引退したいオールマイト vs 自首したいAFO vs 何も知らない緑谷出久   作:バケギツネ

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オールマイトは囮になりたい。

 

◇ side:オールマイト

 

 もう訳が分からない。一回整理してみよう。

 

 洗脳された転孤くん。緑谷・爆豪少年。そしてよく分からん白いモヤモヤ。

 

 この4人が、私ではとてもついていけないような、ハイレベルな戦いをし出したと思ったら、

 

 AFOが巨大ロボに変身し、葉隠少女に変装していた、ヒューマライズの新指導者に戦いを挑むも、返り討ちに遭って、

 

 やっぱり訳が分からない!!!

 

 それでも、

 

「僕は今度こそ、どんな手を使ってでも先生を助ける、真の悪役(ヒール)にならなくちゃ...!」

 

『弔くん...!誰か、助けてやってくれ!』

 

 転孤くんやAFOの姿を見て、ヒーローとしてやるべき事はすぐに分かった。今の彼らが敵だとは分かっていても。

 

 私が駆け出すと同時に、緑谷少年と爆豪少年も動き出していた。そうだよなぁ。こういう危ない時に限って、身体は勝手に動いてしまうもんなんだ。

 

 それにしても、緑谷少年と爆豪少年は息ピッタリだな。幼馴染ってのもあるんだろうが、ここ半年で野生のヴィラン騒動に一緒に巻き込まれ続けた成果でもあるんだろう。アイコンタクトだけで連携の段取りを済ませている。

 

 こんな事を言ったら、ツンデレの爆豪くんはキレるだろうけど、将来は2人でタッグヒーローとしてやって行くのも良いんじゃないかと思っている。私とエンデヴァーのように、いつかはヒーロー界随一の仲良しコンビになって欲しいものだ。

 

 さあ、そんな明るい将来のために、せいぜい私は、雑魚なりに気張るとしようか!

 

『うっせえぞクソヴィランが!』

 

 まずは爆豪くんが、陽動の爆破で黒ローブの気を逸らす。陽動と言いつつも中々の威力だ。アレが私に向けられたらと思うと、背筋が凍る。

 

SHUWATCH(シュワッチ)!』

 

 及ばずながら、私もお手伝いさせてもらおう。巨大オールマイトの虚像を作って、敵の注意を惹きつけておく。

 

【っ、マキア戦で見せた、オールマイトの巨大化か!】

 

 その隙に、虚像に隠れた私の本体と、緑谷少年で、転孤くん達を避難させてしまおう。さあ、正直ここからが1番の踏ん張りどころ。

 

「んぎぎぎぎぎぎぎぎ!!!!!」

 

 歯を食いしばって、転孤くんの身体を持ち上げようとする。だが、私のモヤシボディーでは、これだけでも相当キツイ。

 

 ヤバっ。虚像を維持する力が弱まって、

 

【なんだこれは!? 巨大化したオールマイトがチッカチカ点滅している!? これはどういう状態なんだ!?】

 

 よかった。逆に注意をひけたらしい。今のうちに頑張って、よしなんとか持ち上がったぞ! 火事場の馬鹿力というやつかもしれない。

 

 転孤くんの体重が体格の割に軽かった事も幸いだった。きっと彼はグラントリノと同じように、個性による飛行がしやすいよう、m g単位で体重を管理していたのだろう。

 

 そう言う意味では、彼を救ったのは彼自身の努力だと言えるかもしれない。

 

 あ、行けない。なんかほっこりしてたら、虚像を維持する集中力がまた切れて、

 

【なんだこれは!? 点滅していたオールマイトが、今度はフニャフニャに溶け始めたぞ!? 一体さっきから何をしている!?】

 

 よし。もうちょい時間を稼げそうだ。

 

 あ、ちょっと待って緑谷少年! 行くの早い! 私追いつけなくなっちゃうから!

 

「ああ、すいませんオールマイト。失礼します!」

 

 アワアワしていた私を見兼ねた緑谷少年が、転孤くんを抱える私を、丸ごと持ち上げ小脇に抱える。

 

 彼は既に、AFOと白霧を既に抱えていたというのに。相変わらず凄いパワーだ。これで個性は関係ないんだから恐ろしい。こんな逸材がどうして今まで眠っていたのやら。

 

『緑谷少年。そのほんと面目ない。』

 

「いえそんな。こちらこそ無理をさせてしまってすいません!」

 

 え、なんで緑谷少年が謝ってるんだ?

 

「オールマイトは、僕たちが到着するまでのAFOとの戦いで、消耗が激しいはずです。だから今は、僕とかっちゃんに任せてください。」

 

 あの緑谷少年。ぶっちゃけると私、このUSJに来てから、まともに戦ってないんだ。

 

 ハッタリをかましたり、OFAの虚像を出したり、自滅で腰を痛めたりはしたが、それ以外のダメージは一切受けていない。

 

 勘違いさせたままだと申し訳ないし、一応その辺りを伝えておくか。

 

『安心してくれ緑谷少年。私はこのUSJで、擦り傷1つ負っちゃいないさ。』

 

 当然だ。何度も言うがまともに戦ってないんだからね!

 

「な、なるほど流石ですね...!」

 

 ん、流石ですね?

 

 ああなんだ皮肉か。緑谷少年も言うようになったじゃないか。困ったな。何も反論できないぞ。

 

「だったら、やっぱりオールマイトがあの黒ローブの足止めをした方がいいんじゃ、」

 

 えぇ!? 今の話の流れでどうしてそうなっちゃうの!? 私に死ねと言うのかな!?

 

 私がAFOらとまともに戦おうとしなかった事に、緑谷少年がそこまでキレているとは思わなかった。

 

 ち、違うんだよ。いやまあ違くもないんだけど。ほらさ、私も戦う気はあったんだけど、寧ろ足手纏いになるかと思って、

 

 え、って言うかマジで、私があの黒ローブと戦うの!? 個性抜かれた転孤くんより、余裕で弱いと思うぞ私!

 

 やばい。ちょっと寒気がしてきた。汗もダラダラ垂れてきたし、吐き気もする。

 

「ちょ、大丈夫ですかオールマイト! 酷い顔色ですよ! やっぱり本当は戦いでの消耗が、」

 

【なんだこれは!? フニャフニャ溶けてたオールマイトの肌色が、クソを下水で煮込んだみたいな色に変わっている!? オールマイト、君はどういう生き物なんだ!?】

 

 お、落ち着け。落ち着くんだ。

 

 この場で動ける唯一の大人として、私が足止め役を担うのは当然のこと。そう。当然のことなのだ。

 

 よし、勇気を出して名乗り出よう!

 

『だ、だだだだだだだだ、大丈夫だ、わ、わわわわわわあわわわたしが、ここへのこここここ、』

 

「【オ、オールマイトがバグった!?」】

 

 だ、だめだ。緊張のせいで呂律が回らない。

 

「オールマイト。やっぱり今の貴方は戦える状態じゃありません! もしかしたら、戦いで古傷が開いたんじゃ、」

 

 いや違うんだよ。そっちは大丈夫なんだ。古傷なら毎日のように開いたり閉じたりしてるから、ある意味いつも通りと言えるし、

 

 あ、やばい。OFAの虚像もそろそろ限界だ!

 

【消えた? っ、そこに居たかオールマイト。】

 

 不味いぞ。とうとう黒ローブに私の本体が見つかってしまった。

 

 やっぱりこうなったら、私一人が囮になって、皆んなに逃げてもらうしかない。いやまあ、何秒稼げるかは分からんが。

 

『爆豪少年〜っ! 緑谷少年〜っ!』

 

 観念した私は情けない叫びをあげる。

 

 黒ローブには瞬間移動がある事だし、きっと私は一瞬で殺される。

 

 それはきっと言いようもない程に惨たらしい死だ。サーの予言の日は間違いなく今日だろう。

 

『目を塞ぐんだぁああああ!』

 

 かつては私に憧れてくれていた2人の少年に、そんなショッキングな光景を見せたくはない。

 

 そんな想いを込めた叫びだ。

 

「「目を塞ぐ? そう言うことか!」」

 

『え?』

 

 爆豪少年と緑谷少年が何かに気付いたらしい。すぐさま動いた爆豪少年が使ったのは、爆破のエネルギーを活かした目眩し。

 

閃光弾(スタングレネード)!」

 

【エニー・テレ・・・っ!?】

 

 その光は、丁度、瞬間移動しようとしてた黒ローブの眼を塞ぐ。

 

 いや違うって。誰の目塞いでんだよ。いやまあ、結果的に超ファインプレーだし、君は命の恩人だありがとう?(大混乱)

 

「ハッ、やっぱりな。そっちのワープ、目線のピントを合わせたとこに飛ぶんだろ? 予備動作が分かりやすいんだよアホが!」

 

 はぇ〜、相変わらず爆豪少年、目の付け所がいいなぁ〜。私そんなの全然気付いてなかったよ。

 

 ん、緑谷少年? 何その目は。いやほんとに気付いてなかったよ私は。いやマジで。ただの偶然なんだって。

 

「おいどうしたローブ野郎!? オールマイトばっか見てて、俺への反応が遅れたかぁ?」

 

 爆豪少年は、眼を抑えた黒ローブを相手に、容赦なく最大火力の爆破攻撃を連発する。

 

 なんつー火力だ。私の致死量の何百倍だろう。

 

「分かんねえなら教えてやんよ!」

 

 爆豪少年は回転しながら、その手に爆破のエネルギーを収束させていく。

 

 あれはこないだの戦闘訓練で見せた彼の必殺技。サウザー、あれハウザーの方だったかな? えっと、ハウザー、ハウザー・・・

 

 ハウザーなんちゃらの構えだ!

 

「テメエが一番、警戒しねーといけねえのは、オールマイトでも、AFOでもねえ! 今目の前にいるこの俺だぁ!」

 

 爆豪少年の渾身の爆破がクリーンヒット!

 

『やったか!?』

 

「やれてるわけねえだろボケが! 手応えが足らんかったわ、クソが!」

 

 そんなに怒らなくても。

 

 あれ? なんか爆豪少年が、爆速ターボでこっちに近づいてきて、

 

「アンタら怪我人がここいると、俺の邪魔だ! デクと一緒に早く消えてろぉ!」

 

「ちょ、待ってかっちゃ、」

 

「爆破式カタパルトォ!!!」

 

 爆豪少年は、回転を加えた投げと、爆破による風圧で、私やAFOらを抱えた緑谷少年の身体を、遥か遠くに投げ飛ばす。

 

 スポーツテストでやっていた、ボール投げの応用だろう。

 

 その甲斐あって、私達は爆速で空をかっ飛んでいき、黒ローブの射程から逃れる事に成功するのだった。

 

 あれ、爆豪少年は、着いてきていないのか?

 

 まさか彼はたった1人で、 

 

 

 

【たった1人で僕の相手をする気かい? 友達を助けるために自らを犠牲にする。その年で大した精神性だ。】

 

「2つ訂正してやるよ。まず一つ。友達っつーのがデクの事ならそれはテメエの勘違いだ。」

 

『なるほど。で、二つ目の訂正は?』

 

「犠牲になるつもりなんざ、俺にはこれっぽちもねえよ! 勝つのは俺だからなぁ!」

 

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