【完結】もしもどこぞの都市のカポがアクナイの世界に転生したら 作:しきょーかい
投稿遅れてすみません
やること多すぎて休めない一般通過過労フィクサーになりました
休みをください
洞窟の奥へと進もうとした時、先程までの道を塞ぐための人為的な揺れではない、何かの余波のような、無差別な揺れがレイホンを襲った。
生き埋めになっても問題はないという自信があるが、それは自分だけの話だ。
(面倒やけど、ここで終わっちまうのは誰も望んどらんからな)
崩れる天井、降り注ぐ瓦礫。それらを爆砕して道を切り開く。
ふと、洞窟の入口から金色の光が差し込んだ。
ティカズとやらの血に由来する光でもなく、源石嵐が光を屈折させて生み出す赤黒い光でもない、この大地を包む闇を晴らす光。
土煙に隠れ、洞窟の奥から大急ぎで出てくる人影が見えた。
「さっさ出ろや、これで死んだら笑えんわ。」
「助かる。」
ドクター達とともに洞窟から出て、初めに目にしたものは青空だった。
たった一区画とは言え、暗澹とした天災を齎す雲を切り裂き、赤黒く煌めいていた源石クラスターが陽の光を浴びて独特の輝きを放つ。
地獄のような戦場の中に生み出された束の間の平穏。"それ"を生み出した一振りに興味が湧く。一度振らせてくれないか、と。
「戦況は膠着、ヴィクトリア軍の士気は高まり本領を発揮できるようになった。勝利の天秤はヴィクトリアの方へと傾くだろう。……我々の、
「まだ報われんやろ、終わっとらんしな。」
「そうだ。このような結果になることをテレシスが予測しないはずがない。」
「故に我が、うぬらがいる。『源へ帰れ』。」
「……あぁ。確かに、こういう時ん為に俺っちらがいるわ。」
ロゴスが言葉を紡ぐと、谷の向こう……遠くのクラスターが光る。同時に、確かに感じ取った"死"の気配に向かって刃を振るった。
ぽき、クシャ。
視界の端には、元々は綺麗に仕立て上げられていただろう襤褸切れがあった。
絶対に逃さない。そんな意思が伝わるほど、体に纏わりつく泥のような霧が立ち込める。
「ナハツェーラー……こんなに沢山……!」
吹き飛ばしたものは霊骸布、そして布に包まれた遺骸。
林の中から、地面の下から、川の中から。嫌な寒気を伴い、大量のナハツェーラーが現れる。
一発、弾丸をベルトから取り出して放り投げた。
「撃て。」
「了解。」
命令とともに、推進力を生み出すためでなく、狙撃のために作られた弾丸が火の元をを撃ち抜いた。
放り投げた弾丸は、小さくともレイホンが抑えるのに力を出す必要があるほどのエネルギーを持っている。エネルギーを向ける方向を知らない弾丸は、弾けると共に周囲の全てを焼き尽くす。
小さな太陽が、腐った霧を焼き払った。
両眼は、霧の間に自分とは比べ物にならないほど濃密な"死"を纏った者を捉える。
「ここで……お別れでええんやろ?俺っちが居ると邪魔やろうし。」
「———レイホンさん?」
「うむ。うぬ程の濃い"死"の気配を持つ者が残れば、その残滓だけでナハツェーラーは戦い続けるであろうよ。うぬと共にいる者はナハツェーラーに補足され、死の先に待つ安寧を自ら求めるやもしれぬ。」
「更に言うのなら、このナハツェーラーの軍勢は我々が向かう場所———祭壇を守る最後の防衛ラインだ。我々がここを突破し、ロゴスが
「レイホンを……置いていくという事か。」
「かの者を相手にして、守り続けることが出来るという保証はできぬ。……共に戦うにしても、存在自体が利敵となるのだ。」
ロゴスと
苦虫を噛み潰したように呟いたドクターも、未だ驚いているアーミヤも、理解はしているのだろう。
一刻を争う事態で、迷うことのどれだけ勿体ない事か。
「ほんじゃ、ここで依頼は終わりでええか?こっからは俺っち必要ないやろうし……。」
「あぁ、これ以上行動を共にすれば、互いにとって利はない。……報酬は必ず払われるだろう。」
「それもそっちが無事やったら……俺っちらが無事やったら……やろ?ハッ、9級の依頼でももうちょいマシな騙し方するんやないか?結局ん所、ここで別れても死ぬだけやろ。」
「そもそも、この戦争においてサルカズの勝利とは何かを考えてみた。同胞を見知らぬ土地に、薄汚い塹壕に置き去りにしてまで得たかったものは何か、と。私の予想が正しいのなら、この戦争の先に我々の……ロドスの目指す
「……。」
先から紫煙を燻らせる、咥えていた葉巻の火が消えた。
腐った霧が、冷えた空気が、レイホンのいる場ではないと伝えているかのようだった。
こちらを警戒し、間合いを計っていたナハツェーラーが一人進む。
それを皮切りにして一人、また一人と、死が波となって迫ってくる。
部下を肉壁にすれば逃れることは出来るだろう。それで得られるものは何も無い。
「『渡す』。先に進むといい。」
「話しすぎたな。Mon3ter、ドクターを運べ。……ナハツェーラーは、君に構っている暇はないだろう。バンシーの、弔鐘の王庭の主は片手間に御せる相手ではない。君
「……。」
「レイホンさん。いや———」
その間に、幾重にも重なる源石クラスターが道を作った。
うねりながらも、確実に。橋の形を取って道を作り出す。
遠ざかっていくドクターたちを眺めていると、アーミヤが自分の名を呼んだ。
「何や?」
初めて依頼を受けた時から、ずっと消えない敬語。
いつの間にか親指も大きくなり、各都市に食い込んでただでは消えない組織になっていた。
格が上がっても一切驕ることのなかったアーミヤは、真の意味でレイホンと目を合わせる。
「
「……ほぉ、意味分かっとって言うんやな?」
「星に宿る重みも、貴方の持つ願いも分からない若輩者ですが。求めるのは、貴方の持つ力です。」
「報酬は?」
「最高の勝利を。」
「命と引き換えにしちゃ、ちぃと軽いな。」
即座に拒否した。
戦争の果てに待つ、サルカズの英雄たちとの戦闘と聞けば胸が高鳴りはするが、現状を考えて『勝利』というのはこちらに齎されるものとは限らない。
レイホンを目当てにしなくとも、ロドスの連中は必ず祭壇を守る聴罪師たちと衝突する。
既に橋の半ばまで渡っているケルシーがああ言ったのは、無闇に命を散らさないようとの警告だ。
警告にしてはかなり遅いが、まだ間に合う。
「ならば我からは
「……まぁ、新生が何かは知らんけど、マシな報酬やな。」
星の名を聞き、状況に困惑する部下に命令した。
ロドスより先に、橋を渡り前進しろと。
「祭壇の影響のない俺っちらが切り込む。文句は言わせん。」
「それは———」
「報酬の踏み倒しはアカンやろ、絶対に払わせるさかい覚悟しとけや。」
ロゴスが阻んでいた、白色の骨が挙って押し寄せてきた。
踏み砕き、橋を駆けてドクターを追い越す。
ケルシーの飼う化物に守られ、その隙間から見えるバイザー越しの目は開かれていた。
何を言おうかと、逡巡したのも束の間、レイホンにも聞こえる程の声で言った。
「……
「おう、そう簡単にくたばりはせん。今まで見とったやろ?」
付いてくる少数の部下と共に、祭壇がある方向へ駆け出した。
背後からは死が、前方には計り知れない強敵と策謀が。
それでも不思議と、死ぬ気はしなかった。
なおロゴスも人のこと言えないほど死臭が濃い模様
ケルシーは言わずもがな
……フィリシンは強くなったのかな(突然の話題変換)
強くなってくれ