【完結】もしもどこぞの都市のカポがアクナイの世界に転生したら   作:しきょーかい

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復活です。
インフルなんて所詮こんなものですよ…ははは。



凍った階段でこけて左腕で受けたら手首が死にました。
は???



第60話

 

 

朴刀が路地の地面と衝突し、舗装された道が抉られる寸前で無理やり止める。

レイホンを含めそこから微動だにせず、それぞれの動きを注視し、どう動こうと対応できるように構えた。

 

「…ロドスの狐か、どうして止めるんや?」

 

「ミズ・シチリアから招待状を受け取っているだろう?交渉を始める前に、相手に弱みを握らせない手助けをしたんだけど、余計なお世話だったかい?」

 

「…はぁ。」

 

納刀し、咥えたままのシガーを手にとって煙を吐く。

これ以上この場で争えば、ロドスにも連絡が行くだろう。弾丸の補給源がなくなるのは辛い。

そして彼女の言うことはもっともで、これから行われるであろう会合(・・)の相手、その部下を亡き者にしたというのは些か不味いと思ったのが決め手だ。

 

「…ボクを、この程度で止められるとでも!?」

 

カァン!

 

「止められるよ。少なくとも一人ならね。」

 

左手に握るもう一本の直剣。

未だに白く輝く刃が振るわれるよりも速く、ウルピスフォリアの一撃が手首を打ち、直剣の柄を蹴り飛ばす。

鞘に納められたままだったため出血はないだろうが…確実に骨が折れた音がした。

 

「お?俺っち一人やったら勝てるみたいに聞こえたで?」

 

「勝てるね。」

 

「……虎の威を借る狐、何時までも狩られんと思っとったら痛い目見るで。」

 

「狐がコンって鳴いたら、虎は化かされて自らの身体に牙を突き立てるのさ。」

 

「「はっはっは。」」

 

ギャリィン!

 

振り向きざまに朴刀を振るう。

呆気なく逸らされてしまったが剣は抜かれており、水に濡れたような綺麗な刃が姿を表していた。

 

「おや、この事を報告したほうが良いかな?」

 

「殺す気もないお遊びの一撃やで?大目に見てくれや。」

 

「……。」

 

フッと鼻で笑うウルピスフォリアと、武器を失い黙ったままのラップランドを置いて、来た道を戻る。

 

「ひっ…ま、また…。」

 

「おっと、すまんなぁ。後で金は送るかい、許してくれると助かるわ。」

 

ガラガラと、木製の床に瓦礫が転がり音を立てる。

その時、軽い足音が共に聞こえた。

 

「……はぁ…。お前が来る必要ないやろ。」

 

「…どうせボクも会合に出るんだ、そこまで一緒にいてもいいでしょ?」

 

「チッ。」

 

舌打ちをするが、家の住人が怯えるだけで一切動じずに後を追ってくるラップランド。

半ばスパイのようなものを押し付けられたようなものだ。振り向き、そこにいるであろう狐の顔を睨みつけようとしたが、そこには誰もいなかった。

通りに出て、駆けてきたときと同じように誰もいない道の真ん中を歩く。

 

「ねぇねぇ、キミからはアイツらと同じような匂いがするんだけど、やっぱりキミも都市から来たのかな?」

 

「結構臭うんだよ。キミが纏う死臭は特にね!」

 

「その剣、初めて見る形をしてるね。少し触ってみてもいい?」

 

「そのコートも…ボクの攻撃を喰らっても破れない程丈夫だよね。一体何で出来てるんだい?」

 

「…全然反応がないとつまん「静かにせぇ、その下顎砕かれたくないんやったらな」…っ。」

 

随分よく回る口だ。

剣に伸ばされる手を払い、コートをベタベタと触るのをあえて無視していたが、もう十分だろう。

そう思って拳を握り、(シン)を纏うとラップランドは即座に飛び退く。

 

「は、ははっ。急には止めてよね、戦うんだったら、ボクも全力で抗うからさ!」

 

「…はぁ。灰皿代わりにでもしたろか?」

 

騒がしい犬を連れて、一度今後の拠点となる場所へと向かう。

何を言ってもこれは付いてくるだろうし、止められてから殺す気も湧かない。

苛立ちを抑えつつ、止まらない溜息をつきながら歩き続けた。

 

 

 

 

———

 

 

 

 

「へぇ、ここは…。お邪魔するよ。」

 

「……。」

 

遂に拠点となる場所までやって来て、部下達が搬入したばかりのレザーソファーに座るラップランド。

溜息をつく気力すら失くし、隣に座れと言わんばかりにソファーを叩く彼女を無視して手紙を取り出す。

 

「誰でもええわ、ペーパーナイフ貸してや。」

 

「はい、どうぞ。」

 

「……。」

 

「流石のボクも、そこまで嫌な顔されると傷つくかな。」

 

部下が用意するよりも早く、ラップランドが胸ポケットから優雅に取り出す。

その渡し方から滲み出る気品と、ニヤニヤと笑っている顔を見て思わず顔を顰めてしまった。

 

気を取り直して封蝋を切り、中に入っている物を取り出す。

1枚の紙と、薄い金属板。金属板には狼の顔が彫られており、見る角度によって色が変わる。

 

「…午後10時、"案内人"によるエスコート。これ、案内人っちゅうのお前やないやろな?」

 

「うん、ボクだよ。時間になったら案内してあげるから、楽しみにしててね。」

 

「はっ…。案内させてあげとるの間違いやないか?喋れんくても生きるのに問題ないやろ。」

 

見下した相手は闘志を漲らせることなく、道化のように笑いながらソファーに寝転がる。

それでも口は開かなくなった分マシだと言い聞かせ、ラップランドを無視する。

忘れないように部下から受け取った予備の弾丸をベルトに装着し、愛刀に装填した。

 

ガシャン。チャキッ、ガシャン。

 

「…。」

 

ラップランドは、その様子をただ見つめている。

灰色の目に光が宿り、再び鼻歌を歌い始めるのに時間はかからなかった。

 

 

 

 

———

 

 

 

時刻 PM22:00 天候不明 視界:低

シラクーザ ???

 

 

コンコンコン。

 

「入って構いませ「失れ——おっと。」…。」

 

「……。」

 

扉を叩き、返事が帰って来る前に扉を蹴破った"案内人”の足へ手を伸ばす。

寸前で跳躍し、空を切った手は握られ、拳となる。

 

「…。」

 

「…。」

 

(この犬コロ、ほんまに殺したろか…。)

 

自分が礼を払っているというのに、自由気ままに行動するラップランドを睨みつける。

この絶妙な空気になった場を堂々と歩き、椅子に座る大胆さは何処で手に入れたのだろうか。

 

「この会合は3人だけの場ですので、礼を払う必要はありませんよ。」

 

「…おおきにな、そう言ってくれると助かるわ。」

 

(3人?明らかに10人以上おるやろ…。)

 

椅子を引き、座りつつ心の中でそう呟く。

レイホンに注がれる大量の視線。感知できるだけで10人を超えており、レイホンでも感知できない程の力量を持った相手がいないとは言い切れない。冷や汗が背筋をつたう。

 

「時間を無駄にすることなく、互いに有意義なものになる事を願います。」

 

そう言ったミズ・シチリアが続けて放った言葉は———

 

 

 

 

———

 

 

 

 

ドタドタドタドタ。

慌ただしく木製の床を走る音が響く。

 

「やぁやぁ、ボクの代わりに頑張ってるかい?」

 

バァン!と大きな音を立てて開かれた扉は、金具部分が外れて壁から外れた。

扉を壊した犯人は、楽しそうに鼻歌を歌いながら近付いてくる。

 

「もうコイツ殺してもええやろ…。」

 

本音が漏れる。

 

「濃い隈が染み付いてもう取れないんじゃない?寝不足の、万全じゃない状態で戦えば流石に…。」

 

「殺す。後でどうとでも言い訳したるわ。」

 

暢気に歩み寄るラップランドの顔に向かって拳を振るう。避けられた。

追撃にもう一殴り、また避けられた。

書類の山が壊れ、大量の紙が舞い散る。

 

「うわっ!冗談だよ冗談!」

 

攻撃が避けられる度に、ラップランドから果実酒の甘い香りが漂う。

それが苛立ちを加速させるが、自分に落ち着くよう言い聞かせて呼吸を整える。

 

「…何の用や。」

 

「はいこれ、追加の書類5年分。」

 

「……。」

 

「おっと…やっぱり疲れてるんじゃない?カクテルでも作ろうか?」

 

元凶に向かって無言で拳を振るった。書類が舞った。

立てかけている朴刀を持ち、目の前の狼を仕留めようとしたが…書類を壁にされて防がれる。

机の上に置かれた書類の束が立てる、ばさりという音がやけに響いた。

 

 





『貴方達が購入した土地…そこはブルネッロと呼ばれる都市の一部です。』

『ある事件…大粛清が起こってから、ブルネッロは親指という組織が支配するかと思われました。』

『しかし、結果は支配者層の消失。暴力によって支配された都市は突然解き放たれ、一人生き残った支配者層も無秩序を好む狂人で、都市の利益を求める者を全て返り討ちにしてきました。』

『そうです。そこにいるサルッツォの一匹狼(ラップランド)です。』

『人手は足りず、一切仕事をせず…ブルネッロを含め、今ではシラクーザの汚点のようなものです。』

『そこで貴方にお願いなのですが、親指として、責任を持って都市を管理してください。』

『断った場合、今ここでその命と因縁を絶ちます。』

『剣を抜いても構いません。その瞬間、シラクーザという国そのものが貴方の敵に回り、存在を許容せず、シラクーザに存在した証拠を一つ残らず消し去るでしょうから。』

『……えぇ、良い判断です。では、礼に則った管理を頼みますよ。』
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