世界滅亡までに幸せになる、お嬢様と不良娘の百合のお話   作:トッチー@百合

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隕石衝突の日 第58話

「おばさま、お世話になりました」

「あら、もう行っちゃうのかい?」

「行きたいところがあるからさ」

「あ〜そうかい」

 

 フロントにやってきたわたくしたちは部屋の鍵を返却する。

 

「なんだか二人とも輪をかけて別嬪さんになったねぇ。肌に張りがあるわぁ」

「え、えー温泉の効能ですわね。とてもくつろげました」

「うんうん。若いっていいわね〜」

「ありがとうございました!」

 

 ブォンというオノマトペが付きそうな勢いで頭を下げて立ち去った。

 

「良い終末をね〜」

「……ユヅっち、バレてるっぽかったね。ウケる」

「なんであなたは落ち着いていますのっ」

 

 年の功というやつだろうか。おばさまは、なにかを察したけど口には出さないでおこうという気遣いを感じる表情だった。

 

「あ、お姉ちゃん!」

 

 振り返れば昨日の男の子がいた。

 

「弓道見せてくれてありがとう!」

「カッコよかったよ!」

「姉ちゃんのおかげで美味い酒が飲めたわ!」

「気をつけてね〜」

 

 見渡せば賭け事に集まっていた観衆がわたくしたちを見送ってくれている。朝から大勢の人々に注目される。

 けれどもその視線に怯えることは、もうない。

 寧ろ背中を押してくれる力とさえ感じていた。

 胸がすいている感覚とまた千鶴に救われたという事実を大切に噛み締めてから、わたくしは堂々と頭を下げて返事をした。

 

 バイクに跨り温泉街を後にする。ここで隕石を迎えるのもありだが、ネモフィラ畑をやはり見たい。隕石が落ちるのは今日の夕方らしいので、群馬から花畑のある茨城まで間に合うはずだ。

 色が見える状態での山下りはずっと楽しい。青空と新緑コントラストが飽きさせてくれない。

 さらに楽しい気分にさせてくれるのはこれ。

 山道のカーブに合わせて千鶴の腰をギュッと抱く。

 

 あーずっと千鶴を抱いてたい……。

 

 今までだって腕を回していたのに、今彼女の腰から伝わる恍惚感は倍以上だった。

 山を下り切ったバイクは県境を越えて茨城県に入る。お目当てのネモフィラ畑は海岸に近いらしい。群馬の山から茨城の海へは思ったより長い道のりだ。

 

 そろそろ休憩かしら。

 

 そう思った矢先バイクはするすると停車した。

 

「ユヅっち、めっちゃいいもの見つけちゃったよ。やりたいことリスト、まだやれるね」

「ここって……」

 

 煉瓦造りの塀に囲まれ、城のような円錐を冠した立派な建物。

 

「夢を叶えてあげましょう。私の花嫁」

 

 小悪魔みたいな笑顔は今日も眩しい。

 わたくしはこの素敵な女性と、この結婚式場で結ばれることにした。

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