【完結】もしもどこぞの都市のカポがアクナイの世界に転生したら 作:しきょーかい
最終話です。
一応この物語はここで終わりとなります。気が向いたら続きも書きます。小話も。
今年は忙しいのが一番の理由です、落ち着いたら書く…かも。
数時間前、事件は起こった。
「あと1時間ですね。軌道に乗りましたし、天災の予兆もありません。ごゆっくりどうぞ。」
ガァン!!!!!
パイロットがそう言って席を立ち、大きく伸びをした瞬間。
レイホンの目は何かが高速で床を貫き、機材を吹き飛ばしたのを捉えた。
「…は?え?高度5000mあるんだぞ?今のは?は?」
「……キミの近くに入れば退屈しなさそうで何よりだよ。」
「どうにかせぇや!コレ高かったんやで!?」
「どうにかって…!出来ると思ってるんですか!?」
安定していた機体が次第に揺れ始め、慌てて席につくパイロットが色々弄っているが効果は無い。
そもそも光が灯っておらず、完全に死んでいるのがレイホンにも分かる。
「機体をどうにか前に傾けて……!クソッ!死にたくねぇのに…!」
轟音が鳴り響き、空いた穴から凍った空気が物凄い勢いで入り込んでくる。
徐々に近付く地面に激突する事は避けられず、3人の死は確定したも同然だった。
キラリと、何かが光を反射したのが目に入る。
「ここで死んだら面白くないでしょ?」
そんな言葉が聞こえたと思うと、レイホンの体は土砂と爆炎に包まれた。
———
「…なんで生きてるんですかね、私達。いや嬉しいんですけど。」
「ボクの力さ。飛行機は壊れちゃったけど、命は守れたね。……クシュン!」
困惑し、燃え上がる飛行機から離れる3人。
ラップランドの服装は変わっており、パレードの時と同じような赤いマントを羽織っている。
ただ、時折ノイズが走るように揺らいでいた。
「そんなに落ち込まないでよ、また買えばいいでしょ?」
「アレ買うのに2億と少しの龍門幣かかったんやけど。」
「ボクの価値が昇り続けてる…ってこと?」
「吐かせ、仕返し行くで。」
明らかに壊れるはずのない場所まで砕け、積んだ荷物も丸ごと消えてしまった事実に呆然としていたが、からかうような声で気を取り直し、この事件を起こした犯人を殺すと誓った。
同時に、ラップランドが元の格好に戻る。
「仕返しと言っても…レイホンさん、何処からどのようにどうやって攻撃されたか分かるんですか?」
「墜ちる寸前、向こうの森ん中に何か見えたやろ。」
このままでは凍死するため、燃え上がる飛行機から火種を貰い、積み込んだ物資にある油を染み込ませた簡易的な松明を作り、森へと歩き始めた。
ダァン!
銃声。ぼとりと、松明の先が落ちた。
「向こうから来たみたいだね。」
「言っておきますが私に戦闘能力を求めないでくださいよ本当に無理ですから銃弾食らってもピンピンしてる他のオペレーターとは違いますから絶対に肉壁にとかしないでくださいよ!!!」
「よう回る口やな。」
ダァン!ギィィィン!!!
次弾を防ぎ、重い足を上げて一歩踏み出す。
すると、森の中から複数の人影が現れた。そのうちの3人は銃を持ち、銃口を下げている。
猟犬やドローン、重装兵までも居るためウルサスの軍か何かだろう。
「ウルサスに仇なす者共め!貴様らが踏む土地はない!!!」
平原だというのに響く声が放たれると、猟犬が迫り、ドローンは高度を上げ、重装兵を前にして進み出す。
しかし、銃を持った3人は一切動こうとしない。
「どれだけ多く倒せるか勝負する?」
「フンッ!」
ボボボ…ドォン!
ラップランドの声が聞こえた時には、既に跳躍していた。
跳躍先にいる猟犬の頭を砕き、呆気なく死んだ
横に振るえば呆気なく鮮血を撒き散らして倒れる。血が雪を溶かし、凍る。
(撃って
銃を持つ3人のうち、一人の持つ武器には見覚えがあった。
鉄檻寺の前で戦った、リンバスカンパニーの面々のうちの一人が持った銃。
あの時はたった一発だけだったが、白色の弾丸はレイホンに怪我を負わせるのに十分だったのを覚えている。
次々に倒れ伏すウルサス兵たちを盾代わりにして、ドローンからの攻撃を防ぐ。
腰にかけていた短銃はアーツではなく火薬を用いて使用するものだったため、ありがたく使わせてもらい、一機ずつ墜としていった。
重装兵の鎧も天退星刀を防ぐには至らず、声も上げずに倒れ伏す兵の数は増えていく。
ザザッ。
懐に入れた端末が反応する。
『一発だ。もし仕留められなかったなら撤退するぞ。これ以上ウルサスに尽くす必要はない。』
『了解。タイミングは任せた。』
『クソッ、よりによって最後の任務、なんで親指のカポが乗ってるんだよ…!』
盗聴機能でもあったのか、恐らく3人の会話が聞こえてきた。
確かにあの弾丸は恐ろしいが、タイミングさえ分かれば脅威ではない。
『次だ。次倒れた時、撃て。』
『……源石式、音速貫通弾装填完了。』
「チィア!!!」
ガァン!!!!!
襲いかかってきた兵を一刀のもとに斬り捨てる。
即座に切り返したと思った瞬間、レイホンは空を仰いでいた。
『…不命中、防がれた。』
『撤退だ。ステファン、タマキ、逃げるぞ。』
(防いでコレかい!)
痺れる両腕に力を込め、無理やり震えを止める。
盗聴で聞こえていたが、レイホンの体には傷一つない。だが、元いた場所からかなり吹き飛ばされていた。
本当に撤退を始める相手を追うことを考えたが、追撃時にもう一度あの一撃を食らっては堪らない。何より、レイホンが気付いていない状態で撃たれた瞬間、レイホンの詰みが確定する。
手際よく撤退し、森の中へと消えていく3人を見たウルサス兵は怒号を上げた。
「なっ…!おい、どこに行く!」
「敵前逃亡は重罪だぞ!」
「ウルサスから受けた恩を忘れたのか!この*ウルサススラング*!!」
「…よく分かんないけど、呆気ない幕引きになりそうだね。」
「この薄汚い感染者の犬が…!」
二人の戦士を目の前にして、隙を見せたのが最期。
レベルの低い罵倒を遺し、数十のウルサス兵は凍原に骸を晒すことになった。
———
数日後、どうにか最北の移動都市に辿り着くことが出来た。
レイホンは堂々と正面から入ったが、ラップランドとパイロットは感染者のため、別の方法で潜り込むとの事だ。
道行く人に、ある大学までの道のりを尋ねる。
十数分もすれば、目的地は見えた。
パリィィィン!!!
忍び込んだとしても直ぐにバレるのが分かっているため、盛大に窓ガラスを割って入る。
中は教室だったのか、沢山の生徒が教授の講義を受けていた。
「きゃあああああ!!!」
「何者だ!くっ、武器を持っているぞ!」
「急でスマンけど……ちぃと黙っとれ。」
抑えていた圧を解放すると、ピタリと学生たちの動きが止まる。
怯えているが、気丈に睨みつけてくる教授の方へ歩いていき、問いかけた。
「コシェルナっちゅう奴、何処居るか知っとるか?」
「……っ。」
「知っとる反応やな。教えてくれるんなら手荒な真似はせん、少なくともここに居る奴らにはな。」
「彼女に…っ、何をする気ですか…!」
質問を質問で返され、顔を顰める。
礼儀がなっていない者が師になれば、そこから学ぶ子も礼を失うだろう。
一度腰にかけた朴刀に手を伸ばし、止めた。今回は暴れるのが目的ではないからだ。
「何もせん…っちゅうのは嘘になるわ。やけど俺っちを呼んだのはアイツやで。」
「出任せを…!」
「まぁ…ええわ、ほんならじっくり探すわ。」
タルラから聞いていた場所に着いたが、思い通りにはいかなそうだ。
コシチェイが思っていたよりも、周囲から信頼を勝ち取っていることに驚きつつ、壁を破壊して進む。
大きな講義室、休憩室を通り抜け、捕縛しようと迫る警備を制圧する。
ちょうど10人目の警備員の意識を奪った頃、廊下の窓越しに騒々しい講義室が見えた。
「突然でスマンけど、あん中に誰が居るんや?えらい人気やな。」
「うわっ! あ、が、外部の方でしたか…すみません。中ではコシェルナ先生の講義が行われてます。」
「ほぅ…助かったわ。」
「?えぇ、助けになれたのなら良かったです。」
驚き、少し怯えつつも答えてくれるウルサスの生徒。
人混みを掻き分けて進み、扉の窓から覗いている生徒の前に立ち、蹴り開ける。
バァン!
全ての視線がレイホンに集中した。
ただ一人、直ぐに目を逸らした女性を除いて今も視線は注がれている。
懐からシガーを一本取り出し、端を千切った。
「ようやっと見つけたわ、盛大な歓迎やったな。」
「タルラから聞いたのか。」
「君たち!その男から離れなさ——— ガハッ!」
背後から襲いかかってきた警備員を殴り飛ばす。
武器が警棒から刃物へと変わっており、殺しに来ていることが分かった。
青ざめていく生徒たちは動かずに、レイホン
「構内では禁煙だ、話すなら外でだ。」
「そんで監視隊にどうにかしてもらおうってか?分かっとるやろ、アイツラじゃ勝てんってな。」
「……君たちは外に出なさい。心配することはない、少し話をするだけだ。これで良いだろう?」
頷き、先を千切ったシガーを握り潰す。
何も言わずに睨みつけ、無力にも教室を去っていく生徒を無視して椅子を引き、座る。
コシェルナ……タルラが正しければコシチェイ。チェルノボーグ事件の首謀者は物怖じせずに座った。
「…私を殺しに来たのか?」
「殺してもええんなら殺すで。」
「では殺気を納めてもらおうか、私は死にたいわけではない。」
剣を使うまでもなく、嬲り殺しにできる。
特殊なアーツが使えると言うなら話は別だが、この距離なら即死しない限り殺せるだろう。
殺気を抑え込みながらそんな事を考えていた。
「殺しに来たわけではないのなら、なぜ私の元に来た?片腕を奪った相手に問う価値が、私にあるのか?」
「お前が来てもええっちゅうたんやろ。まぁ、ドクターに止められたかい無駄足になったんやけどな。」
「……その結果がこれか。」
教室の周囲を複数名の警備、監視隊が囲んでいるのが分かった。
それでもコシェルナの顔には一切の喜びが見えないのは、この程度で止められる相手ではないと理解しているからだろう。実際、道中出会った監視隊は10分も保たない相手だった。
「俺っちの飛行機も吹っ飛んだし、タダで帰るわけにはいかんからな。頼み事しに来たんや。」
「私に益がないだろう。」
「———あのチェルノボーグ事件の首謀者がここに居るっちゅう事を知ったら、今のウルサス軍はお前に刃ぁ向けると思わんか?……あぁ、言い訳はせん、これは純粋な脅しや。」
「……。」
黙り込むコシェルナに、続けて言葉を発する。
「保険を用意しときたくてなぁ。軍の上の方に俺っちの場所、空けといてくれや。」
「……良いだろう。だが、定期的に顔は出してもらう。少なくとも2年に一度だ。」
「交渉成立やな、これ以上は俺っちの身も危なくなるやろうし、さっさとお暇するわ。」
抜刀し、壁を破壊して脱出する。
予想外の行動に対応が遅れたウルサス兵の追跡は、あまりにも呆気なく撒くことができた。
———
a.m.11:14 / 晴天 / 視界:18km
ヴィクトリア外縁部から外へ6km 荒野
「……それで、どうするんだい?」
全身を黒いフードとコートで覆った一人の男が、紅いコートを羽織った男に一枚の資料を差し出す。
資料には一人のサンクタの
無骨な背景で撮られたシリンダー、天を穿ち全てを照らし出す神々しい光。
「私達は既に、引き返す事はできない。この流れに乗れば君もまた、逃れることは不可能だ。」
椅子に座る黒いフードの男の隣に立つ、一人のフェリーンが書類の山から数枚抜き取り、手渡す。
Outcast。紙にはそう書かれていた。
「選択は君の手に委ねられている。エリートオペレーターにも引けを取らない、並外れた戦闘力と経験は今我々が最も欲しいものだ。…エリートオペレーターと同等とはいかないが、それ相応の待遇は約束しよう。」
「ハァ……。」
「すみません…ドクターの執務室は原則禁煙です…。」
コートを羽織った男は、深く息を吐いて一本の葉巻を取り出した。
その行為は直ぐに黒いコータスに諌められる。
一瞬、部屋の空気が張り詰めるが、男はゆっくりと葉巻を懐へと戻す。
そして机の上に置かれた紙を手に取り———
「もっと喫煙所設置せぇ、話はそれからや。」
と言ったという。
終止符事務所
青いキチガイの知り合いに手を出してしまった結果、本になった哀れな人たち。
ウルサス軍に愛銃を奪われ、改良(?)されて返された。
強い制限の中で効率よく人を殺す技術が、制限のない世界に渡った結果が"あれ"
表情には出ないがタマキは内心にっこり。