【完結】もしもどこぞの都市のカポがアクナイの世界に転生したら   作:しきょーかい

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本日2度目の投稿

ルイナは自分でやるのもいいけど人がやるの見ても面白い。
3コストでデッキ作るのキチガイ過ぎて好き、最初はそれが強いけどね。
感情レベル上昇で光全回復するし3ターン目くらいまでだったら神ゲー、なおその後。




第40話

 

 

 

『……もう一度だ。ケルシーは私の指示下に入るかい?』

 

『必要ない。』

 

『だろうね。ウルピスフォリア、ヴィジェル、ソーンズ。再びだが、周囲の化物を片付けるとしよう。リスカム、サンタラ、エンテレケイアは下がって待機。様子を見て不味そうだったら個人の判断で動いていい。』

 

『『『了解。』』』

 

「こいつらはね、初めから野末の露と消えるつもりさ。」

 

肉の塊から、声が響く。

その声に従うように蘇った巨人たちが咆哮し、最初の歌を聞いて死亡したオペレーターの死体は龍門で見た寄生兵よりも悍ましい姿となって動き出す。

 

『ファウスト、君は。』

 

「人であることを辞めても、戦場に立っているんだよ。」

 

何時も、何処か遠くを眺めているかのように、他人事のように呟いていた。

今は違う、自分のこととして受け止めて(イーノ)は話している。

 

「その慨然とした心意気は———ははははは、悲しいじゃないか、勇ましいじゃないか。」

 

笑った。笑ったはずなのにその言葉には悲しみが滲んでいる。

既に千切れた翼は再生し、炎の巨人相手にオペレーター達は苦戦している。矢を番え、その大きな目玉を撃ち抜けば巨人は破裂し、ドス黒い液体を撒き散らして死んだ。

ドクターの指揮下のオペレーター、部下の迷彩兵も目玉を集中的に狙う。

 

「だけどね、僕はそれすらないんだ。」

 

肉の翼が羽ばたけば、瓦礫で削れて生まれた傷口から血が吹き出す。直ぐに傷口は塞がったが、噴き出した血は気化し、ドス黒い液体が再び巨人の形を取り戻す。

 

「ただ自分の為に、歌いたいという願いのためにこいつらを利用する。」

 

復活した巨人が起爆矢で再びグチャグチャになる。

粉末を浴びれば元通りに復活する。

 

「僕だけじゃあない、僕以外の人生も賭けて、僕は今羽ばたこうとしている。」

 

無数の腕が、更に一回り大きくなる。

それに伴って巨大化した翼の羽ばたきは暴風を生み出し、黒色の粉末と気化した液体が辺りに撒き散らされた。

 

「僕が飛び立てば、彼らの行動にも…今までの僕にも意味があったと思える筈なんだ。」

 

その声は小鳥が囀るような美しさがあり、それでいて今にも力尽きるようなか細さを兼ね備えていた。

そして、"ソレ(イーノ)”は唄う。

 

「退いてくれ、サーシャ。僕は君を殺したくはない。」

 

俺に対して、訴えながら。

 

『——ファウスト。君がやりたいようにやれ。』

 

「…了解。」

 

再び矢を番えた。

撃った矢は一寸の狂いなく翼を千切り、イーノがこちらに近付く(羽ばたく)速度を減少させている。

 

再び矢を番えた。

 

再び矢を番えた。

 

再び矢を番えた。

 

再び矢を番えた。

 

再び矢を番えた。

 

再び矢を番えた。

 

再び矢を番えた。

 

———心が痛んだ。

 

 

 

 

———

 

 

 

 

 

「君は!どこまで邪魔をするんだ!」

 

「僕は許されなくたっていい、初めて、言葉(願い)を行動に移せる力を手に入れたんだ!」

 

「僕の、僕の邪魔をしないでくれ!」

 

大きく叫び、傷口からドス黒い血を撒き散らしながら飛翔しようとするイーノに狙いを定める。

 

ドパンッ!

 

翼の付け根を撃ち抜き、千切れた翼はビチビチと暴れまわると溶けて消える。

千切れた翼は根元から再生を始め、小さな翼が出来上がる。

溶けた翼や傷口から漏れ出した液体は気化し、それに触れた死体が再び動き出し始める。

だが、その全てが自分に効果を発揮しない。

 

「…何度でも立ちはだかるよ。それが、俺にできる事だから。」

 

お前が自分から気付くまで。

 

「兄弟として、親友として…俺はお前を止めるんだ。」

 

この大地(クズ共)に奪われた優しさを、取り戻すその時まで。

俺がお前を導いてみせる。

アリーナ姉さんでも、エレーナ姉さんでも出来ない。これは俺がやるべき事だから。

 

「……親友なら、願いを叶えさせてくれよ。」

 

「……。」

 

悲痛に呟くイーノが羽ばたくのをやめた。

粉塵も止まり、動き出した死体もそれに呼応するかのように停止する。

 

僕が、君を殺せるわけないんだから…。

 

羽ばたくために使っていた翼を、自らを包むように使う。

目の前には分厚い肉の繭があった。

 

僕より先に諦めても、僕を捨てても、僕と喧嘩しても。

 

その中から、声が聞こえる。

肉に囲まれたイーノの声が聞こえるはずがない。これは幻聴であるはずだ。

だけど、何故か幻聴には思えなかった。

 

僕の隣に立つのは、君以外にいるわけがないんだからさ……。

 

「…ッ!」

 

彼の泣き声が聞こえた瞬間、体が即座に矢を放っていた。

しかし、光の輪っかは生まれず、発射された矢は先程までと同じように肉の翼を貫くことなく弾かれる。

凄まじい程の倦怠感。

気を緩めれば今にも崩れ落ちそうだ。

 

「僕は、君と一緒にいたいよ。君がいれば、他はなんにも要らないんだよ。」

 

小さな声は、今や普通に聞こえるほどにまで大きくなっていた。

肉の繭と炎の巨人を前に攻めあぐねるドクター達を見る限り、この声は自分にだけ届いているようだ。

身に纏っていた光は薄れていき、消えた。

 

「幸せじゃなくても、君と一緒に立つ時だけは、胸を張って生きられるんだ。」

 

その言葉が別れる前の言葉に聞こえて。

 

「でも、僕は罪を犯しすぎたんだ。背負いすぎたんだ。」

 

コートの内側にしまい込んだ氷の短剣が、刺すように体を痛めつける。

また、諦める気か?と問いかけるように。

 

ちっぽけな存在()如きが、許されて良いはずがないんだよ。」

 

「もう、何もかもが嫌なんだよ。」

 

肉の翼が、更にもう一対増える。

羽ばたくことをやめ、ただ肉の壁を纏って拒絶した。

 

「……ドクター。」

 

「どうした、ファウスト。」

 

「俺に任せると、命令してくれ。」

 

「…もう、君に命令は必要ないだろ?———君が思うままに動いていい。」

 

「…恩に着る。」

 

クロスボウに、黒い氷の短剣を番える。

『撃ち放てば、君だけの道ができる。』声はそう言った。

だが、自分が動いた(撃った)せいで傷付くものが増えることにも、自分が動かない(撃たない)せいで傷付くものが増えることにも耐えられなかった自分は逆らった。

今は違う。

 

救うために撃ち放とう。

それが今、やるべきことであるから。

再び全身を薄い光が覆い始める。自分の体に纏う必要はない。引き金を引く行為に力はいらない。

 

「イーノ、お前は…。」

 

身体に纏う光は消え、短剣に一つの光の輪が生まれる。

引き金を引いた。

 

音を置き去りにして飛ぶ短剣は、肉の繭に穴を開けた。再生しようとする肉は凍り、丁度一人が繭の中に入れる程度の道ができる。

力が抜けていく体に喝を入れ、イーノの下へと続く道を走り始めた。

 

 

===

 

 

「…もう、何もかもが嫌なんだよ。」

 

『大丈夫。貴方は彼らと違って、罪に自我を飲み込まれていないから。』

 

ああ、目の前が暗くなる。自分の体の一部だと言うのに、言うことを聞いてくれない。

ゆっくりと閉じていく翼は、まるで僕という雛を守る親鳥のようだった。それを自分自身で再現している?お飯事など、誰も望んじゃいない。勝手に動く、それだけ。

 

『次に目が覚めた頃には、大空を自由に飛ぶ美しい体を手に入れているわ。』

 

「…美しい物からは、美しい物が生まれる。そう言ったよね。」

 

『ええ、貴方の歌を聞けば、皆美しく生まれ変わることができるでしょうね。』

 

「化物になってまで、永遠に戦うことを望んだ彼らが、美しいと本当に思っているの?」

 

『……。』

 

「罪に支配されて、ただ周りを襲う彼らが…僕の歌で生まれたんだ。」

 

『それは…。』

 

「美しい物から美しい物が生まれるなら、彼らを生んだ僕の歌も彼らと似たような物だろうね。」

 

自嘲するように吐き捨てる。いつの間にか声は沈黙していた。

ロドスのウサギなら、黙ることはしない。ただ正しい事を大声で叫び続けるだろう。

 

「黙れよ。僕の事、何も分かってないくせに。」

 

大空を飛ぶ?それは副産物に過ぎない。

小鳥がさえずるような美しい声を、エレーナ姉さんが歌うように優しく届けたい。それを表すのに"鳥”の姿が最適だっただけだ。

 

歌いたい。ただ歌いたい。

殴られようと蹴られようと刺されようと斬られようと火をつけられようと歌いたい。

そう願った。それ以外の全てを捨て去るつもりでいた。

でも、(サーシャ)だけは捨てられないだろう。彼を捨ててしまえば、僕は僕でなくなってしまい、歌うという言葉(願い)すらも偽のものへと成り下がってしまう。

そうなれば、今までの罪と勝手に背負った同胞の命は何処に行くのだろう。

 

『…中々、上手くはいかないものね。』

 

?これは、なんだ?

光が射し込む。あの分厚い肉に穴を開けたというのか?

だけど無意味だ、自分の意志に関わらず、肉は再生を始め———ない。よく見ると傷口が凍り、再生を妨げている。

 

何をぶつけたんだ?と思えば、自分の胸に空いた穴に一本の短剣が吸い込まれているのが見えた。完全に飲み込まれる前に引き抜く。

痛みはなく、何処に繋がっているかも分からない穴から引き抜いた短剣の刃は捻れていた。

凍らせたのはこの短剣の能力だろう。ひんやりと冷たいのに何故か温かみを感じる。

捨てることが惜しく、躊躇している自分に向けて嘲る。

 

自分のことを傷つけようとした武器すら捨てられない自分が、親友を置いていけるはずがなかった。

傷口が凍ったと言っても、既に溶け始め再生を始めている。

再び暗闇に包まれ、どうでもいい世界に別れを告げようと思ったその時、傷口から僕の下へ駆ける影が見えた。

 

「イーノ。俺はまだ、聞けていない。」

 

「……はは、君は僕を、死なせてくれないんだね。」

 

肉の塊を纏い、肉の翼で繭を作り。

徹底的に顔を合わせないようにしていた相手がそこにいた。

 

「今のお前に聞きたいんだ。」

 

「…うん、なんだい。」

 

服装が変わったとしても、その顔を見れば覚悟が鈍るから。

その程度の覚悟だったって笑うやつもいるだろうけど、僕にとっては何よりも大切なんだ。

心の"殻”を壊されて、素の姿で向かい合えば僕が折れるのは分かっている。

 

「お前は、どうしたい?」

 

「……僕は。」

 

全身から力が抜けていく。全能感を覚えるほどの力が光となって消える。

翼は腕に、腕は血に、血は粉塵に、粉塵は光に。

喉と胸に空いた穴は何時の間にか塞がっていて、何もなかったかのように元に戻る。もうあの声は出せないだろう。

 

「君と一緒に、生きていたいよ……っ。」

 

「…それが聞けてよかった。」

 

 

===

 

 

ファウストが放った一撃は肉の翼を貫通し、再生を妨げるように傷口を凍結させた。

彼は何も言わずに傷口に向かって走っていき、それに続こうとしたオペレーター達を止めるのに苦労していると、あの巨大な肉の塊が光の粒子になって消えていこうとしていた。

肉の中心にいるであろうファウストの安全を確認するため、ケルシーやソーンズ、リスカムと共に注意しながら近づく。

 

「ファウスト……?」

 

光で輝く中で、周囲のオペレーターは見えなかっただろうが、バイザーをつけている私には確認できた。

 

「…作戦終了。皆、お疲れ様。」

 

互いに寄りかかって眠る二人の子供は、私達が起こすべきではないだろうから。

崩壊した天井からは、雪が降り始めていた。

これから彼らが背負う重荷()は、彼らが自ら下ろすことはできないのだろう。

私も彼のした事を許すことはできない。当事者は尚更だ。

それでも、彼らがいつか許される日を夢見ることぐらいは許されるだろうか。

 

「君は今、これを見て何を思っているんだろうね……フロストノヴァ。」

 

我々は、命の定めに怯まず「何かを作り出す」超脱、飛翔を行う。

そうしなければ、なぜ私達は明日へ向かっていくのか、人はなぜ光を求めるのかの答えは得られない。

その点で見れば、メフィストの行った行為は正しいことなのだろう。

 

地面に転がる、刃が捻れた短剣に手を伸ばした。短剣の柄は、彼女の体よりは(ぬる)かった。

 

 

 

 






都市疾病あたりで本番だ!と思ってた人が
都市の星までのチュートリアルって気付くまでのこの間が非常に好き。

多分にやけながら見てる、すんごい面白いんだもん。
ほら!りょ・ミ・パ良秀の人格元!定メールの人格元!奥歯事務所勢の人格元!
元ネタを知った時の驚きも、知った上で見る楽しさも共有できる嬉しさよ…。
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