【完結】もしもどこぞの都市のカポがアクナイの世界に転生したら   作:しきょーかい

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Proelium Fatale

LASCIATE OGNI SPERANZA VOI CH’ENTRATE(この門をくぐる者、一切の希望を捨てよ)




第30話

 

 

ここにいる全員が薄々気付いている。

決着まであと少しだろうと。

威風堂々と歩みを止めることなく近付く一つの災害(フロストノヴァ)、立ち向かうのは兎、鳥、猫、虎、非力な人間。

 

(普通、災害に動物如きが勝てるわけないやろ…でもなぁ。)

 

にやりと笑って、弾丸を装填した愛刀を思い切り地面に叩きつける。

 

「大番狂わせっちゅうのは、いつ見てもおもろいモンやで!」

 

「グレースロート、アーミヤちゃん!私達の援護頼むよ!」

 

彼女の周囲に浮かぶ黒い結晶は消えた。

辺りに広がる白色の炎に気をつけつつ、本体を叩くだけに見えるがそう簡単にいかせてくれる相手ではないのは分かっている。

 

「…アーミヤ、なぜ、泣いている?敵の前で涙を流すなど、あってはならない。」

 

「はっ!さっき俺っちの前で泣いとったやろ!」

 

フロストノヴァがアーミヤを咎める瞬間に駆け出し、正面から斬りかかる。

彼女は左手でクロスさせていた短剣を右手で構え、クルクルと回転させると白い炎を短剣に纏わせた。

出し惜しみをせずに弾丸を消費した天退星刀とぶつかり合い、大きな金属音が響く。

衝撃と運動エネルギーすらも吸収しているのか、ゴムを強く叩いたような違和感のある手応え。

 

「戦っていないのなら敵ではないだろう。アーミヤ、それは許されない。」

 

言い訳にしか聞こえないが、それに対して言い返す余裕もない。

右手で軽々しく振るう炎を纏った短剣が的中すれば、生命エネルギーという名の"熱”を奪われ動けなくなるだろう。

防御に混じる巧みなカウンターを力で無理やり捻じ伏せる。

 

「私を忘れてもらっちゃ困るなぁ!」

 

「…私も。」

 

レイホンとフロストノヴァが剣戟を繰り広げる中、ブレイズとグレースロートが乱入する。

背後から振りかざされたチェーンソーは炎のコートに阻まれる。白い炎はチェーンソーの刃が回転するたびに熱を吸収しているのか、更に大きくなっていく。

前方と後方を塞がれたフロストノヴァに、二本の矢が迫る。

初弾の直ぐ後ろに隠された二撃目。だが、彼女が短杖を矢とレイホンを射線に入れて何かを呟くと、その先から白い線が放たれる。

 

「殺到。」

 

レイホンが屈み、間一髪でその線を避ける。

線に当たった二本の矢は真っ黒に炭化しており、先程の攻撃は冷却ではない事が分かる。

 

「私も…覚悟を決めました。」

 

「…遅かったな。……では、私も…始めるとするとしよう。」

 

ブレイズとレイホンが攻撃するたびに燃え盛るコートの火が、フロストノヴァを包む。

その瞬間に後ろに跳躍し二人は距離を取る。

 

繭のようにも見える白い炎の中から、一人の戦士が歩み出た。

その姿は真っ白な祭服を着たものに変わっているが、手に持った武器には一切の変わりがない。

 

「…Do you recall(覚えているか)?」

 

彼女が歌う。

辺りの気温が再び下がり始め、彼女の服が燃え盛る。

 

We couldn’t wait to become adults(大人になることを楽しみにしていた頃)

 

目を閉じて、何かを訴えるかのように歌いながら一歩、また一歩と近付く。

 

We dreamed(私達は夢を見て)

 

白い炎が短剣に纏わりつき、短剣は白く染まった。

 

We grew(大きくなって)

 

杖は黒い結晶で覆われ、杖の先には小石程度の結晶が浮遊している。

 

And now we are stuck(そして今 行き詰っている)

 

「グッ…!」

 

彼女を中心として、凄まじい程の寒流が渦巻いているのが目で分かった。

巻き上げられた雪が降り、吹雪く中再び接近する。

 

目を開いて短剣で攻撃を逸らした彼女は、「これしかできないのか?」と目で訴えてきたが無視した。

 

「生憎、これくらいしかないもんでなぁ…!」

 

「一人で行っても無駄って分かってるでしょ!」

 

チェーンソーと天退星刀で短剣を挟むように叩く。

衝撃が吸収されるとしても、完全に吸収される訳では無い。この手応えがその証拠だ。

高速で何度も打ち付け、弾丸を消費した一撃を加えた時、短剣が砕けた。

 

「…In a grown-up’s hellish paradise(大人たちのこの地獄のような楽園で)

 

I’m down on my knees, carrying our sins(私は跪き、私達の罪を背負う)

 

刃が割れた短剣を蹴り飛ばし、右足で大きく踏み込んで横に振り抜く。

初めて、この戦闘の中でフロストノヴァが攻撃を回避した。

 

In order to be heard(声が届くように)

 

短杖を持つ手に力を込めているのが分かり、先に手を打つため左手首を切断しようと武器を振り上げる。

 

In order to be heard(声が届くように)

 

それよりも早く杖の先の結晶が輝き、瞬時に体を傾けたレイホンの脇腹を白色の線が貫いた。

 

Must I deliver loud(暴力の音波に言葉を) and clear in sound waves of violence…(乗せなければならないのか)?」

 

「レイホンさん!!」

 

「さっさ撃てや!」

 

体制を崩したが、この程度なら肺に到達もしていない。出血も傷口が凍っているため心配はいらないだろう。

黒色のアーツの弾を放つのをやめようとするアーミヤに声を飛ばし、狙いを左手首から全身に向けて斜めに切り下ろす。

 

Truth is(本当は), ッ、ゴホッ。…I know as long as we live(分かっていた)

 

彼女の纏う祭服は白い炎と同じような性質を持っているのか、弾丸を消費して斬りかかった筈が殴るような形になってしまった。だが、彼女自身に衝撃を吸収する力はないのか、ようやく一撃を入れて吹き飛ばすことに成功した。

 

その隙にブレイズが自らの背後の空気を膨張させたのか、急激に加速する。

 

「…Our ideals dye rivers scarlet(私達の理想は河川を真っ赤に染める)

 

「ううっ…。」

 

「当たれ…!」

 

アーミヤのアーツが連続して放たれ、グレースロートの射撃もフロストノヴァを狙って放たれる。

白いコートは徐々に短くなっていき、周囲の炎の勢いが弱くなっているのを見るに勝利は目前だろう。

 

「まだ倒れんのかぁ!?十分粘った方やろ!!」

 

弾丸を消費し、目前の勝利を更に近づけるべく距離を詰める。

首を飛ばそうと連続して横に振って、振って、振り抜く。残りの弾丸は猛虎標弾1発。

 

「くぅッ……。……Firing shots in the name of justice(正義という名の弾丸を発射し)

 

身に纏う寒流も、衝撃を打ち消す炎のコートも関係ない。

ただその頭を落とさんと振り抜いた天退星刀は、フロストノヴァの頭を揺らす。

 

それでもなお歌い続ける彼女の右手には、いつの間にか黒色の結晶で作られた短剣が握られていた。

それは渦巻く寒流と炎を纏い、彼女に握られている。

 

「…Declaring love(思い出にしか残っていない) we can only reminisce(愛なんかを宣言する)

 

その短剣を、フロストノヴァは整っていない姿勢で思い切り横に振り抜く。

短剣が纏う炎は鞭のように伸び、アーミヤたちまで届いた。

まともに触れてしまったブレイズの体から熱を奪いすり抜けた炎は、後方での援護に集中していたアーミヤとグレースロートの体にも触れ、その体を凍てつかせる。

 

「……As cruelty becomes heroic(残酷さすらが勇敢さに変わる)

 

「東部十剣って言うたやろうが!」

 

唯一、炎の鞭を切り裂き上空へと跳躍していたレイホンだけが無事だった。

だが空中に逃げ場はなく、彼女が「殺到。」と呟いたと思うと目の前が輝き、吹き飛ばされる。

 

I’m on your ark(お前の方舟に乗った) Answer me, my sinking ship(沈む船よ、答えたまえ)

 

「うぅ…あぁ…!!!」

 

倒れたアーミヤが、凍てついた体を動かし、苦しそうに胸を押さえて呻いている。

フロストノヴァに手を伸ばしたが、その手は宙を切って地面に崩れ落ちた。

 

Where’s our tomorrow(私達の明日は何処にある)?」

 

「あああッ!!!合わせろ!」

 

「そっちが合わせろや!」

 

叫びながら立ち上がり、赤熱したチェーンソーを振り回してフロストノヴァへ斬りかかるブレイズと共にフロストノヴァへ攻撃する。

彼女が再び纏った寒流と白い炎の放つ圧力に阻まれ、吹き飛ばされても再び斬りかかる。

 

ダァン!

 

「ラスト一発、まだ勝負は付いとらんがな!」

 

バアッ!

 

寒流の膜が破れ、凍てつく冷気がレイホンを襲う。

猛虎標弾を使い、大きく愛刀を振り下ろせば焼け焦げたコートは凍り、熱されて赤くなり始めていた天退星刀は元通りになってしまったが、これで攻撃を遮るものはなくなった。

しかし、ブレイズとともに冷気をまともに浴びてしまったため、体が思うように動かない。

 

Where does our future go(私達の未来の向かう先は何処にある)?」

 

「グレースロートさん!」

 

「分かってる!連射…!」

 

放たれた6本の矢は、レイホンとブレイズの横を歩くフロストノヴァ目掛けて走るがコートの火に運動力()を奪われ彼女に届かない。

アーミヤの放ったアーツの弾は、彼女が振るう短剣でいとも容易くかき消された。

 

Does our hope have to be sown(私達の希望は誰かの悲しみの上に)…ゴホッ。」

 

「これでもっ!…………*龍門スラング*!」

 

ブレイズが最後の力を振り絞り、チェーンソーを放り投げるが凍てつき動きが鈍った体では届かない。

その間にフロストノヴァはアーミヤとグレースロートの二人を越えて、ドクターの下へ歩き続ける。

 

「……フロストノヴァ。」

 

ドクターは微動だにせず、そこに立っていた。

ポケットに両手を入れ、災害(フロストノヴァ)を前に堂々と胸を張り、彼女の名前を呼ぶ。

その顔に浮かぶ表情はバイザーで覆われていて、レイホンには分からなかった。

前に進まず、後ろに退かず。これから何が起こるのかを理解しているかのように、ただ立っていた。

 

「……upon somebody’s sorrow(植え付けられなければいけないのか)?」

 

彼女が、膝をついた。短剣を握っていた右手は開かれ、地面に落ちるカランという軽い音が響く。

膝をついてもなお、右手はドクターに触れるように伸ばされていた。

 

ガラスに罅が入るように、または錐で氷を割るように。

辺り一面雪原だった風景は、元の柱で構成された空間に戻り熱を取り戻していくのだった。

 

 






         VICTORY      作戦終了(MISSION ACCOMPLISHED)



これを書くために始めたと言っても過言ではない。
何度も何度も聞きました。そして泣いた。
アクナイの周年MVもいいし、全部流れるMiliさんの方もいい。
もう悔いはない。まだ終わらないけど。

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