【完結】もしもどこぞの都市のカポがアクナイの世界に転生したら   作:しきょーかい

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ヴァル夜が始まったので投稿します。
これから俺っちも忙しくなるから投稿頻度落ちるで!


第6話

 

 

「ハッ、ハッ…。」

 

二人の戦いを走り抜け、撤退地点であった場所へと辿り着く。

辺りは火が燃え盛っており、テントは焼けて骨組みが崩れ落ちている。見渡す限りロドスの部隊員は見えない。

皆どこかへ避難したのか、それとも…。

最悪の事態を想像し、それを必死に振り払う。

 

「ビーグル!ハイビス!ラヴァ!応答してくれ!」

 

必死に走っていたため存在を忘れていたインカムを触り、部隊内の通信に繋げ叫ぶ。どうか返事をしてくれ、と必死に願うと、ザザ…というノイズが走り通信に接続される音が聞こえた。

 

『フェンちゃん!私達は大丈夫だけど…ノイルホーンさんたちが…!』

 

ビーグルの声がインカムから伝わる。ロドスに来る前からの付き合いであるその声が伝える「大丈夫」という単語は全身に伝わり、思わず涙が出た。

しかし、撤退拠点であるここで何かが起こったのは事実だ。実際にビーグルが言ったように、行動隊A4のノイルホーンたちにその何かによる被害が出ていることが分かる。

 

『突然、Wって名乗った人がレユニオンの兵を連れて強襲してきて…私を守ろうと行動隊A4の人達が…。』

 

「分かった。そっちは今安全そうか?安全なら今すぐに向かう!」

 

W。恐らく親指の男とやり合ったあの女性だろう。この火の海もあの女性が作り上げたのならば納得がいく。

既にレユニオン兵は撃退しており、拠点の奥は安全であるという事を聞き、通信を切る。置いて来てしまったクルースに「拠点の奥は安全。親指の人達も連れてそこで合流しよう。」と個別で連絡を送る。

 

拠点の奥へと走り出すと、次第に火が収まっていくのが分かる。肌を焼く空気は徐々に冷えていき、熱くなった体はまるで癒やしかのように感じる。火の海を抜け、坂を上がると、建物の残骸がある広場に出た。

大量の支援物資と、小さなテントの下には見知った仲間たちの顔があった。

そのすぐ隣には統一された赤色の服と帽子…親指たちが何人か集まり話し合っている。

親指たちは走るフェンに気が付くと銃剣を構えたが、フェンが羽織る服に書かれた「RHODES ISLAND」という文字に気が付くと再び何かを囲むようにして話し合いを始めた。

 

大きな盾を構えて辺りを見渡す、橙色の髪のペッロー。ビーグルは走るフェンを発見すると、自分も盾を構えたまま走り寄ってくる。

 

「ビーグル!」

 

「フェンちゃん!無事で良かったぁ!」

 

互いの名前を呼び合い、腕を広げて抱きつこうとすると、フェンの後ろから複数の足音が聞こえてきた。

フェンが振り返り、ビーグルが盾を構えて何時でも戦闘に移れるよう準備する。

未だに燃え盛る火の中を駆け抜けてきた相手は、片腕にクルースを抱えた他と格が違う親指の男と3人の親指だった。

 

「クルース言うたか?道案内あんがとな!」

 

「うぅ…レイホンさん、女性を乱暴に扱っちゃいけないんだよ〜…。」

 

フェンとビーグルの前で止まったその男は、抱えたクルースを勢いよく地面に降ろして懐からシガーケースを取り出し、一本のシガーを口に加えた。

ビーグルはその陽気な男に首を傾げ、フェンは男に馴れ馴れしく答えるクルースを見て顔を青ざめさせる。そして初めて、男がレイホンという名前であることを知った。

 

「おい、火ィ。」

 

レイホンがそう言うと、彼に付き従う部下のうち一人が近付き丁寧にシガーへ火を点けた。シガーを炙り、ジジ…というかすかな音を立て、黒い煙が立ち昇るのを確認した部下が一礼して後ろに戻る。まるで一つの儀式のような一連を眺めていたが、礼を言わねば、と思い直して男に近づく。

 

先程の戦いで分かった圧倒的な格の違い。目を合わせる行為すら不敬となる相手に対して、礼を言わないのは更に無礼だろう。下顎を砕かれたとしても、礼を伝えなければフェンの気がすまなかった。

 

「あの…クルースを連れて来てくださり、ありがとうございます!」

 

「そうだよ~!フェンちゃんが私を置いて急に走り出すんだから!隊長なんだからしっかりしてよね〜!」

 

「まぁ、俺っちは目的があってやっとるからな。」

 

目的?突如このチェルノボーグに現れた親指たちに目的があるのだろうか。ロドスはチェルノボーグで眠るドクターの救出、レユニオンは移動都市(チェルノボーグ)の奪取。なら、親指はなぜチェルノボーグに来た?

 

「フェンも、クルースも無事で良かった…!」

 

そう言って涙を流すビーグル。クルースと一緒に三人で抱き合い、全員生きてここにいる事を確かめ合う。フェンは思わず再び涙を流したし、クルースも泣いていた。

抱き合う三人を見て、高級そうなシガーを吸っているレイホンの体が目に入ると、フェンは抱き合うのをやめて思考を巡らせ始める。

 

(この人達が求める物が、このチェルノボーグにある…?)

 

しかし考えたところで答えが出るわけもなく、それよりも一緒にいたであろう行動隊A4と行動予備隊A4が受けた被害が気になる。

ビーグルに被害の状況を聞こうとすると、ドクター救出班による行動隊、行動予備隊全体への緊急通信が入った。

 

『ドクターを救出、レユニオン幹部らしき人物と衝突。行動隊A4は急ぎ援護に回れ。』

 

短く、分かりやすい自分たちの上官(ドーベルマン)からの連絡。

レユニオンとの衝突は想定されていたため、本来なら行動隊A4のメンバーが向かいドクター救出作戦を援護する筈だった。だが、その行動隊のメンバーは…。

 

「ビーグル、行動隊A4と、行動予備隊A4のみんなは…。」

 

「どっちも奇襲を受けて…死亡者はいないけど行動隊の皆さんの傷が特に酷くて…。ハイビスとアンセルさんが今治療してるけど、援護には迎えないと思う…。」

 

フェンを見た時の喜びが消え去り、暗鬱な表情で語るビーグルは罪悪感で押し潰されそうだった。

重装オペレーターであるビーグルは前線で皆を守る盾になる存在だ。特にビーグルはエリートオペレーターであるAceが将来を保証するほどであり、期待に答えられなかったこの状況は非常に苦しいだろう。

 

「ビーグルのせいじゃない。この人たちを助けに行って、その場にいなかった私のせいだ。」

 

「そんな!フェンは…!」

 

予備隊はロドスの上層部から激戦が予想される、ドクター救出班への援護に向かうことは禁止されている。ロドスの未来ある彼らを失うことは許されない、という事だが、今はその優しさが憎い。

ギリ…と奥歯を噛み締め、自分の無力を痛感し、今の自分にできることは…と考える。

 

「何やっとるんやお前ら。」

 

「はっ!規律を軽んじる発言をし、我々に攻撃の意を示した愚か者の処罰を行っていました!」

 

「ちゃんと舌と腕ぇ斬っとけや。」

 

「はっ!」

 

気が付くと、拠点の周りで集まっていた親指達のところにレイホンが移動しており、話をしていた。どうやらレユニオン兵に対する処罰をしていたらしい。

戦意を喪失している彼らに必要以上の行為をする彼らを止めようとした時、ドクター救出作戦を成功させる確率を確実に上昇させるであろうある案を思いついた。

失敗すれば自分は二度と話せなくなるだろうし、最悪死ぬだろう。もし成功したとしても、その後の対応次第では大変な事になる。

でも。

 

(でも、大切なロドスの仲間を失うくらいなら…!)

 

フェンは覚悟を決めて、レイホンに向かって一歩を踏み出した。

 

 




ヴァル夜限定人格のストーリー気になる…。
マルクトちゃん出てたね…10連でハナフダイシュを出した友よ、呪・刻・剣・刺だ。(嫉妬大罪II型)
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