【完結】もしもどこぞの都市のカポがアクナイの世界に転生したら   作:しきょーかい

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アナウンサー記念
アナウンサー記念なら昨日投稿するべきだったのでは???



第28話

 

 

龍門の下層フロアに向けて駆け出し、後少しで辿り着くという時だった。

レイホンの肌を掠める氷柱、冷気を纏う気持ちの悪い虫、襲いかかる猟犬に、冷気をばら撒くドローン。

辺りは一面銀世界。冷気が体から熱と共に力を奪い、剣を振るたびに飛び散る血と体液が白を別の色で上書きする。

 

「ペトロワ!目の前の相手に気を付けろよ!そいつは…!」

 

「分かってる!」

 

「一応聞いとくわ……投降は、せぇへんやろ?」

 

「俺達の仲間が全員逃げるまで待ってくれるなら考えるぞ!」

 

「そいつぁ無理そうや、押し通らせてもらうで。」

 

遂にスノーデビル小隊と衝突し、弾丸を放ち続けて温まっている朴刀を振るう。

振るえば振るうほど、凍てつく冷気が肌を刺し、感覚が奪われていく。

先に辺りに置かれた装置、壁に埋め込まれた黒色の源石を破壊しようと立ち回ろうとするが、そう簡単に動かさせてはくれない。

 

「体の芯まで凍る前に終わらせんで。俺っちにも立場っちゅうモンがあってな、悪いわ。」

 

「時間を稼げ!元から勝てる相手じゃない!」

 

スノーデビルの術師によって、更に気温が下がる。息をすれば喉が凍ると錯覚するほどの寒さだが、これ程のアーツを使うのだ、向こうにも限界があるだろう。

動きが鈍った隙を逃さず、長い刀での攻撃を弾く。

 

「チィ!」

 

「あ!クソッ!」

 

地面に向かって大きく振り下ろし、寒暖差で脆くなった地面を粉砕する。

何者かの足音が近づいてくるのが分かり、レイホンの耳が拾った音は近衛局のものだと伝えてきた。

複数の重装の人物が近づいてきているのが分かる。既にスノーデビルは詰んでいるのだ。

 

それでも戦うのは、同胞のため、彼らの言う姐さんのためなのだろう。

ここへ辿り着く前に、スノーデビルがスラムの住人を逃がしているのを見た。本来なら親指がやるべき行為であり、彼らはそれの尻拭いをしていた。

元を辿れば彼らのせいだとしても、行為は正しいものだった。

 

崩壊しバラバラになった地面と壁を跳躍し、スノーデビル小隊の生み出した極寒の範囲から抜け出す。

やけに頑丈なドローンへ飛びかかって破壊しつつ、龍門の下層へと向かう。

 

「…次会う時、生きとることを願っとる。」

 

「…はっ!お前がそれを言うのかよ!」

 

嫌味に聞こえたのか、大声で叫びながら氷柱を飛ばしてくるスノーデビルの術師。

(シン)を纏わせた左手で弾き返し、路地に駆け込む。

空いた弾倉に虎標弾を装填する。残った弾丸は装填された虎標弾6発と、ロドス製の猛虎標弾6発、そしてずっと持っていた都市製の猛虎標弾1発。

冷たい路地を抜け、部下たちに連絡を取ろうとすると通信機がイカれていた。

 

 

———

 

 

風景が柱と、それで構成される空間に変化していく頃、上層から音が消える。

走り続ければ、上から水がたれてくるのが分かった。それは雪解け水だったのかもしれないし、それとも彼らの血だったのかもしれない。

 

 

目的地に着いた。

 

 

 

「ふぅ…俺っちが一番のりやな?」

 

「…残念な事に、ここに来たやつとしては二番目だ。」

 

柱にもたれかかり、口の端から血を垂らすフロストノヴァ。

彼女は白色のコートで血を拭うと、ゆっくりと立ち上がる。

バサリと、コートが揺れる。赤と白のコートがはためく。

温度差が生まれ、風が吹き、揺れた。

 

「私の兄弟姉妹とロドスは、戦ったか?」

 

「いんや、俺っちも最後まで見とらんから分からんけど…戦っとらんやろ。」

 

「奴らは甘いからな。」

 

「せやな。」

 

懐に手を伸ばし、シガーを一本取り出す。シガーを入れていた箱が空になり、握り潰して投げ捨てる。

ジッポライターで火を点けようとするが、上手く点かない。

 

「私の兄弟姉妹達は、死んだ。死ねば、もう何も残らない。…何故だ?」

 

「……。」

 

手でシガーの端を覆い、風を遮ることでようやく点いた。フロストノヴァから次第に冷気が漂い始め、空中に黒い塵が浮かび始める。

その殆どがコートに覆われて見えない肌からは、黒色の何かが染み出していた。

 

「何故私はあの場にいられなかった?何故私はこんなにも弱い?何故私は止められなかった?」

 

レイホンに向けてではない独白。

 

「……何故?何故兄弟姉妹たちが一番私を必要とするときに、私は倒れた?」

 

目を閉じて一歩進む。

 

「何故私は、そんな馬鹿者たちの願いすら叶えてやれなかった?」

 

次第に動きが緩慢になる。

 

「何故ウルサスは同胞に対して残忍で、非感染者のウルサス人にもあれだけ冷酷になれる?」

 

足が震え始めた。

 

「何故大地に火を灯すことのできる火種が、このような異国の地で潰えねばならない?」

 

膝をつく、項垂れる。

 

「何故これ以上の罪悪を止めるために起こした戦争で、より多くの意味のない犠牲を生むことしかできない? 」

 

上を向く、目を開いて立ち上がる。

 

「ゴホッ…何故我々は全ての命を捧げたのに、最後には一つの嘘しか残らない?」

 

血を吐いても喋り続ける。

 

「なぜ……何故この大地は、私にもう少し時間を与えてはくれない?」

 

 

 

「何故だと聞いているんだ!答えろ!!!」

 

泣いていた。哭いていた。凪いていた。

その体に燃えたぎる怒りを宿しながら、彼女は極寒の中で涙を流した。

全てに対して疑問を投げかけ、激しく声を上げる。

涙すら凍り、世界が止まる。

 

「ハァ…。」

 

シガーが凍り始め、火が消え始める。煙を吐けば、煙は灰色の結晶へと変わりパラパラと地面に落ちた。

 

「ふふ、ははは…。言う事に欠いて、我々の同胞、私の兄弟姉妹の死は無駄だったと?ああぁ、所詮私達は盤上の駒でしかなかっただろうな。…だが。」

 

声を上げて笑うその顔には、一切の喜びも楽しさも隠れていない。

 

「彼らの想いはここにある。決して、眺めているだけの貴様が軽々しく侮辱していいものではない!」

 

虚空に向かって叫ぶその姿に、驚くほど冷たい怒りを感じる。

 

「憎悪が渦巻く?違うな、これは怒りだ。貴様はどこから来た?憎悪と怒りを混同する貴様は、どのような道を歩んで、何を見てきた?」

 

彼女の周囲に漂う黒い粒が次第に大きくなっていく。

それは礫の形を取り、剣の形を取り…ただ彼女を守るかのように漂うばかりだ。

 

「黙ったな、話す気はないのか?さっきまでの饒舌さはどこへいった?」

 

強靭な意志が宿った目は、今もレイホンではない何かに向けられていた。

ここで斬りかかればいとも容易く仕留めることができるだろう。だがそれよりも、目の前で起こるであろう一つの進化を見届けたいと思う。

 

「私の『寒さ』の中で燻る熱は、私すら焼き尽くすだろう。だが、私はもうその熱を向ける先を知っている。」

 

白色のコートに火が点いた。いや、火のような何かが揺らめいている。

フロストノヴァは目を閉じ、宙へと手を伸ばした。

レイホンにも見えるほど大きい雪の結晶を強く掴み、目を見開いて言い放つ。

 

「貴様は、この醜悪な大地の不純物だ。分かったなら、二度と話しかけるな。」

 

冷気が消え、フロストノヴァに向かって風が吹く。

その姿は殆ど変わっていなかったが、コートが白色の炎のようなもので構成されていることに気が付く。

熱くないのか、涼しい顔をして立っている彼女は死にかけとは思えない程の覇気を放っている。

周囲を見れば柱が乱立していた筈だったが、今の風景は空の下、雪原になっている。

屈んで積もる雪を触ってみれば冷たく、それを空に向かって投げれば、明らかに元々天井だった場所を超えて飛んでいく。

でたらめな力だ。これはアーツではない、都市由来のものだろう。

 

「…すまなかったな。」

 

「別にどうでもええで、いいもん見せてもらったからな。……()るんか?」

 

「直にロドスも来る、それまで待ってもらおう。」

 

幸い湿ったシガーの火はまだ残っている。寒い中、暖かい煙が全身を癒やす。

ねじれではなく、意思を持ってこちらを討とうとする彼女を前にして血が騒ぐのを必死に抑える。

神秘。都市を荒らし回るねじれに匹敵するその力は未知数。

 

レイホンの背後から、複数の足音が聞こえてきた。

ロドスが来てからは名乗れない肩書があることを思い出し、口を開く。

 

「せや、お前の仁義に礼を払って名乗らせてもらうで。———小指の挿翅虎(天退星)、レイホン。全力で戦おう。」

 

「既に私のみだというのに、隊長と名乗るのは滑稽だろうが…。スノーデビル小隊隊長、フロストノヴァ。」

 

アーミヤ、ドクター、ブレイズ、確かグレースロートと言った狙撃手。役は揃った。

すっかり冷え切ってしまった天退星刀を握りしめ、全身に(シン)を纏わせるのだった。

 

 





Answer me, my sinking ship(答えろ、沈みゆく船よ)

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