【完結】もしもどこぞの都市のカポがアクナイの世界に転生したら 作:しきょーかい
自分の意志で、罪を裁くことはあったのだろうか。
そこに公正さ、正義はあったのだろうか。
ずっと、正当化していた。法的には正しかったのだ、と。
次に仮定が生まれた。
もし、あの時一言かけていれば、と。
文を読み、自分の気も知らず理想を語る法典への怒りが湧き出る。
やがて可能性が増殖する。
自分が今、こうして裁判官として働けているのはファミリーの庇護下にあるから。
暴力を振るい思い通りに動く、法に反した存在と自分は何が違うのか。
かつて呆然と見ていた光景。
もし結末を変えようと思えば、変えることが出来たかもしれない過去。
"何故"という言葉が込められた視線は、自分が裁いた者とそっくりで…。
眠れなくなる。法典を開いても、文字が意味を持たない。判例の行間に“あの目”が浮かぶ。
槌が振り下ろされる。
『正義を証明しよう。』
ガァンッ!!!
「んんっ、ほいっ!どや、熱は効くんちゃうか!?」
『……っ。』
地面に叩きつけられるよりも速く、レイホンが割り込んで防ぐ。
燃え上がる紅の気、薄っすらとした光が混じり、見る者全てを威圧する姿。
槌を弾き、ガラ空きの胴へと切り込んで抜ける。
今も手応えはないが、何かが焼けた焦げ臭さが鼻につく。
『…今も夢に見る。』
「チィア!!!」
槌を振り下ろす隙を与えない。
徐々に焼け焦げていく包帯を狙って、集中的に攻撃する。
始めは槌を振り下ろす事を優先していたラヴィニアも、今は庇うような動きをしているためレイホンの注意する事と言えば、輝きを溜め始めた槌と茨くらいだ。
・槌を振り下ろすと輝きが溜まり、地面を叩くと天秤が右へ傾く。一定回数の振り下ろしで『判決』を下す。
・槌を武器として用いた場合、天秤は左へ傾く。
・地面への叩きつけを阻害した場合、天秤は左へ傾く。
・輝きが一定以上溜まると、強制的に天秤が右へ傾く。
・天秤が右へ傾いた状態で『判決』が下された場合、レイホン達へ何らかの刑が執行される。
・天秤が左へ傾いた状態で『判決』が下された場合、ラヴィニアにとって不利な何かが行われる。
(こんなモンか?動きは単純やし、馬鹿力に気ぃ付けときゃ何とかなりそうやけど…。)
思考しながらも足と腕は止めない。
手元で朴刀を回転させ、振り下ろし、生まれた隙に斬り抜ける。
ラヴィニアの肌を焼いて焦げ付く包帯は、既に解かれている。
しかし、包帯は目に付着したままであり、離れようとしない。
『私の首元に突き付けられた鈍色の刃。飛び散る血と脳漿に塗れて———光を失った目は、私を見ていた。』
恐らく、天秤が左へ傾いた状態への『判決』でのみ、包帯は剥がされるのだろう。
高速で斬りつけ、徐々に火傷と衝撃で鈍っていくラヴィニアの動きは余裕で見切ることが出来る。
槌と茨の輝きも、先程天秤が右へ傾いた時と違いくすんでいる。
『死ねば、終わり。残されたものへの償いは果たされていない。』
『そもそも、死ぬべき相手だったのだろうか。』
『もしかしたら、死ぬほどの罪を犯した人ではなかったかもしれない。』
「目の前真っ暗やろ、よぉ開いて見い!」
ラヴィニアが行うのは判決までであり、刑の執行までではない。
どこまで行っても、裁判官という役から逃れられていない。
『……判決を下す。』
ジュウッ!
焼けて焦げていた包帯が燃え上がり、一瞬にして消える。
視界を覆う物は消えて、閉じた瞼が顕になる。
「…気味が悪いなぁ。」
<……。>
<……。>
<……。>
<……。>
<……。>
<……。>
<……。>
<……。>
<……。>
<……。>
<……。>
<……。>
<……。>
<……。>
<……。>
<……。>
<……。>
<……。>
<……。>
<……。>
<……。>
<……。>
<……。>
<……。>
<……。>
<……。>
<……。>
目があった。目が合った。目が在った。
空に浮かぶ数十、数百の視線がラヴィニアを中心にして、付近にいるレイホンにも注がれる。
耳栓が消えた時とは違い、声は聞こえなかった。
怨嗟、絶望、無念。
しかし言葉にならなくとも、目が伝えてくるものははっきりと分かった。
都市で幾度も見た、獲物たちの声と同じ。
そしてそれに囚われ続け、葛藤するラヴィニアに憐れみを覚える。
『腹に突き付けられた銃口。』
ラヴィニアが目を開いた瞬間、空に浮かぶ全ての目が閉じる。
視線は、瞬きをし、目が閉じた瞬間にだけラヴィニアへと注がれる。
膝から崩れ落ちたラヴィニアは、大通りの真ん中で呟き始めた。
『吹き出す血。絶対的な格差。』
『今度はもう、目はなかった。』
『ただ暗い、どす黒い血が流れ出る眼窩があった。』
「…殺しても…まぁ、これはしゃあないか。俺っちも死にとうないし。」
街並みが崩れていく。
暴徒、燃え上がる建物、舗装された道路。全てが捲り上がり、バラバラになる。
肌で死を感じ取り、その首を断とうとした瞬間、崩壊が止まった。
「……どういう状況か説明しろ。」
「また面白そうな事に巻き込まれてるね、ボクも誘ってくれたら良かったのに!」
『レオン…。』
崩壊が止まり、再構築が行われる。
意思を持つ者だけが居る、静まり返った夜の都市。
悪意の込められた声と、視線に包まれた暗い世界。
ドォンッ!
「…ほれ、全部ぶち撒けろや。気が楽になるで。」
『ッ!!!』
「……。」
「っ、はは、ボクも混ぜてよ!」
盛大な爆発音を鳴らして斬りかかる。
天秤はもうない。この場所には道を見失い、迷いながら全てを背負おうとした女性が居る。
その女性はいとも容易く、虎標弾を使用した攻撃を防いだ。
白色に輝く、飛ぶ斬撃が追い打ちをかける。
ほんのりと輝いている茨と槌によって打ち消されるが、槌を横に振り抜いた瞬間を見計らって背後に回り込み、斬り上げつつ抜ける。
その様子を、レオントッツォは静かに眺めていた。
意味を見定めるために。
『正義は存在してなんていなかった。全てが正義であり、全てが悪で…。』
「姉さん。」
ガシャン。チャキッ、ガシャン!
「弾ァ変えるで。」
ラヴィニアの動きは、先程と違って素早く、それでいて大胆になった。
敢えて隙を見せると大きく踏み込んで攻撃をし、右手の届く範囲にいるのなら掴みを狙う。
その一撃一撃に込められた威力は、
空の薬莢を放り出し、空いた弾倉にロドス製の猛虎標弾を込めた。
黄金の炎が銃口から吹き出して、その勢いに身を任せる。
<……。>
<どうせ聞きやしない。>
<今更変わった所で、もう遅い。>
<……。>
<お前は正しかったのか?>
<誰も救えない、お前も救われない。>
<本当は助けられた。>
<抗う事をあきら「ごちゃごちゃ五月蝿いわ。」
ドゴオォォォンッ!!!!!
踏み込み、地面に叩きつけた。
陥没し、クレーターが生まれ、この場に立つ者達があまりの衝撃に数歩後ずさる。
声が消え、あらゆる視線がレイホンに向く。
「死ぬまで隠すんやったら別にそれで構わん、出来る奴は居らんやろうけどな。やけど…お前はもう俺っちに迷惑かけたんや、しょうもない結末で終われると思うなや!!!」
『…誰も殺さないでほしい。』
抜刀の瞬間と合わされ、柄に槌が当たる。
抜けない天退星刀を無理やり振り抜こうとした時には、ラヴィニアの右拳が迫っていた。
メキメキィ…ッ
胴に叩き込まれる一撃。
吹き飛ばないよう堪えて、天退星刀を振り下ろす。
「いい
『誰も死なないでほしい。』
「そりゃ、無理やろ!」
首へと伸びてきた手を蹴り上げ、胸の痛みを我慢しつつ大きく振り下ろされた槌を弾く。
陽炎で歪む空間を駆けて、跳んで、叩き斬るつもりで振るう。
突きの方が良かったが、天退星刀は突きに向いてはいない。
『私が、必要ない世界が見たい。』
「
ラップランドが乱入し、一度斬りつけて隙を作る。
その隙を逃さず、膜ごと潰す気で振り下ろした。
『人は過ちを犯し、繰り返す生き物であるが故に。』
攻撃は当たった。
しかし、反発するかのようにしてラヴィニアが吹き飛んだだけで、大したダメージは与えられてないだろう。
(猛虎標弾が後3発……。はっ、どうとでもできるわ。)
「———ラヴィニア。お前は……。人として、答えられなかったんだな。」
『』
「法として答えられたからこそ、罪悪感に押し潰されそうになっている。俺から見て、今のお前は……思うようにいかない現状に苦しむ、子供に見える。」
『…。』
レイホンとラップランドを無視し、無防備に立つレオントッツォへと急接近しようとするラヴィニアを阻む。
弾丸を放ち、強大な推進力で無理やり吹き飛ばし、再び接近してくるラヴィニアを阻み続ける。
「———レイホン、大丈夫だ。下がってくれ。」
「……お前が死んだら、すぐに送ったるかい安心せぇや。」
「笑えない冗談だな。」
思わず噛み千切っていたシガーを吐き出し、残り短くなったシガーを咥える。
臨戦態勢に入っているラップランドと、今も低い姿勢で銃剣を構えるカポを手で制し、通りの端まで下がる。
大きく、前方へと跳躍するラヴィニアの顔にどんな感情が宿っていたかは分からなかった。
槌も、右手も前に出さない体当たり。
ドォッ!
対して、レオントッツォが行った事は掴み技だった。
ほんの一瞬、服を掴み、その勢いを生かして放り投げる。
「過去を抱えて、自分を認めてやれ。瞬間、正しい答えが分かる奴はいない。」
倒れて、仰向けになったラヴィニアは動かない。
「一度足を止めて、周りをよく見てみろ。お前は、考えて答え続ける覚悟がある奴だろう。」
「…………ボクたち、なんか邪魔じゃない?」
「俺っちもそう思うわ。」
空に雲は浮かんでいない。
声も視線もない。
ただ、星が輝いていた。
先週の金曜、情報量多すぎて死ぬかと思った。
ヴァル夜やらアニメPVやらメンヘラシュナジャンとか…。
貯金を崩す準備を始めます。