【完結】もしもどこぞの都市のカポがアクナイの世界に転生したら   作:しきょーかい

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ただ輝く一等星。
赤はその明るさに怒った。周囲ごと自らを燃やし尽くし、星は輝いた。
橙はその明るさを他の者にも伝えた。その手には届かず、星は輝いた。
黄はその明るい星を眺めていた。それ以外には何もせず、星は輝いた。
緑はその明るい星を欲した。手に入れられない物であり、星は輝いた。
水はその明るさを水面に見た。深く沈むが届く筈がない、星は輝いた。
青はその明るさに究極を見た。制御できるものではない、星は輝いた。
紫はその明るさを妬んだ。劣等星は引き立てるには最適、星は輝いた。

そして、貴方は星を見つけた。



第37話

 

 

ザシュッ!

 

血を吹き出して倒れるレユニオン兵を思い切り蹴飛ばし、戦場に戻れないようにする。

これで雑兵は粗方片付いた。この場に残っているのは親指、やけに統率が整った装備の質が違う重装兵、周囲に瓦礫を浮かして身を守る術師ぐらいだ。

 

「はっ、意外と耐えるやんけ。」

 

「ふっ!…それが、俺の役目だからな!」

 

巨体と装備による質量攻撃。迫りくる盾を避ける寸前に何度も叩いてきたが、弾丸・(シン)(マン)なしでは破壊は厳しそうだ。

 

「やけど…それも終わりやな。」

 

「我々のやることが変わるわけではない!」

 

周囲のビルの上には、複数の人影が見える。

レイホンの目は確かにその中に混じる、黒い兎の姿を認めた。

盾を弾き、圧殺しようと迫る他の重装兵を跳躍して躱す。兜と鎧の隙間を切り裂き、また一人倒れる。

 

着地したレイホンに再び迫ろうとした重装兵の背中に、"それ”は世界の認識をズラすようにして、全てから自分の身を隠蔽して立っていた。

手には一本の剣が握られており、首に添えられたことに気付いた重装兵は動きを止める。

その時初めて、レイホンは彼女を認識した。

その鮮やかな赤紫とも、ピンクとも取れる髪色のオペレーター…確かドクター曰く、アスカロンだったか。

 

「…何者だ。」

 

「名乗る名はない。お前にとって今大切なのは、私がロドスのオペレーターである事だ。」

 

数拍間を空け、白色のフードを被った女性は声を発する。

 

「降伏しろ、悪いようにはしない。」

 

「……ッ!」

 

その言葉に反抗するように、術師の一人が手元からアーツを放つ。

普通の女性であれば致命傷だろうが、自分の感覚ですら気付くことのできなかった女性が只者であるはずがない。抜き身のまま周囲を警戒しつつその様子を眺める。

 

「ぐうッ!」

 

「!!すまない!お前を狙ったわ——— 「もう一度言おう。降伏しろ、悪いようにはしない。」 ……っ。」

 

目を離していないというのに、その動きを見切れなかった。

重装兵の背中に乗っていた女性がふと消えたと思うと、術師の背後に立って首にナイフの刃を当てている。

 

(そういう技術、それともアーツか?めっちゃ強力っちゅうわけでも無さそうやけど、厄介やなぁ。)

 

そして追い打ちをかけるように複数の塊——金属でできた板らしきもの、柄があるので恐らく剣——が降り注ぐ。

土煙が舞うが、新品のコートが汚れそうだったため愛刀を一振りすると掻き消える。

金属の板はゆっくりと持ち上がり、空中へと浮遊していく。

 

板の向こう側には、丁度親指の猫くらいのフェリーンの少女、大きな盾を構えた男性、いつもの黒い兎耳を生やした少女がいた。

Ace、アーミヤは分かるがあと一人が分からない。つまり、彼女が殲滅戦におけるロドスの切り札、噂のエリートオペレーターの一人であるRosmontisだろう。

 

「久しぶりだな、レイホン。」

 

「陽動、撹乱ありがとうございます。レイホンさん。」

 

「久しぶりやな、元気しとったか? 任務やかい、しっかり働かせてもらったわ。」

 

敵がいる中で会話するが、一切邪魔されない。金属板で無理矢理抑えられているわけでもないのに、呆然と立っている術師が目に入った。かなり滑稽だ。

Aceはファウストの狙撃を受けた際に左腕の骨が折れたと聞いていたが、見る限り大丈夫そうなのが気になる。

そして彼らが来たということは…向こうの大将も直にやってくるだろう。

 

ズシン、ズシンと大地を揺らす彼は、チェルノボーグの整備されていた道路を割って進む。

片手には巨大な戦槍、もう片手には彼の象徴となる巨大な盾。

レユニオンの幹部、西北凍原の遊撃隊隊長、感染者の盾、『元』ウルサスの英雄……調べれば調べるほど、彼についての情報が出てくる。

 

「我が、部隊の兵を…こうも、容易く破るとは、な。」

 

「ようやっとお出ましかい、待っとったで。」

 

天退星刀を振り上げ、振り下ろすと同時に全弾を発射する。四つの空の薬莢が飛び出し、空いた弾倉に猛虎標弾を装填する。

ロドスの他のオペレーターがレユニオン兵を拘束していく中、堂々と進軍するその姿は巨大だった。

 

「龍門に、いたらしい、な。…お前と、黒兎から、私の娘の、死の匂いが、する。」

 

「白ウサギの嬢ちゃん、フロストノヴァがアンタん娘やったら(たたこ)ぉたな。」

 

「そう、か。———……ぬぅん!!」

 

「クッ、そう甘くはないか。」

 

彼が戦槍の石突で地面を一度叩けば、そこを中心に地面が陥没し、辺りの建物が揺れる。

その一瞬の間にアスカロンが背後に回り、異様な気を纏って攻撃したが、その巨体に見合わない速度で盾が横に振られる。

上手く致命傷は避けたようだが、吹き飛んだ彼女の左腕は真っ赤に染まっていた。

 

それ()は、彼女自身が、選んだ道。それが、どこに続くと、しても。故に、これは、報復では、ない。」

 

「パトリオットさん!ですが、彼女は彼を、私達を———」

 

「黙れ。」

 

その言葉には、静かな怒りが込められていることに彼は気付いているのだろうか。それとも気付いてもなお、目を逸らし続けているのだろうか。

グググ…と鎧の如き巨体と、本物の鎧が軋み音を上げる。

 

「フロストノヴァさんはアーツも、自分の命までも、全てを投げ出してまで……理想を証明しようとしたんです!彼女の命には価値があるんです!」

 

(…黙らせるべきやったな。)

 

アーミヤが叫び返す。だが、それは悪手だろう。

あの憎たらしい猫(ケルシー)がいれば、彼女が発言する前に止めることができたかもしれない。

明らかに自分と同じタイプの人間である彼に、その言葉は火に油を注ぐようなものだと一瞬で理解した。

一瞬だけ心を通わせた程度の仲間()の親の前で、知った風な口をきけばどうなるかぐらいはレイホンにも分かる。

 

「君に、何が、わかる?娘が、重症でなければ、簡単に殺せた。等しく、狂いなく、命を刈り取った。」

 

「彼女は———!」

 

「諸君と、娘の間に、何があったのか、興味はない。どうでも、いい。何の証明にも、ならない。」

 

アーミヤの声を完全に拒絶する。

そうしてしまえば、頑固な彼は梃子程度では絶対に動かないだろう。そして、彼が行おうとすることも分かる。

 

「ただ、諸君らを、殺す。」

 

彼が断言すれば、もう戦闘は回避できないものとなった。

生ける伝説と戦えるこの幸運を噛みしめ、不思議と口角が上がっていく。アーミヤの悲痛な表情?Aceの覚悟を決めた目?Rosmontisの理解できない者への拒絶?全て彼には関係ないだろう。

目の前の頑固者(パトリオット)は、"戦い”で決めてきたのだ。

 

「彼女が諦めて、いなかったので、あれば、諸君を取り逃がす、はずはない。」

 

成程、確かに彼女は諦めたのかもしれない。最後、レイホンに短剣を託した時でもドクターの頭を破壊する程度は可能だったはずだ。

どこか達観していたのか、悟りを開いていた彼女は殺さなかった。手加減無しなら確実に皆死んでいた。

突然、パトリオットがアーミヤからこちらに注意を向ける。

 

挿翅虎(天退星)、よ。」

 

「…何処で聞いたんや?」

 

「娘の、通信、から。」

 

「どいつもこいつも、盗み聞きが好きやなぁ。礼儀もなっとらん奴多すぎやわ。」

 

彼のたどたどしい発言でも、確かに聞き取れた4文字。左手で頭をガシガシと掻き、はぁ。と溜息をつく。

この場に意味の分かる者はいないだろうが、詮索されるとなると面倒なことになる。

 

「貴様なら、分かる、だろう。私は、生きている、全ての、感染者のため、最後まで、戦う。」

 

「せやな。」

 

「敗北は、許されていない。レユニオンは、全ての感染者を、解放しなければ、ならない。」

 

「…要するになぁ。」

 

全弾装填済みの天退星刀の切っ先を、パトリオットに向ける。

この場にある全ての視線が、レイホンに集まるのが分かった。

 

()ろうっちゅう事やろ、長々しく語る必要はあったんか?」

 

「レイホンさん、待ってください!まだ私は—— 「その通り、だ。」 ——っ!?」

 

アーミヤの声を遮り、パトリオットが肯定すると部下たちがグリップを引く音が聞こえた。

一部のレユニオン兵はパトリオットの肯定を聞くと拘束を破り、その目には敵意を滲ませてこちらを睨みつける。

 

「勝ったら正しく、負けたら間違い。はっ、どうやら結構気が合いそうやな?」

 

最も確実で、最も簡単で、最も純粋で原始的な行為。

ただ自分が相手よりも強いと証明するだけで終わる。

それに慣れきったパトリオットも、レイホンも、ロドスの掲げる意義にはさして興味はない。

 

「私は、目に見えるもの、しか、信じない。故に———私は、進軍する。」

 

「戦闘開始の準備せいや、他ん重装兵が動く前にな。」

 

「でも!彼女の言葉を、彼に伝えなくては!!」

 

再び石突で地面を叩く。一歩、また一歩と進み続ける姿はまるで要塞。

部下とアーミヤたちロドスに指示・忠告をするが彼女は叫び、回避できない戦いを回避しようとする。

 

「アーミヤ、お前の優しさは、いつか必ずこの大地を照らす光になる。だが…優しさで全て解決できるほど、この大地は…彼は優しくない。」

 

「Aceさん…。しかし…。」

 

「勝ったらええ。目に見えるモンを信じんなら、勝って正しさを証明したらええ。」

 

(自分自身の死を以て、証明するタイプの奴っぽいけどな。余計な事は言わんくてええやろ。)

 

全身に力を込めれば、薄っすらと光が纏わりつく。

自分の"星”の名を呼んだのだ。呼ばずとも全力を振るうべき相手ではあるが、その"星”を知っているかどうかでまず格が違う。

 

「もう一度名乗っておこう。親指のカポIIII(クァルト)、東部十剣が一人、レイホン。全力で戦おう。」

 

「…感染者の、『盾』パトリオット(愛国者)…いや、ボジョカスティ(・・・・・・・)。私は、進軍する!」

 

戦闘(戦争)の火蓋は、強肩から放たれる高速の投擲と愛刀の激突で切られた。

 

 





ちなみにこの作品で救いがないのがこの愛国者です。
逆に救いがあるやつ?まぁファウストは生きてるし救いだろ(善意)
ちなみに救いがないのはレイホンのせいです、おじさんのせいで士爵とドクターいない…

じゃあ二人は今何処に向かってるんでしょうね?
あ、ファウストさんが迷彩兵と感動の再会だ。タルラ(黒蛇)ちゃん見ってる〜!?
今から迷彩狙撃兵ロドス側に…ん?メフィストは?

あれ?
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