【完結】もしもどこぞの都市のカポがアクナイの世界に転生したら   作:しきょーかい

50 / 83

課題が終わんねぇぜ!
だいたい今までの実験結果をレポート5枚程度に纏めるなんて無理です。


慈愛はもう許される時を過ぎた
Q.同じ様に生きているのに、なぜ共に生きられない?
A.化物が同じものを食べているけど、共に生きたいと思う?


第50話

 

 

既に寸前まで迫っている炎を前に、レイホンが出来ることは少ない。

しかし、タルラに何があったかは知らないが床を融かしていたのか、幸運な事に(・・・・・)少し叩けば下の階へと潜り込めるほど薄くなっている部分を見つけることができた。

すぐに(マン)を纏った拳を地面に向かって振り抜き、下の階が見えたのをこの目で確認すると穴に滑り込む。

炎はその穴にも入り込み、レイホンを焼こうとするが(シン)を纏い、さらにこの丈夫な新調したばかりのコートを越えてレイホンを焼くには至らなかったようだ。

 

(願望シールは…ま、そりゃ消えとるわな)

 

着地し、一度通った道を再び駆けて最上階へ向かう。

たった一度の幸運で願望シールは消えてしまったが、簡易型シールで命が守れたなら万々歳だ。

ねじれの時点で不安定さを感じていたが、ねじれに変貌する時の更に不安定な状態で世に解き放ってしまったらしい。それが良いことか悪いことかは…まだ分からない。

 

 

———

 

 

バァン!

 

中途半端に溶け、開かなくなった扉を蹴破る。

火種が至る所に舞い、突如として炎へと変貌する戦場。

その中で二人の少女が一匹の龍を相手にしている。

何故か攻めあぐねる龍はレイホンの存在を察知した瞬間、先ほどと同じように炎を吐く。

 

『お前は、今、ここで、死ね。』

 

「ボジョカスティの真似かぁ!? 全然似とらんわ! 」

 

レイホンの下まで炎の道が生まれるが、直線的な一撃をまともに受けるほど馬鹿ではない。

龍を中心にして周りを駆ける。

炎に触れた床は火柱を上げ、直撃すればただでは済まない事が分かった。

 

「ハァ、ハァ…無事だったか、レイホン。」

 

「ま、運が良かったわ。これも日頃の行いやろな。」

 

「ふ、笑える冗談が言えるとは、余裕があると見える。」

 

徐々に距離を詰め、異常なほどに硬い龍の鱗を切り裂き、震える巨体に吹き飛ばされるチェンの体を受け止める。

チェンと共にタルラの下へ向かい、再び剣を振るう。

 

「タルラ! コシチェイが、諸悪の根源なのだろう!? お前の仲間を、お前自身を汚し続けたアイツに、やり返さなくて良いのか!?」

 

『彼女を護れなかった私も、感染者の権利を謳い奪い続けてきた私も、死ぬことを知りつつ友を向かわせた私も……コシチェイがこの身を操っていた事実があったとしても、全て等しく(タルラ)だ。』

 

タルラはチェンの叫びに淡々と返しながら、その巨体で反撃する。

自らの血で濡れた鉤爪、自由自在に動かすことの出来る尾、炎を吹き出す大口。

チェンの剣戟は褐色を帯びた飴色の鱗を切り裂いているが、攻撃を回避しつつアーツで攻撃するアーミヤも、(マン)を纏わせた攻撃も有効打を与えられていないのを見るに、あの剣が特別なのだろう。

 

『———私は、怒りの権化となりこの醜悪な大地と共に滅びてみせよう。』

 

一段と火力が上がり、既に立っている場所は限界だ。

天退星刀を振るおうと逸る気持ちを抑え、一度下に戻るという考えがよぎった。

 

『だが、その前に…友を、同胞を殺した…彼らの苦しみを共有することのできない者に、復讐しなければ…私は、死んでも死にきれない。』

 

「…退くっちゅうのは、やっぱちゃうよな。」

 

ガァン!

 

タルラの声を聞いた時、朴刀を納めようとした右腕を止めて、全力で地面に叩きつける。

そうすればどうなるか…ただでさえ限界だった床にヒビが入り、次第に広がっていく。

その速度は早まり続け、3人と龍がいる場所は最上階の一つ下、いや、新しい最上階へと変化する。

 

フロストノヴァ、ボジョカスティ、かの強者達を殺したのは事実であり、否定することはない。

そして、彼らの苦しみを完全に理解できたかと問われればそうでないと返すだろう。

だが、彼女が共にしてきた相手が、戦いの中で託したものがあるだろうと思う。それに気付かない龍は、どうやら怒りと憎しみで盲目になってしまったらしい。

 

「タルラさん、あなたは目を背けています。」

 

炎が壁や階段を融かし、不安定な足場がより一層不安定になる。

高速で尾がレイホンの体を穿とうと迫るが、それを弾く。

アーミヤが話し始めると、タルラの勢いが少し弱まった気がした。

 

「彼らの死を悲しむ事は、確かに大切です。ですが、悲しみ続けるだけでは何も得ず、再び繰り返すでしょう。」

 

『私ほど死を直視し続けた者はいない。エレーナも、ボジョカスティも…私は見た。』

 

「それは傲りです。」

 

タルラの反論に対し、すかさず返す。

アーミヤが先程まで扱っていたアーツの攻撃は止み、チェンも、タルラも、レイホンまでもアーミヤの言葉に耳を傾けている。

 

「貴方がフロストノヴァさんの死を見たのなら、目を背け続ける自分を恥じ、折れた時も希望を仲間に託し、怒りを向ける矛先を振り回すような事はしないでしょう。」

 

『…。』

 

その言葉を聞いたタルラは、蛇のような目を閉じ、薄く開いた。

アーミヤの口は未だ開かれたまま、その目はタルラに向かって真っ直ぐに。

 

「貴方が本当にパトリオットさんの…ボジョカスティの死を見たのなら、この大地の醜悪さだけに目を向けることはせず、残った美しさを失わないよう、一歩ずつ前に進んでいくでしょう。」

 

『お前は何を見た? 何をしてきた? 何故私と同じものを見て、怒りに飲まれない?』

 

「眺めているだけではいけないということを。私が一歩間違えた時、彼らの考えを、誇りを、自らの理想で塗り潰していたかもしれない恐ろしさを学びました。怒りは感染者を救う力になりますが、一方で感染者を殺す力になる事も理解しています。」

 

チロチロと、弱まり始めた炎が肌を焼く。

どこか震えた声で問うタルラが纏う炎は、弱まり始め、何かを燃料にするように再び燃え盛る。

アーミヤの解答は、タルラを揺さぶるには十分だったようだ。

 

「抜刀の技、破るに当たりて即ち破る。」

 

「!? アーミヤ、それは———!」

 

チェンが驚きの声を上げた瞬間。

レイホンが弾丸を放ち高速でアーミヤのカバーに入ったのと、タルラがその体に炎を纏って迫ったのは同時だった。

口がレイホンの体を貪ろうと開かれ、鋭い牙が肌を割く。

そして、天退星刀の一撃が牙を砕いた。

 

メシメシィッ…!

 

『退け!』

 

「退かしてみぃ!」

 

「涙鋒の技、断つに当たりて即ち断つ。」

 

更にもう一発発射し、頭に一撃叩き込む。

歯がへし折れる激痛を堪えながら、揺れる頭でタルラは不安定な足場を駆け、鉤爪でアーミヤの命を奪おうとする。

大きな手を振り下ろし、一匹のコータスの命が散る寸前、一本の赤い線が生まれる。

 

キィィィン!!!

 

『フェイゼ…!』

 

「アーミヤに手は出させん!」

 

「絶影の剣、棄つるに当たりて即ち棄つ。」

 

その一撃はチェンによって阻まれ、赤い線が空中にいくつも生まれたかと思うと、龍の体に大量の傷が走る。

レイホンに阻まれ、チェンに阻まれ、カウントダウンのように言葉を紡ぐアーミヤに向けてタルラが行った最後の行動。

彼女の持つ最大火力、その大口から放たれる大火。

それが放たれてしまえば炎を切れるチェンはまだしも、レイホンとアーミヤは塵も残らないだろう。

 

「ま、何とか出来るんやろ?」

 

「えぇ、勿論。……雲裂の剣、立つるに当たりて則ち立つ!」

 

爆炎が放たれると同時に、アーミヤの手に握られた一本の青黒い剣。

それを横に一薙ぎすると、ビュッという音と共に炎が切り裂かれて消えた。

 

チェンの持つ剣とそっくりな剣を構え、タルラに向き直る。。

 

「私達が、貴方の怒りを受け止めましょう。全てを吐き出した時、それでも全てを焼き尽くすのか…試してやる。」

 

何時ものアーミヤからは想像もできない、底冷えるするような低く抑えられた声が、嫌なほど戦場に響いた。

太陽は直に落ち、月が昇る。

この戦場に最後まで立っているのは龍か、それとも人か。結末はまだ分からない。

ガコンと弾倉を開け、空いた場所に弾丸を詰め込んだ。

 

 





私、最後寂しく終わるやつ大好きなんですよ。
というかなんか中毒性がある。また見に行かないとってなるんですね。
ゼル伝Botwのミファーとか、ペルソナ5Sのテーマとか、ブラソ2のHbエンドとか…。

でも自分にはそんなの書けないというね、自給自足できないや。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。