【完結】もしもどこぞの都市のカポがアクナイの世界に転生したら   作:しきょーかい

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ヴァル夜記念かつ評価4444記念
書きだめは消えた、反省もしてないし後悔もしていない。
半分ギャグ時空。本編の方には関係あるかもしれないし、ないかもしれません。
許せる方のみどうぞ。


ヴァル夜&評価4444記念

 

 

突如現れたその幻想体は、これまで相手取ってきたどの個体よりも異質で…。

深い青で満たされていた。

限りなく青く、底知れず惹きつける未知の幻想体。

 

無数の風景と数え切れない思考が潮のように押し寄せ、そして引いていく。

そうして浮遊していた私を、聞き覚えのある声が引き上げる。

 

「おお、時計頭、おったんか。」

 

〈…?……!!?〉

 

「俺っち達の今の顧客がお前を探しとってな、付いてきぃや。」

 

〈レイホン…!?死んだはず…どうして…。いや、それよりも…ここは、どこだ?〉

 

目の前に親指がいた。カポIIII(クァルト)の証を付けているその者は、死んだはずのレイホンだった。

そう呟く私の声はカチコチという虚しい音を響かせるだけで、近づいてくるレイホンを静止させる理由にはならないようだ。

辺り一面は見渡す限りは磯辺で、私とレイホン以外の人影は見えない。

 

未だに地面にへたり込む私を見て、動けないと思ったのか、よっ、と声に出して私を軽々と持ち上げ、どこかへ連れ去ろうとするレイホン。

 

〈自分で歩けるから…降ろしてくれ…〉

 

逆らったら私の頭と体は一瞬で別れるだろう。

この状況では一人でも頼りになる囚人たちが今どこいるかも分からず、強く言うことができない。ただカチ…コチ…と音が響くだけで、レイホンには伝わっていないだろうが。

本能が恐怖で体を震わせる。それが伝わったのか

 

「安心せいや、俺っちはお前らと戦う気はあらへん。」

 

「勿論あん時の事忘れてないけどな」と付け加えながら、私を抱えシガーを吸うその姿は、ジア・チォウに殺される前より優しく見えた。

この言葉が嘘でないなら、この状況は一応安全…なのだろうか。

 

〈私って絆されやすいのか…?〉

 

そのまま為されるがままに身を委ね、暫く歩き続ける。

なぜ私はロボトミー支部からここに来たのか、囚人たちはどこにいるのか、レイホンといるこの状況を因縁のあるであろう良秀にどう言い訳しようか、などと考えていると

 

「管理人の旦n…ッ!?ゴホッ!ゲホッ!」

 

「ダンテさん!?」

 

〈グレゴール!ホンル!〉

 

突然見慣れた顔が飛び出してきた事に喜ぶ。しかしホンルはレイホンに抱えられる姿を見て悲鳴に似た声で叫び、グレゴールはむせた。

 

「ヨシヒデのお仲間さんか、アイツは元気にやっとるか?」

 

それに馴れ馴れしく話しかけるレイホン。二人はその質問に無言で答える。

 

「返事があらへんな、どうしたんや?こん前は上下も弁えず話しとったやろ。」

 

〈怖いからだと思うよ…〉

 

レイホンと自分が出会ったときと同じように、ただ、カチコチと虚しい音が辺りに響いた。

 

 

 

それから…。

 

「ちょっとおチビちゃん!良秀を止めて!」

 

「お・止、全・く・へ だ」

 

「俺を止めたやつも、全員首をへし折る…だそうです!」

 

「翻訳じゃなくてコイツを止めろっつってんだろ!!!」

 

うん…。

なんとなく予想してた。

 

 

===

 

 

場所は変わって灯台。

 

「この扉を覆っているものそのものが恐魚だと思います。灯りにも反応しますけど…大きすぎて効き目が薄いみたいです。」

 

「スカジさんの怪力なら無理やり開けられそうですけど…。」

 

スカジのいない今、当面は私達が解決しないといけないだろう。

いつも通り、人格やE.G.O.で解決しようと思考していると、微かな黒い光が視界を覆った。

形を判別することもできない、私が見ることを許さない黒い空間に、嘆息のような微かな音が掠める。

そこに手を伸ば——「俺っちでもいけるやろ」——え?

 

今まで付いてきていたのか、突然レイホンが現れると、その朴刀…ムルソーの人格から読み取った情報が正しければ"天退星刀"に弾を込め始めた。

 

「このレイホン、全力で斬ろう。」

 

「…あ、確かにレイホンさんなら開けそうですね。」

 

レイホンがそう言い放ち、アーミヤも斬ることに賛成のようだ。

いつの間にか視界を覆った黒い光は消え、目の前には低く屈んだ姿勢をとり、6つの銃口全てから紅の炎を噴き出す天退星刀を持ったレイホンがいた。

その刀には光る3つの輪っかが付いていて…。

 

〈えっ?なんか増えてない?〉

 

「タァッ!!!!!」

 

高速で移動するレイホンを捉えきれなかったが、気の所為でなければ確かに(マン)が1つから3つになっていた。

ダン、という発砲音にも似た重い踏み込み、跳躍、あの時苦しめられた一撃が灯台の扉を激しく叩き斬っていた。

大きく揺れた灯台のヒビ割れは明らかに深くなり、開いたというより壊したと言った方が正しいだろう。

 

「久しぶりに体動かしたわ、やっぱ運動はええな。」

 

〈結果オーライ、でいいのかな?〉

 

「良くないですよ…。」

 

溜息をつくイシュメールを宥めながら、私達は灯台の方へ向かっていった。

 

===

 

槍を掲げる騎士の背後に、波が押し寄せてくる。守るべきは今にも崩れそうな灯台。

激しい戦いになるという予感とともに、海を割りながら騎士を載せた馬が目の前まで迫ってきた。

 

〈でも…。〉

 

こっちにはあのカポIIII(クァルト)がいると考えると、守り切るのはそう難しいことじゃないと思う。

レイホンの方を見ると、目を大きく開いて騎士を見ていた。

 

「あれは…俺っちより格が上やろ。」

 

〈えっ。〉

 

「レイホンさん、相手が誰なのか知ってるんですか?」

 

アーミヤがレイホンに話しかけるが、レイホンの言葉が私の頭を支配していた。

レイホンより格上?そんな存在に、私達は勝てるのだろうか…。

 

「マイヤーズちゅう嬢ちゃんが言うてた事が本当だとして…。童話の元型になったカジミエーシュの鎧を着て、海に呑まれた騎士っちゅうたら一人しかおらんやろ。」

 

「強さの程度は分かりますか?」

 

「分からん、俺っちより強いかもしれんし弱いかもしれん。やけどな、格っちゅうモンは強さだけで決まるんとちゃうで。」

 

「説明してる場合ですか…!来ます!」

 

「まぁ、それも今から分かるやろ。」

 

アイリーニが叫び、レイホンが刀に弾を詰め込みながら、戦いの火蓋が切られた。

 

===

 

自然そのものと対峙してるようにすら感じるような感覚に囚人たちは舌を巻く。

対策を考えさせる暇なく、騎士は槍を掲げこちらに向かって突進してくる。

そんな緊迫した状況の中、自分にできることはないかと考えていたその時、ふいに霧の裂け目から再び黒い空間が視界いっぱいに広がり始める。

 

〈これは…さっきと同じ…〉

 

その間に、先程はレイホンに阻まれて見えなかった星が確かに見えた。それに向かって、私が手を伸ばそうと——「虎ァ狩る気ィやったんなら!童話の騎士やろうと…喰われる覚悟くらいしとくんやったなァ!!!」

 

黒い空間は再び霧散し、星に向かって伸ばした手は宙を切る。

そこではレイホンの乱撃…囚人たちを細切れにしたあの技が騎士に襲いかかっていた。

虎標弾から既に猛虎標弾に切り替えているレイホンの動きは凄まじい速さで、あの斬撃の威力が想像もつかないほどの物であるという事だけが分かる。

 

熱と速度を持って繰り出される乱撃を槍でいなし続けていた騎士は、低く屈む姿勢を見て初めて防御の姿勢を取った。

 

「タァッッ!!!!!」

 

一撃で灯台の土台の一部を粉砕し、亀裂が更に酷くなる。

騎士は大きく跳躍したレイホンの渾身の一撃を受け止めようとし、衝撃で勢いよく海へ向かって吹き飛んでいく。

その際まで騎士はレイホンの攻撃を鑑賞でもするように見ていたのが、戦いを眺めていた私にも分かった。

 

「はぁ…俺っちの全力でも倒し切れん相手が多すぎちゃうか?自信なくすわ。」

 

レイホンがそう言ってシガーを取り出し、火を点けて一服し始めると同時に灯台から唸るような声が聞こえたと思うと、海の彼方へ向けて一筋の光を放ち始めた。

 

「マイヤーズ氏が修理を終えたようですね。」

 

「しかし、またあの騎士の突撃がくれば灯台は()たないだろう。」

 

ファウストとウーティスが会話していると、吹き飛んだ騎士が馬に乗ってこちらへ戻ってくるのが見える。続く戦闘に身構えようとすると、ドンキホーテがいつの間にか目を輝かせてシーボーンに近づいていた。

静かに騎士と騎士の駆る馬を見定めたドンキホーテ、何をするのかと身構えると静かに口を開いた。

 

「騎士殿!そなたの見事な愛馬の名は、何と申す?」

 

「ロシ…ナンテ。」

 

〈対話が…できてる?〉

 

戦闘中、発話はできても意思疎通はできないものだと思っていたが、明らかにドンキホーテと目の前の騎士は意思の疎通ができていた。

 

「おお!!!これぞ奇しき巡り合わせではないか!当人の愛馬の名もロシナンテである!」

 

「同胞デは…なイ者よ…それヲ、愛馬ト呼ぶカ…。」

 

そう言うと騎士は私達に向き直り、槍を下ろした。そして、今もシガーを吸うレイホンの方を向いた。

 

「波でハなカっタか…波はヨり暗ク、よリ冷タく、ヨリ、騒がシい…。」

 

その言葉を最後に、騎士は遠くを見やると、馬に乗ってその場を離れていった。

 

「ああ…行ってしまったのである…。」

 

それを嘆くように呟くドンキホーテを残して。

 

===

 

「…イベリアは、裁判所はシーボーンを悪と規定しません。人類の脅威、審問官として言えるのはそれだけです。…あなたは、あなた達は敵だ。」

 

問答は続く。都市が望むことであれ、都市が望まないことであれ、彼女が止まらないことは分かっているはずなのに…平行線だと分かっていても、言わなければならないことがあった。

 

「テラも、都市も、くびきから逃れる他の方法を見つけられなかった。ただ、そういう風に生きていく事に満足するだけなら、いっそ…。」

 

「そうやな、そんで満足できるんなら"こう”はならんやろ。」

 

ねじれになった、羨望し、漂流するマイヤーズの言葉にレイホンが同調する。その言葉は都市で強者であるが故に出た言葉なのか、それとも今までに経験してきた上での言葉なのか。

 

「…止まった場所から見える景色は、前に見た景色の連なりでしかありません。 ……歩みを、止めてはいけません。」

 

存続とか、価値とか…私は複雑な問題に確信を持ったことはないから、あの二人のように確固たる信念を掲げることはできない。

マイヤーズの言う利他的本性が都市に不要というわけではない。でも、都市で利他的に生きるには…いや、生きる事ができるのは、強者だけだ。

 

シーボーンと光という答えよりいい方法を、私が知っているわけではない。

だけど…今までの道のりが、積み重ねてきた感情が、後悔が、全ての対話が私の答えとして時を刻む音となる。

 

〈私は、君の言う光が自我を守ってくれるとは思わない。それは、過去と未来を正面から見据えて、向き合ってこそ守られるはずだ。〉

 

「そんなはずは…光は、きっと…。」

 

「お前、都市についても光についても聞いたことが全部だろ。それが本当に自我を守れるのか…どう確信するんだよ。」

 

「試みすらせず、そなたに全てを任せることは違うのではないか?」

 

「マイヤーズさん、独りでその全てを背負おうとするのは…傲慢なんですよ。」

 

囚人たちがそれぞれ、言葉を紡ぐ。

それは自らが歩んできた道のりを振り返った上での言葉かもしれないし…これから歩むであろう道を見据えての言葉だったのかもしれない。

 

「…君たちは、シーボーンでさえ私の探していた答えではないって言うんだね。」

 

〈皆、戦闘準備。〉

 

問答は終わった。あとは、彼女の心とのぶつかり合いだ。

 

===

 

心象ダンジョンを抜け、これからの話をしていると、空が暗くなり唸り声が響いた。

突然イシュメールがグレゴールの持つ通信機を奪ったと思うと、操舵室に向かって駆け出す。それを見たウーティスも同じ方向に駆け出した。

 

〈嫌な予感がするんだけど…。〉

 

「おぉ!あれ見てみぃ!あんだけ大きいんは初めて見たわ!」

 

左に向かって旋回し始めた船にしがみついていると、レイホンが空に向けて指を指して叫ぶ。

その方向を見ると、マサス号よりも少し大きいくらいの巨大なシーボーンが海から空へ向けて飛び出していた。口を開けてこちらに向かい、飛んでくる姿はまるで空を喰うかのように見えた。

 

「なんでこっちを狙うんだ!?……っと、一匹だけじゃねぇのかよ!?」

 

ヒースクリフが抗議するように叫んだ瞬間、船が大きく揺れる。波を踏み砕く轟音がマサス号に近付いてくる。何が近づいてきたのかを見ようと身を乗り出すと、ここからそう遠くない場所で上がった水しぶきの狭間に、灯台で戦った騎士の姿が見えた。

 

「シーボーンが二匹…!」

 

「大丈夫ですよ、審問官さん。僕達が戦った騎士さんなら、自分の前に立ち塞がる大きな障害物を見逃したりしませんから。」

 

ホンルがアイリーニに諭すように話しかけた通り、騎士はマサス号ではなく巨大なシーボーン目掛けて突撃した。

その後、ドクターの采配によってオペレーターが各地に配置され、イシュメールとウーティスが交代したのか甲板に降りてくる。

 

「どうやら、一緒に見送るのは難しそうですね。」

 

「大丈夫なんですか?私達も手伝った方が…。」

 

「お気持ちだけでも嬉しいです。ですが…。」

 

アーミヤが指を指した方向を見ると、そこには最初見たときより明らかに小さくなった次元ポータルがあった。

時間が過ぎれば閉じてしまう構造だったのか、私達がやるべきことが終わったせいか…それとも…。

 

「ん?どうしたんや?」

 

既に都市で死んだ者を都市に戻すことは許さないという、そんな意志を感じる。

確かなことは何一つわからないけど、私達はもう去るべき時であるという事を理解した。

 

〈ありがとう、アーミヤ…それと、レイホンも。〉

 

「私達も、おかげさまで次元ポータルをちゃんと調査して帰還できそうです。」

 

ガァン!!!という音ともに、巨大なシーボーンがスカジと騎士の挟撃に退けられた瞬間、旋回したマサス号は次元ポータルの真横に止まった。

次元ポータルに向かう私達にアーミヤが向き合う。

 

「管理人!……いつか、また会えますように!」

 

〈うん。…帰ろう、都市へ〉

 

喧騒渦巻く戦場の中、マサス号を守るロドス・アイランドを眺めながら私達は次元ポータルの中央、黒く深い闇めがけて身を投じた。

 

 

———

 

 

「行ってしまいましたね。」

 

「せやな、久しぶりに都市の面々見れて満足やわ。」

 

管理人…ダンテさんたちが次元ポータルの中に入ると、次元ポータルはそこに何もなかったかのように閉じてしまいました。

先程、小声で「……レイホンさん、今なら、都市に帰れますよ?」と私が伝えましたが、レイホンさんはそれを無視して、遠い世界に戻る彼らを見つめ続けていました。

 

「俺っちは都市で一度死んどる、死者がしゃしゃり出るのを許すほど都市は甘ァないわ。」

 

(大体、こっちの奴ら(親指)を纏める奴がおらんなったらアカンやろ。まだ離れられんわ)

 

チッ、と舌打ちしながらシガーを手で揉み消しながら言うその言葉に隠れた心が伝わり、思わず笑ってしまう。

 

「レイホンさんは、部下想いの良い上司ですね。」

 

「当たり前や、親指ほど良いところはないで?どや、嬢ちゃんも入ってみるか?」

 

「レイホン、うちのアーミヤを勧誘するのはやめてもらおうか。」

 

「ドクターもこう言ってますし…私も、ロドスでやるべきことが沢山残ってます。」

 

首を横に振って、申し出を断る。レイホンさんはそれを見て、確かに笑った。

ぶつかり合うスカジさんと騎士と巨大なシーボーン、二人と一匹が生み出すその戦場に向かい、指示を出す。

 

「それでは皆さん、戦闘の準備をお願いします!」

 

「あ、俺っちは海に出れんで、遠距離なら南部の奴ら呼んでくれや。」

 

そんな気が抜ける言葉は、激しい波の音にもみ消された。

 

 





レイホン(別に共存できそうちゃうか?恐魚に餌付けしたろ)

ドクター&アーミヤ&ケルシー&医療オペレーター&マイヤーズ&恐魚(!?)
スカジ(静かに武器を構える)

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