エアプ客室乗務員の日常   作:一旦サボり

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時計:カチカチ

都市に来たのは最近だ。

こんなことを言い出せば明らかに変だが、ある日急に子供になって、咄嗟にコロンと名乗った。これには小学生探偵並みの深い訳がある。

 

それは恐ろしい日であった。

一度は叩きつけられるか何かで汚れたアトリエのような部屋で伸びていたし、散乱したガラス片が傷口に入ってないか不安だった。子供の頃に割れたガラスに近寄ろうとした時、親に言われたことがある。

「血の中にガラスの破片が入ったら、それが血管を流れて行って、早く病院に行かないと心臓に刺さって死んでしまうのよ」

……勿論、そんな事は無いと大人になって解ったが、危ないものに近づいてはいけないとよくよく言い聞かされて育った。長閑な人生を送ってきたものだから、こんなので十二分に物騒だったのだ。

 

そして、隣には赤い宝石を大切に握る女の子が居て。呆然と立ち尽くす男の人がいた。

状況がわからないなりに、とりあえず知らない人に頼る気で、私は簡単に心を開いた。何かに祝福されるように踏み出した世界は暖かく、自分が強くなったように感じた事を覚えている。

 

女の子の手を掴んで、遥か上にある男の頭を覗き込めば、一見怖いとも見える顔に深い哀しみが刻まれているのがわかる。

状況は被害者が三人で間違いないと、その場で確信した。

 

「大丈夫ですよ!」

 

ここが何処かも相手が誰かも、自分が誰なのかも一先ずどうでもいい。ただ目の前の大丈夫じゃなさそうな人たちを励まして、状況を打破しなければならないと思った。

平和ボケした国でも災害や事故は付きものだ。頭の中で避難訓練なんかを思い出しながら、世界一優しい国で育った私は、堂々たる良識を以て、自分より背が高く途方もなく強く、いろんな事を知っている大人の手をしっかりと握りしめて宣言した。

 

「きっとすぐ助けが来ますからね!」

 

赤い視線が呆れたのか、はたまた、少しでも安心したのかはわからないが、実際助けはすぐに来た。

 

ああ──本当に、恐ろしい日であった。

あの時は全然状況なんか理解していなかった。でなきゃ特色フィクサー相手にそんなバカな事言わないだろう。黒歴史ってやつだよそれはさ。

ファウストを見た私はそれから既視感を覚え始め、社名でとうとうタイトルコール。

名前からしてお察しだが。全く脳みそが動かなくなったので、カロンと名乗る少女に合わせて咄嗟に出た名前が「コロン」

お粗末過ぎる……いっそコナンで良かっただろ!

 

リンバスカンパニーのキャラクターはある程度文学作品に元ネタがあるのに、完全に響きだけのネーミングで来てしまった。今からでも竈門炭治郎に改名して鬼殺のバフとか貰えないかな?

まぁ無理だろうな。もう社員証とかあるので。

 

ああ、そう。リンバスカンパニーとは。

プロジェクトムーン、略してプロムンの三作目。三日月のマークが印象に残っている。韓国の会社だったかな?

デフォルメされたグロとか倫理観の終わった都市とか、SCPに類似する怪物がエピソード付きで居るとか、知っていると言えばそうかもしれないが勿論全く詳しくはない。

 

鎮圧、管理する「ロボトミーコーポレーション」

接待、世界を知る「ライブラリーオブルイナ」

そして巡行、「リンバスカンパニー」。ざっくばらんにそれくらいの認知がある。

怖いもの見たさはあれど、グロ耐性はあまり無いので、SCP財団みたいに好んでちょっと読み物として嗜む程度のもので、そもそもあまり覚えてもいない。浅いイナゴの底が知れる。

 

うーん、行き先がアークナイツとアレの二択なら、僅差でアークナイツ……

 

 

チクタク チクタク

 

 

薄目を開ける。いまや見慣れたバスの天井だ。

確か、そうだ、メインストーリーが始まってすぐなのだ。囚人がドミノ倒しみたいに死んだトコ!

 

勢いよく起き上がり、時計頭に衝突する。新人管理人ことダンテさんだ。

ステンレス……いや、ブリキか。銅羅みたいな音がした気がするが、頭が揺れたのでわからない。再び目を回して椅子に倒れる。

 

パッと見たところ、床は綺麗だった。しばらく目を瞑り、頭がしっかりした私は再び起き上がる。今度はゆっくりと。

 

チクタク チクタク

「あの、大丈夫でしたか?」

チクタク カチカチ

 

起き上がってわかった事だが、どうやら私はダンテさんの膝を枕にしていたらしい。初対面なのになんと申し訳ない……!

慌てて立ち上がれば、目眩がして椅子へ戻ることになる。囚人が何人か座席から覗き込んでくるのが見え、その中には当然、シンクレアやイシュメール、ヒースクリフ等さっき死亡した人間もいた。安堵と、一握りの不安。

 

「治ったのなら良かったです。ダンテさんもお疲れ様でした」

チクタク チクタク

「えっと、怒ってるわけじゃないから心配だと思ったんですけど。もしかして違いましたか?」

チクタク

 

私にはダンテさんの声が聞こえなかった。無論、プレイヤーの視点もあるので彼の人となりは知識としてある。多少なら話を合わせることはできるだろう。

しかし相手は意思を持った人間だ。

針の音が苦手なんて事は無いのだが、異国語で話しかけられているような焦燥感がじわじわと頭を占める。客室乗務員等という肩書きは貰えたが、その分の仕事ができているとも思えていなかった故に。

 

「ああ、その、ごめんなさ……」

カ……チ?

 

なんともキャパシティの低い、幼い身体だなと冷静な部分で思う。ゲームに準えるなら混乱区域までが短い。パニック内容は悔しさとかだろうか。

まさか人見知りなんてパッシブがある訳じゃああるまいし。

 

「あ、泣いちゃった」

「管理人!! そのつもりが無かったとは言え子供を泣かせるのは悪いことではないのか!?」

「ほら坊ちゃん痛かったな〜」

 

「子供じゃないンですゥ〜!!」

 

涙を拭いながら主張だけはさせて頂こう。

ぬくぬくとオタクやってたような奴がこんな世界に来たら、泣きたくなる時くらいあるだろうが!!





あ、もう書き溜めてないです(筆・遅)
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