【完結】もしもどこぞの都市のカポがアクナイの世界に転生したら   作:しきょーかい

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ちょっとゴタゴタしてるので更新頻度下がります。




第23話

 

 

レイホンの一撃が辺りの冷気を吹き飛ばした後、レイホンは間髪入れずにフロストノヴァを狙った。

敵の指揮官として名が出ているのはメフィストだが、この場でレユニオンの拠り所になっているのはフロストノヴァだ。メフィストと共にファウストがいた場合はその限りではないが、今もなお発射していないところを見るにここにはいないのだろう。

 

「素早いなぁ!虎から(獲物)が逃げられると思っとるんか!?」

 

「随分としつこい、フッ!——寒く、ないのか。」

 

レイホンの攻撃を手に持つ細い杖と短剣で逸らしながら、逸らせない強撃は素早く避けるフロストノヴァ。その間に防寒具を着たフロストノヴァの部下らしき者達が割り込もうとしているが、ドクターに指揮されたオペレーター達がそれを制する。

 

「勿論寒いわ。やけど、強者相手に滾る血ぃ冷やすには足りへんなぁ。」

 

会話しながら弾丸を消費して切りつけようとすると、カチッと音がする。弾切れか。

 

「…お前を凍らせることはできずとも、その剣を使い物にならなくさせるくらいはできる。」

 

「弾ァ尽きとらんのに大きく出たやんけ、まだ俺っちも剣も温まってきたばかりやで!」

 

フロストノヴァへ全力で斬りかかり、地面を叩き割る。その時に弾倉を開き、薬莢を全て取り出す。すぐに虎標弾をベルトからつまみ全弾装填する。

その隙を逃さずフロストノヴァは更に距離を取り、レイホンとフロストノヴァの間に数人のレユニオン兵とフロストノヴァの部下が割り込む。

 

「姐さんに近づけさせるな!」

 

「くそっ、俺達で止められる相手かよ…!」

 

くるりと銃剣を回転させ、下に向けていた銃剣を右肩に構える。

フロストノヴァに向かって駆け出し、それを阻むレユニオン兵達を斬り裂くが、フロストノヴァの部下たちはレイホンの攻撃を逸らし、レイホンの足を止めることに成功した。

 

「おお?やるやんけ。」

 

有象無象の集まりかと思えば、幹部でなくとも技量のある者がいる。楽しくなってきた。

 

「あんだけ大振りだったら逸らせる…だろっ!」

 

「———眠れ、眠れ…ハリネズミの人形と小熊たち…♪」

 

足止めを食らっている間に、何やら子守唄のようなものを歌い始めるフロストノヴァ。彼女の後ろに黒い石が突如生じたかと思うと、それは徐々に大きくなってロドスごとレイホン目掛けて降り注いだ。

 

「氷の結晶…!?」

 

「おっきいなぁ、アーツっちゅうのはこない事もできるんやな…タァッ!」

 

フロストノヴァの部下はそれに乗じてレイホンの下から撤退し、攻撃を受けるのはレイホンとロドスだけになった。

アーミヤの言う通り、こちらへ向かってくる黒色の礫は氷でできていた。

降り注ぐ氷を弾き飛ばしていると、氷が地面についた先から黒く染まっていくのが見えた。更に黒く染まった場所が広がりつつあるのを見るに、侵食も行っているようだ。

天退星刀は無事だったが、何度も弾丸を放ち溜まっていた熱が一瞬にして持っていかれたのが分かる。

 

「ドクター!このままでは…。」

 

「…分かってる。総員、レユニオンを抑えつつ周囲を注視しろ。黒い源石は見つけ次第破壊だ。」

 

「気付かれたか…静かな黒に沈め…♪ げほ、ゴホッ…。」

 

降り注ぐ氷は尽きることなく次々に生み出されて降り注いでいたが、フロストノヴァが咳き込んだことでこれ以上生み出されることはなくなり、残った氷が一斉に降り注いだ。

今まで降り注いでいた氷は推進力と重力を持っていたが、フロストノヴァの制御を離れたのか重力に任せて落ちてくる。

 

(ちったぁ受ける覚悟せんとな。)

 

勢いが減ったとはいえ、それでも両手では数えることのできない量の氷。全て弾き飛ばす事はできないと踏んで(マン)を消し、(シン)の維持と強化に全力を注ぐ。

 

「うおっと…こりゃヤバいか?」

 

砕けた氷の欠片が体にぶつかっただけで急激に体温を持っていかれる。特別な生地で作られたコート、全力の(シン)を挟んでもこれなら肌にかすったらどうなるのか気になる所だが、それを試す余裕はない。

腕が痺れ始め、足の動きが緩慢になってくるが諦めずに剣で氷を弾き飛ばしていく。

 

「くそっ、僕は先に向かうよ。どうやらここに僕がいる必要は無さそうだ。」

 

メフィストの方にも氷を弾き飛ばしていると、メフィストの率いる部隊は撤退していった。フロストノヴァがそれを止めようとしないのは、まだ余裕があるということか。

若干名残ったレユニオン兵がいるのは、メフィストの信頼のなさか。

 

「レイホンさん、もう少し耐えてください!あと少しで…。」

 

後ろを見れば、大量のレユニオン兵を無力化してもなお迫りくるレユニオン兵にロドスが苦戦しているのが分かる。正しく言うと苦戦はしていないが、いかんせん数が多すぎる。

アーミヤが何やら叫んでいるが上手く聞き取れない。聞き返そうとした時、凍りつく世界の中、突然空から轟音が響いてくるのが分かった。

 

「おぉ…?あれ俺っちの…いや、ちっと小さいか。」

 

「空中を移動する機械…?流石にあれは射程外だ、どうする姐さん!」

 

「ケホッ……援軍が来る意味を失くしてしまえば問題な———待て、後ろに下がれ!」

 

空を見上げれば、そこには黒い何かが空を飛んでいるのが分かる。

明らかに鳥ではないそれは、小さな黒い粒を出したかと思うと戦場の上空から飛び去っていく。

飛び出した粒は次第に大きくなり、人の形を取っていく。レイホンの目には頭に生える猫の耳が確認できた。

銃剣を構え、第3の敵に備える。

 

「レイホンさん、それは敵ではありません!その人は———」

 

アーミヤの言う"それ”は地面に激突し、レイホンが粉砕した氷の欠片を撒き散らす。

地面との衝突で地面が陥没し、その中から何事もなかったかのように筒状のものを持って立ち上がる"それ”は口を開いた。

 

「さぁて、レユニオンの皆、こんにちは。早速だけど、邪魔させてもらうよ。」

 

「———ロドスのエリートオペレーター、ブレイズさんです!」

 

ブレイズと呼ばれる者は熱を放ち、周囲の氷を溶かし始めていた。

フロストノヴァへ向かって一歩ずつ進む度、足下の氷が熱されジュウと音を立てる。すぐにその湯気は凍り、霜として積もる。

レイホンはエリートオペレーターをAceしか知らないが、彼は強者だと言えるだろう。そして彼女の纏う闘気と熱気は、間違いなく強者のそれだ。

 

「形勢逆転っちゅうやつか?」

 

よそ見していると思ったのか、剣を片手に襲いかかってくるレユニオン兵を斬り捨てる。

ロドスでも止められない量の重装兵、狙撃手、術師と続いてくるが、どれも素の肉体ではレイホンの一撃を耐えることはできない。

フロストノヴァの部下なら耐えれそうな気もするが、そちらはブレイズが戦闘しているためこちらには来れない。

横目で見る限り高い機動力を用いて、チェーンソーで斬りつけるという何処かレイホンと似た戦い方をしている。

 

その間に再びフロストノヴァとの距離を詰めて攻撃しようとするが、フロストノヴァの様子がおかしい。

 

「凍結……♪〜…ゲホ、ゴホッゴホッ……♪……。」

 

吐血し、白く染まった地面を赤く染めるフロストノヴァは小さな声で何かを呟いていた。

気を失わせればアーツを止めることができる、踏み込んで意識を刈り取る手刀を放とうとすると、片足が何故か地面深くまで刺さる。

足を抜こうとするが、液状化した地面はそう簡単に足を離してくれない。

大体、水が凍っているのなら地面が液状化するはずがない。原因は…

 

「あれか。」

 

「君達、なかなかっ、やるねぇ!」

 

あそこで熱気を振りまく(ブレイズ)だろう。

地面が揺れているのはレユニオンの術師によるアーツだろうか、身動きができない。

辺りの建物も揺れ始める。巨大なビルが柔らかくなった地盤で支えられるはずもなく、このままでは白兎ごと押しつぶされて地面とサンドイッチになる。

 

「姐さん、くそっ、そこをどけ!…姐さん!その位置はマズい!」

 

「埋め込まれた源石、彼女のアーツ…こんなふうに使えるなんて。……ドクター!」

 

ブレイズと交戦しているフロストノヴァの部下たちが叫び、レユニオン兵を押し留めつつ考えていたアーミヤも叫ぶ。

ドクターの方を見れば、自分と同じように足が嵌って動けないのが分かった。

ここにいる3つの組織のリーダー全てが窮地に陥る。正直言って、自分はこの程度では死ぬ気がしないが。

 

「ドクター!誰か、ドクターを助けて!」

 

「…落ち着けアーミヤ。私は大丈夫だ。」

 

「私が気流と真空圧を調整して落下速度を抑制する。安心して、絶対に潰されないから!」

 

(俺っちの方は何もないんか、対応に差がありすぎやろ。……猫が嫌いになりそうやわ。)

 

チッと舌打ちをし、土の中に靴を脱ぎ捨て今も膝をついて吐血するフロストノヴァを抱える。その体はやけに軽く、先程弾き飛ばした黒い氷の何倍も冷たかった。

この状況で助かるための最善は、と考えたのは一瞬で、すぐに裸足でドクターの方へ走る。

今からではどう足掻いてもビルの倒壊する範囲から出られない。それなら、ブレイズが何かしているドクターのところが一番安全だろう。

 

「ドクター!!!」

 

「安心せいや、俺っちが一緒におるからな。」

 

「…じゃあ、フロストノヴァを抱えてくるのはどうしてか聞いてもいいかな?」

 

「こんだけ強いヤツを見殺しにすんのはなぁ…殺すのが依頼やったら見捨てたで?」

 

「……ゴホッ、後悔するぞ。」

 

「死にかけの兎が気まぐれで助かったっちゅうのに、礼より先に上から助言たぁ変なこともあるもんやな。」

 

地面が想像していた数倍緩やかに陥没していき、それを埋めるかのようにビルが倒壊していく。こちらに向かって手を伸ばすアーミヤ、それを抑えるブレイズとその他オペレーター。そして親指の服を着た猫がこちらに何かを投げるのが見えた。

ビルが倒壊し切る前にギリギリ入り込んだそれをキャッチすると、手の中にはレイホンが普段使っているライターよりも質の良さそうなジッポライターがあった。

 

(はっ、そうやったな。ええ猫もおったわ。)

 

そのジッポライターを懐に仕舞い込み、一息つく。

陥没した地面の中からは既に空は見えず、ビルがすぐそこまで迫っている。

 

そうしてこのチェルノボーグ:エリア14にいる親指、ロドス、レユニオンのリーダー三人は生き埋めになった。

 

 





深夜に車運転してくれる友達がいて良かった…。

11/30、誤字訂正。誤字報告ありがとうございます。
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