カヤさんで海賊女王を目指してもいいんでしょうか?   作:信濃信濃川

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第8話 仲間集め -アルビダー

 東の海(イーストブルー)の洋上を1隻の船が往く。船首像は目をハートにしたアヒル、旗はドクロにハート、そして真っ赤なハートマークをあしらった帆を全開に広げ、ピンク色の船体で白波を掻き分けるようなその様は波間を駆けるよう。

 

「お前達ッ!! この海で一番美しいものは何だいッ?!!」

 

 そういつものように問い掛けるのはこの海賊船の船長、アルビダ。金棒の異名通り、沢山の突起物が付いた見るからに重そうな金棒を軽々と片手に持っている。

 

「「「「「もちろん、それはレディー・アルビダ様ですッ!!!」」」」」

 

 アルビダのこの問い掛けに対しての答え方は決まっているようで、船員全員が淀みなく答えてゆく。だが皆が皆、心からそのように言っているように見受けられないのはなぜか?

 

「そうさ、アタシは世界で一番美しい。だからアタシの船が進む様子も美しなくなきゃいけないよ」

 

 本人の言葉とは裏腹にアルビダの姿はお世辞にも絶世の美女と表現できるようなものではなく、でっぷりと太ったイカついおばさんそのものだからである。とはいえ、その姿をありのまま言葉に出来るはずもない。本当のことを口にしてしまったが最後、それは金棒の餌食になってしまうのがオチなのだ。

 

「お前達、しっかり働きなッ!! グズグズしてる奴は許さないよッ!!」

 

「「「「「へいッ、喜んでッ!!」」」」」

 

 船員達の表情は金棒を食らいたくないのか恐怖に満ち溢れていたが、言葉通りに忙しく立ち働いている。そんな中でも一際おどおどした様子でいて、海賊としては似つかわしくない出で立ちの少年がひとりいた。

 

「コビー! 針路はこれで合ってんだろうねェッ?!!」

 

 コビーと呼ばれるその少年はアルビダ海賊団において雑用係をさせられている存在。どうも偶々海賊船に乗り込んでしまったが故に今の境遇に至るらしい。

 

「多分……合っていると思いますが……」

 

 眼鏡の(つる)に手をやりながら、いかにも自信無さげに答えるコビーに対し、

 

「多分? 間違っていたら承知しないよッ!! もうグズだね、お前はッ!! はっきりしなッ!!」

 

アルビダは容赦なく言葉を責め立ててゆく。先の尖った靴の先で足蹴にするというおまけも付けて。

 

「え……えへへへ、す……すみません。合っています」

「謝っているヒマがあったら、さっさと海図を確認しなッ!!」

 

 コビーは何を言われようとも、どれだけ足蹴にされようとも、媚びへつらうように笑って誤魔化そうとする。それが更なるアルビダの苛立ちに繋がっているとは気付きもせずに。とそこへ、

 

「レディー・アルビダ様、島が見えましたッ!!」

 

見張り台からの報告が入る。

 

「コビー、あの島で間違いないだろうねェ」

「は……はい」

「よくやった。……お前達、上陸の準備だよッ!! あの島にスベスベの実はある。世界で一番美しいアタシがもっと美しくなれるんだ。喜びなッ!!」

 

 まったくもって茶番でしかないのだが、船員達は一斉にこう叫ばざるを得ない。

 

「「「「「レディー・アルビダ様、万歳ッ!!」」」」」

 

 アルビダ海賊団が上陸せんとしている島はそう、珍獣島である。

 

 

 

 

 

 珍獣島にて滞在を続ける火薬の海賊団は逸早くアルビダ海賊団の船を発見していた。スベスベの実が珍獣島にあると自ら情報をバラ撒いていたのだから当然ではある。アルビダ海賊団が現れる前にも既に3つの海賊団を(ことごと)く撃退しており、そのほとんどは船長や航海士、執事が参加することなく行われていた。

 

「今回はギンも参加しねェって話だ。お前ら、気合入れろよッ!!」

 

 アルビダ海賊団の船が海岸へ寄せてこようとするのを近くの森から眺めていて、声を上げたウソップ。側にはたまねぎ、にんじん、ピーマンの3名。船長曰くヤサイーズの面々。

 

「キャプテンのその足は気合入ってるんですか?」

 

 たまねぎが指摘するウソップの足はガクガクと小刻みに震えていた。

 

「ッたりめーだッ、バカヤローがッ!! 震える足こそ気合の証拠なんだよ、オレの場合はッ!!」

「キャプテン、怖いなら怖いって正直に言っといた方が気持ちが楽になるぜ」

「そうそう。でもキャプテンって後衛ですよね。前衛のオレたちの方がもっと怖いんですから、しっかりしてくださいよ」

 

 ピーマンやにんじんからひどい言われ様のウソップではあるが、彼らの強張っている表情が幾分でも緩んでいるところを見るに緊張をほぐす効果はあるのかもしれない。ウソップ本人は実際怖がっているのかもしれないという点は置いておいて。

 

「怖ェもんは怖ェんだよッ!! 悪ィかバカヤローッ!!」

「キャプテンはそれくらいが丁度いいんですよ」

「それに今回は相手の船長については無視していいって話ですしね」

「手配書の写真によればこのおばさんです」

「怖ェだろッ!! その写真通りってんなら」

「「「うん。怖い」」」

 

 彼らはアルビダに対してもひどい言い様であった。

 

「お前達、悪魔の実はもう目の前だよッ!! しっかり探しなッ!!」

 

 そんな言われ様であることは知らずに、船の錨を下ろして間もなくアルビダは上陸の指示を自らの船員たちに出してゆく。

 

「「「「「へいッ、レディー・アルビダ様、探しちまいますッ!!」」」」」

 

 呼応するようにアルビダ海賊団の船員達は我先にと船を降りていき、珍獣島の地に足を踏み出す。

 

「コビー、お前は船番だ。ここは無人島だけど気を抜くんじゃないよッ!!」

「え……僕ひとりですか?」

「死にたいのかい? お前にはどういうわけか海の知識が人一倍あるから生かしてあるんだ。口答えするなら今すぐ殺してやるよ」

「ヒ……す……すみません、アルビダ様。船番やります」

 

 船上でのやり取りは森に陣取るウソップたちにも聞こえていて、それはおっかない船長がまだ上陸していないことを確認できたということでもある。

 

「よし、時間勝負だ。まずは人数の確認から」

「20人はいます」

「多いな。船長がやって来る前に削るぞッ!!」

「どうするんですか、キャプテン?」

「罠を仕掛けておいた。まあ見てろ」

 

 いざ戦いを始めるとなればウソップは先ほどまで震えさせていた足も落ち着きを見せ、闘志を漲らせたように表情も不敵なものへと変わってゆく。ヤサイーズたちもこうなることは分かっていて頼りにしているのかもしれない。

 

 ウソップは愛用の武器であるパチンコを取り出して、敵の船員達が進んで来るのを見計らうかのように狙いを付けて装着した玉を放つ。

 

「火炎星!!」

 

 放たれた玉は一直線に森を抜けて飛んでいき、海岸手前の砂地に向かってゆく。油と火薬が巧妙にばら撒かれた直線上のポイントへと。それも敵の船員たちが進む丁度ど真ん中というタイミングで。

 

 瞬間、立ち上がる炎は直線状、横一線一気に広がっていき側にいる人間を燃やしてゆく。不意打ちそのものである炎によって生まれるのは火傷のダメージのみならず。それは瞬間的に広がるパニック。ゆえに作り出される隙。

 

「お前ら、今だッ!! 前に出ろッ!!」

「「「OK!!! キャプテン!!!」」」

 

 ウソップの号令の下、一気にヤサイーズ達が森を抜けだして駆けてゆく。日頃の鬼ごっこデスマッチで鍛えられた彼らのスピードは中々の域に達しているようで、爆発的な加速で一息に砂地に入り込む。

 

 既に倒れている敵には見向きもしない。狙いは炎のダメージを受けていない敵。対象を手近のひとりに絞り込み3人で一気に襲い掛かる。

 

「「「ヤサイーズ・シタ・イタメ・イタメ・イタメ!!!」」」

 

 ボーダー柄のバンダナを頭に巻く海賊の狙うは下半身一択。たまねぎはスコップを両手持ちにてスピードそのままに渾身の打撃を左の脛に打ち込む。ピーマンはバットを両手持ちにてかっ飛ばすように右の脛に打撃を打ち込む。極めつけはにんじんが懐に飛び込んでフライパン両手持ちにて股間の急所に向かってバチコンと一発かます。

 

 頭の悪い人間が考えたような技名はさておいて、練度を保った3人一体の連撃はスマッシュヒットして、海賊は声にならない嗚咽とともに立ったまま瞬間固まってしまう。

 

「「「キャプテン!!!」」」

「いいぞッ! 離れろッ! 火薬星!!」

 

 そこへ仕上げのウソップからの一撃。火薬を仕込んだ玉は海賊の顔へと一気に飛んで、着弾と同時に小爆発。この3連撃+狙撃で1セットの攻撃。

 

「熱い! 熱い! 誰か火を消してくれーッ!!」

「前が! 前が! 見えねェーよッ!!」

「炎? どうしたんだいッ?! 何が起きてるんだい、お前達ッ?!!」

 

 体に(まと)わって炙ってくる火が消えず、砂地で体をのた打ち回らせて何とか消そうとする海賊。火で目をやられてしまい、必死に手を前にやりながら動こうとしている海賊。突然の炎と苦痛に呻く部下の声を聞いてもいまだ状況が掴めずにいるようなアルビダ。

 

 混乱が収まる気配はまだない。であれば畳みかけてくるのが世の(ことわり)。海賊たちに襲い掛かる3連撃+狙撃の一撃、二撃、三撃……

 

「落ち着けッ!! 相手はガキだッ!! 叩き潰せッ!!」

 

 時間の経過とともに海賊たちの中にも冷静に状況を掴もうとする者が現れてくれば、待っているのは反撃である。その動きに対してヤサイーズ達は逃げ出すことなく、3人ひとつところに集まっていき、互いに背を預けて八方からの死角を無くして武器を構える。スコップとバットにフライパンで作り出す防御の構え。

 

「「「ヤサイーズ・タテ・タテ・タテ!!!」」」

 

 技名には捻りの欠片とて見当たらないが、襲い掛かってくる3つの剣戟(けんげき)を見事受け止めることには成功する。生み出されるのは時間。それは狙撃の時間。

 

「鉛星! 星! 星!」

 

 球を打ち出す動作を極限まで短縮させて出来る鉛玉3連発は敵の海賊ひとりひとりの顎、鼻、鳩尾を正確に射止めてゆく。

 

 鉛玉ヒットから間髪入れずにヤサイーズ達は再び散開。ちょっとした脚力自慢になりつつある彼らのスピードは凄まじかった。そこからの、

 

「「「ヤサイーズ・ウエ・イタメ・イタメ・イタメ!!!」」」

 

新たな敵海賊に炸裂する三連撃は跳躍しての、スコップで左腕、バットで右腕、最後にフライパンで顔面へスマッシュヒット。

 

「タバスコ星!」

 

 止めの狙撃は激辛卒倒必然の辛味の一撃。下半身ではなく上半身に加えて狙撃のレパートリーは変幻自在という的を絞らせない攻撃には容赦など一切なかった。

 

 海賊は痛さと辛さ、またそこからくる痛さにてのたうち回るしか能がない者に成り果てる。

 

 相手が少年達とはいえ、巧妙に練り上げられた近接攻撃と遠隔攻撃の組み合わせ、防御さえも攻撃の糸口とする用意周到さ加減に次々と狩られてゆく海賊たち。

 

 ただ、この状況でアルビダ船長が黙って手をこまねいている(はず)もない。

 

「このアタシに歯向かおうってのはどこのどいつだいッ?!! 生かしちゃおかないよッ!!」

 

 金棒片手に海岸から突進してくるその姿はまさしく、

 

「「「うわーッ!!! イカついクソばばあだーッ!!!」」」

 

ヤサイーズ達が叫んだ言葉そのもの。一番に身の危険を感じたらしい彼らは蜘蛛の子を散らすように一目散で逃げ出してゆく。ただそこでアルビダが後を追うということは無かった。彼女は彼女なりにこの戦況を冷静に分析していたのかもしれない。この場において最も厄介な相手は誰なのかを。真っ先に潰しておかないといけない相手は誰なのかを。それは安全地帯から遠隔攻撃を行ういけ好かない相手。

 

「どこのどいつか知らないけど、吹っ飛んじまいなッ!!」

 

 アルビダは手にする金棒を一瞬で回転させた後、前方へ鋭く放り投げた。投擲(とうてき)のスピードは凄まじく、回転する車輪が如く、森一面を切り倒し吹き飛ばすほどの勢いで飛ぶ。それはそれは情け容赦の無い勢いで。

 

「おいおいッ!! やべェぞッ!! あのイカついクソばばあーッ!!」

 

 ウソップも事のヤバさを察知して逃げ出そうとするが、時すでに遅しで間に合わないのかもしれない。

 

 だがそれで終わることなどもちろん有り得ない。彼らは火薬の海賊団である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私の大事な仲間をいじめないでくれる?」

 

 高速で飛んでくる金棒を硬化させた右手一本で勢いを殺し、そのまま掴み取る。初手のインパクトでしっかりと心を折りにいくのは大事なことだ。腕一本で止めるだけではなく、それを掴んで見せてこそ。

 

 でもとにかく、やっと私の出番だーッ!!

 

 つい先ほどまでこの海岸一帯の上空をぐるぐる回ったり、時に静止してみたりと様子を窺い、今か今かとタイミングを見計らっていたのだ。出番を待っている舞台俳優の気持ちを痛いほどに理解した気分。正直、心臓にはあまり良くない気がする。

 

 もう、ドキドキしたーッ!!

 

「「「良かったーッ!! カヤさんだーッ!!」」」

 

 森の近くまで逃げていたヤサイーズ達には泣きながらで安堵の言葉いただきました。

 

「カヤーッ!! 遅ェーよッ!!」

 

 ウソップさんからは森を飛び出しての、鼻水と涙に塗れた表情と親指アップとは裏腹の文句いただきました。

 

 ごめんなさい、ウソップさん。後で引っ叩かせてもらうね♪

 

「カヤ? まさか、お前は……」

「あら? 私のことご存知なの? 名乗る必要も無いのかな。でも、一応、火薬の海賊団船長のカヤと申します。お見知りおきを。アルビダさん」

 

 一応レディーと崇め奉られている人が相手なのだし、私も淑女たる自己紹介をしておく。アルビダさんは淑女にあるまじき鬼の形相をしていらっしゃるけれど。

 

 そうか、先に手を出したのこっちからだったっけ。

 

「小娘が……、どういうつもりだい?」

 

 アルビダさんはお腹の奥底から絞り出したように低音コワコワボイスで、ご機嫌斜めな様子。

 

 でもそんなの関係ないのよ。私は畳み掛けるだけ。

 

「どういうつもりって、ケンカ売っただけ。私の仲間によってあなたの仲間達はもう戦えそうに無いわよね。そして、私はあなたの攻撃を片手一本で止められる。あなたがレディーだと言うのなら、この意味分からない?」

 

 言葉の論理を振り翳して心を折りに掛かっているように聞こえるかもしれないけれど、決してそんなことはない。これは親切心からくる言葉。私も一応レディーなのだから。一応ね。

 

「ふざけるんじゃないよッ!!!!! アタシがはいそうですか、とでも言うと思っているのかい? このアタシがだよッ?!!!!!」

 

 ブチブチと青筋を額に立てているのが表情だけで見て取れる。

 

 そう来なくっちゃね……

 

 海賊としての気概は十分だ。私が自分では手に負えない相手であることはしっかりと理解している。それでも退けないし、退かない。内心はどうあれ、はったりかましてでも格上と思われる相手に対して闘気をぶつけてくるのはさすがと言ってもいい。

 

 やっぱり、ウチにはこの人が必要だ。

 

 ではどうするのか? 正直戦いだけで考えれば2秒で事足りる相手と言っても過言ではない。それくらいの力量差はあると思っている。でもそれでは心を掴めない。必要なのは魂のやり取りだ。アルビダさんの懐に入って、腹を割って魂をぶつけ合う必要があった。

 

「この島にはスベスベの実を獲りに来たんでしょう? 私が持ってるわ! 勝負をしましょうよ。あなたが勝ったらスベスベの実をあげるし、あなたの海賊団も潰さないわ。ただし、私が勝った場合には火薬の海賊団に加入してもらうから。スベスベの実はあげられない」

 

 いきなりの言葉にアルビダさんは戸惑いの表情を一瞬見せるけれど、私は問答無用で畳み掛ける。

 

「ねェ、あっち向いてホイって知ってる?」

 

 一瞬その場の空気が止まった気がした。そう言えばみんなには最終的にどう決着を付けるつもりなのかは話していなかった。なので……

 

「「「「「はーーーーーーッ??!!!!!」」」」」

 

その場の全員から素っ頓狂な返事が返ってきたことは言うまでもないわけで……

 

 

 

 

 

 こっちの世界にもあっち向いてホイがあって良かった。

 

 私たちはこれからただあっち向いてホイをやるわけではない。全力でやるのだ。全力というのは1回入魂が如くに有らん限りの声量でやるということであり、誰がどう見ても全力だと分かるように、オーバージェスチャーでやるということだ。なので審判も付ける。

 

 しかもそれを耐久でやる。24時間。

 

 自分から提案しておいてアレだけれど、正気の沙汰でないことは十分自覚している。私自身始める前から億劫(おっくう)で仕方がないし、言わなきゃ良かったかなァと思い始めてもいる。

 

 始める前にパンケーキ食べてもいいかなァ……

 

 「ダメに決まってるだろッ」ていう外野の声が聞こえてきそう。

 

 とにかくスベスベの実とアルビダ海賊団の存続、アルビダさんの仲間入り一切合切(いっさいがっさい)を懸けた24時間耐久あっち向いてホイバトルの始まりだ。ルールはまず顔を向ける方向は上下左右の4方向。そして何よりも全力でやること。全力でやってないと審判に見なされれば、その回は負け確定。耐久レースなので途中で倒れれば完全敗北が確定。24時間お互いにまだ立っていれば、通算成績で勝負を決める。実に過酷な戦いと言える。審判ひとりで24時間ぶっ通しは無理難題なので審判は2時間交代制を採る。よって審判は都合12名必要ということになる。

 

 審判の人選は正直私たち側が圧倒的に多くなってしまうけれど、そもそもにこんな面倒くさいことを敢えてやっているという点で大目に見てもらおう。

 

 バトルの舞台は島の真ん中辺りにある大岩の上。ガイモンさんが箱入りになる前、やっとのことで岩の上に顔だけ出して宝箱を見てしまったまま下に落ちて箱入りになってしまった、あの大岩だ。もちろんガイモンさんにはしっかりと現実を見せてあげた上で使用している。そして審判が交代しやすいように大岩を螺旋状に階段まで作っているという凝り様。この階段は既に船の海楼石張り替え作業で契約を交わし、作業に入ってもらっているみなともさんに追加料金で作ってもらった。ベリーがまたとんでもなく吹き飛んだことは言うまでもない。

 

 時刻は間もなく15時。本来であれば、おやつの時間としてパンケーキを食べていてもおかしくないけれど、もうそんなわけにはいかない。大岩の上、特設会場には私とアルビダさん、そして審判。1人目はメリーにお願いした。私とアルビダさんの間にはスベスベの実を入れた宝箱ひとつ。メリーの背後には戦績表を刻むための超特大木版。舞台は整った。

 

 因みにスペースの都合上、数は少ないけれどギャラリーも数名。みんな呆れている様子だけれど、一方では何か面白いこと始めたなァと多分他人事で見学しているのだと見受けられた。

 

「フンッ! お前がやることはさっぱり分からないよ。ただ、アタシの生きる道がこの場に懸かってるって言うなら、スベスベの実を求めるアタシの思いを考えてもぴったりな場所さ。勝つのはこの海で一番美しい、そうアタシさーッ!!」

 

 アルビダさんの勝利への意気込みは揺るがないもの。生殺与奪の権をあっち向いてホイに委ねられていて、勝てば海賊団存続の上でスベスベの実も手に入るのだから、やらない選択肢など無いのかもしれない。彼女の表情には恐れはない。ただただ目の前の敵に対する闘志があるのみのように見受けられた。

 

 見た目はイカついクソばばあそのものだけど。いいえ、それはレディーに対して失礼ね。人間、思い込む力って大事!

 

「アルビダさん、あなたに恨みがあるわけじゃないけど、私は海賊女王を目指してる。どんな戦いにも負けるわけにはいかないの。でもよく聞いて! ただただ、あなたに私の仲間になって欲しい。それだけよ」

 

 私の口上文句はそんなところだ。アルビダさんの目をしっかりと見据えて、目から相手の脳内に流し込むかのように言葉を叩き込んでやった。

 

「時間は明日の15時まで────」

 

 メリーが審判としてこのバトルのルールを改めて発表してくれる。審判の鑑と言えるような、にこやかでありながらもその表情には何の感情も表れていないよう。

 

「カヤ、負けんなよ。じゃんけんが大事だぞッ!!」

「カヤさん、最後に物を言うのは根性だとおもいます。ファイトですッ!!」

「カヤさんなら大丈夫だよ。絶対勝てるって!!」

「カヤさん、明日に向けて最高のパンケーキを用意しておきますッ!!」

 

 ウソップさん、たまねぎ君、ピーマン君、にんじん君が思い思いに励ましの言葉を掛けてくれた。メリーは審判の立場としてはこの場では何も言えないし、ギャバンとギンは生きるか死ぬかの修行真っ最中だ。

 

「みんな、ありがとう! 絶対勝つよッ!!」

 

 励ましの言葉にはしっかりと感謝を述べておかないとね。

 

「レ……レディー・アルビダ様、が……がんばってください」

 

 借りてきた猫のような佇まいでこの場に居たアルビダ海賊団の航海士兼雑用係であるコビー君。船番だったことで大したケガもすることなくこの場に居るけれど、この励ましの棒読み感、逆に清々しささえ感じてしまう。

 

 それでも一応アルビダ海賊団側では唯一の応援だ。一応は。

 

「コビー、この海で一番美しいものは何だい?」

「レディー・アルビダ様です! えへへへへ」

 

 やり取りは茶番そのものでしかないけれど、これでも彼女の励みになると言うのなら良いのだろう。私がその化けの皮を剥がしてあげるのだから。

 

 この場が温まったことを確認したかのように、メリーが片手を上げて用意の合図を出す。

 

 さあ、始まる。24時間の地獄ファイトスタートだ。

 

「レディー、ファイト!!」

 

 メリーの掛け声と共に幕を開けたバトル。まずはお互いに睨みを利かせた上で、間合いを測るかのようにして、

 

「「最初はグーッ!! じゃんけんポンッ!!」」

 

渾身の右手を突き出して、じゃんけんは全力で。

 

 最初は何も考えずに直感のままに手を突き出した私。眼前に見えているのはグー。アルビダさんが出したのはチョキ。よし!

 

 ここからが大事。アルビダさんの悔しそうな表情。でも見聞色が未熟な私にはまだ相手の心を読むなんて真似は出来ない。このバトルが終わった暁にはあっち向いてホイのやりすぎで見聞色に目覚めるなんていうバラ色未来が待ち受けていたりするのだろうか。そんな淡い期待を持ってみたりするわけだけど……

 

 ダメダメ、全力、全力! まずは何も考えない。

 

「あっち向いてホイッ!!!」

 

 中指を立てて、指銃(シガン)でもする勢いにて突き出した方向は上。そしてアルビダさんが顔を向けた方向も上。初手は渾身の勝利で私は思わずガッツポーズ。アルビダさんは地団駄(じたんだ)を踏むような悔しがりよう。当然ながらここも全力だ。

 

 ただ、束の間の勝利の余韻に浸りながらも私は(ろく)でもないことを考えてしまう。1回のバトルって10秒くらい? やり直しになっても1分を超えることは無いかなァ。ということは単純計算して1分間で6回、1時間で360回、24時間で……8,640回!!

 

 一瞬で気が遠くなりそうになった。

 

 ダメダメ、全力、全力!

 

「よっしゃーッ!! カヤ、いいぞッ!!」

「すごいですッ!! カヤさん!!」

「あーでも、これ24時間やるのかー、なァ腹空かないか?」

「オレ、もうお腹減ってます」

「じゃあ何か作りますよ」

「お前、コビーって言ったっけ? 一緒にどうだ? メシにしようぜ」

「え? 僕もいいんですか?」

「いいですよ。一緒に食べましょうよ」

 

 え? 何よそれ。

 

「「「「「じゃあ、頑張って!!!!!」」」」」

 

 最高の棒読み感に添えられた笑顔。現実はいつだって厳しい。

 

 故に現実は容赦なく襲い掛かってくるわけで。

 

「最初はグーッ!! じゃんけんポンッ!!」

 

 

 

 

 

「おッ、やってんなーッ!!」

 

 最初の2時間が経過したらしくて、交代の審判としてやって来たのがギャバン。

 

 やってんなーじゃねェよッ!!! 私は心底叫びだしたかった。

 

 どうやら陽が傾いてきているようだ。2時間全力でやるあっち向いてホイによって既に時間の感覚というものを失っていた。戦績も木版には刻まれていってるのだけれど、どちらが勝っているのかなんて既に数えようもない。

 

 体力には自信があるだけにまだ疲れたというほどではないけれど、確実に疲労が蓄積しつつあることは感じられた。

 

 アルビダさんはと言うと、もう既に余裕は無さそう。あの身体だしね。汗びっしょりだし、膝にもきてそうだけれど。まだ倒れるなんてことは無いし、全力も継続中。思っていたよりも中々にしぶとい。

 

「さあ、続きだよッ!! さぼっているヒマなんかないッ!!」

 

 気力はいまだに十分。

 

「分かってる。最初は───」

 

 でもメリーから交代しての審判たるギャバンは、

 

「お前ら、愛の体現だなッ!! いいじゃねェかッ!!」

 

親指アップしながら酒瓶片手にジャッジをしている。

 

 こいつ! こんのグラサンジジイッ!! マジで腹立つッ!!

 

 でもそれでも、

 

「あっち向いてホイッ!!」

 

容赦ない現実っていうのは続いてゆく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時刻は昼過ぎ。珍獣島の大岩の下でいまだ立ち尽くす2人の勇姿。

 

 一方は汗に艶めく真っ赤な美少女。夜を越えて、朝も過ぎ去ったことで、蓄積された極限の疲労は普段の涼しげな表情ではなく苦痛に歪めるもの。膝を小刻みに震えさせながらも倒れるつもりなど毛頭(もうとう)ないと言わんばかりの眼力。そこにはどこか色気さえ感じられてしまうかもしれない気品と風格があった。

 

 片や汗まみれなどとうの昔に通り越してしまった巨体揺るがすイカついクソばばあ、もといレディー。うわ言のように呟かれるスベスベの実という言葉に気力の残りカスが、もとい残り香が感じられる。辛うじてその場に立ち尽くしているに過ぎないのかもしれないが、(いわお)のようにして決して倒れないのは並外れた根性を持つが故なのか。

 

 舞台はクライマックスへ向けて整いつつあった。2時間が刻々と刻まれてゆく時の流れ。

 

 夕食にありつけぬまま、空腹に絶望する中でも2人のホイが止むことは無かった。深夜の寒さ堪える時間、皆が寝静まる中でも延々と永遠の向こう側へと彷徨(さまよ)ってしまうかの如く2人のホイは続けられた。

 

 その積み重ねられた時間分、積み上げられた魂のやり取り分、バトル空間は静かに静かに温められてゆき、今最高の熱狂に包まれつつあった。

 

 最終局面が近付くにつれて、ギャラリーが増えていったことで急遽(きゅうきょ)途中で場所は大岩の下に変更された。そんな紆余曲折(うよきょくせつ)も乗り越えて迎えたラストスパート。

 

 もう既に互いに勝敗のことなど頭の片隅にさえ無いのかもしれない。存在するのは目の前の相手、じゃんけんとホイ。周りの一切合切は何も関係が無いのかもしれない。究極の1対1。タイマン上等の尋常勝負。

 

 最後の審判を務めているのはギン。修行明けにも関わらず、否それゆえにか黙々と、淡々と下されてゆくジャッジはこの場の熱狂を確実に下支えしていた。

 

 ギャバンは酒を美味そうに、さぞかし美味そうに飲み干していた。

 

 メリーはいつもの冷静沈着具合をかなぐり捨てて、両の拳を突き上げては応援に熱を入れていた。

 

 ウソップはどこから持ってきたのか太鼓を持ち出してきて、この場を更に盛り上げていた。

 

 たまねぎは今この瞬間、このすべてを言葉にて、言葉のみで切り取ろうとするが如く、一心不乱で言葉を紙に書き連ねていた。

 

 ピーマンは自らの声援がカヤの勝利に直結すると確信しているが如く、有らん限りに声を上げていた。

 

 にんじんはカヤの勝利のみを信じているように、ここまで調理器具を持ち出してきてまでパンケーキの準備に余念が無かった。

 

 コビーは目を輝かせていた。命のやり取りと言っても過言では無いような2人のバトルを見る中で、感じるものがあるのかもしれない。アルビダに向ける視線はこれまで終ぞ見たことが無いような尊敬の念に満ち溢れていた。

 

 アルビダ海賊団の船員たちもお縄に縛られた状態ではあるが見学を許されていて、船長の見たことも無い姿に度肝を抜かれているのかもしれないが、心からのエールと見て取れる声が皆から上がっていた。

 

 途中1回だけ審判を務めもしたガイモンは突然始まったこの祭りを珍獣達と共に心から楽しんでいるように見受けられた。

 

 こうして迎えた最後の回。2人は互いを憎みあうわけではなく、認め合い、共に何かを成し遂げた戦友とでも言わんばかりの表情で見つめあう。体は辛うじて動く程度であるかもしれないがそれでも、今この時の全力そのもの。

 

「「最初は……グー!」」

「「じゃんけんポン!」」

 

 カヤのグーに対して、アルビダはパー。

 

「あっち向いて……ホイ!」

 

 アルビダの指さす方向が下なのに対して、カヤが顔を向けた方向は上。その結果を受けて2人の顔に浮かぶのは柔らかな笑み。そして間髪入れずに、

 

「「最初は……グー!」」

 

そのやられたらやり返しを経て、導き出される最後の結果は如何に……

 

 ギャラリー全員が固唾をのむ中で出されたもの、それはアルビダの指さす方向が上なのに対して、カヤの顔を向けた方向も上。最後の結果はアルビダの勝利にて締め括られた。

 

 瞬間の1拍空いた間。そこからの盛大な拍手。声援、労いの言葉。すべてを締め括ったのは審判ギンによるラップ。2人の戦いを称え、静かに寄り添うような慈しみを感じられるような音の連なりと言葉の紡ぎ。

 

 かくして24時間に渡った凄絶極めるじゃんけんとホイの応酬は和やかな雰囲気にて幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 というかギンってラッパーだったんだ!

 

 戦い終えて最初に浮かんだ私の思いはそれだった。

 

 もう出した。全部出した。とにかく全部出した。やりきったーッ!!!

 

 正直戦いの勝敗なんてどうでもよくなっている感覚がある。24時間をあっち向いてホイで駆け抜けるというのは、私から言い出しておいてアレだけれど、とんでもなかった。本当にとんでもなかった。もうアルビダさんとは心を通わせているんじゃないかと思ってしまうような感覚もある。仲間だ。濃密な24時間を共に過ごした私たちはどう考えようとも仲間だ。

 

 それでも私たちは海賊だ。海賊を名乗る以上は勝負の世界において勝敗というものを決めないといけない。そこは避けて通れはしないのもまた真実。

 

 なのでメリーには木版に刻まれた膨大な数に及ぶ戦績のすべてを集計してもらう。それでもメリーの手に掛かればこんなものはお茶の子さいさいみたいで、あっという間に集計されてゆく。

 

 そうして導き出された最終結果。私たちの戦いの勝敗。

 

 3,999勝 3,998敗 3引き分け

 

 私の勝ち。勝利は喜ばしいもので、みんながまた盛大に祝いの言葉を言ってくれる。確かに嬉しいけれど、私は勝利なんかよりも、もっと素晴らしいものを手に入れられた気がするのだ。

 

 因みに引き分けというのはガイモンさんが持ち出してきた心意気で引き分けだという謎ルールによるもの。

 

 私の勝利の横で、アルビダさんは泣いていた。涙を流していた。あれだけ汗を流していたというのに、どこに水分を残していたというのか。とにもかくにも悔し涙。

 

それでも、

 

「女にも二言は無いよ。あんたの下に付く」

 

どこか晴れ晴れとしたものを感じさせる声音での宣言。

 

「アルビダざばー! 立派でじだー! 僕はアルビダざばのごど、ずっとい……イガづいグゾばばあっでおぼっでだげど。レディーでじだ。ほんどのレディーでじだ!」

 

 コビー君も感極まって泣いていた。さらッととんでもないこと口にしていたけど、どうなっても知らないよ。

 

「コビーッ!! ……フンッ、そうさ。アタシはイカついクソばばあさ。それでもアタシはレディーなんだ。レディーでありたいと心に誓ってるんだよッ!!」

 

 アルビダさんの言葉と表情はまるで悪い憑き物でも取れてしまったかのよう。もう答えは決まっているよ。

 

「アルビダさん! スベスベの実、もらって欲しい」

 

 そう告げて、宝箱から取り出すのはピンク色に艶めき、唐草模様が浮き出た果実。スベスベの実。

 

「!!!」

 

 絶句してしまい言葉にならないアルビダさんの表情には葛藤が見受けられた。欲しくてたまらない一方で、勝負に負けた以上は海賊として受け取るわけにはいかないという矜持みたいなものだろうか。

 

「この実はあなたにこそ相応しいわよ。レディー・アルビダ」

 

 私は畳み掛けるようにして言葉を投げ掛け、スベスベの実をアルビダさんの口元へと持ってゆく。もう食べてしまえと。

 

 私の思いに観念したのか口を開けて、実を齧るアルビダさんからの一言。

 

「不味い!」

 

 はい不味いの一言頂きました。それでもスベスベの実の効果というのは覿面(てきめん)で、アルビダさんはイカついクソばばあだった姿から瞬間的に絶世の美女へと様変わり。妖艶な瞳に見詰められて、思わず私は赤面しそうになってしまった。

 

「ありがとね、あんた! そうだ、折角なんだからカヤと呼ばせなよ。アタシはカヤのこと気に入ってるんだ」

 

 人の容姿が生み出す破壊力って凄まじい。絶世の美女にそう言われるだけで身も心も蕩けそうになってしまう。

 

「あっち向いてホイの仲なカヤには知っておいて欲しいことがあるのさ。ちょっと耳を貸してくれないかい?」

 

 何だか俯き加減の恥じらいを見せる表情で聞いてきたアルビダさん。

 

「これでアタシもキャベンディッシュ様に会ってみてもいいと思うかい? あの方に一目お会いするのがアタシの夢なのさ。その為にアタシは海賊になったんだ」

 

 そう耳元に告げられた後、アルビダさんが見せた表情は真っ赤になったとても可愛らしいものだった。

 

 何、この人、メチャクチャ可愛いんだけど♪

 

「会えるよ! きっと会える。一緒に行こう。私もアルビダ姉さんって呼ばせてよ」

「いいよ!」

 

 私の返事に対して美しすぎる笑顔で答えてくれるアルビダ姉さん。

 

「コビー、このアタシはどうだい? この海で一番美しいものは何だい?」

 

 絶世の美女となった上で改めてコビー君に問い掛けてゆくアルビダ姉さんは以前よりも自信に満ち溢れているように感じられる。

 

「レディー・アルビダ様ですッ!!!」

 

 コビー君は心底そう感じていると言わんばかりに断言してみせる。

 

「フフ、そうさ。アタシがこの海で一番美しい。コビー、お前の夢は何だい?」

 

 自信満々で、最高の笑顔でそう答えた後にアルビダ姉さんが重ねた問い掛けはコビー君の核心を突いてゆくもの。

 

「え……ぼ……ぼくの夢ですか? ……ぼくは……海兵になりたい。海軍に入って悪い人を取りしまりたい。ぼくは……ぼくは海軍将校になる男ですッ!!」

 

 言葉を紡ぐように話し出したコビー君ではあったけれど、最後にはアルビダ姉さんの視線を真正面から受けて、見据えるようにそう宣言した。

 

「そうかい。じゃあアタシをいずれ捕まえにおいで。アタシは待っているよ。この先の海でね」

 

 アルビダ姉さんはコビー君が口にした夢を笑いはせず、真剣な表情で受け止めて見せた。それは多分、海賊としての気概、矜持を纏わせた表情。

 

「カヤ、悪いんだけど。コビーに小舟をやっておくれ。好きにさせてやりたいんだ」

 

 そして慈愛に満ちた優しい表情に変わっての私への懇願。

 

「アルビダ様! あ……ありがとうございますッ!!!!」

 

 コビー君の直角お辞儀を伴った礼の言葉にアルビダ姉さんは嬉しそう。

 

「さて、皆にも聞いておきたいところだね。この海で一番美しいものは何だい?」

 

 アルビダ姉さんの流し目付きで(もたら)されるその問い掛けに対して間髪入れずに、

 

「「「「「「レディー・アルビダでーーすッ!!!!!!」」」」」」

 

皆が皆、目をハートにさせて断言する。

 

 アルビダ姉さんいい感じ♪

 

 

 

 これで私たちにマドンナが加わった。やったー!

 

 じゃあそろそろ頃合いかな。舞台劇場って言うなら、歌姫が絶対必要なのだから。この世界ではエレジアは東の海にあるって聞くしね……

 

 

 

 

 

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