13歳の時に出会ったエトを曇らせる話   作:お稲荷さま

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遅くなってしまってすみません!内容を考えていたら結局本日投稿になってしまいました。


文字数がやや多めです。


15話

エトside

 

塩野編集と組むことになりあれから1ヶ月

 ついにこれから初版印刷の工程に入り販売に向かっていくので今日はその打ち合わせに来ている。

 

「高槻先生!『拝啓カフカ』の献本出来ましたよ」

 

「本当ですか?はやかったですね」

 

 あれから担当編集の塩野さんと連絡を取り合い1ヶ月で献本が出来た。予定より早かったが添削の必要があまりなかったのと表紙も既に決まってた事が大きかったらしい。

 

「これになります」

 

 塩野さんから3冊の拝啓カフカを頂く。作者は出版前に自分が書いた本の完成品を受け取ることができる。

 

「ありがとうございます」

 

「でも3冊も欲しいなんてそんなにもらってどうするんですか?」

 

「実は親友とその親がサイン入りの本を欲しがっていて。とてもお世話になってるので少しでも恩を返したいんです」

 

 善吉くん、お義母さん、お義父さんの分の本を貰いサインを書き込んで行く。

 

「なるほど。それならパパッと書いて持ってっちゃいましょ」

 

「そうですね」

 

 そう今日は善吉くんの例の手術の日なのだ。献本を貰ってくるからと今日の手術を応援したのを思いだす。

 それにお義母さんとお義父さんもサイン本を欲しがっていたのでクリスマスに買ってもらった万年筆を使い綺麗に書いていく。

 

「よし!出来た!」

 

「良い感じですね!ではまた大量に印刷の工程に入りますので連絡頻度は減ると思いますがまた何かあったり、販売する際に電話しますね!」

 

「ありがとうございます。次回も色々とお願いします」

 

 そうして3冊のサイン入りの本を鞄にしまい無くさない様に慎重に善吉くんやお義母さん、お義父さんが待つ家に帰る。なんだがスキップでもしたい気分だ。

 

 善吉くんは今日手術して4日ほどで帰ってくる予定らしい中々の規模の手術である。手術が終わったらお見舞いに行きたい。今日聞いた感じ仕事での連絡は減ると言っていたし行く余裕はありそうだ。明日あたり行ってみようか。

 

 

 まだ誰も帰ってきてないであろう古見家の扉を開け中に入っていく。

 

 

 ―――――――――

 

善吉side

 

エトが古見家に帰宅する6時間前

 

「じゃあ行きましょうか」

 

「善吉、心の準備は出来たか?」

 

 今日が1区にあるCCGラボラトリーに手術を受けにいく日だ。父さんと母さんと共に1区に向かう。

 

 今は結構晴れているがどうやらこれから雨が降るらしい。1区に着くまで晴れてれば良いけど。まぁ傘は持ったし降っても面倒くさいだけだ。

 

 電車で1時間程で目的の1区に到着した。

 手術前の些細な願いは外れてしまったらしい。雨が降っている。

 

「雨降ってきたわね」

 

「めんどくさいけどしょうがないか」

 

 流石にこの雨の量じゃ傘を差すしかないだろう。ここから10分程だしそんな長時間差す訳でもない、割り切るしかないか。

 

 歩く事7分程もうすぐで着く所まで来たけど、なんだが周りが騒がしくなってきた気がする。雨の騒音とは少し違う様ななんだが爆発音みたいな感じだ。

 

「なんだろうこの音?」

 

「近くで工事でもしてるのかしら?」

 

 目的のCCGラボラトリーに近づくにつれてなんだが音が大きくなって来ているような気がする。気のせいだろうか?少し立ち止まって周りを見てみるが特に何もない。

 

「善吉どうしたの?早く行きましょ?」

 

「うん……なんか気になっちゃって」

 

 

  “ドンっ!!“

 

 そして一歩前に進もうとしたその瞬間凄まじい轟音と共に両足に激痛が走る。両足がマグマを当てられたかのように熱い!あまりの激痛にその場で蹲ってしまう。

 

「キャァァーー!」

 

「大丈夫か!善吉!」

 

 父さんと母さんが慌てた様子でこちらに駆け寄ってきてる。蹲る俺の後ろからフードを目深く被った男が横を通り抜ける。この男が何かして来たのかと思ったが特に何も待っていない。

 

「邪魔だ!てめーら!…いや…ついでに奴らの足止め役をしてもらうか…ヒヒッ…俺は天才だなぁ」

 

 なら違うかと思ったその時、母さん達の間をすり抜ける様に通ったかと思うと次の瞬間、母さん達の腕が“スパッ“と切れて脇腹から大量の血が吹き出していた。

 

「え?」

 

 その声が誰の声だったのかはわからない、だけどあまりにも一瞬の出来事すぎて何が起きたのか理解ができない。母さん達が倒れ、ガードレールに背を預ける姿勢になった時にようやく頭が働き始める。

 

「母さんッ!!!父さんッ!!!」

 

 痛む足を引きずりながら母さんと父さんの元に向かう。ほんの数歩、歩けば着く距離なのに今は足がまともに動かず時間が掛かってしまう。

 

「大丈夫かよッ!2人とも!」

 

「善吉…母さん達は大丈夫よ、それよりあなたは?足から物凄い血が出てたわよ…」

 

 自分たちの方が酷い傷であるにも関わらずこっちを心配している両親。今もまだ血が流れ水溜まりを赤い絵の具の様に変えていく。

 

「母さん達の方が酷い出血だよッ!!」

 

 2人の腕と脇腹を止血しようとするが俺の2本の腕では傷を抑えるのに足らない……。努力を嘲笑うかの様にどんどん血が流れていく。すると父さんはなくなった手首を気にせずに肘の内側を使い母さんの出血部位を圧迫し始める。

 

「善吉…俺が母さんの…ゴフッ…右腕押さえておくからお前は脇腹抑えてあげなさい…」

 

「でも!父さんの傷だってッ!」

 

「いいから…」

 

「善吉……私たちの話……聞いてくれ……る?お願い」

 

「後でいくらでも聞くから……今は!」

 

 こんな酷い傷にも関わらず喋ろうとする両親にとりあえず今は喋らないでくれと頼むが、残った母さんの左手と父さんの右手で両頬が包まれる。

 

「母さん達の最後のお願い。ぜんきち……今、とおった人は多分喰種(グール)だけど喰種みんなが悪いと思っちゃだ…めよ?」

 

「そう…わかるとおも…うが人それぞれ、いい人とわるい人がいる…しっかりみきわめ、なさい」

 

「急でびっくりすると…ゴフッ…思うけど多分エトちゃんも喰種(グール)よ、でもぜったい…あの子を恨んだり1人にしちゃ…だめよ?支えてあげなさい」

 

「善吉も男だ…エトちゃんがあぶない時…は助けてあげるんだぞ」

 

 急に両親からエトが喰種だと言われ何がなんだかますますわからなくなる。最後の言葉の様に話す両親に涙が溢れ出てくるが一言一句聞き逃さないように集中する。

 

「わかった!だからもう少し頑張れ!」

 

「善吉は強い」「それに優しい」「「だから」」

 

「「私(俺)達の愛しい息子(善吉)(愛支ちゃん)をよろしくね」」

 

「母さんっ!父さんっ!しっかりしろよ!目あけろよ!」

 

 俺の声かけに対して2人は反応せず。言い残す事はないかの様に安らかな笑顔で目を閉じていた。

 後ろから大柄な男性が走って来て声をかけてくれる。

 

 

「大丈夫ですかッ!……ッ!!今こっちにCCGの救護班が向かっています!意識をしっかり!」

 

「こちら瓜江、班員のクインケによる銃撃で一般市民が両足を負傷、そして追っていた喰種による攻撃でその子の両親と思われる大人2名重症!今から重症者3名をそちらに運びます!」

 

 『…こちらCCG本部、瓜江特等は逃走中の喰種を追え。既に近くに救護班が向かっているそちらに任せろ』

 

「しかしッ!今すぐにでも搬送しなくては!重症者はッ!」

 

『これはCCG本部そして局長からの命令だ』

 

「……了解しました……」

 

両足の痛みと出血で薄れゆく意識の中、先程の喰種の男を追いかける足音だけが聞こえて来た。

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 目が覚める……白い天井と腕に繋がれた大量の管そして時折聞こえる機械音どうやらここは病院らしい。少し痛む四肢を使い体を起こす。

 起きる前の最後の記憶は両親の笑顔と喰種を追って走り去る男の足音、冷たい地面……。どうやら俺は助かったらしい…両親はどうなったのだろうか2人とも出血が凄かったが病院に運ばれて俺が助かったという事は両親もなんとかなったのだろうか?まだ体全体が痛み思う様に動かなかったがナースコールを押し医師を呼ぶ。

 

嘉納先生がやってきて様々なチェックが行われて異常がないことを確認する。

 

「善吉くん体調はどうかね?」

 

「なんとか大丈夫です…それより!母さんと父さんもここに運ばれて来ませんでしたか?!」

 

「……………」

 

 俺の問いかけに嘉納先生は何も言わずただ顔を伏せるだけだった。…………そんな…本当に父さんと母さんは…

 

「善吉くん君が運ばれて来た時には既に大量出血による出血性ショックで助かる見込みがないと判断し、同じく重症だったがまだ助かる可能性があった君を先に手術させてもらった」

 

「……ッ!」

 

 思わず口からなんで両親を先に治療してくれなかったのかと大声を出してしまいそうになる。しかし自分の命を助けてもらった恩人にそんな事言えない…。

 

「君も運ばれて来た時には相当危ない状態だった。そこで私は元々する予定だった手術を行う事で副次効果による君自身の回復量を急増させようと考えた。結果手術は成功しなんとか君だけは助けることが出来た。」

 

 一応元々聞いていた手術の説明では術後、傷の回復が今まで以上に急増する可能性があることを説明されていた。Rc細胞による影響らしい。…………もしあの時俺が2人の傷を代わりにおっていたら…立ち止まらず俺が2人の前に居たら結果は変わってたんじゃないか…。

 

「これは結果論というだけで君は本当にギリギリで助かったんだ、あまり自分を責めては駄目だよ」

 

 先生は気遣う言葉をかけてくれるが、俺があの時と、自分を責めずには居られなかった。

 

 

 

 

――――――――

 

時間は戻りエト帰宅時

 

 エトside

 

 家に入りテレビをつけ冬の気温で冷えた体を温めようとコーヒーを淹れる。私の料理スキルが上達した為お義母さんからキッチンを自由に使って良いと許可を貰っているのだ。

 

 一段落したという安心感と達成感からボーッとテレビを見る。3人が帰って来たらまずサイン本をあげよう。手術を頑張った善吉くんには特別なサインを追加で書いてもいいかもしれない。きっと喜ぶだろう。

 

『———本日11時頃に喰種とCCGの捜査官と激しい戦闘があり、その後逃走していましたが先程無事捕まりました』

 

 4日間1人の時間を何をして過ごそうかと考えているとテレビでやっているニュースが目に入る。どうやら喰種騒動があったらしい。白鳩(喰種捜査官)と戦闘なんて中々の馬鹿も居たもんだ。逃げていたが結局捕まったらしい。場所はどこだろうか、近くだと白鳩(喰種捜査官)が警備を強めてしまう為色々と面倒だ。

 

「1区……?」

 

 善吉君が向かっていた区と同じ区で事件が起きたらしく何だか嫌な予感がする。でも大丈夫だ無事に捕まったとニュースでも言ってるじゃ無いか。少し肝が冷えたがコーヒーを飲み直し冷静さを取り戻す。

 

 『しかし喰種の逃走中に一般人が巻き込まれてしまいそのうち2名が搬送されましたが死亡、1名が重傷で今現在手術を受けているとこの事ですが意識不明の重体となっております』

 

 あまりにもタイミングのいい続報に思わず手が震える、これは寒さのせいだと誤魔化し見逃さない様にテレビを見る。

 

 『亡くなられたのは——』

 

 そんな事があるはずがないたまたま1区で事件があっただけで、流石に今日は手術できないからともうすぐ帰ってくる。そうだいつもの様に“なんかバタバタしてて手術無くなっちまった“って言ってこのリビングに入ってくるに違いない。

 

 『夫である古見 茂樹(こみ しげき)さん34歳とその妻古見 環(こみ たまき)さん34歳。その子供である古見 善吉(こみ ぜんきち)くん14歳は意識不明の重体です』

 

 

 

 

 

 先程までコーヒーが入っていたコーヒーカップが地面に落ちる音と外の雷雨の音だけが大きく部屋に響いていた。




とうとう来てしまったか、この時がエトちゃんのせっかく手に入れる事が出来た家族が‥

エトだけじゃなく善吉も曇ってるやないか〜い。しょうがないですねこれは善吉くんも道連れです。

善吉君の両足を貫いたのは名も無き双子捜査官の羽赫クインケです。雨で視界も悪く走って逃げる喰種を捕まえるために打ったのだが善吉君に当たってしまい2人して放心状態。その後瓜江父こと特等が合流した形になります。
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