ホグワーツの廊下を歩いていると、向かい側からスコーピウスと知らない生徒が歩いてくる。
「こんにちはスコーピウス。隣にいるのは?」
「あ、えっと…。あの…」とスコーピウスが戸惑う。
おかしい。いつものスコーピウスならもっと自信に溢れているのに。
隣の少年が「こんにちは…アルバスです。」と答える。
アルバス…?
「アルバス?どの寮かしら?」と聞くと、
「スリザリン…です。あの、えっと」と更に戸惑って答える。
スリザリンにアルバスなんていたかしら?
アルバスが何か私に言おうとしていると、
「僕たち、別の世界からやってきたんです。」
とスコーピウスが決意のこもった瞳で私を見る。
アルバスは慌てて、「スコーピウス!言っちゃっていいの?」とスコーピウスを見る。
スコーピウスは、「言わないと逆に怪しまれるよ。」とアルバスを落ち着かせる。
別の世界??でもアルバスとは会ったことがないからあり得るかもしれない。
なんにせよ判断基準がなさすぎる。
「…詳しくは私の部屋で聞くわ。ここで話すといろんな人に聞かれちゃうからね。着いてきて。」
2人は恐る恐る私のあとをついてくる。
歩きながらもしかして、と思い
「…私のこと、知らないの?」と聞いてみる。
「あ、はい…」とスコーピウスが答えた。
「そう。じゃ、私はそっちの世界にはいないのね。」
「先生…ですよね?」とアルバスが言う。
「ええ。呪文学を教えているわ。」
2人が元居た世界では誰が呪文学を教えているのだろうか。
「ところで、アルバス、だったわね?」とアルバスの方を振り返る。
「あ、はい。僕、アルバス・セブルス・ポッターです。」
ポッター!?
「!!ハリーの息子…?」
戦争で例のあの人に殺されてしまった、『かつて生き残った男の子』の?
「はい。ダンブルドア先生からアルバスを貰って、スネイプ先生からセブルスを貰いました。」
ダンブルドア先生から貰うというのはなんとなく分かる。偉大な魔法使いだし、色々とお世話になったのだろう。
でも、スネイプ先生からは分からない。
確かにお世話になっただろうけど、特別スネイプ先生を選んだのはなぜだろう。
私が怪訝そうにしていたからか、
「スネイプ先生は亡くなっているんです。」とスコーピウスが目を伏せて言う。
そんな…。こちらでは生きているのに。と思いながら歩いていると、大きな木の扉の前につく。
「さあ、ここが私の部屋よ。入って。」と扉を開いて2人を招き入れる。
扉に鍵を掛け、呪文を唱える。
「『プロテゴ・トタラム』…『プロテゴ・ポリビリス』…『マフリアート』…」
2人は私の杖を振る様子に驚いている。
「ホグワーツの守りだって万全とは言えないし、誰かに聞かれたらまずいからね。」と言うと、
「ホグワーツが安全で無いなんて…」と2人ともショックを受けている様子だ。
「まあ、とりあえず座って。何か飲む?紅茶でいいかしら?」と私が言うと、
「あ、じゃあ…」とアルバスが頷く。
3人分の紅茶を用意して、机に置く。
「ふふ。他人からの飲み物を受け取れるなんて平和で羨ましいわ。」と言うと、2人が顔を引き攣らせて目の前のカップを見る。
「大丈夫よ。『ホメナム・レベリオ』『アパレシウム』」
私は呪文を唱えるが、紅茶は茶色から変わらない。
その様子を見て2人がほっと息をつき、カップを手に取る。
「2人は、別の世界から来た。そう言ったわね?」
紅茶を一口飲んでから、2人に尋ねる。
「はい、そうなんです。タイムターナーを使って過去の世界に行ったんです。そしたら元いた世界と違っていて…」
「過去の世界で何かをしたのね?」
ただ過去に戻っただけでは世界が変わることはない。
「うっ…は、はい…」とアルバスが言う。
「単刀直入に言うわ。何を仕出かしたの?」
声のトーンが自然と下がる。
きっと2人は過去の世界で大きく未来を改変させることをしたのだろう。
ハリーは生きていて、スネイプ先生が死んでいるというのは過去を少し変えたぐらいで起こることではない。
「えっと…」
「僕達、トライウィザードトーナメントが開催された時に戻ったんです。」
トライウィザードトーナメントは今から26年ほど前に実施された。
ビクトール・クラム、フラー・デラクール、ハリー・ポッター、そして…セドリック・ディゴリーが参加した大会だ。
「どうして?」
わざわざそこに戻る理由が浮かばない。
「セドリックを救おうと思って…僕たちの方では、セドリックは優勝杯をハリーと共に掴んで、その先で殺されてしまうんです。」
「だから何とかできないかと思って、ドラゴンから卵を奪おうとしているセドリックの杖を取ったんです。武装解除呪文で。」
「でも駄目で、今度は第二の試練で妨害したら、こんなことに…」
第二の試練の時の事は私もよく知っている。
湖から膨らんだ状態で出てきたことで皆から嘲笑され、死喰い人になったのだと父から聞かされた。2人はまだ、そのことを知らないのだろう。
「第二の試練で妨害された後、セドリックは死喰い人になったのよ。」
「「え!?」」2人が声を上げる。
「辱められたことで心に傷を負ったんでしょうね。ホグワーツの戦いで裏切った。そしてハリー達はあの人を倒すことはできなかった。今魔法界を支配しているのは闇の帝王よ。」
「そんな…」
2人はこの事実にショックを受けているようだ。
「だから表立って反逆を行うことは出来ない。でも、ハーマイオニーとロン、スネイプ先生、マクゴナガル校長先生、そして私はどうにかして対抗できないか考えているところなの。」
なるほど、と2人が頷く。
いまやホグワーツは闇の帝王に対抗する最後の砦だ。
「ところで先生、ローズって子はいますか?」
「ローズ?いいえ、いないわ。その子も消えてしまったの?」
「ハーマイオニーとロンがいるのにどうしてローズはいないんだろう…?」とアルバスがスコーピウスに言う。
「もしかしたら2人が結婚していないのかも。」
「ええ、2人とも独身よ。」と答える。
「というか色恋にうつつを抜かしてられない世の中だからね。」
常に闇の帝王陣営の動向をうかがわなければ不意を突かれてしまう。
「ああ、あとあまりセドリック・ディゴリーの名を言わない方が良いわよ。例のあの人と同じぐらい禁句とされているから。特にハッフルパフでは。」
ハッフルパフでは消し去りたい過去とされているので。
「そういえばセドリック…じゃなくて、彼はハッフルパフでしたね。」とスコーピウスが言う。
「ええ。父曰く、誰にでも分け隔てなく接する好青年だったそうよ。」
「そんな人がどうして裏切りなんて…」とアルバスが呟く。
父も彼の裏切りにショックを受けていた。
クィディッチでライバルだっただけに、彼が裏切りを行うような人物でないとよく知っていたからだろう。それがどうして闇に堕ちてしまったのか。
「もしかしたら組み分け帽子が選択を誤ったのかもしれないわね。」
グリフィンドール的なスネイプ先生をスリザリンにしたし。
「1人の青年の為に過去に行く2人の方がよっぽどグリフィンドール的でハッフルパフ的だわ。」と微笑みかける。
「因みに先生は?」と聞かれ、
「レイブンクローよ。どう?予想通りだった?」と答えると、
「グリフィンドールかレイブンクローだろうとは思ってました。」とスコーピウスが言う。
「まぁ、私の家系は代々グリフィンドールだったしね。」
父も母も伯父達も。
「そういえば先生の名前は?」
「あら、言ってなかったわね。私はメレディス。メレディス・ウィーズリーよ。」
「「ウィーズリー!?」」
またしても2人が声を上げる。そんなに驚くことかしら?
「…ということは、フレッド・ウィーズリーの娘ですか?」とアルバスに言われる。
「ええ、そうだけど…どうして分かったの?私の事は知らなかったのよね?」
どうして父が分かったのだろう。ウィーズリー家は沢山いるのに。
「ああ、えっと.......」とアルバスが口籠もる。
「えっと、ウィーズリー家で亡くなったのがフレッドさんだけだからです。その…ホグワーツでの最終決戦の時に。」
私が存在していないから、親が死んでいるのではないかと考えたのだろう。
「....そう、だったのね。」
父が生きているからってこの世界が良いとは思わない。幸せだとも思えない。
父のいない世界では、闇の帝王は倒された。けれど父が生きていて、闇の帝王を倒すことができる世界線もきっとあるはずで...。
「ああ、だから2人は過去に戻ったのね。」
なんとなく2人の気持ちが分かった気がした。
2人は誰も死なずにすむ世界を求めた。
けれど、それは叶わない。
ならば、せめて平和な世界が消えてしまわないように...
「ハーマイオニー達にも協力してもらいましょう。」
椅子から立ち上がる。
「多分全員校長室にいるだろうから、そこまで送るわね。」
「あの、先生は」
「図書室でトライウィザードトーナメントであなた達がしたことについて調べてくるわ。」と言うと2人の顔が強張る。
「ああ、責めてるわけじゃないのよ?ただ気になっただけ。」
「ああでも、私が口添えして事情を説明した方がいいか。取り敢えず、校長室に行きましょうか。」と2人に行って部屋を出る。
ここまでお読みいただきありがとうございました!!ふと思い浮かんだアイデアで書いたので特に続きはありません。ここから先は原作の呪いの子に繋がります(ハーマイオニーとロン、スネイプ先生が共に過去世界へ行き、2人の妨害を阻む)。ですので、この話は原作の寄り道と思っていただきたいです。