【完結】もしもどこぞの都市のカポがアクナイの世界に転生したら   作:しきょーかい

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昨日(過去)に追いつかれ、受け入れて(諦めて)楽しむのか
明日(未来)を追いかけ、かき消して(乗り越えて)進むのか

貴方はどちらへ向かいますか?


第43話

 

 

 

ジュゥゥゥ…と排熱している天退星刀を振り回し、レイホン目掛けて突き出され、薙ぎ払われ、圧し潰さんと迫る槍や盾の猛攻を凌ぐ。

しかし弾丸が切れた今、一切威力も速度も落ちないボジョカスティの攻撃を防ぎ続けることは出来ない。

 

「獲った、ぞ。」

 

結晶の槍が、レイホンの体に衝突する。

肉が抉られることを覚悟したが、どうやらこのコートの材料になった物は相当丈夫だったらしい。それでも未だに全力の(シン)越しに肋骨を折り、後ろへと吹き飛ぶ。

 

「随分と、丈夫なものだ。貴様も、その装備も。」

 

「……チッ。」

 

このまま一対一で戦えば敗北は必至だ。

今も何処からか狙撃やアーツによる攻撃が彼のもとに向かうが、彼が防ぐまでもなく攻撃は弾かれる。

漆黒の鎧には傷一つなく、今の所鎧が傷ついたのは最後の一撃のみだ。

 

「貴様はよくやった、レイホン。全盛の私に、匹敵する今、前に立ち、ここまで持ちこたえた、だけでなく、この私に、傷を負わせた。……忌まわしき、病がなければ、倒れていたかも、しれぬ。」

 

「…何終わったような口利いとんのや、まだ終わっとらんで。」

 

「ただの、独白、だ。今から死ぬ、戦士への、な。」

 

「———前だけを向いていれば、影に潜む私を捉えることは出来まい。」

 

「見えずとも、分かって、いる。」

 

アスカロンが鎧で覆われていない、ボジョカスティの首を断ち切ろうと背後から剣を振り抜く。

先程と同じように盾が振るわれ、再び吹き飛ぶかと思われたが、彼女は空中で体制を変え、盾の上から腕へと乗り移り、そのまま剣を振り抜く。

しかし、その剣は首に食い込むことなく折れた。

 

「運命から逃げれば、戦いをやめれば、今までの、全ては、無意味となる。」

 

「運命か…貴様の口から、そのような言葉が出るとはな。———っ!!!」

 

無防備なアスカロンを、その巨体で吹き飛ばす。

受け身は間に合ったように見えたが、実際どうだったかは分からない。

 

「この身、朽ち果てようとも、目的を果たすまで…止まらぬ。」

 

「……ほんなら、ダラダラ話しとる暇はないやろ。」

 

「貴様に、トドメを刺せば、あとは非力なコータスの娘、のみ。何も、問題は、ない。」

 

一歩。

天退星刀を杖代わりにし、立ち上がる。

一歩。

崩れて垂れてきた前髪を、右手で上げる。

一歩。

地面から朴刀を引き抜き、持つ手に力を込める。

一歩。

互いに振れば、当たる位置に来る。

一歩———。

 

「今だ、アーミヤ!」

 

「はいっ!」

 

針の穴に通せるほど、細く圧縮された黒色のアーツがボジョカスティの頭を貫こうと迫り、結晶の盾に弾かれる。

レイホンも、ボジョカスティも、横槍が入ったことに対して何も言わない。

ただ互いに、全力で振り抜いた(突き出した)

 

ガギィィン!!!

 

打ち合いながらも一歩、また一歩と進み続ける。

それに合わせて下がり続けるのは性に合わない、手首をへし折る気で前に出る。

 

「レイホンさん!あと少し…もう少しだけ耐えてください!」

 

何やらアーミヤが叫んでいるが、それに構う余裕はない。

部下を壁にして弾丸を補給する予定だったが、そもそも部下を呼び、弾丸を補充する余裕がない。

数秒、十数秒、一分。頭と体を死ぬ気で———実際一手間違えれば死ぬ———動かし、攻撃を捌き続ける。

そして、突然影が差した。

 

「そこ退いて!怪我するよ!」

 

「あん猫…!!!」

 

ド ォ ン ! ! !

 

上を見たときには、チェーンソーを振り抜き始めたブレイズがすぐそこまで来ていた。

太陽の光を遮ったのは、自分たちが乗ってきた航空機のようだ。

迫り合いの状態から大きく後ろに跳躍した瞬間、目の前が爆炎に包まれた。

辺り一帯を覆う土煙の中から、レイホンを逃さんと一本の黒い槍が迫る。

 

「無視しないでねっ!!!…と! Rosmontis!援護お願い!」

 

槍は半ばから切断され、レイホンのもとに届くことはない。

その隙に部下の下まで退がる。

 

「弾ぁ渡せ! はよ! 間に合わんなったらお前の責任やぞ!!!」

 

「は、はっ!」

 

懐から慌てて預けた弾丸を取り出そうとする部下を見て、焦れったくなり、引ったくる様に弾丸を奪う。

12発。すぐに弾倉を開き、全弾装填しながらベルトの空いた場所に6発を詰める。

未だに土煙が舞う中で、火花が散る場所に向かうには心許ない数だ。

 

「弾丸投げてもええ、俺っちの弾ぁ切れた思うたら、すぐ渡せ!」

 

部下に叫び、再び火を吹き出せるようになった愛刀を片手に走る。

穴の空いた4本の大剣、空中で軌道を変え撹乱するブレイズに阻まれたボジョカスティは、それでもなお進み続ける。その先が何処なのかは、彼以外の誰にも分からないのだろう。

自分のやるべきことは、任務を達成すること。そしてそれ以上に今やるべき事は、”星”の名を呼んだ彼に敬意を払い、全力でこの場でその足を止める(殺す)こと。

 

「まだ終わっとらんっちゅうたやろ!まだまだ熱くなってけや!!!」

 

「熱さで、音を上げるほど、落ちぶれては、おらぬ!!!」

 

轟々と音を立て炎を吹き出す天退星刀の、黒い槍と幾度目かの衝突。

弾切れを心配する必要はない。猛虎標弾を全部撃ち切ろうとも、この男はここで殺さなければならない。

何度目かの衝突は、レイホンが槍の先を砕いて始まった。

 

 

 

 

 

———

 

 

 

 

 

———どれだけ、経っただろうか。十分?三十分?一時間?

ボジョカスティとの戦闘は、生と死の境界線を常に行ったり来たりするような物だった。それは時間感覚を失わせるのには十分で、今も戦い続けているという事実が、自分が生きていることを教えてくれる。

ブレイズは龍門での傷が完全に癒えていないため、こまめに下がりつつ攻撃していたが盾に吹き飛ばされてから返事がない。死んではいないだろうが、前線を支えるのはレイホンとAceだけになった。

 

槍を砕いたとしても、石突が突然矛先となり体を貫こうとすることがあった。

盾を割った瞬間、飛び散った結晶が地面から急成長し、辺りが剣山になったこともあった。

 

いつの間にか漆黒の鎧は消え、その手に持つ槍と盾は、結晶に覆われていない、ボロボロの鉄の塊になっていた

それでも、今も尚、彼は進み続けている。

 

「はぁ…はぁ…いい加減、くたばって、道を譲れや!!!」

 

「ぐおぉ……まだ、倒れるわけには、いかぬ!!!」

 

弾丸を発射し、始めと比べて遅くなった突き出しを弾く。斬りつける瞬間に弾丸を発射しようとしたが、カチリと、軽い音がした。よりによってこのタイミングで弾切れだ。

 

「弾切れ、か。…終わりだ、レイホン!」

 

「ぐうッ!…一度退け!レイホン!!」

 

「行くんなら前しかないやろ!」

 

振り下ろされる盾を、愛刀で受けて後ろに下がろうとした瞬間、自分の横に何か小さい物が浮いているのが見えた。反射的にそれを掴む。

握った手を開けば、その中には3発の虎標弾があった。すぐに装填する。

振り下ろされる盾を、Aceが下から受け止め、叫ぶ。

 

その言葉に従わず、ガラ空きの胴を、斬り抜けた。

身体から吹き出したものは、黒い結晶ではなく、赤い液体だった。

 

それでも、ボジョカスティは倒れない。

 

横に赤い線が描かれようと、その傷が再生しなくなっていても、彼は進み続けた。

目の前にいる、アーミヤの下に進み続けた。

圧縮された黒い光がアーミヤの手の中で輝き———

 

「どうか…どうか、安らかに……。」

 

「…………。」

 

ボジョカスティの頭を、貫いた。

要塞が、動きを止める。しかし、その体から放たれる威圧感は消えていない。警戒してアーミヤの下に走る。

彼の身体から黒い靄が吹き出し、一瞬その姿が揺らいだような気がした。

すぐに戻り、その光る赤い目は、明滅し…再びはっきりと光を放った。

 

「拒絶された…? ッパトリオットさん! もう十分です! 私達は勝ちました! 貴方は、安らかに———」

 

「私を、侮辱するというのか。私に贈る、(救い)さえも、侮辱するのか。」

 

「そんな事は———!」

 

(…まぁた、余計な事したやろ。)

 

アーミヤの左手が、黒く光ったのを見逃さなかった。

彼女のアーツが何なのかはよく分からないが、ある程度推測は立てられる。そして、やるべきことが変わった。

要塞が再び動き始める。装甲も、槍も、盾も。全て捨て去り、その身一つで討ち果たさんと進む。

一歩。守るものがなくなった無防備な皮膚に銃弾が放たれる。止まらない。

一歩。アーツがその体を破壊しようと衝突した。止まらない。

一歩。Rosmontisの盾が1つ、2つと激突していく。止まらない。

一歩。吹き飛んだはずのブレイズが、焼けたチェーンソーで斬りつける。止まらない。

一歩。Aceが壊れかけの盾を持ち、体当たりする。止まらない。

一歩。アスカロンが煙幕を張り、煙から無数の刃と剣山を生み出す。刃も、剣山も、止まる理由にならない。

一歩。三人のエリートオペレーターが、同時に攻撃する。止まらない。

足以外の傷から、赤い液体が垂れる。それでも足だけは、傷が塞がっていく。

歩き続ける彼の前に立ち塞がる。

 

 

 

一歩。

伸ばされた右腕を斬り飛ばす。弾丸の推進力に任せて斬った腕は、結晶となり砕け散った。

それでも、限界をとうに超えている戦士は進み続ける。

一歩。

左腕が伸ばされる。それよりも早く、敬意を払い、全力で攻撃するために、最後の力を出し切るつもりで力を込めた。

振るうのは弾丸に任せればいい。(シン)を全て(マン)に回す。光の輪が3つ生まれる。

 

一歩。

その頭を吹き飛ばす気で振り抜く。

 

「——見事。」

 

「フンッ!」

 

一瞬だった。

抵抗もなく、それが当然のように誇り高き戦士の頭が吹き飛ぶ。

その頭は虚空で砕け散る。

……未だに立ち続ける、巨躯を残して。

 

いつの間にか、雪が降り始めていた。

 

 

 

===

 

 

 

どんなに我々が力を尽くそうとも、悲劇はなくならない。

むしろ力を振るえば振るうほど、悲劇は、弾圧はより強く襲いかかってくる。

貧困。差別。戦争。犯罪。

彼らが悪い時があった。

彼らは悪くない時があった。

彼らも、我々も悪かった時があった。

それでも考えてしまうのだ。本当に、我々が悪いときはあったのか、と。

 

これらの悲劇は、忌まわしい一つの石によって生まれたものであり、そして"人”として生きてきたからこそ起こった。

富める者がいれば、貧困に苦しむ者がいる。

人は自分より優れたものを忌み嫌い、差別する。

しかし人より上に立つために、力を振るい争うこととなる。

この私のように。

 

しかし彼らは、力を振るえども、殺すことはしない。

道中で悲劇を生み出し、その先に悲劇が待ち受けていようとも、彼らは進み続ける。

その姿は、この大地を照らす希望の光そのもので…。

私達と、何が違うのかと自分に問いかけた。

 

『分かってるでしょ、あなたは進んでいないって。』

 

ああ、そうか。

私は……。

進み続けると言い、同じ場所で足踏みをしていただけだったのだ。

 

雪が舞い、積もり、溶けて、凍る。

氷も溶け、やがて草が生え、花が咲き、全て散る。

再び雪が舞う頃には、月は幾度となく満ち、欠けゆく。

揺蕩う、意識。存在しない知己、記憶を噛みしめる。

気がつくと、失った者達が私の体を包んでいた。

 

「ヘレン、グロワズル……エレーナ。不甲斐ない父で、私が、父で、すまなかった。」

 

しかし、抱きつく三人の体を、力ずくで振り払う。

何もなかったかのように、雪が舞う。

後に残るは(後悔)ばかり、このまま孤独に進み続けよう。

 

きっと、この姿はみすぼらしく見えるのだろう。少なくとも、黒いコータスの少女には見えたのだろう。

誇らしげに胸を張って進む、今の私を、見ろ。

 

『……その先に死が待っているとしても、進むのね。』

 

これからの一歩は足踏みではない。私は、確かに、前へと進んでいた。

 

慰めの幻想で、覚悟を踏み躙る、ので、あれば…!

この身に最期(救い)を贈る、彼の下へ。

一歩。痛み。

一歩。寒さ。

一歩。暗黒。

一歩。…後悔。

止まる必要はない。ただ前へ進む。この程度では、私を止めることなど出来ない。

一歩。

一歩。

一歩。

 

———?

結晶と化した、感覚を失ったはずの肌に、冷たさを感じた。これは、雪…か?

一歩。右腕を伸ばす。おぼろげだった視界が、鮮明になる。右腕は、砕かれた。

一歩。炎を吹き出す刀を持った、彼と"目”が合った。

その体は一切光を放っていない。代わりに、刀の先に3つの光の輪が輝いていた。

 

「——見事。」

 

「フンッ!」

 

一歩———。

 

 

 

人間とは悲劇を憎み、起こさないよう対策をし、何処かでまた悲劇を生み出す。

 

しかし…人間は、一人では生きて行けぬ。

貴様らもそうだ、私が今、力尽きたように。

存在証明。娘は貴様らにそれを託した。私は、託さない。

裏切り者、反逆者、虐殺者、守護者……そして、「パトリオット」。

私は、この名と共に、消える。残ることを、望まない。

 

見ているか、声よ。聞いているか、声よ。

私は、最期まで、進み続けたぞ。

 

 





クリスマスイブですね。
ちょいと早めのクリスマスプレゼントとでも思ってください。
え?図書館の方は…って?
…クリスマスまでに書き終わると良いですね。(積み上がった白紙のレポート)
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