【完結】もしもどこぞの都市のカポがアクナイの世界に転生したら 作:しきょーかい
セルマァ、俺
ファウストの穴とかいうパワーワードが生まれて
涙が出そうだよ……
第106話
「疑問なんだが……そもそも俺は、君たちとどういう関係だったんだ?」
レイホンとアーミヤ、そしてウィシャデルと名乗った女性に問いかけた。
未だ若干痛む腰を抑えつつ、顔の傷を隠すために丁寧に巻かれた包帯をなぞる。
若干
「同じ刀を打つ"親方"やな。同僚っちゅうにはちとややこしいんやけど、一緒に仕事しとったわ。」
「
「おう。最後に見た時、他ん奴には"りょうしゅう"って呼ばれとったな、どっちでもええで。あんまええ影響ないやろうし、俺っちとの関係は詳しく伝えんとくわ。」
ひらひらと手を振り、次の者へと顎をしゃくり、話を振る。
アーミヤは同じく記憶を失っているため、必然的にウィシャデルへと話が振られた。
「そうねぇ……殿下とたまに話をしていたのは見たわ。あとよく読み聞かせをしていたハズ……子ウサギとか、たまにアスカロンもいたんじゃないかしら?私も誘われたけど、無視してたから内容は知らないわ。」
「読み聞かせ……現在のロドスでも行っていますが、リアンさんに任せてみてもいいですか?」
「あぁ、イベリアに経つ前ならいつでも。」
アーミヤがこちらを見て、少し考え込んだあとに提案してきた。
断る理由もなく、素直に受け入れる。
後で後悔するような予感がしたが、気のせいだと思って首を数度振るった。
===
「———それじゃあ、読み聞かせの時間だな。聞きたいなら、近くに座ってくれ。」
その瞬間、子どもたちはリアンの側に近づくことなく駆け出し、外に出ていった。
楽しそうにボールを抱えて外に出る姿を眺めるリアンは、少し寂しそうだ。
「……無邪気な無視はかなり効くな。」
「大丈夫!私たちが聞いてあげるからさ!」
「お前は子供と呼ぶには年を取りすぎじゃないか?それと暑い、離れてくれ。」
「聞こえなーい!」
ブレイズ、レイディアン、レイホン、アーミヤ、ロスモンティスの5人がリアンの側に腰を下ろす。
エリートオペレーター三人は休暇のついでで、レイホンは暇つぶしである。
【失礼する】
「……ブレイズ、お前ももういい年だから落ち着け。」
いい年して絡んでいくブレイズを遠い目で眺めていると、部屋に追加でエリートオペレーターのおかわりが入ってきた。
MantraとAceが入り、レイホンたちと同じく近くに座る。
「子供達がいないから、読み聞かせる必要はないと思うが。」
「聞いてみたかったのですが、駄目ですか?」
「私……聞くよ?」
アーミヤとロスモンティスが声を上げ、席を立とうとするリアンを引き止める。
「はぁ……。流石にお前たちが聞くなら、断ることは出来ないな。」
(レイホン……胃が痛むんだが)
(俺っちは見とくで、頑張れや)
諦めたように息を吐き、本を手に取った瞬間紫の霧が部屋に入ってきた。
レイホンを一瞥したリアンの目が訴えてくるが、無視する。
観念したリアンは本を開き、あくまでも近くに座る二人の子供に向かって語り始めた。
「むかしむかし、大きな大きな砂漠に立ち向かう、布で作られた小人がいたんだ。小人は誓った。いつかこの砂漠を抜け、伝説に語られる希望の平原を見つけるんだ———」
===
「だが、冒険というものはそう簡単にはいかない。乗り越えるべき苦難はまだ残っていた。———押し寄せる影たちを前にした布の小人は、針と糸でできた槍を取り出して、彼らと……」
内容としては希望の平原を目指す小人の冒険譚。
数々の苦難を超え、時には新しい繋がりを得て進み続ける。
まさに子供向けの話だ。レイホンが早々に退出したことを思い出しながら、そう考えていた。
「……。」
「……にゃ?」
「リアンさん?」
「———あぁ、すまない。少し疲れてな。」
描かれていたのは、小人と影の戦闘。
描写に加えられた文字には、夢へと届かなかったものの無念でも詰まっているのかと思うほど、濃密な恨みが込められているような気がした。
そのまま読むべきか逡巡し、再び口を開いた。
「凍えようとも、氷漬けになろうとも水底を歩き続けた。より深く、絶望と悲しみの中を歩いていく。すっかり絶望を中へと溜め込み、黒く染まった小人はもう元に戻ることはないだろう。今からでも戻って陽の光を浴びたかったが、振り返ることなく歩き続けた。」
「どうして歩き続けたの?」
レイディアンからの質問に、悩むことなく答える。
「戻ってしまえば、小人は影と同じ存在になってしまうからだ。希望を目指す者を阻んでしまうのは、小人にとって到底許せるものじゃなかった。過去は過去に、
本を開いている必要もなくなったので、閉じることにした。
少し疑問に思ったものがいるようだが無視する。
「光のない暗闇を歩き続けていると、小人は突然浮遊感を覚えた。道を踏み外したのか?そう思った小人は諦めて身を任せようとして———地面とは違う感触が、足から伝わってきた。」
「闇に慣れた小人は、自分が踏みしめたものを見た。遥か遠く、希望の平原と同じく見えない果てまで続くものは、自分と同じ布でできた小人だったんだ。」
「重い体を動かして、一歩ずつ踏みしめるたびに伝わるのは彼らがかつて抱いていた希望。そして、同じ志を持ったものへ自らを捧げる覚悟。歩き続けるうちに、徐々に光が灯り始めるのを感じていた。」
【覚悟か、綺麗に聞こえる諦めではないか?】
「諦めとは勇敢な
【……続けて】
「陽の光か、はたまた幻覚か。分からなくとも小人は進んでいく。いずれにしろ、結末はすぐ近くに迫っているんだからな。」
「……ごくり。」
ブレイズが喉を鳴らした。
アーミヤとロスモンティスだけでなく、レイディアンやMantra、Ace、アスカロンも集中している。
伝えようとしている結末に納得しないであろうブレイズを想像しつつ、最後の言葉を紡ぐ。
「———今回はここまでだ。」
【ほぅ。】
「……。」
その言葉に、俺以外の誰もが呆気にとられた顔をした。
どこかスッとした気持ちになりつつ、掛かってくるブレイズを手で抑えて熱気から遠ざかる。
「えぇ〜!?そりゃないよ!最後まで読まないと!」
「残念なことに、子供達が戻ってきているからな。俺たち大人がいる場所は此処じゃないだろう。」
「う〜ん、なら今度!」
「それも無理だな。今からにでもレイホンと俺はイベリアに経つし、その頃には内容を忘れているだろうから。」
「忘れるって…本の内容が変わるわけないでしょ!」
「ブレイズさん、抑えて……。」
「あっ!ゴメンゴメン。」
淡々と告げ、片付けるついでに本をブレイズに渡す。
ばっと
ズボンを引っ張られる感覚があり、下を見るとロスモンティスが握っていた。
「私、次の話のときには多分忘れてる。……また、聞かせて。」
「似ていても何一つ同じ話はない。俺が飽きることはないから、また今度だ。」
頭を撫でると、満足したのか部屋から出ていくロスモンティス。
それに追随するようにAce、Mantra、アスカロンが続く。
「なるほどな。」
【面白かった。また機会があれば】
「……フッ。」
ブレイズも続いて立ち去ろうとして、抱えたままの本を返してきた。
「まだ納得はしてないよ、絶対に結末を聞き出すから!」
「暴力とハラスメント以外で頼むぞ。」
受け取り、すぐにレイディアンへと渡す。
用意された本を用意した人に返すのは当然だから。
「リアン。どうして内容を途中で変えたりしたの?」
残ったアーミヤにも聞こえる声量での質問。
答えに窮する理由もないので直ぐに返す。
「お前たちには似合わない、そう思っただけだ。いくら力を持っていて、決意が固くても……夢が破れるのはいい気分じゃない。」
「う〜ん。じゃあ、結末をとっておいたのは、なんで?」
「未だ結末は定まらず、お前たちが底に沈んで礎にならないと保証できないだろうに。———何より、その方が希望が残っているんじゃないか?」
そこまで言って、レイディアンは笑みを浮かべた。
目を開き、全てを見透かすような俺を視線が貫く。
「ふふ、子供への対応は100点だけど、私への対応は80点かな。」
「案外高いな。」
「目指すのは100点だよ。そして私たちは希望がなくても進んでいくんだ。」
「……次は100点を目指さないとな。それと、アーミヤ。」
「何でしょうか?」
これまで静かに話を聞いていたアーミヤの名を呼ぶ。
物語を読み聞かせている中で、違うものを見ていた彼女に興味が湧いた。
「お前はこの結末をどう変える?いや、そもそも結末を残しておくべき価値が、お前たちにあるのか?」
「私と……リアンさんの描く未来は似ています。違うのは、道となった小人さんたちも連れて先に進むこと。そして、みんなで海を超えて大地へと足を踏み出すことです。」
「……お前は理想の中に消えていく。その最期の時まで夜明けへと繋ぐ火種を持って。」
「はい。しかし意志を継いだ誰かが……朽ち果てる全てを燃やし尽くす炎となるでしょう。歩みを止めることなく。」
「レイホンの言う神秘、ラップランドの言う自我の殻。メフィストの言う罪の塊。お前ならいつか手に入るんだろうな。その輝きを目にする日が楽しみだ。———では、また会おう。」
「はい、また。」
全力で鏡回してエンドゥイシュをギリ交換できた人です
グレゴール二人とドーセント自販機に隠れました