引退したいオールマイト vs 自首したいAFO vs 何も知らない緑谷出久   作:バケギツネ

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爆豪勝己は奮闘したい

 

◇side:爆豪勝己

 

【僕は誰よりも特別な存在になりたいんだ。個性を持った唯一の人類にね。どうかな? 素敵な夢だと思わないかい?】

 

「ハッ、寝言は寝て死ね。」

 

【フフッ、ひどいな〜。人の夢を嗤うなんて。】

 

 奴は頭を抱えて、ケラケラと嗤い出す。わざとらしいその仕草からは、緊張感が全く感じらんねえ。

 

 俺なんざは敵としちゃあ、まるで眼中にねえってサマだ。気に入らねえ。

 

【ああすまない。ついつい長話をしてしまったよ。爆豪勝己くん。君は、僕が昔お世話になった人によく似ていてね。ついつい口が軽くなってしま、】

 

 奴が話している最中、俺の正面に白いワープゲートが開く。

 

「っ!!」

 

 そこから伸びた奴の手に触れられねえよう、爆破で後ろに飛び退いた。

 

【あちゃ〜。不意打ち失敗か。】

 

「随分せこい真似するじゃねえか!」

 

 死柄木と白霧の奮闘で、奴の手の内はかなり割れてる。中でも特にウザってえのが、このワープゲートと、瞬間移動だ。

 

 必死で警戒してた。だからこそ、こうして避けれた。

 

 ローブ野郎は他にも、腐るほど個性を持ってるんだろうが、それが単純な攻撃系の個性なら、初見で捌ける自信がある。

 

 そう全ては、デクの野郎がオールマイトの個性を継承してから始まった、あの地獄の日々のせいだ。

 

 俺は毎日のように、ヴィランに襲われ、人質としてとっ捕まった。そんなクソみてえな屈辱の日々が、俺を急速に成長させたんだろう。

 

 いつ何処でどんな風に襲ってくるか分からないヴィランと日常的に接するうちに、俺の“眼”は磨かれていった。

 

 個性を発動する際の”起こり“。そのタイミングを、相手の視線や表情、重心の移動から、見抜けるようになっていた。

 

【ロング・ボウ!】

 

 奴の腕は変形して、高速の弓が射出される。だが、その狙い目が予め分かってれば、避けんのは余裕だ。

 

【モンスター・サモン!】

 

「APショット!!」

 

 奴が土から生み出そうとした怪物も、その形が整う前に、爆破の弾丸で撃ち抜いてやりゃあ、すぐに崩れる。

 

【エニー・テレポ】

 

「それはもう、通じねえっつってんだろーが!」

 

 ローブ野郎が瞬間移動してくる位置を、目線で暴いて爆破の直撃で出迎える。

 

 今度はちゃんと手応えがあった。

 

【君、ほんとに15歳? 戦い慣れしすぎだよ。】

 

 奴の声が変わっている。首にでもつけてたボイスチェンジャーが、さっきの爆破で壊れたんだろう。

 

 その肉声は透き通るような中性的な声だった。

 

【爆豪くんがヴィランに襲われだしたのだって、ここ1年の話だろう? いくら何でも成長速度が早すぎる。】

 

「当然だ! 俺はいずれオールマイトを超えるヒーローになる男! そこらのモブとはセンスが違えんだ!」

 

 爆破のエネルギーを手に溜めながら、身体に回転を加えていく。

 

【あの必殺技かい? 悪いけどやらせはしない。】

 

 俺の四方八方に、複数のワープゲートが一気に開く。

 

 ワープゲート同士の隙間を別のワープゲートが塞ぐことで、俺の逃げ道は完全に断たれちまった。

 

【さあ、もう逃げ場はない、】

 

「テメエがなぁ!」

 

 一か八かでワープゲートに自ら突っ込む。

 

 きっと奴は、ワープゲート越しに俺を攻撃しようとしてたはずだ。だったらこのワープゲートを潜った先は、

 

「当然っ、テメエの真ん前だよなぁ!」

 

【躊躇なく飛び込むか、普通!?】

 

 至近距離で渾身の一撃を叩き込む。

 

「ハウザーインパクトォ!!!」

 

【衝撃波+バリア+アイアンボール!】

 

 しかしそれも、複合個性による防御で抑え込まれてしまった。

 

【危ない危ない。奪った個性なら山ほどあるからね。組み合わせれば、防御だってお手のものさ。】

 

「ウザってえ! 逆に何ができねえんだテメエは!?」

 

 爆破による後退で、すぐさま奴から距離を取る。気を抜けばすぐに、奴の反撃が飛んでくるだろう。

 

 アイツの動きや視線から、次の動きを先読みして、

 

【ブレインリモード。】

 

 奴と目が合った瞬間。視界がぼやけて頭ん中には靄がかかる。

 

「目を合わせてっ、発動させる個性かっ...!」

 

【ああ。君が僕の視線から動きを読んでくるのなら、必ず引っ掛かってくれると思ってね。】

 

「クソがぁ...!まさか、A組(ウチ)青山優雅(ナルシ野郎)をやったのもっ、この個性か!?」

 

【え? いや。そっちは全然分かんないけど。】

 

 このままじゃ眠っちまう。しゃあねえ。多少痛えだろうが、自分自身に爆破を当てて目を覚ますしか、

 

【さて、念には念を入れよう。これでサッパリするといい。】

 

 俺の頭上に雨雲が発生し、そこからの土砂降りにずぶ濡れにされる。

 

【湿気は爆破の天敵だろう? コイツをずっと当てたかったんだけど、ほら君、すばしっこかったから。】

 

 俺の個性は掌の汗腺から出たニトロの汗を爆発させてる。

 

 さっきの雨で汗も流され、身体もだいぶ冷えちまった。これじゃあ威力のある爆破は出せねえ。

 

【君との戦いは楽しかったよ。その個性も僕が有効に使わせてもらう。だから安心して夢の世界へお行き。】

 

 頭ん中がどんどんボヤける。ざけんな。俺は、俺は、まだ、たたか、え・・・

 

 

 

 

 

◆ side:????

 

【おやすみ。爆豪勝己くん。】

 

 漏らした声には、思いの外疲労が滲む。正直なところ、彼にここまで粘られるとは思っていなかった。

 

 オールマイトがAFOを助けたことといい、雄英に足を踏み入れてから、積み重なっていく“想定外”。

 

 歯車は確実にズレている。

 

【だけど……】

 

 その瞬間、こめかみを貫く鋭い痛みに頭を押さえる。


 この個性を手にしてから、嫌というほど味わった感覚だ。脳裏には見たくもないヴィジョンが強制的の浮かんでくる。


 オールマイトが、見るも無惨な姿で死に絶える未来。

 

 AFOが、僕の手によって吹き飛ばされる未来。

 

 揺らがない。どれだけ今がズレようと、この一点は決してブレない。

 

【やるしかない。ずっと前から分かっていた事じゃないか。】

 

 自分自身に言い聞かせるように呟いて、視線を爆豪勝己へと向ける。

 

 理想の夢の中に閉じ込めている今なら、何を言っても彼に聞かれはしないだろう。

 

【すまない。許してはくれないだろうが、分かってくれ。】

 

 その手を伸ばす。迷いはない。

 全ては僕の夢を叶えるため。全ては未来の皆んなの笑顔のために。

 

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