引退したいオールマイト vs 自首したいAFO vs 何も知らない緑谷出久   作:バケギツネ

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オールマイトは煽りたいし、AFOは投降させたい。

 

 

『まずは貴様だオールマイト!我が主に、癒えぬ傷を負わせた報い、その身で受けるがいい!』

 

 マキアとかいうその巨人は、私を睨みつけながら咆哮をあげる。こうして見ると凄い迫力だ。怖すぎる。正直、今にもチビりそうだ。

 

 うん、死んだな私。

 

 サーの予知もこの時の事を指していたのかもしれない。巨人のヴィランにグチャグチャにされるのは、確かに凄惨な死だと言えるだろう。

 

 だが、奴のヘイトが相澤くんでなく私に向いているのは不幸中の幸いかもしれない。

 

 なんせ私は知っての通りのクソ雑魚だ。やられたところで、雄英の戦力的には痛くも痒くもないだろう。

 

 むしろ私をじっくりと痛ぶってくれれば、それだけ救援が駆けつけるまでの時間が稼げる。

 

 よし決まりだ。仮にもNo.1ヒーローだった者として、雄英の教師として、最期の仕事を果たすとしよう。

 

『おいおい、マキアとかいったか?そこの巨人。いやはや驚いたよ。まさかこんなに優秀な部下がいたとはな。』

 

 No.1ヒーローとしてメディア露出が多かった分、トーク力には多少の自信がある。それを駆使して、奴らの注意を引きつけるのだ。

 

 相澤くんも生徒達もその視界には入れさせない。私だけだけを見させてやる。

 

『それに引き換え、AFO。貴様は随分情けないな。優秀な部下におんぶに抱っこ。まるで老人介護じゃないか。時代遅れの老害が、さっさと引退でもしたらどうだ?えぇ?』

 

 みえみえの挑発だ。だが少しでも、奴らの怒りを変えればそれでいい。

 

『AFO。ハッキリ言ってやろうか?貴様はもう、自分の力じゃ何もできないお飾りのトップだ。大方、部下達に担がれて、引くに引けなくなっちまったんだろう?同情するぜ、身の丈に合わない椅子は、座り心地が悪いよな?』

 

 休む事なく出鱈目を並べ立てて、口撃する。

 

 あんな優秀な配下を持つAFOが実は無能だなんて事、あるわけない。そんな事はわかっている。ただただテキトーを言ってるだけだ。

 

 っていうかこれ、私の事だ。

 

 お飾りのトップ。担ぎ上げられて、引くに引けなくなり、身の丈に合わない地位を得た。

 

 全部全部、私の事じゃないか。

 

 こうして見ると、AFOは何もかも私と正反対だ。

 

 もし奴のように、私にも本当の実力があれば、もっとカッコいい戦い方ができたかもしれない。もっとたくさんの人を救えたのかもしれない。

 

 いやよそう。今さらそんな事を言っても、何も始まらない。今はただ、私にできる事を全力でやるだけだ。

 

『おいおい、どうした?AFO。反論してみろよ?図星を指されて言葉も出ないか?弱いのは腕っぷしだけじゃなく、口の方もか?HAHA、哀れだね〜。魔王の名がが聞いて呆れるぜ!』

 

 死を覚悟したからだろうか。ヤケクソとばかりに舌がよく回る。

 

 だが当のAFOは、私の指摘が余りにも的外れ過ぎて訂正する気も起きないのか、ダンマリだ。

 

 何というか、器の違いを見せつけられてる気がして悔しい。

 

『さっきから黙って聞いていれば、なんたる戯言を!我が主が弱いだと!?ふざけるのも大概にしろ!』

 

 私の悪口に反応したのは、当人ではなくマキアの方だった。AFOの奴、相当部下に慕われているようだ。そのカリスマ性、流石は魔王といったところだ。

 

『オールマイト!貴様は楽には殺さんぞ!我が主に刃向かった愚かさを、その全身に刻み込んでくれる!』

 

『HAHAHA、威勢がいいな。巨人。お前も、格下ばかりと戦っていてはつまらないだろう?たまには体験させてやろうか?格上との死闘って奴を。』

 

 だなんて、強者感溢れるセリフを言ってみる。実際のところ、私か強者でも格上でもなく、格下どころじゃない超超超超格下なのだが、セリフを言うだけならタダだ。

 

『『SHUWATCH(シュワッチ)!!』

 

 OFAの残り火で虚像を纏う。25メートルは有りそうなマキアを追い越し、さらにさらに伸びていく。

 

『さあ、どこからでも掛かってきな。おチビちゃん。』

 

 ざっと75メートル。これが今の私の全力だ。ヘドロの時と違って負傷は無いから、しばらく変身は持つだろう。

 

 まあ、大きくなっても強さはそのままの私が、生きていられればのお話だが。

 

 うん、無理だな。

 

『な、何という、サイズっ!これがオールマイトの力っ!』

 

 だが思いの外、マキアへのウケはいい。自分がデカい分、そのアイデンティティーで上回られるのは堪えるのだろう。

 

 このままビビって投降してくれたりは、

 

『だがっ、それがどうした!我が主の命令に背く、理由にはならん!!』

 

 しないですよね〜。

 

 マキアはビビる様子もなく、躊躇なしで殴りかかってきた。見上げた忠誠心だ、全く。

 

 さて、これで私も一巻の終わり、

 

『なっ、攻撃がすり抜けただと!?』

 

 ・・・え?

 

『どういう個性だっ!?我の腕がっ、オールマイトの身体をすり抜けてしまう!攻撃が当たらない!』

 

 これは、アレだな。

 

 マキアが攻撃しているのは、巨大化している私。つまり、OFAで作った実態の無い虚像だ。当然、触る事などできはしない。

 

 確かにこれは、傍目から見れば、攻撃がすり抜けているように見えるだろう。

 

 ちなみにだが私の本体は、巨大オールマイトの右の踵辺りに、小さいままで蹲っている。マキアがいきなり、足払いみたいな渋い小技を出してこない限りは、ノーダメだろう。

 

 これ、もしかしてイケるか?

 

『おいおい、どうしたマキア。AFOに刃向かった愚かさとやらを、全身に刻み込んでくれるんだろう?私はいつまでこうして待ってればいいんだ?』

 

『ふざけた真似をっ!』

 

 マキアはブンブンとその巨腕を振り回しているが、当然、虚像には掠りもしない。

 

 寧ろ、それによって発生した風圧の方が厄介だ。貧弱な私では、気を抜けば吹っ飛ばされてしまう。そうなっては台無しだ。油断できない。

 

 とりあえず、今一番困るのはマキアに冷静になられること。よし、もういっちょ煽っとくか。

 

『ほらほらマキア。早く当ててみろよ見ての通り、にっくき私は君の目の前にいるんだぜ?』

 

 まあ、嘘なんだけど。

 

『何だか可哀想になってきたな〜。弱い者いじめをしてるようで心が痛む。そうだ、サービスしてあげよう。今から10分間、好きに攻撃するといい。その間私は、攻撃しないと約束しよう。』

 

 まあ、攻撃なんてしようもないだけなんだけど。

 

『残念〜、また攻撃を外した〜。おいおい、とんだ期待外れだな〜。まあ、所詮はAFO程度の男が、トップでいられるくらいの組織。それも仕方ないか。』

 

『主を、侮辱するなっ!!!』

 

 イケる!イケるぞ!

 

 思った以上に、私の個性と性格は、時間稼ぎに向いている!

 

 おまけに、マキア自身の忠誠心の高さも、私に味方しているようだ。AFOの事をディスったら、奴はすぐに頭に血が上る。

 

 この調子なら、援軍が到着するまでの時間を十分に稼げそうだ。

 

 AFOをディスるたびに私の寿命が恐怖で縮む事さえ除けば、実に完璧な作戦と言えるだろう。

 

 っていうかホントに大丈夫か?

 

 AFOの奴、さっきから私をジッと見つめたまま、一言も喋らないぞ。

 

 あれ、なんかプルプル震え出したぞ!?内心ブチ切れてたりしないよな?

 

 まあ、相澤くんが無事な限り、個性を使用した攻撃なら、“抹消”が未然に防いでくれるだろう。多分。

 

『よすんだ、マキア。』

 

 先程まで、怒りに肩を震わせていたと思われるAFOが口を開いた。

 

『よく考えろ。あの個性を。何も分からない程、君もバカじゃないだろう?』

 

 ソレはえらく抽象的な言葉だったが、その意図は確かに部下へと伝わったらしい。

 

『・・・なるほど。流石は主だ。我とした事が、冷静さを欠き、こんな異変にも気付かないとは。』

 

 え、なになに?何なの?

 

 よく分からないが、AFOはマキアに何らかのアドバイスをしていたらしい。

 

 いったい何を、

 

『どういうわけか。オールマイトの匂いも声も、足元からしかしていない。』

 

 あ。

 

『主からの助言に従い、嗅覚と聴覚に優れた“犬”の個性を、よりピンポイントに使わなければ、気付けなかった。』

 

 これ、やばいか?

 

『貴様の巨大化が、どういうカラクリかは分からん。だが、匂いと声のするその部位にタネがある。違うか?』

 

 OFAのハッタリがAFOに看破されてしまった。いや、そもそもこの個性は、かつて奴が弟へと与えたものだ。その仕組みを熟知していても不思議はない。

 

『潰れろ。平和の象徴。』

 

 激昂していた先程とは違う冷静な動きで、マキアは腕を振り上げる。私の本体を目掛けてソレが振り下ろされようとしていた。

 

『どうやらゲームオーバーのようだな。」

 

 口から漏れたのは、虚しい捨て台詞。このままだとこれが遺言になってしまいそうだ。

 

 

 

 

 

『まずは貴様だオールマイト!我が主に、癒えぬ傷を負わせた報い、その身で受けるがいい!』

 

 マキアはオールマイトを睨みつけ、咆哮をあげる。

 

 うん、終わったな、僕。

 

 こんなのを連れてきたんじゃ、自首しに来ましたなんて言い分は通じない。

 

 もはや僕に残された選択肢は、オールマイトに立ち向かって八つ裂きにされるか、マキアに失望されて八つ裂きにされるのか、ぐらいなものだ。

 

『おいおい、マキアとかいったか?そこの巨人。いやはや驚いたよ。まさかこんなに優秀な部下がいたとはな。』

 

 マキアを前にしても、オールマイトはその笑顔を崩さない。凄いオーラだ。

 

 彼ならば、どんな敵でも何とかしてくれるという凄みがオールマイトにはある。これがNo.1の風格という奴なんだろう。

 

 こうして見ると、オールマイトと僕は何もかも正反対だ。

 

 もし彼のように、私にも本当の実力があれば、もっとスマートに自首できたかもしれない。与一とも仲直りする事だって、できていたかもしれない。

 

 いやよそう。今さらそんな事を言っても、何も始まらない。理想よりも現実の話をするべきだ。

 

『AFO。ハッキリ言ってやろうか?貴様はもう、自分の力じゃ何もできないお飾りのトップだ。大方、部下達に担がれて、引くに引けなくなっちまったんだろう?同情するぜ、身の丈に合わない椅子は、座り心地が悪いよな?』

 

 え、オールマイト、今なんて。

 

 まさか、全部気付いているのか!?

 

 僕が本当は弱い事も、凶悪な部下達のおかげというかせいというかで、辞めるに辞めれない分不相応な地位に居る事も全て!

 

 確かに彼ほどの男なら、USJで情けない姿を晒しまくった僕を見て、真相に辿り着いたとしても不思議じゃないが、

 

『おいおい、どうした?AFO。反論してみろよ?図星を指されて言葉も出ないか?弱いのは腕っぷしだけじゃなく、口の方もか?HAHA、哀れだね〜。魔王の名がが聞いて呆れるぜ!』

 

 うん、これバレてるな。絶対バレてる。僕がクソ雑魚だとオールマイトは気付いたんだ。

 

 やばい、どうしたらいいんだ。頭が真っ白になって何も考えられない。

 

『我が主が弱いだと!?ふざけるのも大概にしろ!』

 

『HAHAHA、威勢がいいな。巨人。お前も、格下ばかりと戦っていてはつまらないだろう?たまには体験させてやろうか?格上との死闘って奴を。』

 

 オールマイトは巨大化して、マキアの3倍くらいの全長になってしまった。

 

 待ってくれ。オーバーキルが過ぎるぞ、オールマイト。マキアがセットとは言え、僕の弱さは知っている筈だろう?

 

 そんな状態で攻撃されたら、それはもう戦いじゃない。一方的な虐殺だ。僕は1秒でUSJの赤いシミになること請け合いだ。

 

『どういう個性だっ!?我の腕がっ、オールマイトの身体をすり抜けてしまう!攻撃が当たらない!』

 

 マキアの果敢な攻撃も、オールマイトに着弾させる事すらできない。

 

『何だか可哀想になってきたな〜。弱い者いじめをしてるようで心が痛む。そうだ、サービスしてあげよう。今から10分間、好きに攻撃するといい。その間私は、攻撃しないと約束しよう。』

 

 あのマキアがまるで子供扱いだ。強い。余りにも強過ぎるぞオールマイト。もはや強過ぎてチートの域だ。

 

 だが、オールマイトがヴィラン相手に舐めプだなんて、らしくない。

 

 一体彼は、何を考えて・・・

 

『っ・・・!!!』

 

 巨大化しているオールマイトと目が合う。

 

 かつて与一に渡したOFA。その変身にすっごくよく似たアメコミ風の彼の瞳には、何も映ってなかった。

 

『っ!?』

 

 寒気がした。身体は勝手に震え始める。

 

 まるでソレが虚像だと錯覚してしまう程に、巨大化したオールマイトの瞳からは何の感情も読み取れない。

 

『残念〜、また攻撃を外した〜。おいおい、とんだ期待外れだな〜。まあ、所詮はAFO程度の男が、トップでいられるくらいの組織。それも仕方ないか。』

 

 オールマイトの口調は、明るくユーモラスないつも通りのもの。その顔にはいつもと同じ眩しいスマイルが浮かんでいる。

 

 だが、目だけが笑っていない。

 

 何の感情も宿さない冷たい視線が、僕を射抜いていた。

 

 そうか。オールマイトの胸のうちがようやく分かった。

 

 師匠を引退に追い込んだ僕への復讐心だ。

 

 彼の復讐の炎は、13年の時を経ても消える事は無かったのだろう。息子を得て、教師となり、僕の弱さを知っても尚。

 

 当然だ。何があろうと、僕のしでかした事が変わるわけでも、無くなるわけでもない。過去は消えないのだ。

 

 僕がこうして恐怖している事も、オールマイトの復讐計画の一環なのだろう。

 

 ジワジワと真綿で首を絞めるように、僕を追い詰めるつもりなのだ。

 

『よすんだ、マキア。』

 

 この際、僕が八つ裂きにされるのは、もう確定事項だと考えていいだろう。

 

 だが、せめてマキアは投獄くらいで勘弁してはくれないだろうか。

 

 彼には手を焼いていたが、本当の本当に手を焼いていたが、真っ直ぐに僕のことを慕ってくれるその素直さに、何も思うところが無かったわけではない。

 

 一応、僕が必死に食い止めたおかげで、まだ彼は誰も殺してはいないはずだ。

 

 厚かましいお願いである事は百も承知で、彼にはどうかやり直すチャンスを与えて欲しい。

 

 魔王としての最期の仕事だ。部下の自首を手伝ってやるとしよう。

 

『よく考えろ。あの個性を。』

 

 巨大化にすり抜け。分かっているだけでも、オールマイトの個性はこのチートっぷりだ。

 

 僕みたいに複数個性を持っているとしか思えない。おまけにソレを完全に使いこなせているんだから恐ろしい話だ。

 

『何も分からない程、君もバカじゃないだろう?』

 

 いくらマキアでも勝ち目はない。

 

 彼は真っ直ぐで不器用だが、冷静な判断ができない程、愚かであるわけでもないのだ。

 

 きっと、最善の選択である“投降”という道に辿り着く。

 

 そして、マキアが自分の口から、降伏を宣言したという事実は、後々有利に働くはずだ。

 

 そうだ、マキアが降伏した後は、始末しようとする振りでもしてしまおうか。『この恩知らずめ、殺処分にしてやる〜!』とかマキアに言っとけば、僕に利用されてたって事で、彼への同情的な目も増えるかもしれない。

 

 うん。ずっと自首のことを考え続けていただけあって、即興にしては中々良い計画じゃないか。

 

 よし、これでいこう、

 

『・・・なるほど。流石は主だ。我とした事が、冷静さを欠き、こんな異変にも気付かないとは。』

 

 あれ?えっと、マキア?

 

『どういうわけか。オールマイトの匂いも声も、足元からしかしていない。』

 

 っていうかそんな事どうでもいいから。早く投降を、

 

『主からの助言に従い、嗅覚と聴覚に優れた“犬”の個性を、よりピンポイントに使わなければ、気付けなかった。』

 

 もしもし〜、マキア?僕は一言も、そんな助言なんてしてないけど!?

 

『貴様の巨大化が、どういうカラクリかは分からん。だが、匂いと声のするその部位にタネがある。違うか?』

 

 ちょ、マキア!?

 

 ダメでしょ、オールマイトにそんな喧嘩腰になっちゃ!

 

『潰れろ。平和の象徴。』

 

 マキアーーーー!?

 

『どうやらゲームオーバーのようだな。」

 

 腕を振り下ろすマキアに対し、オールマイトは意味深な呟きで返す。これはマズイ。オールマイトを本気で怒らせてしまったかもしれない!?

 

 マキアー!ストーーップ!!

 

 

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