引退したいオールマイト vs 自首したいAFO vs 何も知らない緑谷出久   作:バケギツネ

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AFOもオールマイトも覚悟したい。

 

 

『ふ〜、危ない危ない。』

 

 何とか防御が間に合った。かつて全因解放で自爆してしまった時といい、母の個性が無かったら、僕は何回死んでいたのやら。

 

『血剣!!!』

『破城槌!!!』

『ワイルドハント!!』

 

 おっと、隔壁の外側からは未だに衝撃が伝わってくる。ヒーロー達がこの防御を突破しようとしてるんだろうが、そうはいかない。

 

 幼少期から磨き続けたこの個性は、単純な硬さだけなら相当な自信がある。そう簡単には破られまい。

 

 あれ、でも外にはオールマイトも居るのか。いや、流石のオールマイトでもこれの突破は不可能、いや、うん、ちょっと不安になってきたな。

 

『おい、イレイザー。抹消できるか?』

 

『いや無理だ。殻の中に本体がすっぽり入ってる。目視できない。』

 

 幸い、相澤先生の抹消への対策であれば万全のようだ。コレも全て、僕が個性を発動するための隙を作ってくれた、マキアのおかげ。

 

 そういや、マキアはどうなった?お、ちょうど外から先生達の話し声が聞こえるぞ。

 

『おい、巨人の方はどうなってる?』

 

『あっちで倒れてる。ミッドナイト先生が匂いを嗅がせながら、マイクが耳元で囁きASMR中だ。』

 

『地獄か?』

 

 どうやらマキアは捕まってしまったらしい。

 

『それでもあの巨人、意識を失ってねえんだぜ?とんでもねえタフネスだ。』

 

『うぅ、主よぉ。ご無事ですかぁ、主よぉおおぉおおおお!!』

 

 マキア、ちょっと健気すぎるぞ。この期に及んで僕の心配しかしていない!

 

 何でそんなに忠誠心高いんだよ。僕はただ、たまたま死にかけてた所を助けて、望んでいた力を与えて、好きに暴れられ舞台を用意してやったくらいだぞ!?

 

 だがごめんマキア。助けに行きたいのは山々なんだが、僕は動くに動けない。だってイボを解除した瞬間、個性抹消からの教師陣リンチでボロ雑巾コースだ。

 

 今はただこうして立て篭もる事しかできない。あれ、何かイボにヒビが!?

 

 不味い。この個性は強力な分、持続時間が短いんだ。このままじゃ隔壁が砕け散って、

 

『やあ、AFO。私が来たぞ。』

 

 隔壁が消えて、明るくなった視界に映ったのは、笑顔のオールマイトだった。

 

 まるでイボの持続時間を完璧に読んでいたかのようなベストタイミング。

 

 これは、完全に僕を殺りに来てるな。

 

『やあ。来てくれて嬉しいよ。オールマイト。』

 

 精一杯の強がりと共に僕は目を閉じ、死を覚悟するのだった。だが、いつまで経ってもオールマイトからの追撃は来ない。

 

 恐る恐る半目を開けた僕の前に、彼は現れた。それは、13年ぶりに再会した意外な人物。

 

 

 

 

『血剣!!!』

『破城槌!!!』

『ワイルドハント!!』

 

 私の同僚達が、AFOの立て籠った要塞を突破しようと頑張っている。

 

 相変わらず彼らはとんでもない火力だ。私が喰らえば一瞬でミンチになるだろう。

 

 だが、AFOの隔壁はビクともしない。流石は魔王。こんな強力な個性を備えていたとは。

 

 だが、そんなに心配はしていない。雄英の誇る優秀なプロヒーロー達がここまで集結してくれたのだ。時間が経てば、さらに救援も増えるだろう。おまけに防御を解いた瞬間、相澤くんの抹消が待っている。

 

 いくらAFOでも、この状況をひっくり返す事はできないだろう。マキアの方も意識を何とか保っているとはいえ、動けなさそうだし。

 

 さて、そうなると本格的に私の居る意味が無くなってきたな。このままだとプロヒーローのお邪魔になっちゃいそうだし、

 

 よし帰るか。

 

 ギックリ腰も落ち着いて、動けるようになってきたし。一応、同僚達に一言かけてから避難するとしよう。

 

『なあ皆んな、』

 

『おお、オールマイト!頼むぜ、この防壁、ビクともしねえんだ!』

『貴方のパワーなら、ぶち抜ける筈です。』

『ここは一発、かまして頂戴!No.1。』

 

 どうしてぇ!?

 

 いや、私、見せ筋なだけで別にパワータイプじゃないよ!?

 

 だが、同僚の諸君からこうも熱心に頼まれては、どうも断りづらい。

 

『分かった分かった。一度やってみよう。』

 

 どうせビクともしないだろうが、それを見れば同僚達も私の非力さに気付く。そしたら、喜んで避難させてくれるに違いない。

 

『とは言っても、こんな(に硬い)隔壁が相手じゃな〜。レベルが違いすぎて、お話にならないというか。』

 

 そう僕のレベルが低すぎてお話にならないのだ。

 

『『『『っ!?』』』』

 

 だがそれを伝えると、周囲の先生達の顔が強張る。

 

 きっと、やる前からウダウダ文句を言ってる情けない私に、皆んなイライラしてるんだろうな。

 

『おっと失礼。さっさと済ませてしまおうか。』

 

 どうせ失敗するのだ。スムーズに行こう。

 

 じゃあ拳を握って、いや。グーパンでコレを殴るのは痛そうだな。私じゃ余裕で指を骨折する。グーパンはダメだ。

 

 じゃあ、デコピンでいっか。

 

『おいおい、デコピンって!?』

『私達の総攻撃でも突破できなかったんですよ!?』

『でもっ、オールマイトなら!』

 

 同僚達がザワザワし出した。言ってる事はよく聞こえなかったが、きっと私のやる気のなさに、皆んな呆れ返ってるんだろうな。

 

『えー、それっ!』

 

 とりあえずデコピン〜!

 

 あ、外した。デコピンすらも当てられないとは、本当に情けない。だがこれで同僚達も目を覚ましてくれ、アレ?

 

 防壁にヒビ入ってる!?

 

 まさか、私の秘められた力が覚醒したのか!?いや、それだけは絶対にない!

 

『本当にやりやがった!』

『デコピンだけで、あの堅牢な防壁を!』

『これがNo.1の実力っ!』

 

『いや、違くて。私は、その、デコピンでアレを壊したわけじゃ、』

 

 このままだと誤解が広がる!早く弁解しないと!

 

『確かに。オールマイトのデコピンは、防壁に直接触れてはいなかった。』

『となるとデコピンではなく、その風圧だけで、アレだけの破壊力を!?』

『こう言っちゃ失礼だけど、化け物ね。』

 

 いや違う!そうじゃない!

 

 不味い。実に不味いぞ。そうこう話しているうちに、隔壁は完全に砕けて、中にいたAFOと対面してしまう。

 

 え、えっと、そのぉ、

 

『やあ、AFO。私が来たぞ。』

 

 頭が真っ白になった私は、引き攣った笑顔で気さくな挨拶をするという奇行に走る。

 

『やあ。来てくれて嬉しいよ。オールマイト。』

 

 対してAFOは余裕たっぷりと言った口調で、僕を出迎えるのだ。

 

 まさか奴は、防壁をわざと砕いて私を誘い込んだのか!?

 

 また同じ手に引っ掛かってしまった。だが気付いたところでもう遅い。

 

 相澤くんの抹消で個性の使用を封じられても、今の私なら軽いボディーブローくらいで普通に死ねる。

 

 AFOがどれだけ肉弾戦に強いかはよく分からないが、私より弱いという事はないだろう。

 

 となると詰みだ。

 

 奴は最後の抵抗とばかりに、何としてでも私を仕留めようとするだろう。

 

 私は死を覚悟して目を閉じる。

 

 同僚諸君。どうか敵をうってくれ。

 

 さらばだ!!!

 

『・・・・・・おや?』

 

 いつまで経ってもAFOからの追撃は来ない。恐る恐る半目を開けた私の目の前で、その異変は起こった。

 

『何だこれっ!?』

『あのモヤに気をつけろ!何人か飲み込まれたぞ!』

『それだけじゃない!その向こうから、何か出て来る!』

 

 湖の中から次々と、特異な姿をした生物が顔を出していた。

 

『まさか雄英にたった1人で踏み込むなんてな。相変わらず無茶苦茶だ。心配する“僕”の身にもなって欲しい。』

 

 1人の男が現れる。先程の化け物とは違い、れっきとした人間だ。ヴィランリストにある程度目を通している私も、初めて見る人物。

 

 それは、AFOとよく似た仮面を身につけた、黒髪の青年だった。

 

『何者だ、お前は?』

 

「んん?“僕”に聞いてるのか?敵の前で名乗るなんて、ヒーローじゃあるまいし。」

 

 私からの問いに青年は肩をすくめる。

 

「まあいい。名乗っておこう。僕の名は死柄木弔。敵役(ヒール)だ。」

 

 此方へと向けられるその視線には、私への強い憎悪が宿っていた。ような気がする。多分。

 

 

 

 

『悪いな。しょう、イレイザーヘッドに。ひざ、プレゼントマイク。お前らがいると厄介なんだ。早々に退場してもらう。』

 

『っ!?』

『うぉっ、何だテメエ!?どっから現れた!?』

 

 初めの標的は、相澤先生とプレゼントマイクだった。

 

 一応僕の部下であるワープゲート使いの白霧。突如、死角から現れた彼が、相澤先生とマイクをモヤで包み、何処かへと連れ去ってしまった。

 

 一体、何がどうなってんだか。

 

 混乱する僕を置いてけぼりにして、事態は進む。USJの至る所で、湖から現れた化け物が暴れ始めた。

 

 あれはもしかして、ドクターが前に言ってた改造人間・脳無か?数百体はいるぞ!?

 

 アレは人間を素体にしないといけないから、作るのは控えるよう、ドクターにはキツく言っておいたのに!

 

 あれ、よく見たらあの脳無たち、僕の知っているのとタイプが違う?

 

『なんなんだ、この化け物どもは!?』

『コイツら、人間ではありませんね。』

『全員機械だ!入学試験で使われるような、高性能の自律型!』

 

 なるほどなるほど。差し詰めアレらは“メカ脳無”といった所か。人間が犠牲になっていなくて良かった良かった。

 

 いや何も良くない!

 

 白霧は、気絶していたマキアを何処かへとワープさせた後、僕の元までやって来る。

 

『よぉ魔王様。』

 

『一体どういうつもりだい?付き添いは要らないと言ったはずだが?』

 

 思わず、僕の口調も刺々しくなる。

 

『っ、悪かったって。言いつけに背いちまって。』

 

 ホントに何をやってるんだ。勝手にメカ脳無を送り込んでくるなんて。これじゃあ僕が指示したって思われるだろ。余罪を増やすんじゃない。

 

 いやまあ、この混乱のおかげで、オールマイトから距離をとる事はできたから、助かったっちゃ助かったんだけど。

 

 そんな事を考えて、仮面の奥で複雑な顔をする僕の前で、白霧は弁解を続けていた。

 

『でも、これには事情があるんだって!やむにやまれぬ事情が!』

 

『事情だって?』

 

『ああ。説明するより、直接会ってもらった方が話が早い。彼だよ。』

 

 頭をポリポリとかきながら、白霧はまた別のゲートを開く。

 

「まさか雄英にたった1人で踏み込むなんてな。相変わらず無茶苦茶だ。心配する“僕”の身にもなって欲しい。」

 

 そこから出てきたのは、僕とお揃いの仮面を身につけた、黒髪の青年だった。

 

『何者だ、お前は?』

 

「んん?“僕”に聞いてるのか?敵の前で名乗るなんて、ヒーローじゃあるまいし。」

 

 オールマイトも、その青年の素性には心当たりがないらしい。僕だって、それは同じだ。

 

「まあいい。名乗っておこう。僕の名は死柄木弔。敵役(ヒール)だ。」

 

 死柄木!?僕の苗字じゃないか。ホントに誰だよ君!?

 

『死柄木弔だと?AFO!奴は一体何者なんだ!?』

 

 僕に聞くなよオールマイト!知るか!

 

「久しぶりだな。先生。」

 

 自称・死柄木弔くんも、やたらと僕に馴れ馴れしいのなんなの!?

 

 え、誰?誰なのこの子!?

 

 えーっと落ち着け。冷静に考えてみるんだ。死柄木弔くん(仮)の正体を。

 

 まず、僕の直系子孫という線は無い。何故かって?

 

 かれこれ100年以上は生きている僕だが、未だに女性経験はないからだ。

 

 はい、この話終わり。

 

 さて、そうなると与一の子孫だったり?

 

 確かに僕は与一の子孫が今どこで何をしているのか、まるで分かっていない。

 

 一度は、彼の血脈全てを未来永劫見守り続ける事も検討した。が、AFOの因縁とは関係なく生きて欲しいという与一の願いを汲んで、それは却下したのだ。

 

 だが、与一の子孫という線も無いだろう。与一の血が流れていれば、兄として僕が気付かないわけはないからだ。

 

 という事で結論が出た。死柄木弔くんは、僕の息子を名乗る不審者だ。うん、一番ヤバいな。怖っ。

 

 僕が衝撃の事実に震える中、死柄木弔くんは無遠慮に距離を詰めて来る。

 

「先生が目覚めたと聞いて、本当は直ぐにでも駆け付けたかったんだ。でも、海外での活動で手が離せなくて。まあ、先生ならとっくに知ってるだろ?ほら、ウォルフラムの件だよ。」

 

『あ、あー、うん。そうだね。』

 

 ウォルフラム?

 

 ああ、思い出した。海外で捕まったっていう手配中のヴィランだ。僕が目覚めたばかりの頃、そのニュースを見た覚えがある。

 

 “世界各地で自警活動を行っている謎の組織”に襲撃され、ヒーロー事務所の前に転がされていたとか。

 

 あれ、君の仕業だったの!?

 

『えっと、どうしてそんな事を?』

 

「憧れたからだ。13年前、僕を救ってくれた先生の生き様に。」

 

 13年前?

 

 13年前っていうと、僕がオールマイトと戦って(戦ってないけど)、瀕死の重症(自傷)を負った頃じゃないか。

 

 その辺りであった事といえば、あ。もしかして、彼は、

 

『志村転孤くん...?』

 

「その名前は、あの頃の弱い自分は、もういない。弔った。今の僕は死柄木だ。」

 

 ま、マジか。

 

 かつて僕を追い詰めた、オールマイトの師でもあるヒーロー・志村菜奈。

 

 その孫である志村転孤が、死柄木弔くんの正体だった。

 

『お師匠のお孫さんが、ヴィラン、だと?っ、AFO!答えろ!一体どうしてそんな事になっている!?』

 

 どうしてそんな事にだって!?そんなの僕が一番聞きたいよ!ホントにどうして、そんな事になってるんだ!

 

 確かに13年前、転孤くんとは色々あったが、僕を恨みこそすれ、慕うキッカケなんて無かったはずだ。

 

 いや、まあ、無かった?よな?うん、絶対無かった!

 

 だが、何せ13年前の事だし、その後のオールマイトとの死闘の事が濃すぎて、記憶が朧げだ。

 

 ここは一つ、思い出してみるとしよう。

 

 13年前の転孤くんとの出会いを。

 

 

 

 

『おいAFO!何をボーッとしてる!お前は一体、転孤くんに何をしたんだ!?答えろーっ!!』

 

 

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