【完結】もしもどこぞの都市のカポがアクナイの世界に転生したら   作:しきょーかい

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2度目の投稿、それが流儀ィィッ!!
短いです。



第71話

 

 

煙を吹かし、路地に漂っていた下水の匂いを上書きする。

香りが強いものではないが、空気を塗り替えるには十分だった。

 

「一応聞いとくわ…。———死にたいんか?」

 

「っ、は、ははっ。」

 

目の前に立つ、狼の仮面をつけた女(ラップランド)を威圧する。

初めて会った時は長袖のズボンだったが、今は裾が膝よりも上にある。

太腿には、黒い結晶が鈍く輝いて存在を訴えていた。

 

「死にたいわけじゃないさ。」

 

「さよか。」

 

それなら何故ここに居るのか、そう思いを込めて睨みつける。

ラップランドの体から放たれる雰囲気が、肌に刺さる。殺気ではない。

 

「そうだね…ボクにとって一つの証明、かな。キミにはこの国がどう見えた?」

 

「中途半端に都市に似せて、腐った国。…そんな所やな。」

 

「元もそこまで良いものじゃなかったさ。」

 

話が噛み合っているように見えて、噛み合っていないようにも見える。

突然ラップランドが手元でくるくると直剣を回し、曲芸のように空へと放り投げた。

その間にレイホンはベルトから虎標弾を取り出し、装填して備える。

空を切り裂かんと昇る剣は、届かずに落ちていく。

 

チャキッ。

2本の剣を掴み取ったラップランドは、丁寧に一度お辞儀をした。

 

「あの頃はずっと、愛しのお父様をあっと言わせてやろう…そう思っていたんだけどね。最後まであの人はボクの思い通りには動かなかったな。……責任は、とって貰わないと。」

 

「ほんなら、さっさと殺しに来たら良かったやろ。」

 

ピッタリとくっついた仮面は、一切揺るがずに彼女の顔を隠している。

灰色の、狼を模したアーツによる幻影が彼女を守るように漂い始めた。

 

「ボクは椅子に座ってばかりのアイツラとは違うからね、もしかしたらキミが…彼らとは違う選択をしたらって考えられるのさ。最初から排除に動いて、利益を消したら勿体ないでしょ?」

 

「……そんで、俺っちはどうやった?」

 

「はは、答えが分かっているのに聞くのかい?」

 

「一応や一応。お前はペットみたいなモンやし、居らんと寂しくなるわ。」

 

朴刀を納めるが、何時でも抜刀できるように構える。

ググッと、互いに柄を握りしめる音が鳴った。

 

「ペットか。ボクが飼い犬に見えたのか。ははは。」

 

「それも、全く聞かん暴れん坊の犬やな。ははは。」

 

「……少し、歩こうか。パレードの邪魔になっちゃいけないからね。」

 

 

 

———

 

 

 

日が沈みきり、地面と空を分ける地平線すら消える。

全てが黒という一つになり、振り返れば明かりがちらほらと見える。

 

バァーーーン!!!

 

花火が打ち上がり、暗黒に色を付けた。

赤、青、黄、緑…様々なシルエットが生み出されて消えていく。

 

「花火のお陰でよく見えるね。」

 

これ(・・)がどうかしたんか?」

 

目の前には葡萄畑が広がっていた。

花火の光ですら全てを照らせないほど広大な畑。全てが若い葉を手に入れ、実をつける準備を始める。

レイホンへと向き合い、ラップランドは誇るようにそう言った。

 

「サルッツォでは、ブドウの一本一本に実をつけてからすぐの頃から剪定をしてたんだ。」

 

ラップランドは続けて…壊れ物を扱うかのように、そっと葉に触れ、千切った。

葉を口に放り込み、咀嚼する姿を見て顔を顰める。

 

「こんな風に弱い枝、しなびた実…全部切り落とすんだ。あ、立て替えておいてね。」

 

「今すぐその腕引き千切ったろか?」

 

「冗談さ。最高のものだけを残して、それに全てを注ぐ。生まれたものは至高の一つになる。」

 

花が変化していく途中の、まだ緑色の小さな実を千切る。

それを口に含んだラップランドは、静かに「美味しくなるよ」と言って地面に捨てた。

 

「昔、クルビアにシラクーザのブドウを植えて、ボクが剪定する約束をしたこともあったなぁ。」

 

捨てた葡萄を踏みつけて畑の奥へと進み続けるラップランドを追い、歩を進める。

葡萄を踏み潰しても、何も音はしなかった。

風が吹き、ガサガサと葉が擦れて音を立てる。

 

「お父様も、グレイホールのお偉方も切り落とされただけの話さ。恨んでなんかない。」

 

葡萄畑を抜けて、荒野に出る。

まだ未開発の土地、これから文面が根付く場所。

ここには花火の光は届かない、シガーの先の小さな火種だけが主張する。

 

「だけど、今のシラクーザに最高のブドウはあるのかな?ボクはそう思わないんだ。」

 

「…はぁ。」

 

煙を勢いよく吸い込み、短くなったシガーを捨てて揉み消す。

吐き出した煙は闇に飲まれ、どこを漂っているのかすら分からなくなった。

 

「……。」

 

「……あぁ、君の言う通りボクは最高のブドウに成り得ない。キミもそうだろう。でも…残らないといけないんだ。誰かが残って、価値を証明して変えるんだ。失ったものよりも、大きな価値を証明しないと。」

 

「我が名はレイホン。親指のカポIIII(クァルト)にして、東部十剣の一人。」

 

呟き始めたラップランドを前にして、名乗りを上げた。

息を呑む音が聞こえる。

 

「ウダウダ言うより、コイツ()で語ったほうが早いやろ。」

 

「———……ははっ、そうだね。言葉に流されるなんてボクらしくないや。…全力で、斬るよ。」

 

「くくっ…おもろい事言うやんけ。」

 

「?」

 

その言葉を聞いて、思わず笑ってしまう。

まるであの時と逆の立場になったかのようで…。

今回、自分はどちら側になるのかと考え、あの時とは違うと思い直す。

 

「口で切るつもりやないなら、さっさ掛かってこいや。一度躾してやろうと思っとったからな。」

 

ゴウッ!

シャキンッ!

 

荒野を2つの光が照らす。

紅と白が存在を叫ぶと同時に、遠くで一際大きな音が聞こえた。

 

「キミは残るべきだ。」

 

「…葡萄の剪定するっちゅうたな。」

 

指令に取り憑かれた親方のように、次元を切り裂ける訳では無い。

それでも最低限の技術はある。

(シン)(マン)もある。

オオカミ狩り(しつけ)には勿体ないくらいだ。

朴刀に纏わりつく光の輪と、レイホンから立ち昇る紅と黃の光が辺りを照らした。

一度息を吸い、吐き出す。

 

「ふぅ……。剪定した葡萄が、本当に最後まで残ると思っとるんかァ!?」

 

「……ッ!!!」

 

跳躍し、流星のように炎を吹き出す天退星刀を振り下ろす。

辺り一面を、紅の光と熱が覆い尽くした。

 

 





初めてのテキサスは初心者任務じゃなくて公開求人でした。
先鋒でポイ投げしたら来てびっくりよ、コスト-1嬉しい。
ラッピー?あいつはほら、10連したらなんかよく来るから…。
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