ライディングデュエルをやる展開について、驚きと好評がほとんどで、否定的な言葉がほぼなかったことに感動しました。みんな好きなんですねえ。どうもありがとうございます。
勝利たちの決闘開始の宣言とともに、赤いシグナルが青に点灯する。
「行くぜ!」
「いったれ!」
それと同時に、勝利がアクセルを捻る。
すでに相当な速度が出ているバイクが悲鳴のようにエンジン音を鳴らす。
(ごめんよ……もう少し、僕たちに付き合ってくれ!)
「キヒヒ! いい覚悟だ! だが……そう簡単に、俺の先に行けると思うなよ!」
そう言って"スカルライダー"もエンジンを鳴らす。
そして、加速した勝利の目の前に踊りでる。
「くっ!」
「アホッ! 邪魔や!」
「邪魔してんだよ! ライディングデュエルの基本は、ファーストコーナーの死守による先行権利の確保! そう簡単に前に出させるわけねえだろ!」
「くっ!?」
勝利がバイクを左右に振るが、まるで未来を読むかのように勝利に動きを合わせて前のバイクが動く。
(あかん! 勝利の自慢の先読みも、運転技術が追いついとらんから相手の行動を読み切られへん!)
(まずい……直線が終わって、コーナーに入る。ファーストコーナーが終わったら、決闘スタートだ!)
「さあ、行くぜ!」
"スカルライダー"の背中を眺めながらの運転となってしまった今の状況に、勝利は歯噛みする。
「くっ……(直線が、終わった。こうなったら、コーナーで抜くしかない!)」
だが"スカルライダー"は見透かしたように、コーナーのインを攻める。
その内側は、バイク1台どころか人1人の隙間もない。
「くっそ! やりよる……うますぎるわ」
「……竜崎君」
怒涛の攻めに焦る竜崎。
それに勝利は、声を潜める。
「素人にしちゃあ悪くないドラテクだったがな。さあ、コーナーはいただきだ!」
そう言ってカーブが一番鋭い個所を、最短距離で曲がる"スカルライダー"。
しかし……その外を、黒い弾丸が駆け抜ける。
「なっ!? なんだと!?」
"スカルライダー"の決して遅くない……いや、むしろ体制を崩せば大ケガ必死のコーナリングのさらに外から、それを超えるスピードで勝利と竜崎が走り抜ける。
「竜崎君! 呼吸を合わせて、行くよ!」
「おう!」
(こ、こいつら……とんでもない角度までバイクを傾けて、コーナーで加速を!)
『しょ、勝利!? 竜崎!?』
コーナーで横並びになった際、すぐそばにバイクに拘束された人形の舞が迫る。
思わず手を伸ばしそうになる想いを必死にこらえながら、微笑だけを返す。
(すぐに……君の元へ行くよ!)
「どらあああああああああああ!!!」
勝利の掛け声とともに、最後の加速。
勝利たちはタッチの差で、コーナーを先に駆け抜けた。
エンジン音に紛れて、勝利の息を切らす声が響く。
「はぁ……はぁ……先行は、僕らだ!」
「……キヒヒ。いいだろう。そう来なくちゃあ面白くねえ」
「……頼むよ。竜崎君」
触れる勝利の背中に汗のシミが広がるのを見て、竜崎は腕の力を強める。
(慣れてへん勝利に、何度もこんな運転をさせるわけにはいかへん。さっさと決めたらな!)
「さあ、行くで! ワイの先行で、決闘スタートや!」
「待ちな。まだ、やることがあるぜ?」
ディスクに手を掛ける竜崎を、"スカルライダー"が制する。
「……なんや?」
「キヒヒ。おいおい、忘れたのか? この空間の決闘には、まだルールがあるだろうがよ」
そう言って、"スカルライダー"が自身を指さして笑う。
一瞬の困惑が通り過ぎた後、勝利がはっと反応する。
「そ、そうか!? デッキマスター!」
「そう! 俺は俺自身! "スカルライダー"を選択する! さあ、お前らもデッキからモンスターを選択しな!」
「せ、せやった……この空間の決闘は、デッキマスターを選択して進める……」
(ライディングデュエルという特殊決闘の形式に面食らって、頭から抜けていた……ってことは、この決闘はライディングデュエルとデッキマスタールールの、ハイブリット決闘になるのか!?)
まだ慣れぬ決闘に、未知のルール。
不安げな表情を浮かべる勝利に、弱気を振り切るように首を振る竜崎。
「ちぃ……ならワイは、"二頭を持つキング・レックス"をデッキマスターに選択や!」
『ぎゃおー!』
二頭を持つキング・レックス
地属性 恐竜族 星4
攻撃力 1600
守備力 1200
「さあ、これで準備は整ったで!」
「さあ、行くぞ!」
竜崎&勝利 LP 4000
「「「デュエル!」」」
スカルライダー LP 4000
「ワイの先行、ドロー! ワイはモンスターを1体セット! ターンエンドや!」
「キッ! せっかくの先行だってのに、消極的だな! 後悔させてやるぜ! 俺のターン、ドロー! そしてこの瞬間から、俺らのスピードが、パワーに加わるぜ!」
竜崎&勝利 スピードカウンター 0→1
スカルライダー スピードカウンター 0→1
目の前のビジョンのゲージに、カウンターが1つたまる。
「これが……"スピード・ワールド"の『スピードカウンター』……」
「さっき見た限り、
(勝利のBFカードは、コンボ系デッキ、"黒い旋風"みたいなエンジンカードが採用でけへん以上、序盤はワイのカードで戦うべきやな。普通の魔法が使えないっちゅう条件は、向こうも同じ。序盤は様子見が続くことになるやろが……)
「ヒヒッ! お前に合わせて、ゆっくりはしてやらねえぜ? 俺は手札から、"マンジュ・ゴッド"を召喚!」
マンジュ・ゴッド
光属性 天使族 星4
攻撃力 1400
守備力 1000
召喚時、デッキから儀式モンスター、または儀式魔法を手札に加える
「"マンジュ・ゴッド"の効果発動! 俺はデッキから、儀式魔法、"エンド・オブ・ザ・ワールド"を手札に加えるぜ!」
「なっ!!?」
『うそっ!?』
「儀式魔法やと!?」
エンド・オブ・ザ・ワールド
儀式魔法
王と女神の後輪に必要
レベルの合計が儀式召喚するモンスターと同じになるように、
自分の手札・フィールドのモンスターを生贄にしなければならない
「んー? 何を驚いている?」
「ライディングデュエルでは、通常の魔法カードは発動できないはずだ!」
「ああ? そんなこと言ったかねえ? ライディングデュエルでは確かに、『
「……」
(確かに、手札に加えるだけやったらなんの問題もないのはわかる。せやけど、ただそれだけなら、わざわざそんなカードを入れる必要ない。いや、そもそも。『儀式』デッキなんちゅうジャンルを選ぶ必要もない……)
(ってことは、おそらく……こいつには何かあるのね。儀式モンスターを速攻召喚する手立てが……)
(まずいな……あと何ターンかは互いにスピードカウンターをためるターンだと思っていたのに……奴が本当に『儀式』による上級モンスターの速攻召喚を狙っているなら、もはや、一刻の猶予もない!)
「まずは、"マンジュ・ゴッド"で攻撃だ! 『万の洗礼』で、伏せモンスター破壊!」
マンジュ・ゴッド
攻 1400
BF-上限のピナーカ
守 1000
「そしてカードを2枚セットし、ターンエンドだ!」
「この瞬間、ピナーカの効果発動や!」
BF-上限のピナーカ
闇属性 鳥獣族 星3
攻撃力 1200
守備力 1000
墓地に送られたターン、仲間のBFを呼び寄せる
「これによってデッキから、新たなBFモンスターを呼び寄せる! ワイが選択するのは、"BF-逆風のガスト"や! 手札に加えんで!」
『うまい! 魔法を使えない序盤を、手札を減らさずに凌いでいるわ!』
「さすがだぜ……竜崎君!」
「けっ。改めて俺は、ターンエンドだ」
竜崎&勝利 LP 4000 手札6枚
モンスターなし
伏せカードなし
スピードカウンター 1
スカルライダー LP 4000 手札4枚(エンド・オブ・ザ・ワールド)
マンジュ・ゴッド
攻 1400
伏せカード2枚
スピードカウンター 1
「ワイのターン、ドロー! そしてここで、スピードカウンターがまた溜まるで!」
竜崎&勝利 スピードカウンター 1→2
スカルライダー スピードカウンター 1→2
「そしてワイのフィールドにカードが存在しない場合、"BF-逆風のガスト"は特殊召喚できんで! 来いや、ガスト!」
BF-逆風のガスト
闇属性 鳥獣族 星2
攻撃力 900
守備力 1400
フィールドにカードがない場合、特殊召喚できる
フィールドに風を巻き起こし、逆風空間を作る
「さらに! 場のBFが1体のみ存在するなら、こいつは追加で特殊召喚できる! 召喚や、"BF-白夜のグラディウス"!」
BF-白夜のグラディウス
闇属性 鳥獣族 星3
攻撃力 800
守備力 1500
フィールドにBFが一体のみの場合、特殊召喚できる
このカードは1ターンに一度戦闘では破壊されない
(竜崎君すごい……慣れてないBFモンスターの効果を、完璧に使いこなしてる)
(対勝利のために研究を重ねたのは、嘘じゃなさそうね……頑張って、竜崎!)
「……悪くはない。がな。残念ながらその貧弱なモンスターじゃあ、俺の"マンジュ・ゴッド"1体すら倒せねえぜ? 恐竜モンスターを捨ててその鳥どもにしたのは、失敗だったんじゃねえのか、ダイナソー竜崎?」
後方から響く"スカルライダー"のニタついた声に、勝利がいら立つ。
「こいつ……人の友達を、竜崎君を馬鹿にしやがって……」
「落ち着け、勝利」
震える勝利の肩を、竜崎がポンとたたいて宥める。
そして、敵の笑みを写すかのように、笑い返して見せる。
「よお言ってくれるやないか。せやったらお前の言う通り、ワイの本気で攻めさせてもらうわ」
「……なに?」
「ワイはまだ、通常召喚してへんねや! 場のガストとグラディウスを生贄に、最上級モンスターを召喚すんで! 現れろ、"タイラント・ドラゴン"!!」
『ぐおおおおおぉ!!!!!』
タイラント・ドラゴン
炎属性 ドラゴン族 星8
攻撃力 2900
守備力 2500
このカードを墓地から特殊召喚する際には、フィールドのドラゴン族モンスター1体を贄に捧げなければならない
相手フィールドにモンスターが存在する限り、このカードはモンスターに2回攻撃できる
このカードを対象とする罠カードは無効化され破壊される
『た、"タイラント・ドラゴン"を2ターン目に!?』
「そうか! BFの展開力でそろえたモンスターを、竜崎君の超パワーモンスター召喚のために転換したんだ!」
「……まさかこんな手で、魔法も使わずに最上級モンスターを召喚するなんてな……」
竜崎&勝利 LP 4000 手札4枚
タイラント・ドラゴン
攻 2900
伏せカードなし
スピードカウンター 2
スカルライダー LP 4000 手札4枚(エンド・オブ・ザ・ワールド)
マンジュ・ゴッド
攻 1400
伏せカード2枚
スピードカウンター 2
「"タイラント・ドラゴン"は、自身を対象にする罠カードの発動を無効化できる。魔法カードが自由に使えないライディングデュエルにおいて、その力は絶対的だ!」
「さあ行くで! "タイラント・ドラゴン"で、"マンジュ・ゴッド"に攻撃や! 『ドラゴン・フレイム・ブラスト』!」
タイラント・ドラゴン
攻 2900
マンジュ・ゴッド
攻 1400
「……キヒヒ。まさかこんな早く召喚してくるとは、想定外だったよ……だが、貴様が最上級モンスターで一気に攻めてくることは、想定内だ!」
「なんやと!?」
「伏せカードオープン! 永続罠カード、"ドラゴン族・封印の壺"!」
「っ!? ど、"ドラゴン族・封印の壺"!?」
「そのカードは、ペガサスが使っていた!?」
ドラゴン族・封印の壺
永続罠
場のドラゴンカードの力は封印され、守備を強制される
"スカルライダー"の場に現れた禍々しい壺。
そしてその壺が現れた瞬間に、攻撃を構えていた"タイラント・ドラゴン"の体から何かが抜き取られていく。
ほどなくして"タイラント・ドラゴン"は態勢を解除し、守備に落ち着いた。
「このカードによって、場のドラゴン族モンスターはすべて力を失い、攻撃態勢をとれなくなる! 残念だったなあ!」
『なんでこいつが、ペガサスのカードを……』
「……そうか。ここで組んでいるデッキは、あくまでバーチャル空間におけるKCのデータを使った仮想デッキ。組もうと思えば、ペガサスのカードを使ってデッキを組むことだってできるわけだ……」
「ちぃ。ワイのタイラントは対象にとる罠以外は無効化できへん。対策済みっちゅうのは嘘やないな。ワイはカードを1枚セットし、ターンエンドや」
「キヒヒ! では見せてやろう! 俺のデッキの真骨頂を! 伏せカードオープン! 永続罠カード、"リターン・オブ・ザ・ワールド”発動!」
リターン・オブ・ザ・ワールド
永続罠
デッキから儀式モンスター1体を除外する。
このカードを墓地に送り、生贄を使って儀式魔法なしで儀式召喚を行う。(生贄は墓地の儀式モンスターでも良い)
もしくは、除外した儀式モンスターを手札に加える
「このカードによって、俺はデッキから、"破滅の女神ルイン”を除外! そしてこのカードの力はそれだけではないぞ! このカードの力によって、俺は儀式カードなしでルインの儀式召喚を行うことができるのだ!」
『なんですって!? 儀式魔法なしでの、儀式召喚!?』
「しもた!? この方法なら確かに、ライディングデュエルでの儀式召喚が可能や!」
「落ち着いて、竜崎君! たとえ罠による召喚でも、儀式召喚は儀式召喚だ! 召喚には、生贄が必要になる。奴の召喚は、まだ成立しないよ!」
「さあて、果たしてそうかな? 俺のターン、ドロー!」
"スカルライダー”がカードを引く。
そして同時に加速して、勝利たちの後ろにぴたりとつける。
「さあ、お待ちかね。スピードカウンターが増加するぜ!」
竜崎&勝利 スピードカウンター 2→3
スカルライダー スピードカウンター 2→3
竜崎&勝利 LP 4000 手札3枚
タイラント・ドラゴン
守 2500
伏せカード1枚
スピードカウンター 3
スカルライダー LP 4000 手札5枚(エンド・オブ・ザ・ワールド)
マンジュ・ゴッド
攻 1400
ドラゴン族・封印の壺
リターン・オブ・ザ・ワールド
スピードカウンター 3
そのカウンターを確認しながら、勝利はごくりと息を飲む。
(スピードカウンターが3つ目。奴はこのタイミングで加速したということは、ここで何かを仕掛けてくる。でも、強力な
(ワイのフィールドには、守備表示とはいえ"タイラント・ドラゴン”がおる。生半可な攻撃なら、耐えきれるはずや……)
しかし、そんな竜崎の思考を嘲るように笑い、"スカルライダー”がカードを見せる。
「さあ、貴様らに見せてやるぜ! スピードの世界の決闘の恐ろしさをな! まずは"Sp-オーバー・ブースト"を発動!
Sp-オーバー・ブースト
通常魔法
スピードカウンターを4つ置く
エンドフェイズに自分用スピードカウンターを1つにする
「このカードによって、スピードカウンターを4つ追加し、瞬間的な加速力を得る!」
カードの発動と同時に、"スカルライダー”が爆発的に加速し、勝利たちを抜き去っていく。
スピードカウンター 3 + 4 = 7
「なっ!?」
「一気にスピードカウンターが、7やと!?」
「安心しな。このカウンターは一時的な増加。このターンが終わった瞬間にカウンターは1まで落ちる。だが……貴様らがこのターンの終わりまで持つかは知らんがな! 俺は"Sp-ダッシュ・ピルファー”を発動!」
Sp-ダッシュ・ピルファー
通常魔法
スピードカウンターが4つ以上ある場合に発動できる
相手フィールド上に存在する表側守備表示モンスター1体の
コントロールをエンドフェイズまで得る
「この効果によって、俺は貴様のフィールドの守備モンスター、"タイラント・ドラゴン”をいただくぞ!」
「なんやと!?」
竜崎の場に伏せる"タイラント・ドラゴン"の体が浮き上がり、勝利たちの目の前から、敵の元へと移動していく。
「しまった!? わざわざ"タイラント・ドラゴン”を迎撃ではなく封印したのは、竜崎君の大型モンスターを奪うため!?」
『封印効果は奴のフィールドのドラゴンにも及ぶから、"タイラント・ドラゴン"で攻撃することはできないけど……』
「そう! これで、生贄は整った!」
"スカルライダー”が、腕を振り上げる。
すると壺の中の竜の力が、奴の永続罠の方へと流れていった。
「俺が除外したルインの星は8。そして何とも都合のいいことに、貴様のくれた"タイラント・ドラゴン"の星も8。生贄、成立だ!」
「くそっ!」
「俺は"リターン・オブ・ザ・ワールド”と、"タイラント・ドラゴン"を墓地に送る! さあ……儀式召喚! 敵を地獄に導くがいい! "破滅の女神ルイン”!」
破滅の女神ルイン
儀式モンスター
星8 光属性 天使族
攻撃力 2300
守備力 2000
このカードの攻撃で相手モンスターを破壊した時に発動できる
このカードはもう1度だけ続けて攻撃できる
「ぐっ……」
「本当に来た……儀式魔法なしでの、儀式召喚!」
竜崎&勝利 LP 4000 手札3枚
モンスターなし
伏せカード1枚
スピードカウンター 3
スカルライダー LP 4000 手札3枚(エンド・オブ・ザ・ワールド)
マンジュ・ゴッド
攻 1400
破滅の女神ルイン
攻 2300
ドラゴン族・封印の壺
スピードカウンター 7(Sp-オーバー・ブースト下のため、エンド時に1になる)
「さあ……バトルと行くぜ!」
『勝利! 竜崎! (まずい! こいつの場の2体の攻撃力の合計は、3700! LPのほとんどを持ってかれる! いや……デッキマスター召喚まで考えたら!)』
「させへん! 罠カード発動! "威嚇する咆哮”や!」
威嚇する咆哮
罠カード
唸り声を相手の場に響かせることで、相手モンスターの攻撃行為を妨げる
「このカードで、相手の攻撃宣言を封じるで!」
「……ふっ。いいだろう(やはりその手の攻撃無効カードがあったか。あちらを選択しないで正解だったな) 俺はさらに、"Sp-シフト・ダウン”を発動!」
Sp-シフト・ダウン
通常魔法
スピードカウンターを6つ取り除いて発動する
自分のデッキからカードを2枚ドローする
スピードカウンター 7→1
「スピードカウンターを6つ取り除き、デッキからカードを2枚ドロー。そしてカードを2枚セット。モンスターをセットして、俺はターン終了だ。ここで"Sp-オーバー・ブースト”の効果でスピードカウンターが変動するが、俺のスピードカウンターはすでに1。何も関係ないな」
竜崎&勝利 LP 4000 手札3枚
モンスターなし
伏せカードなし
スピードカウンター 3
スカルライダー LP 4000 手札1枚(エンド・オブ・ザ・ワールド)
マンジュ・ゴッド
攻 1400
破滅の女神ルイン
攻 2300
伏せモンスター1体
ドラゴン族・封印の壺
伏せカード2枚
スピードカウンター 1
勝利と竜崎はフィールドを見て、顔に絶望の影を過ぎらせる。
スピードカウンターが消えて失速し、自分たちの目の前まで下がってきた"スカルライダー”がこちらを見定めてはしゃいでいるようにさえ見えて、苛立ちを加速させた。
(……儀式の生贄による相手モンスターの除去。スピードカウンターの管理と、手札の増強。そしてそれを実現するための、タクティクス……)
「……竜崎君」
「……ああ。わかっとる」
(こいつ……シャレになっとらへん。決闘が、強い……いや、うますぎる。カード捌きそのものもそうやけど、このライディングデュエル言う不安定な状況での決闘で、ここまで綱渡りな戦術を完璧に決めるなんちゅう離れ業……不愉快なほど飄々としとるから誤魔化されとるが、こいつの決闘はとんでもない博打や。そして……それを決めきる覚悟が、こいつにはある)
「……なんでこんな奴が、KCの重役おっさんどもと一緒におんねん……」
愚痴のように、竜崎が零す。
それに勝利も同意した。
「……覚悟を、決めなきゃだね」
「……ああ。せやな」
勝利が、ハンドルを握りなおす。
竜崎が、自分の頬を張る。
(……こいつは、軽々と自分の命を懸けて、極限の決闘を仕掛けてきとる。せやったら……ワイらも、それ相応に相手せな勝てん)
勝利の覚悟は、すでに決まっている。
そんなものは、この決闘が始まる前からわかっていたことだ。
ならば残るは、自分だけ。
自分が、戦う覚悟を決めるだけだ。
「……キヒヒ。そんなことする意味が、あるのかねえ?」
そんな竜崎の覚悟の心を、目の前の敵が揺さぶった。
「……なんやと?」
「知ってるぜえ? お前、黒羽勝利のために引っ付いてきただけなんだろう? 別にお前自身が、どうしても孔雀舞を助けてえってわけじゃねえんだろうが」
『「っ!?」』
「っ……」
場に、刺すような空気が流れだす。
否定したいところだったが、舞と勝利には心あたりがあった。
竜崎とは、再会と決闘を誓った友だ。
しかしそれは、バトルシティの決勝トーナメントによって果たされた。
竜崎の心の広さに甘えてこれまで助けてもらっていたが、竜崎が勝利たちと共にいる理由は、とうに尽きているものだった。
「そりゃあ、外聞悪くてついてきちまったのはあるだろうさ。だが、今感じただろう。ここから先は、本気の命がけだぜ? 俺は文字通り死力を尽くして、貴様らを葬る。俺にはその覚悟がある。こいつはハッタリじゃねえぜ?」
それは、わかる。
これまでの決闘で、伝わっていた。
命と誇りを賭けた、究極の決闘。
その言葉に、嘘はなかった。
体を奪うとは言っていたが、そもそもこの決闘が最後まで続けられる保証などどこにもない。
自分の命運を握っているのは、目の前の勝利の腕と、自分の決闘の腕。
決闘に負ければ、体を奪われる。
そもそもバイクがクラッシュしようものなら、この常識外れの速度を得たまま、荒野の地面にたたきつけられることになる。
死。
ここにきて、それをあまりにも身近に感じていた。
「もしもここでてめえがオリるなら、てめえは助けてやるよ。決闘なんざ勝利にぶん投げて、お前は消えりゃあいい。もとより俺の目的は、孔雀舞と黒羽勝利だ。今決闘から逃げるなら、俺はお前に何もしねえ。さあ、どうする?」
「……」
『……竜崎……』
竜崎は、何も言わない。
舞の表情は変わらないが、明らかに不安気な声が響く。
そして、勝利もまた、何も言わない。
ただ真っすぐにバイクを走らせ続ける。
その背中を、竜崎は見つめる。
急かすこともなく、押さえつけることもなく。
ただただ、竜崎の答えを待ち続けているかのような、そんな背中だった。
(……こいつ)
竜崎はそれを見て、大きく息を吸って、深く吐き出す。
そして、口を開いた。
「なめんなや」
「……フッ。こいつは驚いた。そんなに孔雀舞の事を助けたかったのか?」
「アホ抜かせ。そんなんちゃう。お前の言う通り、大した想いでも思い出せんかったわ」
「ほう。なら、なぜ?」
「……」
竜崎の脳裏を過ぎったのは、これまでの舞とのやり取り。
モーションをかけて、フラれた時。
追っかけては、手玉に取られた時。
勝利に再開したと思ったら、なんか割り込んできた時。
突然、自分をしもべ扱いしてきた時。
再開して、なぜか何度も暴力を振るわれた時。
実力を軽んじられ、馬鹿にされた時。
何度記憶を探っても、大した想いでは出てこない。
だが、それでも……記憶の舞は、ほとんどが笑っていた。
勝利の隣で……満面の笑みで。
(……ああ。その通りや。舞が消えようが、ワイは知らん! 別にワイの女でもないし、大した恩も、義理もないわ! ただ……)
『勝利! 竜崎!』
『舞さん! 竜崎君!』
「……むかつくんじゃ!!」
竜崎が、吠える。
(ああ……なんか知らんけど、むかつくんや! 舞が消えて、勝利が凹んだ面して、辛気臭い空気出して、下向いとるのが! あからさまに勝利にデレデレして、気持ち悪く笑っとる舞の顔が見れんようになるのが! なんか知らんけど、嫌なんや!)
「なんで助けるかやと……そんなもんな……」
『そんなの、仲間だからでしょ』
『そんなの、仲間だからに決まってるじゃない』
(こいつらが……ワイを認めてくれた……ワイの、初めての……)
「友達だからや!」
『……竜崎』
「……竜崎君」
「……キヒヒヒヒ! なんでぇ。やめないのかよ。せっかくバイクから降りた間抜けを、狙い打ってやろうと思ってたのによお」
「っ!!!? 貴様ぁ!!!」
『あんた……最低ね!!!』
その心無き言葉に、激昂する二人。
そんな中、竜崎が静かに、ディスクに手をかける。
「勝利」
「……」
「一緒に、絶対こいつぶったおして、舞を助けんで!!」
「っ! うん!」
竜崎のドローが、弧を描く。
世界広しといえど、デッキマスタールールとライディングデュエルを組み合わせた馬鹿たれは私だけかもしれません。
ちなみに書いていて気が付いたことなのですが、
前回、スピードワールド2でやりたかったなどとの賜っていたものの、デッキマスターとスピードワールド2のバーン効果を組み合わせたら簡単にセーフティラインを割ってしまうことに気づき、やるべきではなかったとほっとしました。
スピードワールド2は、また別の機会とすることにしようと思います。
さて、なんと拙作は次で100話目。
お楽しみに