【完結】もしもどこぞの都市のカポがアクナイの世界に転生したら 作:しきょーかい
詫び狂気じゃないけど投稿です。
2/13誤字訂正。誤字報告ありがとうございます。
詫びでミスってその詫びで…レクイエム?
終わらない机仕事、消えない書類の山を見て気付いた。
「そういう事なんやけど、ツテとか持ってへん?」
『ロドスのこと便利屋だと思ってる?ウルピスフォリアとかそっちに居る筈だけど。』
早速片手でペンを走らせながら、ドクターへと電話をかける。
そしてかけたは良いが、狐の名前が出た時点で望みが薄くなったのを感じた。
「向こうもまだゴタゴタしとるやろ?迷惑かけんのもなぁ、って気遣いやで。」
『レイホン。君、自分と同等か下の相手には遠慮しないでしょ。何かあったの?』
電話先からもガリガリとペンを走らせる音が聞こえる。
奇しくも移動都市のトップが電話をし、互いに書類仕事をしているようだ。
何度も盃を交わしたからか、ドクターからの対応は親しみやすいものになっている。部下に聞かれた場合、銃床で下顎を砕かれてしまうため小声で話す。
「実はかくかくしかじかっちゅうわけや。」
『電話切るよ。』
「おう待ち、話すさかいに切るなや。」
感情の籠もってない、短い言葉で返ってきたため慌てて止める。
何年前かも分からない書類にサインと印を押し、横にどけて新しい書類を山から取り出す。
またペンを走らせながら、事情を説明した。
…
……
………
『…要するに、移動都市の管理について全く分からない上に、人手も足りない。そういう事?』
「せや、戻ってくんのも面倒やろうけど…どうにかできんかなと思うてな。」
『うーん…。あ、ヴィジェル、どうしたの?』
説明を終え、一息ついて再び書類に向き合う。
拠点の中はドタバタと大量の足音が響いており、本来なら咎めるべきなのだろうが…それで失われる時間と人員を考えると見逃す以外の選択肢がない。
電話越しに悩むドクターの声。誰かが割り込んだのか、ドクターが何者かの名前を呼ぶ。
『うん、そうだね、うん、うん…。』
「どないしたん?」
『……レイホン、君が任されたのは都市の管理だっけ?』
「せやな、正直俺っちやなくてもええんちゃうか?」
目の前で生の葡萄を口に放り込み、酸っぱかったのか目を大きく開く犬コロ。
監視なのか分からないが、結局押し付けられたままだ。
コイツが働いていれば…と思いを込めて睨みつけるが、こちらに気付いた彼女は笑って手を振った。
『その仕事、少しはマシになるかも。また後で連絡するよ。』
「…おう、またな。」
ピ、ピピッ、ピッ。
右耳に付けたインカムから、短いビープ音が鳴った。
電話を切り、椅子から立ち上がり、大きく伸びをする。
椅子に掛けていた愛刀を手に取って、部屋を出た。
「何処に行くんだい?まだ書類の山は片付いてないけど。」
「連絡が来たさかいに、ここが誰のシマか叩き込みに行かんとな。」
「ふーん、ボクも着いて行っていい?」
「勝手にせいや、来んなっちゅうても来るんやろ。」
書類仕事よりも、こっちの方が圧倒的に向いている。
返ってくるまでの間は部下たちに仕事を任せ、連絡があった場所へと向かうのだった。
———
日が沈み、月が建物の間から顔を覗かせる頃。
このブルネッロは、昼の間全く人の姿が見当たらない。
しかし、夜は違うというのがここ数日滞在して分かった事の一つ目だ。
街灯が夜の闇を晴らし、民家にも光が灯る。酒場からは薄っすらとアルコールの香りが漂い、道にも少ないとはいえ、人影が見えるのだ。
「…。」
「あ…ぁ…。」
「ひっ…。」
レイホンが姿を表すとこれである。
目上の者に礼儀のなっていない者は処罰される。それなら目上の者がいない場所へ行く。
逃げている姿を確認した時点でアウトなのだが、正直言って処罰が面倒なため放置している。
赤い服を着ているだけで怯えられる。分かったことの二つ目だ。
「お前が、ここ最近噂になってる親指の真似をした奴か?」
「…。」
「はっ、ガタイは良いが…。その武器、身包み全部置いていけ。命だけは取らないからな。」
目を逸らし、家や近くの店に姿を隠す民間人。
その中で、レイホンから逃げずに立ち向かってくる者達がいた。
ある程度整備された武器を持ち、レイホンを親指の真似と呼ぶ男。
実際親指ではないため言い返さないでいると、調子に乗って脅迫してくる。
「あ〜あ、自分と相手の力量も分からない雑魚だったかぁ。」
「お前は…まさか処け———「ホイッ。」 ガハッ!!!」
ブヂィッ!
男が突然現れたラップランドに驚き、何かを言う途中。
数歩で距離を詰め、思い切りその下顎を殴り抜く。
少々強く殴りすぎたのか、男の下顎は砕かれるのではなく、中途半端に千切れかけた状態で止まった。
ガシッと、崩れ落ちる寸前の男の髪を掴む。
「お前らなぁ、薬物はアカンやろ。馬鹿は上手く回ってくれんかい、処理するしかないんや。」
「
「…砕く顎があらへんかい、今回はこれで勘弁したるわ。」
握った手を開くと、そのまま男は前のめりに倒れる。男が手に握っていたナイフが地面に落ち、カラァンと軽い、高い音を鳴らす。
他のマフィアを見ると、男がやられた瞬間逃げ出そうとしたようだが、ラップランドに足止めされて逃げられないようだ。それどころか、足止めを越えて何人かは倒れている。
「くそっ…狙うなら、俺達じゃなくて…アイツの方だろ…!」
「……この都市では、ボクの許可なしに皆自由に振る舞っていい。だからボクも、自由に動くんだ。」
「この、狂人…が。」
一人、また一人と倒れていく。
クロスボウから放たれる矢を弾き、銃弾を躱す身のこなしと攻撃の誘導。そして何より、その身体能力と戦闘技術にはレイホンですら目を剥く物がある。
これで書類仕事さえやってくれたら、問題は言動にしかないというのに。
「ま、お前で最後や。歯ぁ食いしばれや!」
「う、うわあああっ!!!」
結局、刀を抜くことはないまま制圧が完了し、消化不良気味なまま終わる。
帰ってもやることは書類仕事ぐらいしかないため、憂鬱になりながら拠点へと戻るのだった。
———
更に数日後…。
何度か他のファミリーや、謎の勢力を制圧しているとドクターからレイホンの下に、二人の人物が訪れるという連絡があった。
その二人が、レイホンの状況を改善することが出来るという情報もあったため、いつもよりかは気分がいい。
毎度の如く書類にペンを走らせていると
コンコンコン。
とノックが鳴った。
「おう、入れや。」
「失礼する。」
「失礼します。」
レイホンが入室の許可を出すと、同時に声が響き扉が開かれた。
一人は黒色の髪をしたループスで、腰に短銃のような物を下げている。
もう一人はくすんだ金にも見える、灰色の髪をしたループスで、片手に本を持っている。
「ドクターからの指示で参上した。ヴィジェル…いや、コードネームは必要ないだろう。レオントッツォ・ベッローネだ。レオンでいい。よろしく頼む。」
「弟からの勧誘にて参上しました。ラヴィニア・ファルコーネです。どう呼んで頂いても構いません、では、よろしくお願いします。」
椅子から立ち、礼をする二人へと近付く。
少しラヴィニアと名乗った女性が怯えたように見えたが、先に名乗ることにした。
「ここん市長になったばっかのレイホンや、よろしく頼むで。早速やけど…書類、片付けんの手伝ってや。」
呆然とする二人と握手し、書類の山へと向き直ってそう言うのだった。
鏡を回りましょう
殲滅作戦を回りましょう