【完結】もしもどこぞの都市のカポがアクナイの世界に転生したら   作:しきょーかい

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風邪ひきました
喉いてぇ(脆弱10)


第7話

 

「おぉ、おぉ。えらい泣かせるやんけ、俺っちは中指ちゃうけど、受けた恩と、俺っちの部下にした非礼は返さんとな?」

 

三階より上は倒壊し、風が良く通るようになったビルに部下を引き連れてそう言い放つレイホンの前には、明らかに強者ということが分かる者が並び立っていた。

 

両手に大きな謎の発射機を装備し、ガスマスクを付ける子供。

フードとマスクで顔を覆い、目元に殺意を滲ませる女性。

不思議な形状の杖を持ち、嘲るようにこちらを見る白髪の少年。

そして…先程辺り一帯の全てを融かし(燃やし)尽くした謎の力を操る、龍を彷彿とさせる角と尾を持った白髪の女性。

 

その全ての注目が今にも砕けそうな黒い障壁からレイホンに移る。

 

(これは流石に…俺っち一人でどうにかなるやつやないな?)

 

龍の女性…フェン曰く”暴君”タルラ。先程放ってみせた炎の威力は、まともに喰らえばレイホンが全力で(シン)を纏わせたとしても数秒しか持たないのでは?と思うほどの威力だった。

 

更にそれ以外の者からも目が離せない。子供二人はまだしも、白髪の兎耳の少女と巨大な槍と戦盾を持つ人物の二人が放つ歴戦の戦士だろう。

そしてどう見てもこの中に弓かクロスボウを持っている相手がいない事が、少し前にレイホンを狙撃した相手がこの場にいないという事実として不安を煽る。

 

(逃げられへんわけやないだけマシか。)

 

自分を鼓舞するように、自分の愛刀に弾を詰め、思いきり地面に叩きつける。その際、どの陣営からも一切の言葉が放たれることはなく、ダァン!!!という音が響く。チェルノボーグを焼く橙色の火とは違う、紅の炎が噴き出す。

 

IIII(クァルト)ん二人は付いて来いや、III(テルツォ)以下は全員で露払いせぇ。」

 

「はっ!!!」

 

「俺らん今後の立ち位置を決める戦いや、手ぇ抜くなや!」

 

半壊したビルから飛び降り、あとに続く多数の部下と共にレユニオンの幹部達との正面衝突(撤退戦)が始まるのだった。

 

 

===

 

 

きっかけはフェンの言葉だった。

結構な人数の親指がこのチェルノボーグに来ていることに気付き、それにしても上下のない場所やな。などと考えているときにレイホンへ近付いて来て、口を開いたフェン。

それは「ロドスは、あなた達が求める物を用意できる。」というもの。

 

見ず知らずのこの土地に現れた自分たちに足りないもの、親指として一番初めに欲しいものである「地位」をフェンは提示した。

 

「私達は今、ある作戦のためにこのチェルノボーグへ来ています。今回の作戦は、今後のロドスの行動に影響が出るほど大切なものだと上官からは聞いています。」

 

「最後まで言わんでも分かるわ、俺らに助けて欲しいんやろ。」

 

レイホンの言葉を聞き、コクリと頷くフェン。呆れたように溜息をつき、懐からシガーを一本取り出すと、空になったシガーケースを握り潰し、そこらに投げ捨てる。

 

「俺っちが見とる限り、嬢ちゃんらの格は低そうやけどな?…本当に俺っちらの欲しいモンくれるんか?」

 

部下に火を点けさせ、大きく吸って煙を吐き出す。場の空気を満たした重い煙は風で流れずその場に留まり、フェンとの間に沈黙が流れた。

 

「えぇ、私では無理でも、ロドスなら可能です。……実際に聞いてもらったほうが早いでしょう。」

 

重苦しい雰囲気の中でも胸を張って口を開くその姿は、レイホンが今まで相手してきた強者そっくりだった。インカムを触り、羽織っているロドスの服の内側からスピーカーの付いた大きめの通信機器を取り出すフェン。

そして通信機器に向かって大きな声で話しかけた。

 

「ドーベルマン教官!聞こえますか?『フェンか!?今は——』今すぐにアーミヤさんに代わってください!」

 

通信先の相手は女性のようだ。スピーカーからレイホンにも聞こえるほどの音量で声が聞こえた。余程切迫している状況なのか、恐らく部下であろうフェンの通信に答える余裕が無さそうだ。

スピーカー越しでも分かる金属と金属のぶつかり合い、その中でガチャガチャと擦れる音が何度かしたあと、少女の声が聞こえてきた。

 

『フェンさん!?一体何があったんですか!?』

 

「アーミヤさん、行動隊A4と行動予備隊A4は奇襲を受け援護に行けません。死亡者はいませんが、我々行動予備隊A1も負傷者の護衛と治療で動けないでしょう。」

 

そうフェンは言い切ると、再び息を吸って話し出す。

 

「現在チェルノボーグには、突如現れた"親指”という組織がいます。彼らの協力を得ることができれば、この状況を打破することができるはずです!…どうぞ、要望を。」

 

フェンから差し出された通信機器を受け取り、話している間に吸い終わったシガーを地面に捨てる。靴で火を揉み消し、現在と今後自分たちに必要なものを考える。

 

「せやな、俺っちの欲しいモンはお前らんとこの高い地位、弾丸、武器の手入れをする専属の工房や。用意できるんやったら協力してやってもええで。」

 

「——アーミヤさん、私は彼らの協力を得ることが今のロドスのためになると信じています!…どうか!」

 

要望を言い、それに繋げてフェンが懇願する。

 

『アーミヤ、この状況で力を保証できない、しかも信頼できない相手を抱えるのは…。』

 

『分かってます。でも、このチェルノボーグから確実にドクターを救出するには…!』

 

どうやら仲間同士で意見が割れているらしい。それもそうだ、見ず知らずの相手が一方的に要求をしてきてそれを飲むのは、余裕を持った強者か、藁にも縋るほど追い詰められた者だけだ。

俺っちの命乞いを仁義を持って飲んだジア・チォウ(天罡星)は余裕がありすぎやな、などと向こうの意見が纏まるまで考えていると、あることを思い出す。

 

「おぉそうや、Wちゅう奴と()り合ってな、知っとるか?」

 

あれほどの強者なら知っていてもおかしくないだろう。そう思って発言すると食いつく者がいた。

 

『Wだと…?まさか、いや、だが…。』

 

「白髪で、角と尻尾が生えとる女や。俺っちはそいつと渡り合えるくらい強いで?」

 

『アーミヤ、もし相手の言うWが俺の知っている奴なら…俺が力を保証する。』

 

どうやら低い声の男がWを知っていたようで、レイホンは戦力として認められたようだ。少しは売り込みになったか?位の認識だったが、どうやらWの強さはそこそこ知られているらしい。

 

『Aceさん……。分かりました。あなたの名前を聞いてもいいですか?』

 

「レイホンや。」

 

『レイホンさん。ロドスはあなた達の条件を飲みます。だからどうか...! ドクターの救出に協力してください!』

 

「任せときぃ、俺っちもそっちに向かうわ。」

 

 

===

 

 

これが済み、ロドスがちゃんと要望通りに動いてくれたら困ることは格段に減るだろう。

そう思って協力を取り付けたが…。

 

(こんレベルの奴らがおるのは聞いとらんな!!!)

 

そう心の中で叫び、飛んでくる榴弾を弾き飛ばしながらレユニオンの幹部達の方へ向かい進み始めた。

 

 

 

 

 

 

 




体調崩すの早すぎて辛い
インフルじゃないからまだマシか…
皆さんも体調には気をつけて…

11/14 ルビ振りが上手くできていなかったところを修正。
誤字報告ありがとうございます。
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