【完結】もしもどこぞの都市のカポがアクナイの世界に転生したら 作:しきょーかい
ちょっとした小話的なやつ
おい…どうして小話で…3000文字を超えている…。
1つ目は本編のちょっと前
2つ目の前半は本編のちょっと前、後半は本編の少し後。
飛ばしてもいいと思う(個人の意見)
「失礼する。ここは君の執務室だろう、発言を気にする必要はない。」
そう言って執務室に入ってきたのは、白髪に猫耳を生やした——確かフェリーンという種族だったか、ロドスのケルシーだった。
「そう言ってくれると助かるわ。…単刀直入に聞くで、何の用や?」
一番奥の席に体重をかけ、体を沈ませるレイホンに向かい合うようにケルシーが座ったのを確認すると、早速尋ねる。
「君は凄まじいな。この龍門で、たった三日ほどでこの勢力を築き上げるとは。龍門に感染者の組織の…ロドスは支部を作るのが難しいというのもあるが、我々より早く組織を確立し、この地位を手に入れるとは。」
「世辞はええ、俺っちも暇やないんでな。…部下は下がらせたほうがええか?」
レイホンの斜め後ろに立つ部下をチラリと見て、ケルシーに問いかける。彼女が頷くのを見てから部下に下がるように指示をすると、部下たちが出ていってから口を開こうとした。
そこに待ったをかける。
「おっと、アンタの後ろから移動した…今は俺っちの椅子の後ろにいる犬コロも下がらせとけや。」
気配の遮断と素早い動きで部下たちは気付かなかったようだが、レイホンを誤魔化すには少し足りない。赤色のフードを被った何者かが自分の背後にいるのは分かっている。
ケルシーを視線を向ければ、彼女は目を数秒閉じた後小さな声で、「下がれ、レッド。」と呟いた。
その声と共に背後から感じていた気配が消える。
(黒獣共みたいやな。)
H社の守護獣…奴隷のような物の事を考えたが、前に座る相手に集中する。
「…今回は、君に"お願い”があって来た。」
「断らせてもらうわ。まだ安定っちゅうには程遠いからな、落ち着くまでは断るで。」
ケルシーからの"お願い”を即断る。しかし彼女は「最後まで聞くべきだ。」といい、ポケットからビデオテープのようなものを取り出し、長机の上に置いた。それには『チェルノボーグ戦闘記録』とだけ書かれていた。
「この戦闘記録は…君がレユニオンの幹部Wと接敵し、戦闘したものだ。そこには君とWの会話の瞬間も録画されている。君は私達に『親指』のカポIIII《クァルト》と名乗ったが、不思議なことにWには『小指』の天退星とも名乗っている。……君から聞いた話では、指というのは互いに勢力を争っているらしいな? 親指のカポの正体が小指と知ったとき、君の部下はどういう反応をするのか私には気になる所だ。」
「……。」
沈黙。確かに名乗った記憶がある。クルースもフェンも、戦場に似合わない服装をしていたため、ろくなモノを持っていないと高を括っていたのが失敗だった。
口の中で煙を転がすが、いつもと違い香りが楽しめない。
「私は"お願い”をしに来ている。勿論君は拒否しても構わない、ただ、その後のことは誰にも保証できないだろう。」
「…俺っちを脅すんか?大体、ここで俺っちがアンタを殺せば…全部解決やろ。」
ケルシーはそう言うが、どこからどう見ても"お願い”ではない。ロドスに従うか、親指の座を失い孤立するかを問われている。
親指はどこまで行っても親指、小指と分かれば容赦なく敵対するし、傘下にした組織もレイホンには付いてこないだろう。都市と違い、テラでは個よりも群が強く見られている。
天退星刀に手をかけ、刃をケルシーに向ける。
「何度も言うが、"お願い”だと言っただろう、ちゃんと報酬も用意する。そして…もし私を殺しても無駄だ。既に私の部下にこの記録は複製して渡してあるからな。何より、私はそう簡単に死にはしない。」
その震え一つない言葉と、目に宿る自信はどこから来るものなのか。それをここで知ってみるのも面白い。
そう思って首を狙って突き出そうとして、やめた。
ここでケルシーを殺したとしても、一切の得がない。天退星刀を納める。
「懸命な判断だ。今回の依頼は———。」
この”お願い”の内容についての話し合いは、長くなりそうだ。
===
私の今の名前は「セコンド」。一つ前は「プリモ」で、そのもう一つ前の名前は親指に入るときに捨てた。
スラム街の中でも奥、鼠王に反抗するような連中達が根城にしているような、本物の無法地帯に昔の私はいた。チェルノボーグからどさくさに紛れて龍門に来たはいいが、行く宛のない私は迷いながらそこに辿り着いたのだ。
そこで暴漢に襲われ、どこに連れて行かれるかも分からず、気を失った。
その時は人生に絶望し、この世の全てを恨んだ。だけど今の私は、もし龍門にやってきた頃に戻れたとしても再びスラム街の奥へ歩いていくだろう。
私は、統一された赤い服と銃剣を装備した人達に囲まれて目を覚ました。
そこから素晴らしい人生が始まったことを、私を救ってくれた彼は知らないだろうけど…いつか言葉にして伝えたいと心から思う。対等に話すには、あとどれだけの成果を残せばいいのか分からないが。
初めに規律の内容、次に身だしなみと言葉使い、最後に、上下を弁えることを知らない愚か者を処罰するための技術。私は才能があったのか飲み込みが早く、その全てを目覚めて数時間で覚えることができた。
お陰で初めての戦いが彼と一緒だったのだ、残念ながら相手はすぐに降参したため血を見ることはなかったが…。もし抵抗していたのなら、彼の戦闘を目の前で見ることができたのに。
今は同胞だが、そのせいでカポネさんを好きになれない。
そこから三日間、私はひたすらに技術を磨いた。
初めは先輩達を見習い、型に沿った動きをする。III《テルツォ》の方の許可なく喋った、私より大きいのに脳みそが足りていない愚か者の下顎を砕く。正しい行為をすると、思わず笑顔が浮かんでしまう。
「これやるわ。アーツっちゅうのが使えるのはお前しかおらんからな、使い心地教えてくれや。」
彼から受け取った、私専用のアーツユニット。見た目は何時もの銃剣の銃口が3つになっただけだが、これがあれば鉱石病の進行をある程度抑えながらアーツを使って戦うことができた。
型に沿った動きから、自分にとって最適の動きを模索する。
アーツで浮遊させた銃剣を操作して、トリガーを引く。推進弾で加速した銃剣の刃が、私に向かって斬りかかろうとした男の喉元を斬り裂く。
私のアーツはシンプルで、小さなものを浮かせるぐらいの弱いアーツ。空中に固定させることはできず浮かせるだけで、手で払うだけで簡単に動かすことができる程弱い。
それを三発の推進弾の勢いで補うことで、攻撃の手を無理やり生み出す。
元がひ弱な私にとって、この戦闘スタイルは相性が良かった。奇襲はもちろん、浮かせた銃剣と私が使う銃剣で挟み打ちなどで沢山の非礼を償わせてきた。
恐れ多いことに、その成果を認められソルダートのII《セコンド》に昇進した。
彼の隣りに立つ日を夢見て、これからも精進するのだ。
———
そして今…私は濃い死の予感に直面している。
元々チェルノボーグの一部であっただろう、廃都市の偵察。レユニオンの目撃情報があったかなんとかでロドスの代わりに引き受けた任務の中、
そこまでは良かった。
「親指か…。貴様からはロドスと聞いたが?」
「こいつらもロドスに協力しているんだ、ロドスと変わらないさ。」
フロストノヴァ…西北凍原の悪夢、スノーデビル小隊、そのリーダー。
辺り一帯を凍てつかせ、その冷気は刃物で刺されていると錯覚するほど。メフィストの作り出したであろう悪趣味なオブジェどころか、燃えるビルすらも凍らせるアーツは、自分のちっぽけなアーツとは比べ物にならない。
そのちっぽけなアーツで仕留めようと、銃剣を浮かせようとするが体が重い。浮かしたとしても、寒さで狙いが上手く定まらず、使い物にならない。
「グッ…。」
「案ずることはない。…苦しまないように終わらせてやる。」
その言葉に反抗するように、自分と仲間たちは体を動かし、体にまとわりつく霜を払う。
力を振り絞って銃剣を投擲し、アーツを使って三発の推進弾を連続で使用する。
凍りつく世界の中で、唯一赤熱した銃剣が白兎の命を奪おうと迫る。
だが、その渾身の一撃すら、彼女の命には届かなかった。
メフィストの護衛であるレユニオン兵が身を挺し、フロストノヴァを守った。勢いを奪われた銃剣は、フロストノヴァの放つアーツでいとも容易く弾かれる。
「危なかったね、油断できないや。」
「…必要なかった。」
「守られて素直に礼も言えないのかい?まったく、お姫様のお守りは難しいね。」
呑気に会話している二人に何か言うこともできず、次第に瞼が落ちてくる。体の芯まで凍てつかそうとする冷気に抗う力すら残っておらず、もう何もできない。
前のめりに倒れようとした時、他の誰も気が付いていないだろうが、ある匂いがする事に気付いた。
恩人の纏う、濃いシガーの匂いと血香。
(ああ、また、彼に救われてしまう。)
目から溢れた涙は、凍って瞼を完全に閉ざした。
何も見えないのに、不思議と身体に熱が湧いてくることを実感しつつ、私は意識を失った。
復刻1号線、1駅目から10ターン
リンバスエアプか?こいつ…。