【完結】もしもどこぞの都市のカポがアクナイの世界に転生したら   作:しきょーかい

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あの刹那の間に鞘走るかよ!?をどうにか言わせたい俺
VS
いやでもそんな黒蓑と馴れ馴れしく話す仲じゃないだろと言う俺
VS
ダークライ

残念ながら2番目の俺が勝ちました。悲しい。


第35話

 

 

二人でしばらく他愛のない話をしていると、一人の近衛局員がこちらに向かって走ってきた。

 

「ホシグマ督…。———。」

 

ホシグマの名前を呼ぼうとして、レイホンの顔を見た瞬間に手で口を塞いだ。ヘルメットにバイザーで覆われた顔に手を当てても、口は塞がらないと思うが。

 

「別に話してもええで、俺っちの気分が良いことに感謝しとけ。」

 

「———ほっ。督察!先程こちら側でチェン隊長を見かけたのですが…あれ?あの督察が怪我を…?相手は…?」

 

安堵の息をつき、大声で話し始める近衛局員。チェンを見かけた報告の後、ホシグマの負った傷が何者の手によるかを聞こうとして、レイホンの方に視線を向けた。

 

「俺っちやないからな。」

 

「…ええ、その言葉が本当であってほしいです。近衛局が、この状況で親指を相手にするというのは少々厳しいものがありますので…。そんな事よりも!チェン隊長を追わなければ……督察?」

 

チェンの後を追おうとしていく近衛局員の肩を、立ち上がったホシグマが掴む。

 

「…まぁ、そこまで急ぐことはないじゃないか。少し話でもしないか?」

 

「そういう事ですか…。あなた達まで公務執行妨害ということで…。」

 

「…そんな言い方はないだろう。」

 

「俺っちはこいつに脅されたんや。——おっと、上客からの呼び出しや、悪いけど行かせてもらうで。」

 

「私は脅してなんか……おい!」

 

「督察は大人しくしてください。…話は聞いてあげますから。」

 

ロドスからの通信に答え、少し移動することになったためこの場を離れる。

部下たちにチェンの追跡は必要なくなった事と推進弾、虎標弾、猛虎標弾を用意するように伝え、龍門に留まっているドクター達と合流するために走った。

 

 

———

 

 

「なんだ、その目は。」

 

「……いんやぁ、見たくない面ァ見せられたから気分悪うなってきたわ。」

 

ケルシーがいることは完全に予想外だったが、ありえない話ではないため自分を抑える。

アーミヤがこちらのしかめっ面とケルシーの堂々とした態度を交互に見て、首を傾げた。

ドクターはなんとなく察しているのか、ケルシーの前に立って互いの視線を遮る。

 

「まぁ、ここは我慢してもらって…。猛虎標弾も製造してる分渡すから…。」

 

「おぉ、さっき使ったけど凄かったで!ありゃ都市じゃ作れんなぁ。」

 

「エンジニア部のオペレーターに言ってあげて、きっと喜ぶと思うよ。……今回呼んだのは 「分かっとる、こっちに近付いてきとるチェルノボーグん事やろ。」 …ああ、その件についてだ。君達(親指)の手も借りたい。」

 

チェルノボーグがウルサスの都市コードを発信しながら龍門に近付いているのは、既に部下から連絡を受けている。

ウルサスの上層部は気付いているのだろうか、戦争をする理由が次の戦争に備えるためという、本末転倒な事態に陥っていることを。

チェルノボーグを止めた場合、国を相手にすることになりかねない。親指がウルサスを相手にした場合、即座に親指は龍門から斬り捨てられるだろう。

だが、関係のない一般企業が止めるなら龍門は関係ない。

 

「ええで、まだ決着(ケジメ)ついとらんしな。」

 

「助かるよ。」

 

「ありがとうございます、レイホンさん。」

 

「……。」

 

(ロドスの臨時オペレーターなら、俺っちらも動けるからな。きっちり決着つけたるわ。)

 

残ったレユニオン幹部のクラウンスレイヤー、メフィスト、パトリオット、そして彼らのリーダー"暴君”タルラ。そのうち二名は今回敵として立ちはだかるか分からないが、問題ない。

 

パトリオット()タルラ()を討つ。そうすればレユニオンとの戦いが一段落するだろう。

 

「あ、レイホンさん。そういえば貴方のところに、レユニオンの幹部がいると聞いたのですが…。」

 

「俺っちは使えるガキを拾っただけやで?まぁ、使いもんになるかどうか怪しいけどな。」

 

ファウストの狙撃は「恐ろしい」の一言だ。その力が親指に入れば最高だったが…撃つことを拒絶している今は使い物にならないと言わざるを得ないだろう。

 

「そうですか……。あのっ、よければロドスに———。」

 

「大丈夫やろ、話してもええで。」

 

「必要ない。今更俺が、ロドスに入る事はできない。」

 

アーミヤが口を開いた時、不思議とそよ風が吹いた。ケルシーとレイホンの二人が眉を顰める。

心当たりのあるレイホンが虚空に話すことを許可すると、何も無いところからフッとファウストが現れた。身に纏っていたボロボロのコートは、くすんだ赤色のコートに変わっている。

首元についた金属板の数は一本。だが、そのコートはソルダートの物ではなかった。

 

「撃てるんか?」

 

「撃てる。」

 

一言問えば、簡潔な答えが返ってくる。

 

「メフィストは生きてんで。」

 

「俺は、あいつを暗闇の中に置き去りにしてしまった。他の誰でもない俺が、助ける。」

 

「他の奴が許さんかったら?」

 

「俺が撃てば道ができる。新しい道を拓くのは…邪魔させない。」

 

「という事やな、どないする?」

 

パン。と手を叩き、アーミヤ達に向かい合う。

メフィストによる被害を受けたのはロドスもだ。親指が許して受け入れたとしても、被害を受けた全てが許すわけではない。

 

「…ドクター、ケルシー先生。」

 

「アーミヤ。私には、君を止めることはできない。」

 

「私はアーミヤの判断に従うよ。」

 

「私は…。」

 

ファウストは比較的良心がある方だったというのは知っている。

メフィストと比べれば殆どの人は良心があると言えるだろう。それでも都市の者と同じくらいだというのが、都市の異常さを際立てる。住民を串刺しにして火を点けるくらい、N社の狂信者達ならやっていそうだ。

だが、このテラではその行為がどれだけおぞましい物として受け取られるかを知っている身としては、メフィストが許される可能性は0に等しいと思う。

 

「…彼の行動は、罰せられるべきです。私も、許すことはできません。」

 

「……。」

 

ファウストの持つクロスボウに力が入り、カチャリと音がなる。

 

「ですが、もしも彼が今までの悪行を償いたいとするのであれば…。」

 

アーミヤの視線がレイホンに、ファウストに向かう。

 

「私は、その行動を止めてはいけないと思います。」

 

「…!」

 

「許すかどうかは、償いが終わった後に決めるものですから。……ですよね、ケルシー先生。

 

「…ありがとう。」

 

礼を言って大きく頭を下げたファウストの顔は見えなかった。だが一つ、二つと地面を濡らした水滴からなんとなく想像がつく。

 

「ほんじゃ、俺っち達は先行かせてもらうわ。直ぐに連れてく奴らの情報を送るさかい、コードネームとか邪魔くさい事は任せるで、ドクター。」

 

今も頭を下げるファウストの頭を上げさせ、無理矢理引っ張っていく。ロドスから受け取った航空機に乗る事ができるのは十何名までだ。序列順に入れていけば間違いはないだろう。

部下たちに連絡を入れ、ソルダートのIIII(クァルト)に特製のコートと都市製の灼熱推進弾を使用する許可と即座に行動するよう指示を出す。

抵抗もせずに大人しく引っ張られるファウストと共に、ロドスが残していった龍門の接舷エリアにあるであろう航空機へと向かっていると、突然ファウストが声を発した。

 

「…お前は、メフィスト(あいつ)を許すのか?」

 

「はっ、カポん制服着てもI(プリモ)や、序列には気ぃつけや。」

 

気安く話すその行為を咎めるが、今ここで下顎を砕くわけにはいかない。こんな大通りで出血沙汰を起こすことが出来るような土地に行きたいものだ。

 

「俺っちの居た所やったら、お前の連れがやった事と近い事が割と日常茶飯事やで?せやさかい、今更気にならへんわ。…ま、慣れっちゅうやつやな。」

 

「それは…。……すまない。」

 

「俺っちがする側やったからな、勘違いすんなや。」

 

「……。」

 

絶句するファウストの手を離すことなく、最短距離で向かう。

到着すれば、そこには都市から共にやってきた親指13名が装備を一新して敬礼していた。

 

「一度ロドスと合流、その後は全員でケリつけに行くで。」

 

「「「はっ。」」」

 

「白けた真似晒すなや、終われば次の移動都市に向かうんやからな。気張ってけや!」

 

「「「はっ!」」」

 

威勢のいい返事をする部下たちは道を作り、その間をファウストを引っ張りながら堂々と歩いて航空機の中に入る。

 

「……何も無いな。」

 

「……ちっとばかし飾り付けするべきやったか?」

 

ファウストが言った通り、中には椅子の一つすらない。

そのあまりにも殺風景な内部を見て、流石に溜息をつくのだった。

 

 




特記 第一資料 親指から渡された謎の液体について。
突如として渡された謎の赤色の液体。非常に粘性が高く、燃料としての役割がある。しかし液体を構成する成分は■■の■■と酷似しており、人道的な面からこれらを使用すること、複製することは拒否しなければならない。
また、彼らがどのようにしてこれを手に入れたかについては不明である。

クロージャさん?この修正箇所には何が書かれていたんですか?人道的に拒否とは…?——ロドスエンジニア部オペレーター
いや私に聞かないでよ、一応私ロドスのシステム専門だからね?でも、なんとなく察しがついたよ。親指がもしこれを作ったり、作ってる場所と取引してるのだとしたら…今すぐにロドスは親指と手を切るべきだろうね。——クロージャ



特記 第二資料 親指の要望による装備について。
現在確認できる限り、親指のトップであるレイホン氏からの依頼によって制作した。
精錬溶剤、融合ゲル、上級転化塩、硬化ファイバー基板、プレハブ式炭化水素などの高級な素材を使い、ハガネガニの持つ物理耐性・アーツ耐性を劣化させることなく向上させ、殻を糸状にし生み出した最高級の装備。
なお、製作の途中で使用した焼結核凝晶や重相位鏡像体などの最高級素材、失敗した際の素材に関してはドクターの指揮の下にあるロドスのオペレーターが収集・製作した。

一体何処からあれだけの資金が…。——ロドスエンジニア部オペレーター
良い研究になった。また似たような依頼が来たのなら受けるべきだ、ドクター。——ソーンズ
「私は龍門幣に釣られてしまいました、反省しています」って書かれた看板を首にかけたドクターがいるんだけど…何してるの、あれ。——クロージャ
随分と暇なようだな、クロージャ。仕事に戻れ。——ケルシー

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