ハートキャッチされた男の子の物語   作:ぶーく・ぶくぶく

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管理神メビウスと、別れの誓い

 

世界が、音を失っていった。

空が四角く歪み、幾何学模様が走る。

現実が、静かに“管理コード”へと変わっていく。

 

「……ここが、ラビリンスの中枢世界」

さつきが呟いた。

目の前に広がるのは無限に続く白の回廊。

空も地も存在せず、ただ直線だけが延びている。

 

中心に座するは、巨大な“目”。

ラビリンス総統――メビウス。

冷たい金属光を放つその存在は、

感情の一切を削ぎ落とした「完璧な秩序」そのものだった。

 

『観測個体No.07、西隼人。

貴様は感情というバグを発生させた。修正を開始する』

 

メビウスの声は、世界そのものの声。

絶対的な命令。逃れようのない現実。

 

隼人の身体が震え、コードの光が脈打つ。

その姿を見て、さつきが一歩前に出る。

 

「待て! 隼人はもう、管理装置じゃない!

 彼は“人”だ!」

 

『“人”とは非効率の集合体。感情はシステムの腐敗要因。』

 

「違う! 感情は破壊じゃない、創造の始まりだ!」

 

メビウスの瞳が、彼を映す。

冷たい光が降り注ぐ。

 

「……さつき」

隼人が静かに口を開く。

その瞳は、もう迷っていなかった。

 

「メビウスのコードが……俺の中にある。

 でも、俺は“お前”と出会って知ったんだ。

 過程を楽しむこと、人を思うこと――

 それが、俺に欠けていた“心”だ」

 

 

/*/

 

 

雷鳴のようなノイズが走る。

隼人の身体から、紅と蒼の光が噴き上がる。

ラビリンスの紋章が砕け、別の紋が浮かび上がった。

 

――W。

 

彼の名を告げる、新たなコード。

 

「ウエスター……これが、俺の“名”か」

 

『覚醒を確認。No.07、分類変更:自由意思個体。抹消対象に移行』

 

メビウスの声が轟く。

だがウエスターは笑った。

その笑顔には、かつての“冷たい無表情”はもうなかった。

 

「上等だよ、メビウス。

 俺はお前の完璧な檻を壊してみせる。

 ここに、“人間の欠陥”がある限りな!」

 

 

/*/

 

 

メビウスの光線が空間を裂く。

だが、その間にムーンライトが舞い降りる。

月光が白刃のように走り、光線を切り裂く。

 

「行って、隼人! あなたが信じる“仲間”のもとへ!」

 

ウエスターは頷き、さつきを見た。

――その視線は、友情の色を帯びていた。

 

「さつき。助けが必要なら、俺を呼べ。

 俺とお前は、友だ。必ず助けに駆け付ける」

 

「……僕も駆けつけるよ」

 

二人は拳を合わせ、固く握手を交わした。

その瞬間、精霊手の光とラビリンスのコードが共鳴し、

白い閃光が世界を満たした。

 

 

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ノイズが消えたとき、

ウエスターの姿は、すでに光の向こうに消えていた。

彼の残した足跡は、データの海へと還っていく。

 

ムーンライトが静かに呟く。

「……行ったのね」

 

「うん。でも、きっとまた会える。

 ――彼はもう、“人”として生きてるから」

 

 

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OVERSの声が、遠くから届く。

 

[新観測ライン確立]

[未来座標:ラビリンス内・個体群:イース、サウラー検知]

[ウエスター、対象保護プロトコル開始]

 

さつきはその報告を聞きながら、

ゆりの方へ振り返る。

 

「ゆり。俺たちも、自分の世界を守ろう」

 

「ええ。彼が戻れる場所を……私たちが守るの」

 

二人の影が重なる。

その後ろで、月が静かに輝いた。

 

遠い未来、ウエスターがイースとサウラーを救い出すその日まで――

彼の背中を照らす光は、確かにここから始まっていた。

 

 

/*/

 

 

──それは、“友”という名の奇跡。

 心と心を繋ぐ、もう一つのプリキュアの物語だった。

 

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