【完結】もしもどこぞの都市のカポがアクナイの世界に転生したら 作:しきょーかい
二本目だったりする
あと普通に忙しくて投稿止まったりする
情報の波が押し寄せた。
だが、私を呑み込むことはできず、引いていく。
「テレジアよ、そなたの作り出した偉業、ついにこの目で見たぞ。そして……」
新しい力は、絶えずこの空間から情報を簒奪している。
迫る無秩序な情報の奔流を奪い、捨て去り続けることで耐えていた。
心の殻は無限の力ではない。よって、尽きたときが終わりの時であろう。
「これより、約束を果たすとしよう。」
既に大部分を簒奪した剣を握る。
崩壊し始める塔の頂を目指して、階段を上る。
———
登りきった先には、菱形があった。
自分を見つめる目のようなそれを見て、戦慄する。
しかし、それと同時に言いようのない高揚もまた、全身に走った。
「果てなき虚無のように見えるが、底に潜むものを感じる。私と向き合え。」
底の知れぬ静けさ、氷のような冷たさ。虚無の中には何もなく、また何の反応もない。
その時、この場を支配する者ではない、何者かが現れた。
「師匠。あなたはまだここに来るべきではない。大人しく戻ってくれ。」
「出来ぬ相談だな、本当に私を連れていきたいのなら、私に勝つがよい。」
「分かった。」
紫の霧が辺りを包む。
これは確かに弟子のアーツであり、自らの記憶によって再現されたものだと理解した。
同時に、自分の作戦のうち一つが達成されたことも、理解した。
弟子は霧の中に消える。
そして音もなく振るわれたナイフを、この手で掴み取った。
テレジアと共にサルカズの残存兵を率い、嵐に入っていったあの日のことを思い出す。
かつてこの身一つで紫の霧の中に入り、目の前の子供が持っていたナイフをその手で掴み取ったことを。
そう、今この瞬間のように。
「久しいな、アスカロン。」
懐かしい情景が浮かび、形をなす前に消え……。
ピピピッ。
そのビープ音が聞こえた瞬間、目の前の懐かしい存在を全力で斬り伏せた。
彼女を侮辱し、穢した者へ必ず代償を払わせる。そう誓いながら。
しかし……
「あぁ、久しいな。だろう?テレシス。」
「……リアン。」
新しく現れた、大きな問題に直面することになった。
自らの記憶にあるこの男の姿は限られている。
そして、戦闘に関しての知識は一つしかない。それが最も恐ろしい。
「アスカロン。」
「お前はよく目にかけていたな。」
「果てしない光景、懐かしい知己。未だ遠くに座する夢へと辿り着かん。……ふむ、語った言葉は既に、果たされつつあるということだろう。しかし———」
「それも、お前を消し去るまで果たされないだろう。」
「そうだな、それじゃあ、始めるとしようか。———絶望の心を模倣しよう。」
胸ポケットから、ゆっくりと取り出した物。
犬笛のようにも見えるそれの蓋が外れると、黒色の液体が漏れ出し、手斧の形を取った。
「一。」
片手で持つ斧を撃ち落とす。
本来ならば、模る武器は本人にも分からないのだろう。だが、自分の記憶から生成されたであろう男の動き、使った武器、その順番はかつて魔王を弑した時と同じだ。
まさか、その刃が私に向けられることになろうとは。
「二。」
レイピア。
妹の肩を貫き通し、鮮血が舞い散らせた武器を剣で弾く。
返しに一度剣を振るって反撃するが、寸前……文字通り、薄皮一枚の差で躱された。
予測不可能の強みを失ったとしても、身のこなしは健在であるか。
「
甲冑の隙間を狙い、放たれる刺突を掴み取る。
そのまま引き寄せて剣を振るった。
「フッ!」
真横に振り抜いた一撃が、武器を掴んだままでいたことにより的中した。
じわりと、スーツの下から何かがにじみ出ているのが分かる。
この世界のことだ、血ではないだろう。血を模しただけの何かだ。
仮面を捨て去った下にある、その醜い傷から流れるものも、また。
「はぁ……続けようか。」
「来るがいい、正面から叩き潰そう。」
「四。」
一度で息をついたかと思えば、緩急つけて武器を構えた。
ハンマー。
下から上へ叩き上げるような一撃を、正面に構えた剣で逸らしつつ突き出す。
そのまま近づいていたのなら顔に穴が空いていただろうが、半身逸らす形で回避される。
「五。」
遠心力を活かす、回転しながらの薙ぎ払い。
即座に引き寄せた剣を逆手に持ち、後ろに下がりつつ受け止める。
姿を変え始めている黒い液体を見て、剣を下に下げた。
「
液体は巨大なランスを模り、加速して突撃してきた。
それを打ち上げ、距離を詰めて次の武器への対処を図る。
「七。」
妹の肉を削いだ鞭。
だが、距離を詰めた状態ではうまく扱えず、振り下ろしの一撃を防いで崩れていく。
最後が見えてきた。
「八。」
バスタードソード。
魔王の用いるアーツの結界を切断するほどの武器。
光の輪を一つ生み出し、片手で振るわれた一撃を弾く。
「
鎌。二つの光の輪。最後の一撃。
こちらも応じて、光の輪を生み出したまま迎え撃つ。
剣を構えた。鎌を構えた。
静寂。
「———波が押し寄せるだろう。」
「切断。」
互いに正面へ出る。
空間を切り裂く軌跡に沿って振るう。
極みに至った、斬撃を模倣する。
ギィィィン!
切り抜けて位置が逆転した。
右腕が切り飛ばされ、傷口から流れていくものは情報の海に零れ落ちていく。
振り返ると、男はまだそこに立っていた。
「……模倣品を、模倣したんだな。」
「模倣であろうと、この世界に存在していないのなら原点だろう。」
「ははっ……あぁ、氷は、溶けず仕舞い、だな。」
最後に見たのは何だったのか。今となっては知る由もない。
砕け散った男は破片となり、切り落とされた私の腕と同じように金色への海に還ろうとする。
男の情報を簒奪し、奪い取った情報で失った腕を構築した。
塔は変わらず崩壊を続けている。
規則の存在しない虚無においてそれは何を意味するのか、崩壊したその時、自分はどうなるのか。
「……無意味な思考だ。」
奪い、捨て、進む。
情報の深淵へ身を投じ、奔流に歯向かい、深奥へと泳ぎ続ける。
その果てに見えたものは———
===
「……。」
「一本、どうや?」
「貰おう。済まないが、火を点けてくれ。」
「こんぐらいならサービスしといたるわ。」
「……ゴホッ。これは、中々。」
「おっと、結構高いんやで?それ。」
「死にゆく、者への、手向け、の、品だ……。価、値な———」
「もう声も出んか。」
「……。」
「もう行くわ、看取るべきヤツ、俺っち以外に居るみたいやからなぁ。」
「……。」
「……?この場所に行けばええんか?」
「……。」
「ま、お前のことは覚えておくわ。」
『目的は果たせたのかしら?』
(お前にも、感謝しよう。最低限、成すべきことは成し遂げた。)
『それはあなたが掴み取った結末で、私はきっかけを与えただけ。』
『だから、この声が届くのも———』
彼女が最期に残した言葉を、あなたは知るべきだと思うわ。
テレジアとサルカズの魂が去りゆく時……彼女は、無数の呼び声の中であなたの声を聞いた。
私たちの時代にも、ついに終わりがやってきたわ———さようなら、テレシス。
(あぁ、さらばだ、テレジア。)
『……いい笑顔ね』
ウティアスが普通に化物であると感じる今日このごろ