昼休みの教室は、春の日差しがきらきらと窓硝子を染めていた。
――けれど、そこに漂う空気は少し重い。
まるで、誰かが笑うたびに心の奥の糸がひとつ、軋むようだった。
「こんなもの、何の役に立つんだ?」
西隼人が、指先で折り鶴を摘んだ。
黄色い紙の翼がゆらりと揺れ、彼の無表情な瞳がそこに影を落とす。
教室が、静まり返る。
誰も言い返さない。
昼下がりのざわめきが、すっと消える瞬間だった。
「……縁起を担ぐっていうのは、悪いことじゃないさ」
僕は手元の鶴を折りながら、できるだけ穏やかに言った。
隼人の目がこちらを向く。
灰色の瞳。獣のように光を跳ね返す目。
年齢に似合わぬ落ち着きと、どこか“外の世界”を知っている眼差し。
……なるほど、こいつもだ。
「明堂院、か。武道の家だって聞いた」
「そうだけど、病弱だよ。一応、ね」
笑ってみせると、隼人は眉をひそめた。
この顔、知っている。彼は信じない。
表情一つ動かさず、心の中を測るようにこちらを見てくる。
そういう目を、僕は昔――いや、前の世界で何度も見た。
「……お前、面白いな」
「よく言われるよ。大体“変わってる”って意味でだけど」
「違う。……“匂い”が違う」
その言葉に、背筋がぞくりとした。
“匂い”。つまり、気配。
戦闘経験を持つ者の、それだ。
西隼人。
原作ではフレッシュプリキュアに登場したウエスター――その名を冠する者。
だが、今の彼はただの中学生で、まだ“あの世界”とは繋がっていないはずだ。
――いや、もしかして僕と同じ、イレギュラーなのか?
窓の外で風が揺れた。
校庭の桜がひとひら散る。
僕らの間に、それがひらりと落ちて、机に舞い降りる。
まるで、未来の分岐点を告げる合図のように。
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「さつき、千羽鶴のひと束、出来たわよ!」
ももかの声に振り向くと、教壇の前でゆりが笑っていた。
その笑顔はどこか遠く、すでに“運命”を知っているようで。
僕は胸の奥を押さえながら、小さく息をついた。
心臓がまた暴れている。
ドクン、ドクン、と体の奥で血が叩く。
――この鼓動が止まるその瞬間まで、僕は走り続ける。
ゆりを、救うために。
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放課後。
夕暮れの校舎裏。
僕が深呼吸をしていたとき、隼人が声をかけてきた。
「……お前、本当に病弱なのか?」
「医者がそう言うから、そうなんだろうね」
「嘘だな。あの呼吸は……戦士の呼吸だ」
彼の言葉に、思わず苦笑した。
――戦士、ね。
確かに前世で、僕は何度も剣や銃を手にしたけれど。
ここでは、それを口にするわけにはいかない。
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「お前、何者だ?」
「……プリキュアを、救いたいだけの只の人間さ」
そう言った瞬間、夕陽が沈み、二人の影が長く伸びた。
その影が交わった地点に、小さな“光の花”が咲いた。
見えたのは、ほんの一瞬。
だが、確かに――何かが始まった。