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「じゃあまた定期的に受診してもらうことになるだろうけど体調が変化したり違和感を感じたら教えてね」
「わかりました。色々とありがとうございました」
結構な大怪我を負ったのに2日後には退院できるとは…自分の事ながらすごい回復力だな。診察室を出るとエトが待っていた。1人で帰れるとは言ったのだが心配だからと一緒に帰りたいらしい。
「じゃあ帰ろうか」
「そうだな…ご馳走様は用意してあるんだろうな?」
「もちろんだとも、肉料理は多めにしてあるよ」
「それじゃあ急いで帰らないとな!」
帰宅しエトが豪華な退院パーティをしてくれた今まで気にしてあまり食えなかった肉料理をたらふく食べる。やっぱりエトの料理は美味い。
「やっぱり日本人としては米と肉だよなぁ、最高!」
「喜んで貰って作った甲斐があったよ。コーヒー飲む?」
いつのまにか淹れていたのだろう気づいたらもう出ていた。2人でゆっくりしながらこれからの事を話す。
「この家は母さんが昔当たった宝くじで買ったらしいから水道代と光熱費とかの支払いだけでいいらしい。まぁ2人の口座にある貯金で1年くらいは大丈夫だと思うしCCGからの支援金もあるから暮らす分には問題はなさそうだ」
「それは…すごいね流石お義母さんだ…今の所上手く行くかは分からないけどプラスして私の小説が売れればなんとかなりそうだね」
「流石エト大先生だ、だけど自分の事にお金使っていいんだぞ?」
気持ちは嬉しいが、エトが努力して稼いだお金だ…それを使うのはなんだか気が引ける。
「いや、元々小説が上手く行ったら施設を出ようと思ってたし、その事を君の両親にも話してたんだ」
「だから急にエトの部屋作り始めたのか」
「まぁあの時はすぐ出版とは思ってなかったから小説を書く理由について答えただけだし、一緒に住もうと言われたけど私の部屋が出来るなんて思ってなかった」
苦笑いしながら君の両親の行動力には驚かされてばっかりだったと言うエトに俺もだと返す。たしかにいくらサプライズとはいえ急にエトの部屋を作ってたのには驚いたけどそんな話が裏であったなんて知らなかった。
「なら、もう施設出て一緒に住もう」
「まだ小説が売れるかわかんないけど?」
「お金があるから一緒に居たいんじゃない。エトだから一緒に居たいんだ」
「……時々君には驚かされる。あまり他の人にはそういう事を言わない様に……」
顔を伏せているが耳が赤くなっている。照れているのだろう。我ながら小っ恥ずかしい事を言った自覚はあるが本心だ。
「別に言う相手もエト以外いないし」
「そういう問題じゃない」
「まぁいいだろ?住まないのか?住まないならお金を受け取る気はないぞ?そこまで恥知らずじゃないしな」
「君は一度行ったら頑固だからねぇ、わかった今日から一緒に住ませてもらうよ。改めてよろしくね善吉くん」
「おう!と言ってもあんまり今までと変わらないか」
「そうだね、ここ1ヶ月はずっと君の家に泊まってたし。あ、そうだこれ渡そうと思ってたんだ」
エトが鞄から3冊の本を出す。
「おぉ、俺が描いた表紙だ!もう出来てたのか」
誕生日にあげた俺の絵が表紙として使われているのを見るとなんだかとても感動してくる。
「本当は君の両親にも一番に渡したかったんだけどね。ちょうどあの日に献本が出来たんだ……」
さっきまで明るかったが雰囲気が少し暗くなる。
「後で仏壇に置いてやろうぜ」
「そうだね」
この広い家に子供2人だけなのはやっぱり寂しいな。
エトが住んでくれると言ってくれて良かった。1人だったら頭がおかしくなっていたかもしれない。
その後は2人で住むにあたってルールを決めることにした。料理、洗濯はエトが。洗い物、掃除は俺がやる事にした。買い物は2人のうち行ける方が行く、もしくは2人で行く事が決定した。
「こんなもんでいいか」
「あとの細かい事は後々決めていこう」
そうして決まったルールを2人で四苦八苦しながら家事をしていると早くも夜になってしまった。中々上手くいかないもんだ。
「そろそろ寝るか」
「もういい時間だしね、善吉くんも疲れただろう」
それぞれの部屋に行き、ベットに横になる。病院にいた時にはあまり感じなかったが、いざ家に帰ってくると本当に両親はもう居ないのだと言う事が実感できてしまい急な孤独感に襲われる。するとガチャリとドアが開く音が後ろから聞こえた。
「善吉くん起きてるかい?」
「エトか、どうかしたのか?」
「なんだか眠れなくてね」
エトも眠れないらしい。するとモゾモゾとベットに潜り込んでくる。
「一緒に寝てもいいかい?」
「いいよ、俺も寝れなかったんだ」
後ろからエトの息継ぎが聞こえ
「私にとって前まで1人で寝るなんて当たり前だったんだ。だから別に寂しいとも思わなかったし。思う日が来るなんて事も考えてなかった」
「でもこの一年で善吉くんやお義父さん、お義母さんのおかげで家族の暖かみを知る事が出来た。知ってしまったんだ。2人がいなくなってしまった恐怖が寂しさが寝ようとすると襲ってくるんだ」
エトも俺と同じ気持ちなんだ。せっかく出来た家族がいなくなってしまった寂しさに耐えられないんだろう。
「大丈夫だエトにはまだ俺がいるだろう」
「……あぁそうだな、それに善吉くんにも私がいる」
2人で寝るなんて恥ずかしくて出来なかったが今は背中に感じる暖かさが1人じゃないと教えてくれてる気がした。
次の日起きた時にはエトはベットにはいなかったその代わりに朝ごはんのいい匂いが俺の部屋まできている。
体を起こしリビングに向かう。
「朝早いな」
「まぁね料理は私の仕事だから」
昨日決めた事をもうしっかりとやってくれてるみたいだ。なら俺もしっかりと家事をやらないとな。
「なら俺はご飯食べたら掃除でもしようかな」
「張り切るね〜、そういえば学校はいいのかい?」
エトに学校の事を聞かれるが、色々と調べる事、やりたい事が出来たので落ち着くまで学校は休もうと思ってる。
「まぁ色々落ち着くまでな」
「確かに今はゆっくり休むべきかもね。私も少しやる事があるから家を開ける事が増えると思う。自分の家事はしっかりとやるから安心してくれ」
「無理な時は言ってくれれば俺がやるから気にすんな」
エトにも色々とやる事があるのだろうし俺も何も出来ないわけじゃない。
朝ごはんを食べて少しゆっくりするとエトが先程の用事で家を出た。
「さて……何しようかな」
調べたい事は色々とある何故両親がエトの事を喰種だと思ったのか。そして喰種だった場合俺はどのように行動するのが正解なのか。それを考えなくてはいけない。
「うーん…母さん達の部屋探したら何か見つかるかな?」
エトの部屋を探すのが手っ取り早い気がしたが流石に勝手に探るのは違う気がした。母さん達が何か手掛かりになるものを残している事を信じて両親の部屋を探そう。
両親の部屋を探すが特に変なものは見つからない。あるものといえば、家族写真やエトの小説の原稿、本、服くらいだ。やっぱり特に証拠みたいな物はないのだろうかと思っていると机の上に母さんが家計簿や家族の思い出等を書いているノートが目に入った。
流石にここには書かないだろうと思いつつ手に取るとノートの隙間から封筒が落ちてきた。まさかとは思いつつ中を見ると。
[善吉へ、この中にはエトちゃんのとても大事な秘密が書かれています。私が何か決定的な事を言った時以外開けないように]
と書かれていた。
2枚目の紙に目を通す。
[善吉へ、あなたがこれを見ていると言う事は私達がエトちゃんの秘密に関する事を話したのでしょう。もし話した理由があなた達2人が付き合う、結婚するといった理由ならこれを書いてる私はとても嬉しいです。もしそれ以外だとしても、これを読んでエトちゃんとの関係が悪くなる、もしくは善吉がエトちゃんを見放す様なら私もお父さんも貴方との家族の縁を切るつもりでいます。]
最初から結構ぶっ飛んだ内容ではあるが相応の覚悟を持って読めと言う事なのだろう。
[さて、少し脅しましたが本題に戻しましょう。私達か知ってしまったエトちゃんの秘密とは、エトちゃんが喰種又はそれに準ずる種族ではないかと言う事です。
何故そんな事がわかるのかというと、エトちゃんが家に泊まる様になってから夜中に何回かあの子の目が片方赤くなっているのを見ました。最初は驚きましたが調べた所それは赫眼という喰種特有の外見的特徴らしく空腹になってしまうと出てきてしまうそうです。また喰種の空腹は私達のとは比べものにならないほどの苦痛をそして飢餓を感じるらしいです。普通では我慢など到底出来ない様な状況にありながらも私達家族を襲う事なく、一緒に生活するエトちゃんを見て、私達はこの秘密をエトちゃんが話してくれる様になるまで待とうと気付いてない振りをすることにしました。それが普通の判断でない事は理解しています。普通の親なら子どもの危機かもしれない状況を見て見ぬ振りなどしないでしょう。でも善吉、貴方が心の底から信頼しているエトちゃんをそして私たちの為か善吉の為か飢餓状態にあっても我慢するエトちゃんを私達は信じてみたくなったのです。そうして過ごして行くうちにエトちゃんは善吉の友達というだけではなく私達にとっても本当の娘の様な存在になっていきました。なので善吉にも喰種だ人間だという見方ではなく。貴方の1人の親友としてのエトちゃんを見てあげて欲しいのです。
私達に言われなくてもそのつもりだとそういう風に思ってくれたら嬉しいです。
この手紙を読んで驚いたでしょうでもエトちゃんも私達の大切な家族の一員です。
最初善吉が私達にエトちゃんの事を話してくれた時のような純粋な気持ちでこれから過ごしてくれる事。2人支え合って生きてくれる事を私達は望んでいます。]
なるほどな、だから父さんも母さんも最後にあんな事を言ったのか。
この手紙にあった通り言われなくてもエトの事を見捨てるなんてありえない。と言いたいがもし今回の事で喰種そのものを憎んでしまってその後エトの正体を知ってしまったら。エトに対して酷い事を言ってしまったかもしれない、それだけならまだしも今までの関係には戻れない可能性もあるかもと考えるとゾッとする。
この手紙を見て俺はエトの事をそして喰種の事をこの世界の事を知らなくては行けない。
その為には——
手紙の内容からわかる通り善吉の両親はエトが喰種であると言う事をギリギリまで隠そうとしてました。
ですが、自分たちが喰種にやられてしまった事で善吉が喰種そのものを憎悪してしまう可能性が出てきてしまいます。その為エトが喰種である事を伝え最後の言葉を残しました。
手紙の事を伝えなかったのは善吉自身にどうするか考えさせる為です。