【完結】もしもどこぞの都市のカポがアクナイの世界に転生したら 作:しきょーかい
1徹と2徹の狭間より
今年のアークナイツ、バレンタイン動画はASMRに使えるという確信がある。
仕事が終わったら、これを聞いて寝るんだ…ッ!
腹を満たさない程度の、軽いツマミを頼みつつ二人で飲んでいたが、その時間は突然打ち切られた。
激しくドアが開けられ、チリンチリン!と、大きく鈴が鳴る。
灰色のコートと帽子を被り、入ってきた二人のループス。
帽子を取り、レイホンに向かって一礼すると男に近付き、小声で何かを話す。
盗み聞きする気はないため、無視して分厚いベーコンを口に放り込む。
「……では、私は去るとしよう。——— 良い夜を。」
「随分と早いやんけ。……あぁ、そういう事か。」
そう言って席を外し、頼んだ物の半分の代金をカウンターに置いて、男は出ていった。
通りから殺気が漂ってくる。男が居る時はまだ抑えられていたが、居なくなった今隠す気はないのか、この店にいる誰もが分かるほどの濃密さを持って向けられていた。
「お前ら、戦闘準備しとけ。弾と矢防げんやつは伏せとき。」
ダダダッ!!!
数人が伏せ、また数人が武器を抜く。
バーテンダーがカウンターの下に隠れきった瞬間、連続した銃声と共にガラスが砕け散った。
ガラスの破片と木片、銃弾などが飛び交う中、窓から複数の人物が侵入してくる。
ガキキキキンッ!
「あぁ?ウサギやんけ、狩られにでも来たんかぁ!?」
「本物か…。拾う依頼間違えたな。うおっ!?」
銃弾を弾き、襲撃者の格好を見て叫ぶ。
その人物らは黒と橙を基調としたスーツを身に着け、頭には独特のヘルメットを被っていた。
大きなレンズと、フィルターの付いたヘルメットには2つの耳が立っている。
これ以上何か行動する前に狩るため、椅子を蹴飛ばして怯ませ、距離を詰めて朴刀を抜刀しつつ振り抜く。
「チッ、互いに速戦即決って?ウサギ相手に?」
「虎はウサギ程度に負けんからなぁ!」
一人ヘルメットごと首を刎ねて仕留めるが、隊長格のウサギは舌打ちをしつつ避ける。
レオントッツォやラヴィニアの方をちらりと見るが、問題はなさそうだと判断したため敵へと向き直った時、そこには銀色の何かがあった。
「よそ見厳禁!草を食みに来たんだ!暴れるぞ!」
「…サイも、トナカイも、ネズミも居らんやろ。居ったらこん程度じゃ済まんからな。」
「……なんでこのレベル相手に敵対しようと思ったの?俺降りたいんだけど。」
視線を送った瞬間、その一瞬を逃さず短剣と言うには刃の長いナイフが突き出される。
手首を左手で掴み、握りつぶそうとしたが抜けられ、蹴り飛ばされた。
寸前で至近距離に迫っていた、別のウサギのヘルメットの耳を掴み、無理矢理揺さぶり引っこ抜く。
ごきりと、鈍い音がしてそのウサギは動かなくなった。
「…都市でも、
「ほう?ちぃと聞かせてみろや、もしかしたら見逃してやるかもしれんで?」
「簡単だよ、誰だって理解できる答え。隊長がよく俺達に言ってたんだ。」
シガーを噛みしめ、手元でくるりと朴刀を回す。
止まる筈のない銃撃はいつの間にか止んでおり、制圧された数人のウサギ以外は全て血を流して倒れていた。
直剣を抜き、ウサギの大半を制圧したであろう高笑いするラップランドを見て顔を顰めた時、眼の前にいた筈のウサギが消える。
「——— 生き残ったヤツが一番強いってな!!!」
「ほんならお前の負けやろ!!!」
懐に潜り込まれ、喉元に突き出される。
迫るナイフの刃を掴み、朴刀を振り抜く。
朴刀がウサギを2つに分けるよりも速く、ウサギは片手に持った銃をレイホンの腹へ乱射した。
「銃が効くように見えたんか?」
「効くように見えたから撃ったんだよ!」
避けた時、弾丸はカウンターを破壊してバーテンダーを撃ち抜くだろう。
怯えるのではなく礼を払い、気遣いの出来る人間を失うのは惜しいため即座に
全弾命中。しかし、レイホンの体には傷一つなく、立ち昇る光だけがあった。
振り下ろした朴刀は避けられたが、即座に横へ薙ぎ払う。
ナイフで逸らされ、火花が散る。
が、朴刀に乗った速度と重さを流せなかったのか、ウサギはレオントッツォたちの方へと転がっていった。
「はぁ、はぁ、クソ…。」
カチッ、チッ、チッ。
虚しく弾切れを告げる音が響き、銃を放り投げるウサギ。
即座にナイフをもう一本取り出し、構える姿は様になっている。
「弾切れか、無尽蔵の弾丸はどこ行ったんや?俺っちらの弾でも使うか?」
銃らしき物をウサギに向け、アーツで作り出したのか、複数の狼を従えるレオントッツォ。
獲物を狩り尽くしたのか、白色に輝く2本の直剣を持って構えるラップランド。
まだ余力を残しているだろうウサギが取った行動は、一冊の本を持ったラヴィニアを人質に取る事だった。
「——— 勇気なき正義は虚しく、慈悲なき正義は横暴である。そして…」
しかし、動じずに本を開き、詠唱を始めるラヴィニア。
茨が腕に巻き付いていき、本を持つ手からは血が垂れ、床に落ちていく。
「動くな!コイツがどうなっても———」
左腕が完全に茨で包まれると、その手には一つの槌が握られた。
首元にナイフを突きつけるウサギの声には困惑が宿っている。
「……力無き正義は、理想である!」
ドゴオッ!!!
足を刈り、体制を崩したウサギの顔面に、勢いよく巨大な槌を振り下ろした。
床に穴が空き、突き抜けて落ちていくウサギの足をギリギリで掴む。
貴重な情報源であり、今も目覚めない南部親指よりかは使えるだろう。
「はぁ……。この都市において、暴力は切っても切り離せない物なのでしょうか。」
「何処もそんなモンやろ。」
ウサギを一撃で叩きのめしたラヴィニアが、どこか諦めたように呟いた。
部下に指示を出し、生存したウサギだけを集め、厳重に拘束する。
「そうかもしれません。ですが、諦めたくは、ありません。」
「だからこそ姉さんを誘ったんだ。夢を叶える絶好の機会だからな。」
「どういう事や?…っちゅうのは後にして片付けんの手伝ってくれや。俺っちの知っとるウサギやったらもうちょい手強い筈なんやけどな、気ぃ付けて片付けぇや。」
レイホンが戦ったウサギはここまで弱くはなかった。
R社の兵士は徐々に強くなっていくと何処かで聞いたため、外郭の遺跡や、鴻園で会ったR社の者と比べて昔のウサギなのかもしれないと自分で自分を納得させる。
それでも油断できる相手ではないため、武器を奪い、手足を縛り、自害しないよう布を噛ませる。
「レイホン、お前に聞いておこう。お前はこの先上に立ち、この都市を率いるのか?」
「正直言ってダルいんよな。管理っちゅうのは俺っちに向いとらんし、下のやつに任せとったら責任が俺っちに来るやろ? そういうのは勘弁なんよな。やっぱ上がおると楽やわ、居らんけど。」
「そうか。」
この場での会話は終わり、生き残ったウサギを抱えて拠点へと戻るのだった。
…ラヴィニアがバーテンダーに補償することを伝えたが、全く受け取ろうとしなかったため時間がかかったのは少々予想外だったが。
———
「仕留めそこねた?チッ、使えん奴らだ。」
「……はぁ。」
夜深く、街灯の光も消え、暗黒が支配する頃。
ある男の前で白髪に紅い目をした女性が不満気に立っていたが、何かを感じたのか突然窓を破壊する。
窓に足をかけ、今にも外へ出ようとする男が叫ぶ。
「どこへ行く!金は払わんぞ!?」
「別にいいよ、アイツらが勝手に受けた依頼だし、私には関係ないから。」
「仇を討とうとは思わんのか!?」
「それで命失くしちゃったら意味ないでしょ、この世は生き残ったモン勝ちだよ。それじゃ。」
音もなく消える姿。
男が歯ぎしりをして数秒後、部屋の扉が蹴破られた。
「何者だ!?……ただのガキか。今は虫の居所が悪い、時間を間違えた自分を———」
そう言って男が拳銃を取り出すよりも速く、一人の少女が銃を構える。
指は既に引き金に当てられており、男が撃つよりも速く少女が撃てるのは誰の目にも明らかだった。
「——— ま、まぁ待て、一度落ち着いて」
「…小型、圧縮源石榴弾、装填済み。——— 発射。」
ドォン!!!
「回転。」
部屋中が煙と埃、解き放たれた黒色の結晶の粉末で包まれた。
浮遊する3本の銃剣が回転し、粉塵を外へと送り出す。
少女は舞い散る粉塵を吸わないよう、一応マスクを付け、姿を消した。
次の日の朝、町中で源石が原因と見られる爆発が起きたというニュースが流れたが、被害は小規模であるため、誰も気にすることなく、日常の中へと飲み込まれ、消えていった。
ネクラスさんは戦友の方が貸してくださってるので使ったことあります。
なんか強い、少なくとも万能勢と違って尖ってるから使ってて楽しい。
デーゲンブレヒャーとかエンテレケイアとはまた別の楽しさ。
(ただ星6の術師を持っていないだけとも言う)