

 

 

 

「なっ!? 何ぃ!?」

 

「なんだって!!?」

 

 

 

 

『フフフフフ。この変則ルールでは、フィールドのカードの数=ワシとそれぞれの対戦相手のカードの合計となる。つまり。ワシと孔雀舞のカードの合計は5枚。ワシと本田ヒロトのカードの合計も5枚。ワシと御伽龍二のカードの合計が4枚。つまり……』

 

 

話しながら、ボムフェネクスの羽の周りに、火球が一つずつ増えていく。

 

 

「おいおい……あれが全部降り注ぐって……」

 

「そんなことになったら、僕らのLPが……」

 

 

舞 LP 1500

 

本田 LP 700

 

御伽 LP 1000

 

 

(あたしが1500ダメージ。本田も1500ダメージ。御伽が1200ダメージ……もれなく、全員LPが0になって負ける……先にデッキマスター能力であたしを狙ったのは、この効果の圏内に入れるためね)

 

(まずい!? 僕の伏せカード、"攻撃の無力化”は飽くまで、戦闘を無効化するカード! 効果ダメージで攻められたら、止められない!)

 

(やべえ! 俺のカードに、止められるカードはねえ!!?)

 

 

皆がそうしている間にも火球の弾は増え、想定する数が出来上がったところで、大田が笑う。

 

 

 

 

『フフフ……さあ、覚悟はいいか!』

 

 

 

 

「……くそっ!?」

 

「ちきしょお!」

 

 

 

 

手札を睨み、伏せに祈るように手を置く本田と御伽。

それが滑稽だともう一つ笑いながら、ボムフェネクスが大きく羽ばたいた。

 

 

その瞬間、火球がフィールドに降り注ぐ。

 

 

 

 

 

 

 

『食らえ! 『不死魔鳥大空襲(フェネクス・ビッグ・エアレイド)』!!!』

 

 

 

 

 

 

 

その羽ばたきで火球が動き出し、さながら流星のごとく3人のフィールドに降り注ぐ。

 

 

その瞬間、本田と御伽は思わず目を伏せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、その2人が次に感じたのは、熱のこもった弾丸の熱さではなく、優しい風の香りだった。

 

 

 

 

 

 

 

「な、なんだ……?」

 

本田が、そっと目を開ける。

本田の目の前には、想定していた火の海はない。

自分のLPも、御伽のLPも舞のLPも健在で。

何事も起こっていないかのようなフィールドがそこにあった。

 

「いったい、何が……」

 

 

 

「っ!? 本田君、あれを!」

 

 

 

 

同じく隣で驚愕していた御伽が、天空を指さし声を上げる。

つられる様に上を見た本田は、御伽と同じ表情で驚愕する。

 

 

 

 

そこにいたのは……3体の"ハーピィ・レディ”たち。

そして……その3体を守護するが如く傍に立つ、"ハーピィズペット竜”。

 

 

 

何が起きたのかわからない。

だが、これだけはわかる。

 

 

 

ハーピィたちが、舞が。

また自分たちを、守ってくれた。

 

 

 

 

 

『……いったい、何が……』

 

 

 

 

 

「フン。あたしのハーピィの前で制空権を語ろうなんて、100年早かったわね。ペット竜の最後のデッキマスター能力! 『羽吹雪』!」

 

 

 

 

 

ハーピィとペット竜が息を合わせて、羽を一振り。

すると、温かく大いなる風が場を支配し、ボムフェネクスを吹き飛ばし、地に落とした。

 

 

 

 

「ハーピィが3体いるときに発動できる効果。この効果によって、このターンのあんたのモンスターの効果はすべて無効になるわ!」

 

 

 

 

『ぐおおおお!?』

 

 

 

 

天空に舞ったはずのボムフェネクスが、堕ちる。

これでボムフェネクスはこのターン攻撃もできず、効果も使えない状態となった。

 

 

 

「す、すげえ……すっげぇぜ、舞!」

 

「舞の姉御……まさかあんた……」

 

ただただ歓喜の声を残す本田。

それに対し御伽は、ある種の畏怖すら混じる声を上げながら、舞を見る。

御伽の脳裏に過ぎるのは、先刻のワンシーン。

 

 

 

 

『破壊された"香水戦術(アロマ・タクティクス)"の効果も発動! デッキからハーピィモンスター、"ハーピィ・レディ・SB(サイバー・ボンテージ)"を召喚するわ!』

 

 

 

 

「こ、このために3体のハーピィを召喚してたのか……相手の効果を無効にするために……僕のサポートという、カモフラージュまでして……」

 

「……ウフ♡ 女の香水は怖いのよ。覚えておきなさい」

 

舞の言葉に、乾いた笑いが零れる御伽。

それはもう、感心とか、感動とかを超えた何かだった。

 

 

 

 

(……勝利君、遊戯君、城之内君……君たちは、こんな決闘者と一緒に戦ってきたんだね……)

 

 

 

 

 

『……フフフ。まさか、これも対処されるとは思っていなかったぞ。さすがは、孔雀舞。だが、それも僅かな延命をしただけに過ぎない。貴様らの敗北は、すでに決められているのだからな』

 

 

 

 

体制を立て直し、再び羽を広げるボムフェネクス。

その声の主たる大田は、それでもまだ余裕の声を保ち続けていた。

 

「っ! 往生際が悪いぜ! お前のモンスター効果は、舞の姉御に無効化された! そしてお前は今、最大の弱点をさらすことになっている!」

 

「ん? 最大の弱点?」

 

「フィールドを見てみな、本田君」

 

 

 

機械軍曹 手札0枚 LP 4000

 

重爆撃禽(じゅうばくげきん) ボム・フェネクス (効果無効)

 

攻 2800

 

伏せカード1枚

 

 

舞 手札0枚 LP 1500

 

ハーピィ・レディ1

 

守 1400

 

ハーピィ・レディ

 

守 1400

 

ハーピィ・レディ・SB

 

守 1300

 

ハーピィズペット竜(ドラゴン)

 

攻 2000 + 900 + 300 = 3200

 

伏せカードなし

 

 

 

降臨した"ハーピィズペット竜(ドラゴン)"と、向かい合うボムフェネクス。

それを見て、さすがの本田も状況をすべて理解する。

 

 

「そうか! "ハーピィズペット竜(ドラゴン)”はハーピィの数だけ攻撃力を上げる! それに風属性だから、"ハーピィ・レディ1”の効果も受けられる!」

 

「そうさ! そして、あの融合モンスターはデッキマスターである"機械軍曹”の融合体! 舞の姉御のターンになって、デッキマスターを戦闘破壊することさえできれば、僕たちの勝ちだ!」

 

『……果たしてそうかな? ワシにはまだ、最後のカードが残っている』

 

 

そういって、大田の場に伏せられた最後のカードが開く。

 

 

するとその瞬間に、フィールドのモンスターたちの様相が変わる。

 

 

「な、なんだ!? 僕の"ゴッドオーガス”が!?」

 

「っ! あたしのハーピィたちも……」

 

 

フィールドのモンスターたちが、機械仕掛けの体に染め上げられていく。

"ゴッドオーガス"の剣はブリキとなり、ハーピィの羽は金属に染まる。

 

"ゴッドオーガス"は膝をついて、ハーピィたちは重い体を支えることができずに金属音を鳴らして地に伏せる。

 

 

 

『孔雀舞。貴様の言葉、そっくりそのまま返してくれる。ワシの前で制空権を語ろうなど、100年早いわ! 永続魔法カード、"機械仕掛けの夜-クロック・ワーク・ナイト-"を発動!」

 

 

機械仕掛けの夜-クロック・ワーク・ナイト-

 

永続魔法

 

フィールドのモンスターはすべて機械族になる

自軍の機械族モンスターの攻撃力・守備力は500アップし、相手の機械族モンスターの攻撃力・守備力は500ダウンする。

墓地のこのカードを除外し、手札を1枚捨ててデッキから機械族・地属性モンスター1体を手札に加える

 

 

 

『このカードにより、この場はワシの兵器が支配するフィールドとなる! 全モンスターは機械化し、ワシの機械族は500ポイント攻守を上げ、貴様らの機械族は500ポイント攻守を下げる!』

 

 

 

 

「な、なんだって!!?」

 

「ってことは……」

 

 

 

重爆撃禽(じゅうばくげきん) ボム・フェネクス (効果無効)

 

攻 2800 + 500 = 3300

 

ハーピィ・レディ1

 

守 1400 ー 500 = 900

 

ハーピィ・レディ

 

守 1400 ー 500 = 900

 

ハーピィ・レディ・SB

 

守 1300 ー 500 = 800

 

ハーピィズペット竜(ドラゴン)

 

攻 3200 ー 500 = 2700

 

レアメタル・ヴァルキリー(風属性)

 

攻 1500 ー 500 = 1000

 

ゴッドオーガス

 

攻 3300 ー 500 = 2800

 

 

 

「お、俺たちのモンスターが……」

 

「しかも、姉御のペット竜が飛べなくなったことで、立場が逆転しちまった……このままじゃあ、逆に姉御がピンチに……」

 

『安心しろ。ボムフェネクスの効果は1ターンに1度発動できる。そして、すでにペット竜はすべての効果を使い切った。次のワシのターンが回ってきた暁には孔雀舞だけではなく、今度こそお前たち3人をまとめて葬ってやる。ワシはこれでターンエンド! さあ孔雀舞、貴様の最後のターンだ!』

 

「……」

 

 

舞が、目を閉じて息を吐く。

さすがの舞も、すでに存在する手は使いつくした。

 

もはや舞のドローにかけるしか、自分たちの助かる道はない。

 

御伽も、本田も。

自分たちの情けなさに、涙が零れ落ちそうだった。

 

 

(……ちきしょお。結局、舞におんぶにだっこで……俺たちはただのお荷物かよ……)

 

(せっかく助けに来てくれた姉御に、すべてを託すしかないだなんて……僕たちが軽率に、こいつの決闘を受けたからこんなことに……くそっ!)

 

 

 

 

 

 

「本田。御伽」

 

 

 

 

 

しかし、そんな俯く2人に、舞の声が響き渡る。

その声は、まるでハーピィたちがくれた風のように温かく、優しかった。

 

 

 

 

 

「よくやったわ」

 

 

 

 

 

「……舞?」

 

「姉御?」

 

「あいつをここまで追い詰めて、あいつと懸命に戦って、あいつからデッキマスター召喚を引きずり出した。LPに差がついている以上、デッキマスターを出させなければ、あたしたちに勝ちはなかった。あの男を戦いの場に呼び寄せたのは、素人同然だったはずのあんたたちが予想外に検討して焦ったから。あれはあんたたちの功績よ。誇りなさい」

 

こんな状況でも、舞は2人を褒める。

その言葉に、世辞や打算がないことは聞いている2人が一番わかっていた。

 

すでに泣き出しそうな2人を横目に笑い、舞がボムフェネクスに向き直る。

 

 

 

「あとは……任せなさい」

 

 

 

『フン。今の貴様に、ボムフェネクスが倒せるはずはない。わかっているぞ。今の貴様のデッキには、コンボ系の制圧カードは入っていない。初期手札の少なさ、そして残りの2人の状況の悪さを鑑みれば、貴様のデッキは他2人をサポートするためのカードがほとんど。今出ているハーピィカードを覗けば、残りは単体利用できるモンスターか、罠カードくらいしか入っていまい』

 

「……」

 

悔しいことに、それは図星だった。

鳳凰の陣や強化系カードといったカードは、今のデッキにはほぼ入っていない。

そのほとんどが罠カードで、奴のいう通り今は何の役にも立たず、敗北の一途を辿るだけのカードばかりだった。

 

だが、舞は恐れない。

そのまま、デッキに手をかける。

 

 

 

 

 

そして……流れてくる温かい感覚に、自然と頬が緩んだ。

 

 

 

 

 

(……ありがとう、勝利。いつも、あたしを助けてくれて……そして……)

 

 

 

 

 

 

 

「あたしのターン……ドロー!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(……ごめんね)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あたしは、"異次元の女戦士"を召喚!」

 

「な、何ぃ!!!!?」

 

 

 

 

 

 

 

異次元の女戦士

 

光属性 戦士族 星4

 

攻撃力 1500

 

守備力 1600

 

戦闘を行ったモンスターを異界へと連れ去る

 

 

 

 

 

 

「"異次元の女戦士"は機械化し、攻撃力が下がる。でもそれは、女戦士の能力を失うことにはならないわ!」

 

「き、貴様……」

 

 

 

 

異次元の女戦士

 

戦士族 → 機械族

 

攻 1500 ー 500 = 1000

 

 

 

"異次元の女戦士"の体が、金属に染まる。

しかし女戦士はそのまま、機械化した体で剣を構える。

 

 

 

「女戦士の効果は知っているようね。このモンスターは、戦闘を行った相手モンスターと自身を、除外することができる! 戦闘の結果に、かかわらずね!」

 

「おおっ! ってことは、デッキマスターのあの鳥野郎を除外しちまえば、デッキマスターがいなくなって逆転勝利ってことか! すっげぇ! さすが舞……」

 

 

 

 

 

 

「ダメだ姉御! そんなことしちゃあ!!!」

 

 

 

 

 

 

本田の感動の声を遮るように、御伽の悲鳴にもとれるような叫び声が響く。

 

「な、なんだよ御伽! 舞がこのモンスターであいつに攻撃すりゃ、デッキマスターを除外して俺らの勝ちなんだろ?」

 

「違う……違うんだよ、本田君!」

 

とうとう零れ落ちた涙を拭うこともせずに首を振る御伽に、訳が分からないという様子で困惑するだけの本田。

そして舞はというと、ばれたか、と小さく零しながら、苦笑を漏らした。

 

 

 

 

 

「"異次元の女戦士"は……戦闘した後に、モンスターを除外する効果だ。戦闘を無効にして、発動する効果じゃあない。戦闘ダメージが発生してから発動する効果なんだ……」

 

「っ!!!? なんだと!? ってことは……」

 

ようやく気付いた本田が、場のモンスターを見直す。

そして、御伽と同じ絶望が、本田を支配した。

 

 

 

重爆撃禽(じゅうばくげきん) ボム・フェネクス

 

攻 3300

 

異次元の女戦士

 

攻 1000

 

 

舞 LP 1500

 

 

 

「この攻撃をしちまったら、舞のLPが、0に……」

 

 

 

「まさかこれを狙って、デッキマスターの召喚を待っていたのか!? 初めから……相打ち狙いでデッキマスターを殺るつもりで!?」

 

「……さあ。ま、あんな追い詰められた状況から決闘が始まって、すべてがうまくいくだなんて思ってなかったけどね」

 

 

 

 

「「っ!!?」」

 

 

 

(舞の奴……はじめっからわかってたのか……俺たち全員が無事でいられるわけじゃないかもしれねえって……それなのに……俺たちを助けるために、決闘に参加してくれてたのか……)

 

(初めからこの状況が、舞の姉御の目的だったんだ……自分を脅威に見せ、相手を焦らし、焦った相手がデッキマスターを召喚したところを狙い打つ……相打ちになる覚悟で……)

 

 

 

 

 

本田と御伽の目から涙が溢れる。

 

それを見ないように、舞が前を向き、宣言した。

 

 

 

 

 

「……さあ、バトルよ!」

 

 

 

 

 

 

「っ!? やめろ、舞!」

 

「待ってくれ、姉御! 君が消えたら……勝利君が!?」

 

 

 

 

 

 

決死の想いで止める2人。

しかし……舞はそんな2人に、笑顔を返す。

 

 

 

 

 

 

「あんたたち……悪いんだけど、伝言を頼まれてくれる? 勝利に……みんなに」

 

 

 

 

 

"異次元の女戦士"が、剣を構える。

 

その目標は、ボムフェネクスに向いている。

 

 

 

 

 

 

「……『ごめんなさい』って」

 

 

 

 

 

「っ!」

 

 

 

 

 

 

「あと、もう一つ」

 

 

 

 

 

 

 

 

『必ず戻る』って。

 

 

 

 

 

 

 

「っ!!!? 舞!」

 

「姉御!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「"異次元の女戦士"で、デッキマスター、"重爆撃禽(じゅうばくげきん) ボム・フェネクス"に攻撃! 『異次元斬』!」

 

 

 

 

 

 

異次元の女戦士

 

攻 1000

 

重爆撃禽(じゅうばくげきん) ボム・フェネクス

 

攻 3300

 

 

 

 

"異次元の女戦士"の刃が、ボムフェネクスに届く。

その瞬間に、舞の体に痛みが駆け巡る。

 

 

 

 

舞 LP 1500 ー 2300 = 0

 

 

 

 

 

 

 

「ああああああああああああああああ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

「舞ーーーーーーー!!!?」

 

 

 

 

 

 

「はぁ……はぁ……"異次元の女戦士”、効果起動!」

 

 

 

 

 

舞の息切れと共に舞の体が点滅し、光の粒が湧き出す。

それと同時に、"異次元の女戦士”の剣の切っ先から、得体のしれない空間への入り口が開く。

 

 

 

 

『お、おのれ……おのれ孔雀舞ぃぃぃいいいいいいい!!!!!』

 

「……痛みも、苦しみも、憎しみも、あたしが受けてやるわ……その代わり、あたしの大切な仲間に、手は出させない……あんたは……消えなさい! 『次元幽閉』!!!」

 

 

 

 

 

 

 

『ぐわあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!』

 

 

 

 

 

 

開かれた次元の扉に吸い込まれていく、ボムフェネクス。

そして一緒に消える、"異次元の女戦士”。

 

 

 

そして、消えていく、フィールドのモンスターたち。

それは決闘の終了を意味していた。

 

 

だがギリギリの勝負の決着の後だというのに、勝利の余韻を感じる暇もなく、本田や御伽は真っすぐに舞の傍に駆け寄る。

 

 

 

 

「舞!!!」

 

「姉御!!!?」

 

 

 

 

傍に駆け寄り、崩れ落ちる舞の体を支えようとする2人。

しかし、舞の体に触れることは、叶わなかった。

 

 

もうすでに、舞の体は透け始めている。

そこにいないかのように、舞が感じられなくなっている。

 

 

絶望。

2人は、崩れ落ちた。

 

 

自分たちのせいで。

 

自分たちを、守ったせいで。

 

 

 

 

2人の中を、後悔が駆け巡る。

 

 

 

 

 

だが、涙を流す2人に。

微かな、声が響く。

 

 

 

 

 

『……お願いね』

 

 

 

 

 

2人が、反応して顔を上げる。

 

 

 

 

 

 

 

しかし……そこにはすでに、舞はいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

「……行くぞ、本田君」

 

 

涙を拭い、立ち上がった御伽。

だが、本田は地に伏せたまま、立ち上がらない。

 

 

 

数度声をかける。

しかし変わらず、本田は動かなかった。

 

 

 

 

 

やがて痺れを切らした御伽が、本田の胸倉を掴み、無理やり起こした。

その顔は、絶望でぐちゃぐちゃだった。

 

 

 

 

 

「しっかりしろ!! 僕たちには、やらなきゃならないことがあるだろ!!」

 

 

 

 

御伽の言葉に、本田の目に僅かな生気が宿る。

それを見て、御伽は続ける。

 

 

 

 

「……『必ず戻る』。舞の姉御が言った言葉を、僕は信じる! それが、生き残った僕たちに最後に託された、使命だ! 僕たちは必ず伝えなければならない! これを、勝利君たちに!」

 

「っ!!」

 

 

 

 

言われた本田は、すっと自分の足で立ち上がり、涙を拭う。

そして、明らかな空元気の声を上げた。

 

 

 

「……ああ、そうだな……きっちり、勝利に殴られよう。そんで……今度は俺たちが、舞を助けるんだ!」

 

「……おう!」

 

 

 

 

そうして、御伽と本田は、互いに肩を貸すような形で、ようやく歩き出した。

 

刻み込んだ想いから、逃げずに済むように。

 

 

 

お互いを捕まえるように抱き合い、歩み出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

「勝利……すまねえ!! すまねえ!!」

 

「僕たちの……僕たちのせいなんだ!!!」

 

 

 

 

そして、合流した勝利たちに対して、地に頭をつけて謝罪する二人。

全てのあらましを聞いて、悲しむ者、涙する者、言葉を失う者、様々いる中で、勝利は静かに2人を見守っていた。

 

 

誰も、勝利の顔を見れない。

 

 

誰も勝利に、何も問えない。

 

 

 

 

 

勝利がどれほどまでに舞を大切に想っているかなど、ここにいる全員が理解している。

 

 

本田たちを攻めたいわけではない。

 

それでも、今の勝利が何をしようとも、何を言おうとも、誰も、それを止めることはできない。

 

 

 

やがて勝利が静かに動き出し、本田と御伽の前に立つ。

誰かが、息を飲んだ。

 

 

 

 

 

 

「……大変だったね。2人とも」

 

 

 

 

 

響いたのは、そんな、優しい声。

 

本田と御伽は、その声に、自分たちを守ってくれた舞を幻視する。

 

 

「……勝利……」

 

「勝利君……」

 

 

 

「前を向こう。2人とも。君たちを助けた舞さんは、そんな表情を望んでないよ。さあ、行こう。奴らを倒して、ここを脱出する。そうすれば舞さんは帰ってくる。それを信じて戦おう。僕たちの目標は、何も変わっちゃいないさ」

 

 

 

 

そうして、勝利は歩き出す。

 

誰からというわけでもなく、その勝利の背中についていく。

 

 

誰も、勝利に何も言わない。

 

言わずとも、わかっている。

 

 

 

今、一番つらいのは、勝利だ。

今、一番泣き叫びたいのは、勝利だ。

 

前を行く勝利の煤けた背中が、それを雄弁に語っている。

 

 

 

だがそれでも、勝利は歩き出した。

 

 

 

ならば、それに口出しする権利は誰にもない。

 

勝利のいう通り。

舞を助けて、ここを脱出する。

 

今できることは、それしかないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

(……舞さん)

 

 

勝利が、拳を握る。

爪が食い込み、血が流れかけるのを誤魔化すように手を擦った。

 

 

 

 

 

 

『必ず戻る』

 

(……必ず)

 

 

 

 

 

次なる戦いは、さらなる激しさを予感させた。




というわけで。

ネタバレしていましたが、舞の敗北。

もし乃亜編をやるのであれば、舞の体がとられることになるのだろうなというのはだいぶ前から考えていました。
また、せっかく勝利から舞に渡った異次元の女戦士が活躍できていなかったので、この辺でとも思ってました。

展開がうまく描けたかはさておき、決闘としては悪くないできかなと思ってます。


ちなみに、ハーピィズペット竜のデッキマスター能力については、以下になります。

ハーピィズペット竜

ハーピィレディが場にいるとき以下の効果を1つずつ、決闘中に1度ずつ選んで発動できる。
ハーピィレディが1体いる場合:万華鏡 デッキからハーピィモンスターを特殊召喚する
ハーピィレディが2体いる場合:朱雀の陣 このターンの相手の攻撃をすべて無効にする
ハーピィレディが3体いる場合:羽根吹雪 このターンの相手のモンスター効果をすべて無効にする


こちらは依然募集した際にいただいた、やまちゃんさん、うおのめちゃんさんのアイデアをもとに、決闘の内容とハーピィのイメージに沿うようにカスタムさせていただきました。
アイデアをどうもありがとうございました。


さて。次回。
舞の体はどうなるのか。

そして、次の決闘はどうなるのか。


まだ予定ではありますが……
当小説史上、一番トンデモ展開で進めることになるのではないかなと思っております。

お楽しみに、と、ご容赦いただければ。と思ってます。

よろしくお願いします。
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