エアプ客室乗務員の日常 作:一旦サボり
二次創作なので多分日常系だと思います。
書きやすさと書きたい部分を最優先にしているので主人公は女→ショタに憑依する形になっていますが、恋愛は特に含まないのでなんか小さくてか弱いやつを想像しておいてください
事の発端は、私が普段デイリーとイベントだけを回しているゲーム、『アークナイツ』がコラボすると聞いたこと。
しかしながらコラボ先の方へ出張する形だとわかり、ゆるふわ脳筋ドクターくんはアプリをダウンロードして、コラボに間に合うよう計画的に石を貯め始めることを余儀なくされた。
これでも百戦錬磨のソシャゲーマー。ある時は世界を救うマスター、ある時は異世界からやってきた旅人、ある時はウマ耳の学生を導くトレーナー。対戦ゲームとかも多少はやっていたが、遊びでストレスを溜めるなんてとんでもないと思ったので長続きはしなかった……
まぁ、おかげでそれなりにゲームに対する勘のようなものもあり、3章まではすんなりクリアした覚えがあるんだな。
「マジで絶対に赤い視線さんは八割くらいの確率でいい人だと思ってるから、頼むから一緒に着いてきてほしいよ。ドンキが暴れたせいで二度と着いてきてくれないかも。ずっと他人のフリされてる。仲良くなりたい……私は悲しいよ……」
殺伐としたバスに心が折れそうになると、どこからともなく現れた管理人がそっと励ましてくれる。そして、始めたら始めたで一人くらいは気になる人が現れるものだ。
「ていうかリンバスカンパニー、NPC全員死ぬんですけど。灰色のおじさんもバスを降りたら最期かな。もしくはうちらが帰った時にバスが無くなってんの、多分」
ちょっと憂鬱大罪。或いは、なんらかのPTSDで都市に対して偏見を持っているが、そこからチマチマと石を集めて無事にコラボイベント──8.5章にはちゃんと挑み、辛勝をもぎ取った。
「え? 待ってください! ソードさんが生きてるのは良いんですよ!!嬉しいですよ!!
──これって実は3章をクリアした初心者に見せることによって灰色のおじさんの不在を誤魔化す姑息な罠ですよね!?」
灰色のおじさん──ヴェルギリウスは一体どうなってしまったんだろうか……?
これは赤い視線が8章で死んだと思い込んでいるエアプのオタクが、早とちりでおじさんを救済しようとする、囚人とは別の視点の物語である。
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場所は暗い森。白い髪の女性、ファウストに言われるがままに十二人の囚人と時間を共有することになった時計頭のダンテは、汽車のような顔をしたバス……メフィストフェレスへと乗り込んだところだった。
彼は記憶喪失になったばかりだが、十二人の囚人の時間を預かり、管理人として地獄巡行に行くことに決まったらしい。
運転席の隣、案内人が占拠する助手席から小柄な人の足がはみ出ていた。ダンテが好奇心のままに覗き込むと、思っていたより健康そうな子供がスヤスヤと寝息を立てている。
少し黒の混ざった白髪で片目が隠れているからか、愛らしさよりミステリアスな雰囲気がある。寝返りで伸ばした手を車窓にぶつけて、作り物のような顔がくしゃっと歪んだ。よく見ると涎も出ている。安心しきっているのだろう。
ダンテはしばらく子供の性別を判断しあぐねていたが、後ろから案内人を名乗る怖い男に声をかけられてその場を後にした。
「カロン、なんで起こしてくれなかったのさ」
「コロン、起こしても起きない。一度寝たらぐっすり」
「良い子は寝るものだからな」
「ヴェルさん、子供扱いしなくていいんですってば……」
彼が起きたのは最後の囚人の自己紹介が終わった後である。
少しバツの悪そうな顔で寝癖を軽く整えた少年は背筋を伸ばしてこちらに向き直った。座席に座ると丁度目線が合う。間違いなくこのバスで一番幼いのだが、振る舞いは一部の囚人より理性的に見えた。
「バスへようこそ、最後のお客様。
──私はコロン。カロンが運転に疲れた時に交代する係と、車内サービスの飲食なんかを担っています」
〈おお、車内サービスがあるのか!〉
「……あー、その、あまり期待しないでください。マニュアルとか無かったもんで、勝手にやってるだけです。へへへ」
言い淀みながら、自信なさげに少年が囚人の方を伺う。
「頑張っているとは思うぞ」
「最近は食べられる料理も出てくるようになりましたしね〜」
「運転は上手いと思います」
どこからか「めし・まず」という野次が聞こえたような気もしたが、フォローが入るくらいには努力しているらしい。仕方がないか、どう見ても子供だものね。
〈それなら早速コーヒーでも……〉
「おっと、実は私は囚人の皆さんとは違ってダンテさんの声は聞こえませぬ。ファウストさん」
「コーヒーが欲しいそうです」
「OKです、が、飲めるんですかね?」
少年が興味津々といった様子で顔を覗き込んでくる。物言いは素直すぎるが、悪気は無いらしい。よく出来た召使いのように頭を下げてから、バスの後ろの扉へ走っていく。
間もなく運ばれてきたのは、男前なマグカップに並々と入ったインスタントのコーヒー。お茶請けのつもりなのか、ピクルスっぽいものが小皿に添えてある。……ダンテは何も言わずにカチカチと針を動かしたのであった。
さて、同乗人12+3を一気に覚えるのは大変なことだ。何せダンテは自分のこともわからなかったので。
わかるのは自分の頭が時計になったこと、それによって飲み食いする為の口を失ったこと。しかして、口が無くとも囚人と呼ばれる十二人の人物とは会話が成立することくらいだった。
「あの、もしかして口に合わなかったでしょうか?」
〈いいや。さっき言われた通り、どこから飲もうかと思って……〉
重たいマグカップを持ち上げたり下ろしたりしながら、バスの揺れに合わせて溢れないようにしていたダンテに、客室乗務員の子供が話しかけてくる。12+3では3側のコロンという覚えやすい名前の少年だ。
〈君は私の言葉が通じないんだっけ?〉
「はい。通じませんがなんとなく予想はつきますよ。量が多かったんですね」
〈ちょっと重たいとは思うけど、見て何か気づかないかな〉
すっかり冷めたコーヒーを持ち上げて顔の中心の針の根本へ寄せる。傾ければ、黒くて苦い液体は針をつたって赤いネクタイへと流れるだろう。
「ふむ、満足したのであれば私が代わりに飲みましょう。砂糖とミルクは常備しています」
〈……そうして貰うね〉
肩を落としたダンテの横に立ったまま、どこからともなく角砂糖をマグカップへ放った少年は揺れをものともせずコーヒーを半分くらいにまで減らした。うーん、実に大胆不敵なサービスだ。このまま零さないように持ち続けるのにも飽きた所ではあったので、有難いと言えばそうかもしれないが。
減ったコーヒーを持って車内を自由に歩き回る少年は道中に囚人と会話をし、前に行って運転手にちょっかいを掛けたりしていた。退屈な移動時間は彼を見ているだけで飽きないかもしれない。
少年がコーヒーを飲み終えて片付けをしに後ろの扉へ消えて。間も無く、囚人のうち三人が勝手に死んだ。
「コロンが掃除するのを嫌がるだろう。お前ら四人、掃除当番だ」
〈案内人さんは随分あの子供に甘いみたいだね〉
冷ややかな目で死んだ囚人と私を見る案内人、ヴェルギリウスとかいう覚えにくい名前の男は、カロンとコロンに対しては怒ったりしない気がする。
急ブレーキでコロンが持ってきた車内販売のワゴンが椅子へ衝突した時も、カロンが勢いよく路地裏で人を轢き殺してタイヤがパンクした時も口頭による注意で終わっている。
囚人に対する注意と子供に対する注意では圧力のかけ方が違う。どちらもそこまで悪気があってそうなった訳ではないのも、理由として大きいだろうが。
「早く囚人を生き返らせて下さい、ダンテ」
〈私も悪いことをした訳じゃ無いんだから、もっと優しく言ってほしいよね〉
シンクレアという囚人を生き返らせようと針を回す前に、奥の扉が開いて子供が元気よく入ってきた。
「ヒャーッ」
「ああ、間に合わなかったか」
飛び上がった後、受け身もなく卒倒した客室乗務員を見て、囚人達が嘆息した。……なるほど?
「コロンは怖いもの、例えば血やお化けが苦手ですので、服に血がついた場合は自分で洗濯機に入れて下さい」
「そんな性格してよく都市で生きてこれたな」
「掃除や洗濯は殆ど自分でやることになりそうですね」
……彼の存在する意味とはいったい。いや、きっとあるのだろう。誰かの気まぐれくらいの理由で。
アークナイツコラボの終わりくらいに書き始めました。
この頃は都市全体に対して疑心暗鬼になっていたので8.5章最後にソードと再会してストーリーを予想したりしていました(恥)
本命 リンバスカンパニーの地下から何者かによって救出された。
対抗 クローン技術で元から沢山存在していた。
大穴 我々は今死後の世界におり、当然のように死者に話しかけられている
果たして正解は……?