引退したいオールマイト vs 自首したいAFO vs 何も知らない緑谷出久 作:バケギツネ
◇side:爆豪勝己
【随分強気だね。】
「ったりめえだ! 負けるつもりで戦うヒーローがいるかよぉ!」
デクの野郎とオールマイト、ついでに他の敵の奴らは、遠くに逃がした。これでもう邪魔者はいねえ。遠慮なく俺の爆破をブッパできる。
「お得意のワープでAFOを追わねえのか? まあ、そうしてねえって事はできねえんだろうなぁ。射程だか座標だかの制限で使えねえってとこか?」
【正解だよ、察しがいいね。ワープゲートも意外と不便だ。他人の個性は、自分で奪って使ってみないと、欠点がまるで分からなくてね。】
「ハッ、借りパク野郎が。他人の個性で言い訳か? 」
【おっと、これは手厳しい。】
ただでさえ厄介なローブ野郎が、AFOまで手にしてたら、いよいよ手がつけられなくなる。そういう意味でも、AFOを逃せたのはデケエ。
くそ腹立つが、デクの野郎の判断は正解だった。
【やれやれ。何事も計画通りには行かないな。本来ならね、ヒューマライズを餌にして死柄木弔を雄英に呼び寄せ、オールマイトと衝突させる。そうする事で、13年間潜伏していたAFOも表舞台に引き摺り出す。そういう算段だったんだよ。】
ローブ野郎は肩をすくめる。
【オールマイトとAFOも、もっと潰しあってもらって、互いに消耗した所を狙うつもりだったんだけど、】
「ハナっから漁夫の利狙いか? チキン野郎が。」
【なんせ相手は魔王と平和の象徴だからね。特にオールマイトは、その個性すらも未知数だ。】
「・・・お、おお。」
【怪力。ブースト。全知全能。メディアでも様々噂されているが、彼の個性が規格外のものである事は間違いない。そりゃあ警戒もするさ。】
「・・・・・・」
【え、さっきからなんだい? その可哀想なものを見るような目は。】
ローブ野郎、OFAの秘密を知らねえのか。
オールマイトの個性やAFOとの因縁は、俺も入学したての頃に本人から直接聞いた。
誰かに受け継げる事を除けば、“画風を変えるだけ“の力。それこそがオールマイトの個性・OFAの正体だった。
正直言ってそこまで強え個性でもねえ。あの個性は、オールマイトが使うからこそ、最大の力を発揮できる代物。それを知ってれば、わざわざ奪おうとはしねえはずだ。
【そうだ爆豪くん。君はオールマイトの個性について何か聞かされていないかい? ほら、彼の息子の出久くんは、君の“お友達”だろう?】
「あん!? デクの野郎が俺のお友達だぁ!?」
【え、ああ。すまない。出久くんは、君の“大親友”、】
「そうじゃねえ!」
【え、違う!? じゃあまさか、恋人・・・すまない。気がきかなかったね。】
「だから違えっつてんだろうが!」
マジでなんなんだコイツは。
AFOと似た個性で、オールマイトを狙ってる割には、こっちの内情を余りにも知らなすぎる。
この分だと、オールマイトの個性がデクに譲渡されてんのも、アイツは気付いてねえはずだ。
だとすっと、余計にアイツの正体が分からなくなる。
死柄木達も、ローブ野郎がAFOの力を使った時は驚いていた。アッチも、ローブ野郎の素性については詳しく分かってねえんだろう。
「おい、テメエは一体何者だ? 死柄木は、ヒューマライズの指導者っつってたが。」
【うんそうだよ。個性終末論を信じ、個性所持者の淘汰を目論むカルト教団のトップ。それが今の僕の立場さ。】
「個性終末論?」
個性学の授業で少し齧ったのを憶えている。確か、年々強くなってく個性の力が人間の制御を超えて、人類を滅ぼすとかいうやつだ。
ヒューマライズはそれを真に受けて、世界各地で個性所持者を狙った事件を起こしてるらしい。
「テメエもあの、馬鹿げた思想の信者ってわけか?」
【・・・馬鹿げた思想、か。】
「あん?」
【いや何でもないよ。そう。僕はこの世界から個性を根絶したい。でもそれは、組織の掲げる理想とは、少し違う。ヒューマライズは、僕の夢を叶えるために利用させて貰ってるんだよ。】
「・・・夢ぇ? テメエは何がしてえんだ?」
【集めるのさ。全ての人が持つ個性を、僕の個性・AFOの下に。】
「皆んなは1人のために、ってか?」
奴の口から飛び出したのは、余りにも突飛で荒唐無稽な夢。
だが最悪な事に、個性を奪えるAFOの力なら、あながち不可能とも言い切れない。
【僕は誰よりも特別な存在になりたいんだ。個性を持った唯一の人類にね。どうかな? 素敵な夢だと思わないかい?】